時評:人質成功で図に乗るタリバン勢力
今朝方、アフガニスタンで韓国人人質の最後の7人が解放されたというニュースが入り、やれやれこれで一段落と記事にした。しかし結果的に、テロリストの条件を飲むという後味の悪い「タリバンの実績」を作ってしまった。国際世論も一様に、交渉に応じた韓国政府に対して批判的である。もちろん人命は大事。しかし、テロリストグループと西側の民主主義国家とは、「テロ戦争」という国境のないグローバルな戦線での、過酷な戦闘の真っ最中だということを忘れている国が多い。一般市民が戦場に踏み込んではいけないのである。
私はたまたま米国に住んでいるので、いやでも応でも毎日イラク戦争やアフガン戦線の暗い、時には真っ赤なニュースと向き合わざるを得ない。だが、多分日本のみなさんは、今日一日つつがなく終われば、また楽しい明日がくる.... と、戦争とは無縁と思って暮らしているのではないかと察する。ブログ友のひとりも海外から久々に帰国した感想を「日本はどこにいっても株とダイエットの話題よ」と嘆いていた。
さらに最近では「ジハディスタン」という俗称が浮上してきた、アフガニスタンとパキスタン間の国境地帯でタリバン以下ジハディスト(イスラム聖戦兵士)の復活がめざましく、連日襲撃事件が頻発。ここは昔からパシュトゥン語を用いる部族の民族自治区で、中央政権の制圧がほとんど無効な地域でもある。この地域で今朝アジアの一国の人質事件が解決したと思ったら、今度はパキスタン兵100名が誘拐されたという。人質事件で韓国がタリバンに屈し、彼らが味をしめたためだと言う誹りは免れない。
同じ手口ですでに次々とターゲットが定められているのかも知れず、もう名目などにかまっている時節ではないようだ。正々堂々と敵国として認知して、テロと闘う共同戦線でアルカイダやタリバンを真剣に撲滅するべき時機がきたのではないだろうか。それとも、あまりにも頻繁なテロ襲撃のニュースに取り巻かれて、私自身が神経過敏な「戦争を感知するカナリア」になってしまったのだろうか。
【米国時間 2007年8月30日 『米流時評』ysbee】
【追記】 この事件は、例によって前書きというか、私のうだうだ書き「ysvoice」が長くなってしまったので、本体のニュース記事は別建てにして次の記事でアップします。
この事件報道に関しては少なからず唖然とする経過がありまして、当初米国時間で30日夜のニュースでは、「100名誘拐」でスタートしました。しかし、その後深夜には「誘拐は誤解で、悪天候のためトラック部隊が途中で野営していただけ」と訂正になったので、安堵して寝ました。ところが一夜明けてみると、「実は拉致されたパキスタン政府軍兵士は300名を越え、そのうちの120名を解放する交渉が整いつつある」という新しい情報。
まったく、このジハディスタンというかタリバニスタンの無法地帯には、最新のITネットワークを誇るグローバルなニュースメディアも振り回されっぱなしです。ともかく、米国時間ではまだ8月末日、日本では9月1日時点での、パキスタン兵の「大量誘拐」事件を、新しい記事に差し替えてお伝えします。正規の政府軍が捕まれば常識では「捕虜」と呼ぶのだと思っていましたが、米国のMSM(main stream media=大手マスコミ)では依然として「兵士が誘拐された」のだそうです。300人も!戦闘もなしで!! ともかく現地からのなんとも頼りないニュースで、実状を想像するよりほかなさそうです。 【2007年8月31日 『米流時評』ysbee】
記事リンク http://beiryu2.exblog.jp/6060830
TBリンク http://beiryu2.exblog.jp/tb/6060830
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7/23 アルカイダ2.0 後編 核目的のパキスタン戦略
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8/28 時評:韓国人人質解放とタリバンの復権
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韓国政府のテロ対応に非難の声:タリバン側増長・誘拐拉致増加か
8/31 人質成功で図に乗るタリバン勢力
人質解放と同日にパキスタン軍の輸送トラック部隊を襲撃拉致
9/01 タリバン、パキスタン兵300名を誘拐拉致
パキスタン陸軍のトラック部隊をタリバンが襲撃、300人を誘拐拉致
9/02〜 「地の果てへの旅・トラボラ再訪」米流時評特集 タリバニスタン(予告)
「タリバニスタン」アフガンニスタンとパキスタンの国境地帯に復活したタリバン勢力
なぜビンラディンは捕まらないのか/NATOのタリバン掃討作戦/アフガン政府内部レポート/元CIA諜報部員の激白
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残 暑 お 見 舞 申 し 上 げ ま す
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▶ポルトガルのコースタルリゾート、ポンタ・ド・ソルの初秋
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