米流時評

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戒厳令と米国 前編「民主化十字軍ブッシュのジレンマ」

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   ||| 民主化十字軍ブッシュのジレンマ |||
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民主化十字軍ブッシュが直面する、戒厳令下パキスタンの政治危機
テロ戦争の友軍でタリバンの温床 二律背反するパキスタンの現実


d0123476_18552829.gifこの記事は戒厳令発令直後の3日土曜にニューズウィークのサイトに掲出された、政治評論家マイケル・ハーシュの時評です。当時は世界中のメディアが動揺を隠せず、軍事独裁の弾圧を傍観している状況でしたが、ニューズウィークは今回も真っ先に言論・報道の自由と基本的人権を守る立場から、臆面なくムシャラフの蛮行を断罪しました。時々刻々激動する事態でニュースウォッチに追われ、この記事に立ち戻って翻訳を完了したのが今日。戒厳令から2週間以上経過したあとで読み返してみても、筆者の洞察による判断は正鵠を得ています。前後編通読されることを期待します。

2007年11月3日 | マイケル・ハーシュ/ニューズウィーク特約 | 『米流時評』ysbee 訳
「そろそろローロデックス(回転式住所録カード)から離れた方がよさそうだな」11月に入って早々の週末3日の土曜日、ホワイトハウスの高官はこんな冗談を飛ばしてにんまり笑った。(grimly=にんまりという表現がもっともふさわしいのはチェニー)それというのも、ブッシュ政権は従来のムシャラフ関連のリストのメンバーとは異なる、新しい盟友のネットワークをパキスタンに創り始める必要ができたからだ。
これまでの6年間、ペルヴェズ・ムシャラフ現大統領が勇み足を踏むたびに、ワシントンの米国政府は保護者的立場で、国内はもちろん国際社会に対して、何度となく体裁をつくろったり代理の謝罪を繰り返してきた。しかし戒厳令の出され反対派が拘束されるに及んで、パキスタン国内から呼び出すべき仲間はもはや数えるほどしか残っていない。
しかもこの国は、今日世界中で反米主義のテロリズムを生み出している国家の中でも、ナンバーワンに挙げられているという誠に情けない始末なのだ。 (以下、本文は下へ続く)
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Dancing With the Dictator — Part 1
How Bush's tight relationship with Musharraf compromised the war on terror
By Michael Hirch | NEWSWEEK — Web Exclusive | Translation by ysbee
NOVEMBER 3, 2007 — "We'd better get out the Rolodex," a senior U.S. official joked grimly on Saturday when he was asked whether the Bush administration needed to start making new friends in Pakistan. After six years of propping up and making excuses for Pervez Musharraf, however, Washington doesn't have many friends left to call on in Pakistan—perhaps the No. 1 generator of anti-U.S. terrorism in the world today.

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NOVEMBER 4, 2007 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽園通信』デイリー版f0127501_6213945.jpg
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 N E W S W E E K | S P E C I A L

戒厳令と米国・前編 「民主化十字軍ブッシュのジレンマ」
2007年11月3日 | By マイケル・ハーシュ/ニューズウィーク サイト独占掲載 | 『米流時評』ysbee 訳


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1. 'Democracy Crusader' Bush's dillenma
That's the dilemma that democracy crusader George W. Bush faces after Musharraf, one of his firmest allies, took the dictator's path and declared martial law on Saturday. There is perhaps no place on earth that more powerfully validates Bush's idea that democracy can be a cure for terrorism than Pakistan. And there is perhaps no place on earth that so powerfully exposes his occasional hypocrisy in failing to push for that policy.
「民主化十字軍」ブッシュのジレンマ
テロ戦争の盟邦国でありながら、国境地帯はムスリム・テログループの温床になっている・・・テロ戦争の強力な推進者でもあるムシャラフが独裁者の道をたどった挙句に、3日土曜日には軍事独裁の最たる体制、戒厳令を発令した・・・この二律背反するパキスタンの現実は「Democracy Crusader/民主化十字軍」を自認するジョージ・ブッシュが直面する最大のジレンマでもある。
世界広しと言えど「テロリズムに対する最高の療法は民主主義である」というブッシュの信念を、パキスタンほど強力に証明する国は他にない。しかも、どうかすると「偽善の最たるもの」とも受けとれるブッシュの民主化政策が、その方針を推進する上でこの国ほど見事に失敗した国もまた、地球上ほかに例を見ない。
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2. Democratic justice in crisis
Asked about Musharraf's decision to declare a state of emergency and cart off the justices of the Pakistan Supreme Court shortly before they were expected to rule that his presidency was illegitimate (he took power in a 1999 coup), U.S. officials did the dance they always perform when it comes to his anti-democratic actions: They disapproved but expressed hope that Musharraf would see the light.
三権分立の民主主義の危機
1999年のクーデターでムシャラフが政権を奪って以来「軍の総司令官が大統領を兼任しているのは憲法違反である」という法定判断が適用されるはずだった直前に、パキスタンの最高裁判所判事を放擲して自らの傀儡判事を任命し、国家非常事態宣言を発したムシャラフの決断。
この件に関して訊ねられたなら、ムシャラフの非民主的な強行に直面し当惑している米国政府関係者は、彼らが難問にぶつかるといつもそうするように都合のよいたたらを踏んで見せる。彼らは独裁的弾圧を承認はしないが、いつかムシャラフも目覚めるだろうという希望的観測を口にする。
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3. Generously suggested his responsibility
Secretary of State Condoleezza Rice, in remarks to reporters on her plane shortly after the state of emergency was declared, refused to divulge details of the conversations U.S. officials had with Musharraf in recent days. But she indicated that the Bush administration had been aware of the possibility he would impose martial law and had warned him that "even if something happens we would expect the democratic elections to take place" that Musharraf had promised by Jan. 15. Rice also generously suggested that Musharraf himself had been one of those responsible for "getting [Pakistan] back onto the democratic path."
寛容なるブッシュ政権の対応
米国のコンドリーザ・ライス国務長官は、パキスタンで戒厳令が敷かれた直後に、乗っていた飛行機の機上で記者会見を行ない、米国としての立場を表明したが、その数日前に政府高官がムシャラフとの間で取り交わされた会話の詳細については、公開するのを拒否した。
しかし、ブッシュ政権は「もしかしたらムシャラフが戒厳令を発布する可能性」について感知しており、彼に対して「万一何が起っても、米国はムシャラフ自身が公約した通り1月15日までに、パキスタンの民主的選挙が速やかに実行されることを期待する」と念を押して警告したと語った。ライス長官はまた「パキスタンを民主的な軌道に戻す責任はムシャラフ自身にもある」と、寛大にも彼の大統領権限の続行を示唆するような発言を残している。
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4. 'Nation in danger of falling apart'
The dictator himself, in his address to the Pakistani people Saturday, picked up on this theme, declaring that he was disrupting democracy in order to save it. "I say with sorrow that some elements are creating hurdles in the way of democracy," he said, adding that Pakistan was in danger of falling apart because of extremist elements; his emergency order accused the justices of "working at cross purposes with the executive" and "weakening the government's resolve" to fight terrorism.
国家分裂の危機を防止するため?
肝心の独裁者自身は、3日土曜パキスタン国民に向けて発せられた声明の中でこの主題をとり上げ「民主主義を守るために、一時的に民主主義を停止しなければならない」と宣言した。「今回とる措置のいくつかが民主化推進の道程にハードルを築いてしまった事は、実に悲しむべき事である」と述べ、「パキスタンは過激派分子のおかげで、分裂寸前の危機に直面している」と付け加えた。
ムシャラフが発した国家非常事態宣言では、最高裁判事の糾弾にもふれ「司法のエリートに貢献する誤った判断で動いている・・・テロリズムと闘う上で政府の方策を弱体化する」と非難した。
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5. Double talk illustrates Faustian bargain
Yes, Musharraf has been a firm if uneven ally against terrorism. But all of this double talk illustrates the Faustian bargain that the United States has struck with Pakistan in the war on terror. Again and again, the Bush administration has looked the other way as Musharraf has trampled all over democracy in the service of "stability."
「民主化を進めるための弾圧」という矛盾
まさにその通り。ムシャラフは、その勢いにむらはあったが、常にテロ戦争における米国の強い味方であり続けた。しかしながらこの宣言の中にも見られるように「民主化を進めるための弾圧」という二律背反の矛盾した体制は、テロ戦争を闘うためにパキスタンと友軍関係を取り結んでしまった米国と同様に、悪魔に魂を売ったファウスト(Faustian bargain)さながらである。
次から次へと「治安」の大義名分の下にいたるところで民主主義を蹂躙するムシャラフに対して、ブッシュ政権はこれまた性懲りもなく、彼に次なるチャンスを与え続けてきたのも事実である。
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6. Terrorists' harbor in border regions
In the fall of 2002, when Musharraf finally held parliamentary elections three years after his bloodless coup, Islamist fundamentalists won a surprising number of seats. Their victories, especially in border regions like Baluchistan where terror groups still found harbor, were a worrisome setback to the fight against terrorism. U.S. officials swallowed hard but lauded the elections as "fair and square." But the elections were not fair and square.
民主選挙の結果イスラム強硬派躍進
無血クーデターで独裁者の地位についてから3年経った2002年の秋、ムシャラフが最終的に国会の総選挙を実行した結果、イスラム教原理主義者が驚異的な数の議席を占めてしまった。彼らの勝利は、特にアルキスタンのようないまだにテロリストの温床となっているアフガンとの国境地帯で著しく、テロリズムとの闘いを逆行させるような心配の種となった。
この件について米国政府の関係者は、ムスリム強硬派を増長させるという、米国の期待に反する手痛い結果であったからこそ、むしろ逆に「選挙は公正に行なわれた」という事実を認めざるを得なかった。しかし実際には、その秋の選挙は公明正大ではなかったのである。
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7. EU, 'serious flaws in the elections'
And it was left to an election observer from the European Union, John Cushnahan, to point out that there were "serious flaws" in the elections because Musharraf's government had unfairly directed state resources to his party and created laws intended to prevent exiled former leaders Nawaz Sharif and Benazir Bhutto from taking part.
EU、大統領選での不正を指摘
クーデター後のパキスタンで初の民主選挙ということで、EUから選挙監視委員ジョン・クシュナハンが唯一人派遣され、公正かどうかの審議は彼の意見に一任されていた。彼の結論はこうである。
「パキスタンの大統領選挙には深刻な不正があった。それはムシャラフ政権が国家予算を不正に彼の政党へ運用し、亡命中の前首相ナワズ・シャリフとベナジール・ブット両氏が対立候補として立候補できないように、勝手に法の改正(実際には改悪)を図った事実である」と鋭く指摘した。
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8. Bhutto critical about Bush
Washington was, quite noticeably, silent on this point. Bhutto, the former prime minister, could not even get a hearing at the White House, belying Bush's second-term commitment "to seek and support the growth of democratic movements and institutions in every nation and culture," as the president put it in his second inaugural address.
ブット、米国の覇権主義に批判的
一方ワシントンの米国政府はこの選挙における不正に関してはきわめて異様なほど沈黙を保った。ホワイトハウスに苦情を訴えようとしても拒絶されたブット元首相は、ブッシュが2期目の大統領就任演説で強調した「いかなる文明のいかなる国家においても、その国の民主化を促進する政治活動と組織の成長を認めて支援する」という基本姿勢に背くものだと、ブッシュ政権に対して批判を下した。
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腐っても鯛、パキスタン独立の立志伝中の政治家を父を持つブットは汚職嫌疑にもかかわらず地方で根強い人気を保つ

9. Craving the popularity of Bhutto
Lately Musharraf, with his popularity in sharp decline, had begun to court Bhutto politically. He proposed that she return to Pakistan after eight years of enforced exile (thanks to him) to join him in a coalition government.
ブットの人気目当ての連立政権提案
ムシャラフは最近、今夏の「赤のモスク蜂起事件」での弾圧で国民の反発を買い彼の支持率が急激に下落したのにともなって、大衆人気の根強いブットと政治的にパートナーシップを組もうと画策し始めた。ブット女史は、収賄などの汚職嫌疑をムシャラフから受けたため、その後8年間国外亡命生活を余儀なくされたが、ムシャラフが大統領・首相両立の連立政権の可能性を持ちかけたために、亡命にピリオドを打って、先月待望の帰国を果たした直後であった。

»» 次号「戒厳令と米国・後編 テロ戦争と民主化の皮肉な運命」へ続く
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先月8年ぶりの亡命生活からパキスタンに帰国し、カラチ市内で30万人を越える歓迎の人並みに迎えられたブット

【米国時間 2007年11月4日 訳『米流時評』ysbee】

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by ysbee-2 | 2007-11-04 20:48 | パキスタン戒厳令の季節
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