サクラメントの秘跡 マリア・シュライバーの選択
今回の大統領選は驚きの連続である。民主党の長老上院議員テッド・ケネディが、従来の流れにさからってクリントン夫人ではなくバラク・オバマに支持表明をしたのは、実にうれしい驚きであった。その輝きをさらに増したのが、故ジョン・F・ケネディ大統領の遺児キャロライン・ケネディの支持表明。こちらはJFKと比較できるような理想的候補だから、という素晴らしいお墨付きである。
メディアの報道に先立つ1月28日にテッド・ケネディから届いたメール。04年のケリーvsブッシュ大統領選の時から私もケネディ支援グループの一員なので、メンバーにはいつも事あるたびにお知らせが届く。今回の内容は単刀直入。彼もまたオバマに感化されたと言う。
「Barack Obama inspires me.....It's that simple. Through Barack, I believe we will move beyond the politics of fear and personal destruction and unite our country with the politics of common purpose.」
まだその興奮も醒めやらぬ日曜の朝、今度はCNNのニュースでマリア・シュライバーがEndorse=支持表明というニュースが流れた。Wow!である。これはすごい!
シュライバーは、故ケネディ大統領、故ロバート・ケネディ国防長官の妹で、エドワード(テッド)・ケネディ現上院議員の姉にあたるユニス・シュライバーの娘。ケネディ家の生粋のヤンキー魂を象徴するような、知性と行動力に恵まれた女性である。容貌もご覧のとおりの知的美人で、長い事NBCニュースのレポーター/論説委員をやっていた関係で、アメリカ人一般にも民主党・共和党の別なく一目置かれ、敬愛されている。
しかし今回の支持表明で一番驚いたのは、彼女の特殊な立場から、という一点であろう。米国の政界やマスコミ界に興味のある方ならご存知のように、彼女はカリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガー夫人である。シュワルツェネッガーは、先週水曜にジョン・マケイン候補に支持表明をしたばかりで、熱心なレーガンファンで知られる共和党の知事である。その夫人が、まったく反対の陣営、民主党の対立候補に対して支援を表明したのだから、驚きを通り越して関係者にはまさにショックだろう。彼女がたとえケネディ家の一員であっても。
たしかにオバマの大統領候補としての資質には、共和党寄りの評論家も誉めずにはいられない、人間としての品と格がある。しかし、支持表明というスタンプを押すというのは、対立候補を敵に回すことを意味する。つまり、彼女は「マケインなんか支持しませんよ」とはっきり断言したのだ。今考えてみると、水曜の共和党討論会の会場では、シュワ氏は最前列に座していたが、そう言えば夫人同伴ではなかった。その時からすでにシュライバーは、オバマへの支持を心に決めていたのだろうか。彼女の決心とその動機やいかに・・・
支持表明を聴く限りでは、オバマの「感動力」が彼女にもしっかり伝播したように思える。彼の演説を聞き、彼の周囲のエピソードを読むと、みなオバマ党になってしまう。共和党の人間ですら。初めに言葉ありき。そして言葉の力に打たれた者はみな、明日への希望と言う光明を見出したかのように、クリスマスの朝のこどものような輝く微笑みを浮かべて、幸せの帰路に着き言葉を広める .... YES, WE CAN .... YES, WE CAN ....
なんだいったいこれは? まるで救世主ではないか! 米国政界の長老テッド・ケネディまでが「He's the ONE」と叫ぶ。キリストを見いだした洗礼者ヨハネさながらだ。嘘だと思うならYou-Tubeなりオバマ本人のサイトのビデオで、ぜひ直接確かめていただきたい。一驚にあたいする。
その中でジョン・エドワーズは、当初から P to P のカジュアルなメールで親しみやすさを演出し女性票を集めてきたように思える。特にエドワーズ夫人エリザベスのアピールは、隠しようのない人の良さと選挙に賭ける情熱が相まって、選挙戦における内助の功を果たした好例だと思える。ひるがえってヒラリー側でも、エリザベスの主婦に受ける戦法を取り入れようと、急遽とってつけたような「レシピ」のページを加えたりしたが、いかんせん物真似の手法がありありで、ますます嫌われたきらいがある。彼女のスピーチ、ニュースレター、すべてが嘘くさいのである。要するに選挙戦のコンセプトとなる「魂」がないまま、うつろな借り物の言葉がこだましているように受けとれた。
共和党のミット・ロムニーも、初戦アイオワでオバマが圧勝した直後、すぐにオバマのスローガン「CHANGE」をそのまま拝借して、トミー・ヒルフィガー風のネオ・アメリカニズムデザインのプラカードに掲げた。ロムニーの実践ビジネスの応用力は大したものである。毎日のニュースや世論の流れに対応して公約までが連日豹変する。そこまでやるかと思えるほどで、民の声に率直に耳を傾ける姿勢は、一種偉いと思う。ロムニーの5人の息子が選挙参謀になっているのも、そういった変わり身の早さ、若い世代にも受け入れられるカジュアルな選挙マーケティングの要因だろう。
それともうひとつは、うっかり老兵マケインなぞが当選した暁には、テロ戦争は彼の公約通り百年戦争と化し、米国は滅亡への道をひた走る。彼らミレニアム世代の若者は、すでに何年も前から「徴兵制の復活」を真剣に怖れているのだ。米国のメジャーメディアではあまり取り上げないが、ブログ界ではこの恐怖感が原動力となって反戦運動や平和運動(両者のニュアンスは微妙に違う)今回の予備選からの投票参加運動「GO VOTE」に結びついているようだ。
マケインの暗い側面に関しては後日に回し、本命のL.A.タイムズ「マリア・シュライバーがオバマを支持表明」の記事を、次のエントリーでお読みください。
【米国時間 2008年2月3日『米流時評』ysbee】
»» 次号「特報!シュワ夫人マリア・シュライバー、オバマに支持表明」本文記事へ
記事リンク http://beiryu2.exblog.jp/7171156
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