米流時評

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米流時評:パキスタン・戒厳令の季節

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   ||| 時評:パキスタン 戒厳令の季節 |||
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米流時評: 世界で最も危険な国パキスタンで展開する最悪の政情

d0123476_18552829.gif私のブログにはジンクスがあって、「何かやけにひっかかる題材を書いていると、数日後にその記事に関連した国で、本命のどでかい事件が起きる」という変な因縁である。ニュースウォッチャーとしてはありがたい嗅覚なのだが、大概がテロとか戦争に関連した事件や「事変」なので、戦争という大地震を本能的に感知する情報ナマズのひげのような塩梅で、予感が的中すると心臓にはあまりよろしくない。

ドバイ・コネクションd0123476_11534119.jpg
先週は文化の日をはさんだ連休なので、日本の方へいつものニュースとは趣向を変えて読み物風の記事をと思いドバイを中心に暗躍する核密輸ネットワークの暴露記事「ドクター・カーンの核コネクション」を連載でお届けした。予定では3部に分けて週末2日分の予定だったのが、訳しているうちにエントリーの字数制限を超えてしまい、結果的に4部に分割しないと納まらなくなった。
また例によって「良い写真はないかな」と探しているうちに、ドバイの強烈なツーリズムPRの網にひっかかってしまい大変な寄り道に嘆息しながらも、結果的には膨大な数のパブリシティ用の写真を手に入れる事ができた。

パキスタン2度目のクーデターd0123476_12444484.jpg
その中から掲載する写真を選択し1枚ずつフォトショップで編集調整して翻訳をしている間に、とんでもない「事変」が起きてしまった。その記事のテーマ「核のネットワーク」の発祥地パキスタンでの、ムシャラフ将軍自身のクーデターである。いや、彼はすでに7年前に無血クーデターで大統領の座に就いているので、この言葉は矛盾撞着している。だが戒厳令を発し軍隊と警察の軍事力を行使して、テレビ局・電話回線・インターネットサービスを遮断してしまったのだから「実質的な軍事クーデター」と言った方があてはまる状況だろう。

ムシャラフの軍事独裁体制d0123476_11525533.jpg
しかしながら、彼自身が大統領の座にすでに就いている現在、一体誰に対してのクーデターなのだろうか。
これは、パキスタンの政情をウォッチしてきた方ならうなづけると思うのだが、実は「パキスタン国民に対するクーデター」なのである。
ムシャラフ自身は今回の暴挙を「叛徒制圧のための非常手段」と称しているが、実状は来年1月実施の大統領選挙で選出される候補に、現行の大統領職を譲るのを拒否した行動である。要するに、自らが大統領でかつ将軍である現在の軍事独裁体制を継続したいがために、ただひたすらそのために、戒厳令発令の2日前にあったと伝えられる米国務省ライス長官からの警告も振り切って、国家スケールの我がままを通したに過ぎない。

ドクター・カーンふたたびd0123476_1611581.jpg
欧米自由主義各国は早速抗議声明を発したが、何しろパキスタンは先回のシリーズでも詳説した通り「核の父」ドクター・カーンの故国で、アジアでは近隣の中国・インドや北朝鮮と並んで、数少ない核兵器(原爆)保有国のひとつである。人口も1億6千万人を数え、国家スケールから見ても決して無視できない存在だ。こうした背景があるので、この国の主権がまかり間違ってタリバンと徒党を組むイスラム過激派の手中に落ちたなら、想像するに恐ろしいグローバルな領域での「核の脅威」が出現する。イラクやイランよりも米国にとってはパキスタンが「現在もっとも危険な国」と指摘されている理由もここにある。こうした危惧は米国では民主・共和の別なく、外交問題に腐心する議員の間でも語られてきた。

国境地帯タリバンの復権d0123476_15554571.jpg
アフガニスタンとパキスタンの国境地帯。昔から中央政権の手の届かない民族自治区的な色合いの濃いこの地域は、米国のメディアに聡い連中の間では、いわゆる「タリバニスタン」と俗称されるほど、昨今タリバン勢力の復活が著しい。その影響で「米軍はイラクよりもアフガンに兵力を集中すべき」という議論も大統領選の論点に上るほど米国の軍事外交面での焦点になってきていた。
ムシャラフのテロ対策の不徹底、パキスタンの治安劣化、タリバンの台頭、ワジリスタン自治区統治の軍閥への委譲、そして自爆テロの頻発・・・こうした一連の悪循環をめぐって交わされた、オバマ対ヒラリーの論戦も記憶に新しい。その矢先に起きたのが今回の突然の暴挙としか思えない、ムシャラフ・クーデター政権による、民主化を否定する「逆噴射クーデター」である。

軍政の亡霊・恐怖政治の悪夢d0123476_1156217.jpg
このところのミャンマーの弾圧といい、今回のパキスタンの戒厳令といい、軍人が全権を掌握すると恐怖政治が始まる。言論の自由も集会の自由も禁止。政府に反対する者は即逮捕投獄。裁判さえ国家の意のままだ。
アフリカは元より、アジアのあちこちで個人の自由が押しつぶされるとき、われわれが今テレビの画面で見ているのは、19世紀の圧政の亡霊なのだろうか。
それともグローバルな新しい権力闘争の開幕を象徴する「暴力的な時代」の悪夢のプロローグなのだろうか。

【米国時間2007年11月3日 『米流時評』ysbee 記】

»» このエントリーから特集「パキスタン・戒厳令の季節」を連載でお届けします。
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by ysbee-2 | 2007-11-03 12:48 | パキスタン戒厳令の季節
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