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メディアはメッセージ・米国の「鳩山ショック」の原因

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    ||| メディアはメッセージなり |||

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 「メディアはメッセージ」 外交能力の稚拙さを問われる鳩山陣営の媒体選択
 

メディアはメッセージ・米国の「鳩山ショック」の原因_d0123476_16582178.jpg 今回、鳩山氏の小論文の抜粋が掲載されたのは、
 米国を代表する新聞『ザ・ニューヨーク・タイムズ』である。
 日本ではリベラルなメディアと受け止められているが、
 むしろ媒体特性としては「アメリカンカルチャーの総合紙」といった趣き。

 実際、出版物や映画・演劇・アートの世界では、
 タイムズの評論がなくては、存在そのものが成立しない。
 経済欄や政治欄も、その膨大な米国発信情報の
 総合的な世界の一部ととらえた方が良い。
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 ただし、いつも論議の種をまくOP-ED欄は、
 昨日の記事のキャプションでも書いたように、
 基本的には「個人の意見の投稿欄」であって、社説ではない。
 
 曜日によって同紙特約の著名評論家が
 自説を連載しているため、このOP-EDページは人気が高く、
 当然注目度も高いスペースである。
 (注:本来の名称は「opposite the editorial page」で、
  新聞社の記者や編集者ではない外部の第三者からの投稿ページ。
  しかし、一般的には「opinion-editorial」の略と解釈されている)
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 もちろん、同紙との特約の有無にかかわらず、
 時流の話題の焦点となる意見であれば、
 評論・著述のプロ・アマにかかわらず、
 編集者の選択によって採り上げられ、掲載される。
 
 鳩山氏の小論文抜粋に関しては、タイムズもそうだが、
 私はむしろ、米国著名ブログの HuffingtonPost の方が、
 広く米国の一般市民に読まれたのではないか、と観測している。

 鳩山氏自らの名義で、記事エントリーしており、
 コメントの反応も現在まで112通ほど寄せられている。
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 しかし、その中にはどう見ても、杓子定規の英作文のような文章から推して、
 民主党の側近なのか、外務省官僚なのか、
 あるいは、熱心な支持者なのか、まったく不明だが、
 鳩山氏をカバーするような立場で投稿したのではないか?
 と思えるような、四角四面の擁護と賞賛のコメント投稿も見られる。

 ネイティブの「米語」と、外国人の書いた「英語」の文章は、
 日本人がブログのコメント欄を読んで、
 中国人の書いた文章を 一見して識別できるように、
 言い回しがまったく違うし、「て・に・を・は」が滅茶苦茶なので、
 いくら米人を装って書いていても、冒頭の一行から尻尾が出ている。

 まあ、そういうことは枝葉末節であるし、
 コメントは鳩山氏が書いた訳ではないから、無視できる。
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 しかし問題なのは、もちろん氏の書いた文章そのものである。
 正直言って、これでは中学生の「青年の主張」である。

 スタンフォードを出たというので期待していたが、
 やはり、日本人の「英作文」の域を出ていない。
 同じ日本人の書いた文章でも、昨日と今日のエントリで紹介している
 ニューズウィークの横田氏の文章は、完全にこなれている。

 ぎくしゃくしていないので、すんなり読めるが、
 鳩山氏の文章は、行きつ戻りつしなければならず、
 アメリカ人ならば、あえて日米関係に深い関心をもつ人間でなければ、
 たぶん途中でそれ以上「解読」するのを、放棄してしまうだろう。
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 日本人が犯しやすい間違いのひとつに、他動詞を使っているのに、
 その目的語が欠落している文を書いてしまうことがよくある。
 例えば「claim/抗議する・注文をつける」という動詞を使った場合
 そのかかり先が呈示されないと、「何に対して?」と問い返されるだろう。

 その他にも、アジア人の英語につきものの定冠詞のつけ忘れ……
 そういった、文法的な誤謬を挙げれば、随所に無数に見られる。

 構文が曲がりくねっていて、非常に抽象的な表現が多いので、
 論文というほどには、論理の構築が完結していない。
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 したがって、米国では論文ではなく、
 「Hatoyama's essay=鳩山氏の随筆」と呼ばれている。
 経済を語っているのに、データの裏付けがなく
 雰囲気に流れてしまっているからであろう。

 しかし、そうした文章構成のテクニカルな問題は、
 日本人の書いた英文、ということで看過されてもいい。
 意味はともかく通じるのだから。

 だが、一番問題なのは、その媒体である。
 つまり、建設的意見として批判するのは、むしろ米国側でも歓迎するだろうが、
 そもそもが、発表の場を間違った。
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 昨日のエントリの NEWSWEEK の記事でも、それを指摘する段落があった。
彼の論説は当初一見すると、まるで
グローバル化反対運動家が書いた
反米主義の抗議声明 (anti-American rant) のように読める。

この論調では、今週早々 (米国保守系の) ワシントンポスト紙が
「日本の次期政権は米国政府との衝突を意図している (seek a rupture)」
と、国際面の記事で警告を発したのも無理はない。

鳩山氏の論文に対する 米国側のこうした一連の被害妄想 (paranoia) も、
日本では実質的に前例のない
「完全な政権交代 (complete change of administrations)」が
史上初めて実現した、という事実を考慮すれば、充分理解できる。

ただし「まずい形で出てきてしまった (it just happens to be wrong)」
というだけのことだ。
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 欧米だけでなく、中国・ロシアからも
 「日本社会の土台が変わる一大転機」と捉えられている、
 東アジアの勢力地図を変えるかも知れない、今回の政権交代。

 当然、新しい政権を担う人間の第一声、一挙手一動足が、
 今後の方針の兆候を示唆するものとして解釈される
 デビュタントの初舞台である。

 したがって、ニューヨークタイムズのOP-ED欄に出たのは、致命的だった。
 その理由は、昨日のコメント欄で、ブログ『家族がいちばん』
 練馬のんべさんへのレスで書いた通り。

 鳩山氏とその側近は、「メディアはメッセージ」と言う、
 40年前のマクルーハンの鉄則を、今さらながら噛みしめる必要がある。
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 以下、太文字はコメント欄のレスポンスです:
……やはり「史上初の政権交代」ということで、米国でも注目されていましたが
小論文が問題になってからは、ほとんど「脅威」と捉えられてしまったようです。

このエントリ(で紹介した『Newsweek』誌)の日本人編集者も書いてますが、
私も思うに、出した媒体がまずかった。

タイムズのOP-ED欄(政見投稿欄)というのは、
プロでもアマでも、その主張を投稿できる
「言論の自由に対して開かれたスペース」をうたってはいます。

が、どちらかというと「外野的立場の人間が政府にもの申す」的に
「噛みつく場」として捉えられることが多いので、
そこに出ただけで「米国政府に対する攻撃的意見」という色眼鏡で見られるのは
事前に覚悟しておくべきだったでしょうね。
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ましてや、次期政権の首相になることを見越していたなら、
オバマ政権に対する希望なり忠告があるのなら、
なんでまた、外交のルートで正式に申し渡さなかったのか?
というのが、通常の米人が受け取る印象だと思います。

ここでもやはり、鳩山政権というか、民主党自体が
(スムーズなコミュニケーションのパイプをもたず)
欧米諸国との外交経験がないことを、暴露してしまったような失策です。

いつも日本を、政府だけでなく国民をも含めて
トータルに、公正にとらえられるべきだと思っている私からすると、
非常に不安に感じていた前兆を、裏付けされたような印象です。
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早急に、外務省の経験豊富な官僚に尻拭いしてもらわないと、
すでに「Rebel(反逆者)」のレッテルが貼られてしまった鳩山氏、
今後の軍事・外交・経済、全局面での米国との交渉に
支障をきたすのではないかと、米国の親日派もみな心配していますよ。
今月下旬の、オバマとの会談でフィックスできるよう願ってます。


* 米国の代表的なニュース・時事評論ブログ HuffingtonPost に、
鳩山氏自身が起稿した一文
Japan Must Shake Off U.S.-Style Globalization
Yukio Hatoyama | Heads the Democratic Party of Japan
Posted: August 25, 2009 03:46 PM

 今回のエントリは、前書きが長くなってしまったので独立させました。
 昨日の記事、ニューズウィーク横田氏の鳩山外交に関する時事評論の後編は、
 後続の記事で翻訳文をつけてアップしますので、よろしくご了承ください。

 【米国時間 2009年9月2日『米流時評』ysbee】

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記事リンク http://beiryu2.exblog.jp/10198080
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by ysbee-2 | 2009-09-02 13:40 | 日本のパワーシフト
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