米流時評

beiryu2.exblog.jp ブログトップ

レバノン政治危機・大統領不在で非常事態宣言

f0127501_128435.gif
    ||| 戒厳令の季節・レバノン編 |||
d0123476_1943137.jpg
 権力の真空地帯出現 政府軍の管理下で国家非常事態宣言発令
 レバノンのラフード大統領、後継者不在のまま任期終了し降壇


d0123476_18552829.gifまたもや戒厳令です。9月のビルマでの「軍事独裁政権・血の粛清」に引き続き、今月3日にパキスタンのムシャラフ大統領が発令して、国家的弾圧の端緒となった「独裁者の悪弊」。国家非常事態を宣言すれば、一時的に憲法を保留して軍事的制圧が可能な治安体制を優先できるため、政敵や反対派の基本的人権を省みる事なく弾圧できる、という「全体主義的警察国家」の最悪のパターンが現出します。
d0123476_195178.jpg
パキスタンの一連のニュースは「戒厳令の季節」というタイトルの元に3週間特集しましたが、スタートしてたった4日後に、今度はコーカサス地方の小国グルジア共和国でも戒厳令。ここもまた、ブッシュの息のかかった親米派大統領サーカシヴィリの不祥事が国民の反感を買い、国会前の広場に数十万人の市民が連日連夜泊まり込みで、平和的な抗議のSit-inを継続。その結果政権側では最終的に、群衆弾圧目的の体制的裏付けでしかない万事休す的な処置として「国家非常事態宣言」を発し、その後はお決まりの暴力的弾圧と摘発の嵐。(記事は用意してありましたが、パキスタンの動乱の勢いに「負けて」保留にしてあります。来週遅ればせながら掲載予定。)
d0123476_196489.jpg
また今週の週末には以前から危惧されていたレバノンの政界の分裂が深刻化し、後継者が決まらないままラフード大統領が任期満了で辞任。その後の権力の空白期間にヒズボラ勢力の蜂起などを怖れた大統領は、国家非常事態を宣言して治安の全権を軍司令部の手中に預けたまま降壇しました。しかしどの国の場合でも、戒厳令の厳戒態勢が弾圧体制にリンクして逆に騒擾を引き起す結果を招いており、今回のレバノンでの戒厳令でも、とりわけヒズボラという最強ゲリラが国会内部にさえ収まっている状況なので、一触即発で暗殺かテロか、何が起るか予断を許さない緊迫の政情です。まずは1日遅れですが、事実関係の把握をニュース速報から。

【米国時間 2007年11月24日 『米流時評』ysbee】


__________________________________________________________________
NOVEMBER 24, 2007 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽園通信』デイリー版f0127501_6213945.jpg
d0123476_197311.gif


 A s s o c i a t e d P r e s s | L E B A N O N

レバノン大統領任期終了 後継者なきまま国家非常事態宣言発令
米国時間 2007年11月23日 午前4時27分 | ベイルート発・AP通信 | 『米流時評』ysbee 訳


d0123476_19101110.jpg
Lebanon Leader: Nation in ‘State of Emergency’
President leaves post with no chosen successor, tells army to keep order

Associated Press—LEBANON | Translation by ysbeed0123476_1991642.jpg
NOVEMBER 23, 2007 EST | BEIRUT, Lebanon — Lebanon's political tumult intensified as President Emile Lahoud said the country is in a "state of emergency" and handed security powers to the army before he left office Friday without a successor. The rival, pro-Western Cabinet rejected the declaration.


▶首都ベイルート中央部のモスクのある広場にもレバノン政府軍のタンクが出動し、24時間の警戒体制にあたっている

2007年11月23日 |レバノン・ベイルート発
23日金曜をもって任期を終え、後任者の決まらないまま官邸を去るレバノンのエミール・ラフード大統領は、国家治安の全権を政府軍指導者に託し、レバノン全土を対象に「国家非常事態宣言」を発令した。しかし彼の政敵である親米派の内閣は、この戒厳令発効を拒絶している。

1. Pro-Western VS. Pro-Syriad0123476_9344743.jpg
Lahoud's final announcement created new confusion in an already unsettled situation, which many Lebanese fear could explode into violence between supporters of Prime Minister Fuad Saniora's Western-backed government and the pro-Syria opposition led by the Shiite militant group Hezbollah. The departure of Lahoud, a staunch ally of the Syrian regime during nine years in office, was a long-sought goal of the government installed by parliament's anti-Syria majority, which has been trying to put one of its own in the presidency.
▶親シリア派の代表エミール・ラフード大統領 2期9年の任期を終え官邸を去る

親米派与党対シリア派野党の対立する政局d0123476_9414749.jpg
ラフード大統領在位期間の最後の宣言は、すでに不安定な様相を示していたレバノンの政局に、さらに新たな混乱をもたらした。今日までのレバノンの政情は、西欧諸国が背後に控えるフアド・シニオラ首相支持派と、シーア派の軍団ヒズボラを筆頭とする親シリア派の野党との間で、対立が激化して武力衝突を引き起すのではないかと、多くのレバノン国民が危惧していた状況である。
したがって、強固なシリア派として9年間国家元首を務めたラフード氏が大統領の座を去ることは、とりもなおさず議会内の反シリア派与党が長らく待ち望んでいた、連立する元首の座を親欧米政権で独占するという、完全な国家覇権の目標に一歩近づいたことになる。彼らは首相だけでなく大統領も、反シリア陣営から立てようと狙っていたのであるから。
▶レバノンの親米・親ヨーロッパ派内閣の筆頭シニオラ首相

2. Nation into dangerous, unknown territory
Hezbollah and other opposition groups have blocked legislators from electing a new president by boycotting ballot sessions, leaving parliament without the required quorum. The fight has put Lebanon into dangerous, unknown territory: Both sides are locked in bitter recriminations, accusing the other of breaking the constitution, and they are nowhere near a compromise on a candidate to become head of state.
大統領不在で未知の危険な領域へ
ヒズボラを始めとする野党のシリア派各党は、国会での議会投票をボイコットして新しい大統領が選出されるのを阻止した。この結果、国会は必要とされる最小限の議員の出席数に充たず、流会となった。レバノンの政局における両派の対立抗争によって、この国はいまだかつて経験した事のない、危険な領域へと踏み込んでしまったようだ。
対立する両陣営ともお互いに双方の戦法を「憲法違反だ」とののしりあい、今回の危機を相手のせいにしようと汲々としている。この調子では、国家元首の候補者を指名する上で意見の一致が見られることは当分ありそうにない。
d0123476_19105830.jpg
11月23日のラフード大統領の任期満了までに立候補したが決定票を得られなかった、ドングリの背比べのレバノン次期大統領選候補者:上列左から ナシブ・ラフード/閣僚のひとりミシェル・アウーン/同じく閣僚ブツロス・アルブ/司法相シャルル・リツク/下列左から 閣僚ロベール・ガネム/前財務通商相ダミアノス・カタール/前閣僚ミシェル・エッデ/アラブ銀行連盟・レバノン銀行協会両方の会長ヨセフ・タラベイの各氏

3. Military generals remain neutral
The army command refused to comment on the developments. The military, under its widely respected chief, Gen. Michel Suleiman, has sought to remain neutral in the political chaos. The capital was calm, and all sides were vowing to avoid violence.
政治危機の渦中で中立を保つ軍司令部
一方、レバノン政府軍の首脳部は、今回の緊急な政局の危機に関しては沈黙を守っている。レバノン政府軍は軍部全体が、広く国民にも敬愛されるミシェル・シュリーマン将軍の指揮下にあり、今回の混乱の政局からは一歩引いて中立を保っている。どの党派に属する者も武力衝突は避けたいと表明しているせいもあり、首都バアブダは平穏を保っている。
d0123476_19144426.jpg
任期切れ直前の22日にラフード大統領官邸で軍首脳部と記念写真 左から2人目がシュリーマン政府軍総司令官

4. Military in place against aggressors from both sides
Even before the president’s vague announcement, the military was in place to guard against the two sides’ supporters taking the conflict to the streets. On alert for days, hundreds of soldiers stood with tanks, armored personnel carriers and jeeps in the area around the downtown parliament building as well as on roads leading into Beirut.
不穏分子はどちら側でも摘発の軍の警備体制
レバノン政府軍の治安部隊は、ラフード大統領が非常事態を宣言する以前からベイルート市内要所の警備について、市街地での武力衝突に加わる者はどちらの陣営であれ検挙する取締体制を敷いていた。戒厳令の敷かれる数日前から、バアブダ市中心部の国会周辺やベイルート市内へ通じる主要道路には、数百人の軍隊がタンクや装甲車、軍用ジープの傍らに立って、すでに警戒態勢をとっていた。
d0123476_12361359.jpg

5. Lahoud: Seniora's government 'unconstitutional'
Lahoud stepped down when his term expired at midnight, smiling as he reviewed an honor guard on the way out of the presidential palace in the Beirut suburb of Baabda. “My conscience is clear,” he told reporters. “Lebanon is still well.”
d0123476_19152539.jpgBefore getting into his car to go, he blasted Saniora’s government, calling it “illegitimate and unconstitutional. They know that, even if Bush said otherwise.” In the capital, some 2,000 government supporters gathered in a Sunni Muslim neighborhood cheered his departure, setting off fireworks, beating drums and shouting, “Lahoud Out!”

ラフード「シニオラ政権は憲法に反する」
ラフードは23日真夜中に大統領の任期が切れた時刻に退位を果たしたが、ベイルート郊外のバアブダ地区にある大統領官邸から最後の退出に向かう時点で、儀仗兵の閲兵を行なって退任の儀式を完了した。
「良心に誓って言うが、レバノンはいまだに健全だ」と、辞任にあたっての感想を記者団に述べた。しかし官邸から去る車に乗り込む際には、シニオラ首相の内閣について次のように不満をぶちまけた。「シニオラ内閣は非合法で憲法に反する。たとえブッシュがそれを否定しても、彼らはそのことをちゃんと承知している。」

6. Stepping down without successor
His departure left the presidency vacant after parliament failed again to convene earlier Friday to vote on a successor. Lahoud’s vaguely worded final statement, two hours before midnight, wasn’t a formal declaration of a state of emergency, but he enflamed tempers with his reference to a “state of emergency” in Lebanon. “Because a state of emergency exists all over the land as of Nov. 24, 2007, the army is instructed to preserve security all over the Lebanese territory,” the presidential spokesman, Rafik Shalala, said.
後継者なしの降壇で軍隊に管理一任
ラフードの出立は、レバノンの大統領の地位を空白のままに残した。23日金曜朝早くに行なわれた最後の後継者指名投票でも、またもや結論を出すにはいたらなかった。ラフードのあいまいな用語で埋まった非常事態宣言は、期限の切れる真夜中までわずか2時間というぎりぎりの土壇場で発令されたものだが、戒厳令としての公式宣言ではなく、辞任の声明文の中にレバノン国内にすでに敷かれている「非常事態」体制をもち出すことで、シニオラ内閣への憤懣を吐露した結果となった。
「2007年11月24日の時点で、国内全土に非常事態が存在しているために、政府軍はレバノン領土内全域で警戒態勢を維持するよう指示されました。」これが、大統領広報官ラフィク・シャララ氏から発表された声明である。
»» 次号 レバノン戒厳令-2「空転する政局、空白の大統領の座」へ続く
d0123476_10222930.jpg
【米国時間 2007年11月24日 訳『米流時評』ysbee】

d0123476_16472783.gif記事リンク http://beiryu2.exblog.jp/6627519
TBリンク http://beiryu2.exblog.jp/tb/6627519

__________________________________________________________________
いつもご愛読いただきまして大変ありがとうございます。ランキングのクリックがブログの活力です、よろしく!

f0127501_12134737.gifブログ村の国際政治部門で1位をキープ。みなさまのおかげです!
d0123476_319955.gif社会経済ニュースでただ今11〜14位。応援よろしくお願いします!
d0123476_10141436.gifニュース部門でトップです。みなさまのクリックに感謝します!
d0123476_9295514.gif
||| 『米流時評』 特集シリーズ |||
次世代冷戦時代  | グローバルウォー | イラク戦争 | 中東のパワーラビリンス | テロとスパイ陰謀
ユーラシアの回廊 | プーチンのロシア | ブッシュと米国政治 | サルコジのフランス | EUとNATO
アルカイダ2.0 核のテロ | パキスタン戒厳令の季節 | アフガン・タリバンの復活 | ビルマの赤い川革命
ダイハード中国  |  欧米の見る日本  | トンデモ北朝鮮  | 大事故・大災害  | 世界不思議探検
グローバルビジネス | アップル vs MS  | ニュースで一服

[PR]
by ysbee-2 | 2007-11-24 18:48 | 中東のパワーラビリンス
line

世界の動きがよくわかる!激動する国際情勢を、欧米メディアでディープに読む…世界の「今」と真実探求に関心ある知的冒険者へ送るグローバル情報満載ブログ


by ysbee-2
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31