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米流時評

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戒厳令と米国・後編 テロ戦争と民主化の皮肉な運命

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 ||| 後編 テロ戦争と民主化の皮肉な運命 |||
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ムシャラフ、独裁独裁を保つため中道派を切り反対派を弾圧摘発
米国「一刻も早く正常化を」「ムシャラフ以外の国民代表を探せ」


戒厳令と米国・後編 テロ戦争と民主化の皮肉な運命_d0123476_18552829.gifこの記事は戒厳令発令直後の3日土曜にニューズウィークのサイトに掲出された、政治評論家マイケル・ハーシュの時評です。当時は世界中のメディアが動揺を隠せず、軍事独裁の弾圧を傍観している状況でしたが、ニューズウィークは今回も真っ先に言論・報道の自由と基本的人権を守る立場から、臆面なくムシャラフの蛮行を断罪しました。時々刻々激動する事態でニュースウォッチに追われ、この記事に立ち戻って翻訳を完了したのが今日(11/21)。戒厳令から2週間以上経過したあとで読み返してみても、筆者の洞察による判断は正鵠を得ています。前後編通読されることを期待します。

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Dancing With the Dictator — Part 2
How Bush's tight relationship with Musharraf compromised the war on terror
By Michael Hirch | NEWSWEEK — Web Exclusive | Translation by ysbee
NOVEMBER 3, 2007 — Now Bhutto doesn't know whether she'll be appointed or arrested, Musharraf has completely de-legitimized himself in the eyes of the Pakistani public, and Washington has virtually no friends in a part of the world where Al Qaeda has established a new safe haven.


2007年11月3日 | マイケル・ハーシュ/ニューズウィーク特約 | 『米流時評』ysbee 訳
前号「戒厳令と米国・前編 民主化十字軍ブッシュのジレンマ」からの続き:
非常事態宣言が発令されるに及んで、ブットはもはや自分が連立政権の首相に指名されるのか、あるいは反対派として逮捕されるのか、皆目見当がつかなくなってきた。ムシャラフはもうパキスタンの一般大衆の目には、自らを完全に憲法違反の立場に追いやった暴君にしか映らなくなってしまった。さらに、アフガニスタンとの国境地帯がアルカイダの新天地として復活しているこの期に及んで、彼にとってはもはやブッシュ政権も、実質的に親身な盟友ではなくなってきている。

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NOVEMBER 5, 2007 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽園通信』デイリー版戒厳令と米国・後編 テロ戦争と民主化の皮肉な運命_f0127501_6213945.jpg
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 N E W S W E E K | S P E C I A L

戒厳令と米国・後編 「テロ戦争と民主化の皮肉な運命」
2007年11月3日 | By マイケル・ハーシュ/ニューズウィーク サイト独占掲載 | 『米流時評』ysbee 訳


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9. 'Pakistan's problem is dictatorship'
"I agree with [Musharraf] that we are facing a political crisis, but I believe the problem is dictatorship, I don't believe the solution is dictatorship," Bhutto told Sky News. "The extremists need a dictatorship, and dictatorship needs extremists."
「パキスタンの問題は軍事独裁体制」
「パキスタンが政治的危機に瀕しているという点ではムシャラフと同意見ですが、私が思うに軍事独裁制度が問題なのであって、今回のように戒厳令によって独裁体制を強行することは、現在パキスタンが抱えている問題に対して何の解決にもなりません。」ブットはグローバルなニュースメディア Sky News のインタビューにこう答えている。「イスラム過激派は自分たちが蜂起する対象となる独裁者を欲しているし、独裁体制はその弾圧の対象となる過激派を必要としているのです。」
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北部民族自治区の地方都市ケッタの州政府施設を鉄条網で包囲し、イスラム過激派の攻撃から守る警備兵

10. American spirit VS. dictatorship
Americans have always been uneasy about dancing with dictators. But in the age of terror such a policy can be very costly. Musharraf's method of maintaining his thin legitimacy is an example of just how costly.
アメリカ建国主義と独裁者
特にアメリカ人にとってはいつの時代でも、国際的舞台で独裁者と一緒にステップを踏む立場をとった場合、そのこと自体が合衆国の建国精神に反するために、どうしても居心地の悪さを感じずにはいられない。しかもこの「テロの時代」にあっては、そのような外交方針を貫くには、かなりの代償を要求されても仕方がない。大統領と将軍を兼任するについての彼の合法性は、紙切れ1枚ほどの薄弱なものだが、ムシャラフが在位を継続するためにとった方策は、米国がかねがね懸念してきたとんでもない代償の例の最たるものである。
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2006年ワシントンDCのホワイトハウスを訪問し、テロ戦争での共闘路線を再度確認した際のムシャラフとブッシュ

11. Costly method to keep dictatorship
In order to keep himself in power, Musharraf has cut deals with the Mutahhida Majlis Amal (MMA, or United Action Council), a coalition of Islamic parties, and barred the parties of his main secular political rivals, former prime ministers Bhutto and Sharif.
独裁を保つため中道穏健派を切ったムシャラフ
軍事と政治をひとつに統べる絶対的権力の座を保持するために、ムシャラフはイスラム主義者政党の大連合であるMMA/ムタヒダ・マジリス・アマル(イスラム共闘連合評議会)と手を打って、彼にとっての最大の強敵である大衆人気の高い中道穏健派の政党を、選挙から排除するという暴挙に出た。
この穏健派政党を率いるのが、元首相であるベナジール・ブットであり、ムシャラフの無血クーデターで権力の座を追われた前首相ナワズ・シャリフである。
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左:パキスタン人民党PPP党首でドバイの亡命生活から先月パキスタンへ帰国したベナジール・ブット元首相
中:01年のクーデターで首相の座を追われサウジアラビアへ亡命していたシャリフ前首相 今後の動きに注目
右:元々クーデターで政権を奪取し大統領と軍司令官を兼任する独裁体制のムシャラフ 今回は逆クーデター?


12. 'Pakistan: Between Mosque and Military'
This was an attempt to "create the illusion that radical Islamist groups were gaining power through democratic means, thus minimizing the prospect that the international community—especially the United States while Pakistan offers support in the war against al Qaeda—would press for democratic reform," scholar Husain Haqqani wrote in his recent book, "Pakistan: Between Mosque and Military."
『パキスタン:モスクと軍隊の狭間で』
ムシャラフが法規を改定して企んだ目論見は、次のような分析で鋭く指摘されている。
「将軍は、あたかもイスラム過激派グループが民主化政策を逆利用して権力拡大を図ろうとしているかのように見せかけた。パキスタンからアルカイダとのテロ戦争への支援を得ている米国を筆頭とする国際社会。イラクやアフガニスタン、パキスタンで、民主主義によるイスラム国家の社会改革を推し進めようとしている自由主義国家の連合は、こうした民主主義の逆効果を喧伝されたために『負の幻想』として彼らの理想がしぼんでいくのを目の当たりにする結果となった。」
これは、社会学者フサイン・ハッカニ氏が彼の近著『パキスタン:モスクと僧院の狭間で』の中で、パキスタンの民主化の現状について解析した深い洞察の一文である。
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パキスタン軍司令部は英国の植民地時代から軍都としての歴史を誇るラワルピンジにあり、アジア有数の軍隊を擁する

13. Islamists may no longer be controllable
But because these Islamist groups have continued to grow in power and influence, they may no longer be controllable. The monster that Musharraf cynically nurtured to keep himself in office is now threatening him personally: Al Qaeda elements that have found increasing support in friendly areas of Pakistan controlled by Islamists have tried to assassinate him twice.
もはや抑えの効かないイスラム強硬派
このようにして、民主主義改革の中で「思想・信仰・言論の自由」を確保できたために、当初の目論見とは逆方向の展開でイスラム強硬派がその権力と影響力を拡大し続けた結果、彼らを押さえつけるのはもはや無理になってしまったのかもしれない。
ムシャラフが自らの権力の座を確保するために育ててきた「二律背反の怪物」、即ち民主化の結果としてのイスラム過激派の台頭が、今や逆に彼個人を脅かすまでに巨大に膨張してしまった。イスラム原理主義者によって統治されている地域(北ワジリスタン州を始めとする北西部国境地帯パシュトゥン族自治区)で、ますます居心地が良くなり増長し続けているアルカイダ分子が、二度もムシャラフを暗殺しようと企んで失敗したのがその良い例だろう。
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パンジャブ州の州都ラホーレでもムシャラフの傀儡政治に反対するイスラム主義の中道派が急激に勢力を増している

14. Every American's worst nightmare
Some U.S. officials now fear that this nuclear-armed nation is teetering on the verge of chaos, and the result could be every American's worst nightmare: that nuclear material or knowhow, or God forbid, a bomb, falls into the hands of terrorists.
米国にとって最悪の悪夢
米国政府内部の関係者は、今やこの核兵器保有の国家が、権力闘争の手段としての戒厳令下、社会混乱の渦中でばらばらになってしまう一歩手前の状況にさしかかった事実に、従来の他国の紛争とは比較にならないほどの脅威を感じている。国家崩壊の結論として待っているのは、アメリカ人の誰もが怖れる最悪の悪夢だからだ。核兵器の材料、製造法。もしくは最悪の場合原子爆弾そのものが、アメリカを宿敵と狙うテロリストの手中に収まってしまう、という最悪の筋書きだ。
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7月にイスラマバードで起きた「赤のモスクの反乱」では、辺境の自治区だけでなく首都圏にも過激派が侵入した事実を示す。この反乱鎮圧の際に軍隊を出動して弾圧し200名以上の学生と叛徒が死亡した結果、一般国民の間でもムシャラフの軍事独裁体制に対する批判がいっそう強まった。

15. 'Move from a Musharraf policy to a Pakistan policy'
"If you were to look around the world for where Al Qaeda is going to find its bomb, it's right in their backyard," says Bruce Riedel, the former senior director for South Asia on the National Security Council.
アルカイダと核の恐怖のシナリオ
「もしも、アルカイダが原爆を手に入れようとしている場所が世界のどこかを探そうとすれば、それはまさしく彼らの本拠地の裏庭(パキスタン)以外にない」こう推察するのは、米国のNSC/国家防衛評議会の元南アジア部長だったブルース・リーデル氏である。
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9月に開催されたケッタ州でのイスラム教強硬派政治集会にも多数の住民が参加 赤のモスクで下した武力弾圧への反撥は根強い
パキスタンでは一般的に「ムシャラフ政権=米国追随主義=反イスラム=反パキスタン」という図式が成立している


16. 'Move from a Musharraf policy to a Pakistan policy'
As U.S. Sen. Joseph Biden (D-Del.) put it on Saturday: "General Musharraf's decision to declare a state of emergency and suspend the constitution underscores the need for the United States to move from a Musharraf policy to a Pakistan policy."
バイデン「ムシャラフから国民へ外交シフト」
また上院の長老ジョー・バイデン議員(民主党デラウェア選出)も、パキスタン問題について3日土曜の段階で、早くもこう判断を下している。「ムシャラフ将軍を国家非常事態宣言に走らせ、民主的憲法を一時的に放棄させた決断は、米国にとってムシャラフ外交からパキスタン国民代表との直接外交へと、外交方針を転換する必要性を強調するものである。」
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米国のムシャラフ離れを説く、上院外交委員会議長で外交問題の超ベテラン、ジョ−・バイデン民主党上院議員

17. The time to make a new friend for U.S.
President Bush should personally make clear to General Musharraf the risks to U.S.-Pakistani relations if he does not restore the constitution, permit free and fair elections and take off his uniform as promised. Then, we have to build a new relationship with the Pakistani people." Indeed, it may be time to make new friends in Pakistan—if we can find them.
パキスタンの新しい盟友
こうした政府内の不安と動揺を考慮すれば、ブッシュ大統領も将軍ムシャラフに対して、「もしも民主憲法遵守を回復して公明正大な選挙を実施し、約束通りに軍総司令官の座を辞任しなければ、米国とパキスタンの関係は危機を迎える。さもなければ、米国は(お前以外の民主的な)パキスタン国民と新しい友好関係を直接つくるぞ」という厳しい現実をはっきりと伝えるべきだろう。
しかし実のところ、現在は米国にとってまさしく、パキスタンで新しい友をつくるべき時期がきたのかも知れない。もっとも、もしふさわしい人物を見つけることができれば、の話だが。
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【米国時間 2007年11月5日 訳『米流時評』ysbee】

»» 『米流時評』緊急特集 「パキスタン・戒厳令の季節」
第1章 「ダークスーツ革命」  司法権の独立を守るため立ち上がった弁護士たち
第2章 「ホワイトスカーフ革命」 民主主義のためブット女史を支持する女性たち
第3章 「アイボリータワー革命」 独裁弾圧に抗議してカーンを支援する学生たち

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by ysbee-2 | 2007-11-05 10:12 | パキスタン戒厳令の季節
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