米流時評

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タリバンのエンドゲーム・テロ戦争の潮目

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   ||| タリバン戦線のエンドゲーム |||

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 テロ戦争8年目の潮目 パキスタンのタリバン拠点へ米軍のミサイル攻撃開始
 

d0123476_16582178.jpgここ数日で、アフガンとパキスタン国境地帯のタリバンの拠点に対して
米軍・パキスタン政府軍・アフガン政府軍の総攻撃が展開している。
7月の対タリバン戦線の戦死者数が、
米軍もNATO軍も、テロ戦争始まって以来の記録となってしまった。
もちろんそれ以前から「アフガン・サージ」(増兵)は始まっていた。

 本来のテロ戦争の目的から外れて、石油利権目当てのイラクへ侵攻した米軍。
 そのブッシュ政権の誤った指針を、本来のタリバンの拠点である
 アフガニスタンとパキスタンの国境地帯へ戻して、
 イスラム原理主義者のテロ活動の要請基地と、武器と兵力の拠点をつぶす。
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 そうした本来の戦争目標を達成するために、
 オバマ政権になってから、アフガン戦線の総司令官も首がすげ替えられた。
 
 新任のマクリスタル司令官は、イラク戦争でも
 アルカイダ・イラク戦線のリーダー、アブサヤブ・アブ・ムサウィを
 ミサイル攻撃でとどめを指した2006年の掃討作戦で、
 米空軍特殊部隊の攻撃を率いた、歴戦の強者である。
 
 ブッシュ時代の、投げやりなアフガン戦略から一変して、
 教育施設の建設や、農業灌漑事業の支援も始まった。
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 戦闘だけでなく、内政の充実、特に産業振興で職場を創成して
 タリバン組織へ若者が流れるのを阻止するという、
 きわめて当たり前の「戦後政策」に手を付けている。
 
 今回のエントリは8/8号の続編になるが、
 これ以降も、アフガンとパキスタンの両面展開で、
 タリバンを挟み撃ちにするべく、熾烈な銃撃戦が続いている
 国境地帯の戦闘状況をお伝えします。

【米国時間2009年8月10日『米流時評』ysbee 訳】

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  AUGUST 10, 2009 | 『米 流 時 評』 |  時事評論ブログ雑誌・デイリー版  2009年8月10日号
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 タリバンのエンドゲーム パキスタンの拠点へ米軍ミサイル攻撃
 米国時間2009年8月7日 | AP/REUTERS/NBC/MSNBC| 訳『米流時評』ysbee

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 Death of Taliban Chief — Part 2
Leader of group in Pakistan linked to Bhutto killing, many suicide attacks
AUGUST 7, 2009 | AP/REUTERS/NBC/MSNBC | Translation by ysbee

15. U.S. drones began striking Taliban
DERA ISMAIL KHAN, Pakistan — Earlier this year, however, U.S. drones began repeatedly striking Mehsud's territory in Pakistan's South Waziristan region as his power grew and concerns mounted that violence could destabilize Pakistan and threaten the region. In addition, some of Mehsud's fighters were suspected of attacking supply convoys for U.S. and NATO forces through Pakistan.
パキスタンのタリバン拠点へ米軍攻撃開始
前号「米軍のミサイル爆撃でタリバンの首領メスード爆死」からの続き
パキスタン社会の反応は変わってきていた一方で、アフガン駐留米軍は今年の年頭から南ワジリスタン地区に対して国境を越えて無人偵察機ドローンを飛ばすCIAアフガン戦線主導の攻撃作戦を開始していた。
南ワジリスタンでは近年、バイツラ・メスードが率いるパキスタン・タリバンが自爆テロ養成基地を構え、首都ペシャワール近郊までテロ攻撃を仕掛けたりするタリバンの活動拠点となっていた。
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 南ワジリスタンの山中へ入ったキャンプからタリバンの隠れ家と思われる穴居に地対地のロケット砲を撃ち込む米軍

16. Attacks on supply convoys for US/NATO

In addition, some of Mehsud's fighters were suspected of attacking supply convoys for U.S. and NATO forces through Pakistan.
カイバー峠で輸送部隊のコンボイを襲撃
メスード配下のタリバンは、地元の警察署・刑務所の襲撃、政府軍や米軍への協力者の公開処刑などを次々に実施して、復讐を恐れた地元住民や部族長老を恐怖政治の統制下においた。
さらには、パキスタンの港湾から荷揚げして、アフガン国境のカイバー峠を越えてアフガニスタンの米軍基地やNATOのアフガン戦線編成軍基地へと、通常の兵站物資を輸送する陸軍のトラック部隊を連続襲撃したため、アフガンの米軍とNATO軍に対しても大きな脅威となってきていた。
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17. Becoming a greater threat to the U.S

Whether Pakistan will now aim for militant leaders that are a greater threat to the U.S. — such as those led by Maulvi Naseer Wazir in South Waziristan, Hafiz Gul Bahadur in North Waziristan or the Haqqani group — remains to be seen, although the U.S. success in taking out Mehsud could be a strong nudge.
今や米軍に対する最大の脅威
パキスタンタリバンでメスードの後継者とみなされる他のリーダーたち、南ワジリスタンのマウルヴィ・ナシール・ワジール、北ワジリスタンを仕切るハフィズ・ガル・バハジュール、あるいはまた(かつてブット元首相の父親を暗殺した)今は亡きハッカニの後継者一派。
こうした一連のパキスタン政府軍の宿敵の中で攻撃対象として現在最重要視されるのが誰であれ、今回のメスード討伐は転機となるだろう。なぜなら「米軍の手でメスードをやっつけた」という実績が出来てしまった限りは、ワジリスタン統制における米軍とパキスタン政府の間の軍事的判断においても、米軍側の発言力のパワーバランスが増す事実は否めない。
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 タリバンとの銃撃戦で負傷した米兵を、戦闘の前線からバグラム基地へ運ぶシャトル用ヘリ、ブラックホーク

18. Brutal Taliban regime of Mehsud

Fueled by his alliances with al-Qaida and other militant outfits, Mehsud rose to the peak of Pakistan's militant pyramid thanks largely to his brutality and Pakistan's unwillingness to take him on.
メスードの残虐なタリバン恐怖政治
そもそもメスードは、アルカイダやパキスタン外部のテロ組織との連携によって急激に勢力を拡大し、パキスタン国内の叛徒グループの中でも組織ピラミッドの頂点を極めた。その覇権の秘密は、もっぱら彼の残虐な恐怖政治態勢にあったため、パキスタンの中央政府や軍事司令部ですら怖れをなして、今年初めまではあえて強硬攻撃を控えてきたのが実態である。
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19. A bold ambition of Mehsud

A 30-something son of a potato farmer who once taught physical fitness, Mehsud was soft-spoken but brash enough to once hold a news conference.
大胆不敵なメスードの野心
弱冠30代のメスードは、護身術の免許も持つジャガイモ畑を耕す小作農の息子として生まれ、一見話し方はおだやかだが、その剛胆な精神力は他を圧倒している。昨年5月には内外の記者多数を南ワジリスタンの山中にあるタリバンの基地に呼び寄せ、公然と記者会見するという、タリバンのトップ指導者としての威信を見せつける、野心的な冒険もやってのけた。
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 昨年5月24日南ワジリスタン山中のタリバン要請基地へ、内外記者を堂々と招集した記者会見でのメスード

20. Likely successor: deputy Hakimullah

Three Pakistani intelligence officials said the most likely successor was Mehsud deputy Hakimullah. Two other possibilities were Azmat Ullah and Waliur Rehman. The officials spoke on condition of anonymity because of the issue's sensitivity. Interior Minister Rehman Malik also named Qari Hussain, known for training suicide bombers.
後継者と目されるもうひとりのメスード
諜報部門の極秘情報のため匿名という条件の下にもらした、パキスタン陸軍諜報部ISI将校の諜報分析によると、パキスタンタリバンの総司令官としての後継者はメスードの副将を務めていたハキムラ・メスードだろう、という予測がもっぱらである。ほかにもアズマット・ウラーとか、ワリウル・レーマンといった名も挙がっている。政府側の消息筋では、レーマン・マリク内相の説で、自爆テロ養成基地のリーダーであるカリ・フサインの名もまた挙がってきている。
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21. Pakistan's Taliban Movement getting loose

The Tehrik-e-Taliban Pakistan, or Pakistan's Taliban Movement, was already a loose coalition, and rivalries were common. "It has the potential to fracture even more now that its boss is dead, and military might will have to be a key part of the approach to the truth," said Daniel Markey of the Council on Foreign Relations.
動揺するパキスタンのタリバン組織
パキスタンのタリバン運動「テーリケ・タリバン・パキスタン」は、5月のパキスタン政府軍の大々的なスワット谷侵攻作戦以来、すでにこれまでにも組織の統制がばらばらになってきており、これは他のライバル組織においても共通して見られる兆候である。
しかし特に今回は彼らの最高司令官メスードの死で、組織自体が崩壊する可能性も見えてきており、そうであれば現段階での軍事的裁定が、この地域の恒久平和につながる鍵を握ることになるだろう、とCFR 外交評議会(Council on Foreign Relations)のダニエル・マーキー氏は分析する。
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22. Afghan Taliban lost its ally

"Baitullah was an unusually effective leader, capable of pulling together disparate militant forces and maintaining discipline ruthlessly. Now there's an opportunity for the Pakistanis to try and peel off elements within the TTP, or at least encourage splits that are likely to develop on their own in the aftermath of Baitullah's death," Markey said.
最強の援軍を失ったアフガンのタリバン
「バイツラ(メスード)は、ずば抜けて統制力のある指導者でした。テロ戦争の緒戦で米軍のアフガン侵攻で蹴散らされて壊滅状態だったタリバン兵士を、ふたたびかき集めて教練し直し、徹底した情け容赦のない戒律で、強硬な軍隊を再編成しました。」
「しかし、その彼が不在となった今は、TTP=パキスタンタリバンの内部崩壊の機に乗じて、パキスタン政府にとってはメスードの支配下にあった南ワジリスタン地区を挽回する、絶好のチャンスでしょう。少なくとも、バイツラの死後は組織自体が指導者権争いで分裂の危機にあるので、そうした状況を加速するような諜報の動きがあってしかるべきだと思います。」
CFRのマーキー氏は、パキスタン政府側が失地挽回する好機であると強調した。
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23. 'Cat and mouse' situation

In this, Pakistan's record is not inspiring. It has regularly staged military operations that it says have cleared out insurgents, only to see the groups re-emerge. It also has a record of striking peace deals with insurgents, which critics say have helped the Taliban.
タリバンと政府軍のイタチごっこに終止符
タリバン幹部の討伐に関しては、パキスタン側の実績はぱっとしない。テロ戦争では、ブッシュ政権の友軍を買って出たムシャラフ政権だったが、パキスタンの基地から国境を越えて、アフガン側へテロ攻撃を仕掛けてくるタリバンに業を煮やした米軍側から圧力がかけられると、そのときだけおざなりな派兵を行なって、タリバンは駆逐したと表明していた。
しかし実際には、タリバンは山中の基地に戻っただけで、この本陣を集中攻撃しない限り、パキスタン政府軍とタリバンのいたちごっっこが繰り返されるだけだった。さらに、昨年の選挙で政権がムシャラフからブットの寡夫ザルダリに移ってからは、一時南ワジリスタンの辺境地域の自治統制権をタリバンシンパの部族長老の手に渡すことを認証する失態も起きた。この地域専門のアナリストの評価によると、こうした地域の政変が結果的にタリバンの勢力拡大に、大いに役立ったものと分析している。 >続く

【 米国時間 2009年8月10日『米流時評』ysbee 訳 】
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左:国境付近を走るパキスタンの国営鉄道、アフガンには鉄道自体がない /中:スワット谷侵攻作戦が一段落して故郷に戻った避難民だが、見る影もなく破壊された民家 /右:5月にアフガン戦線の最高司令官に抜擢された米軍のマクリスタル将軍。空軍82部隊と言えば泣く子も黙る特殊部隊だが、イラク戦線転任直後にこの部隊を率いて、アラブアルカイダ指導者ムサウィをしとめた実績が評価されていた。彼の戦略の特徴は「Precision Operation」脳外科医の患部摘出手術のように、周辺地区に危害を及ぼさずにターゲットだけを殲滅する、特殊部隊特有の作戦。

d0123476_11564496.jpg◀ 次号「今度は地中海の海賊?消えた貨物船アークティックシーの謎」
▶ 前号「スワット谷の夜明け・戦線の鍵を握るパシュトゥン族」

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by ysbee-2 | 2009-08-10 19:50 | タリバニスタン最前線
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