速報!米中央軍ファロン総司令官、突然の辞任で噂されるイラン攻撃
エスクワイア誌でブッシュ・チェニーの軍事戦略ゴールに反対を表明
水面下の大きな動きが、ついに表面化した。CENTCOM/米中央軍指令本部の総司令官ウィリアム・ファロン提督は、以前からブッシュ政権のごり押しするイラン攻撃計画に対して強く反対してきたが、雑誌『エスクワイア』のインタビューで、ブッシュ大統領の軍事政策に対して不本意であり、両者の間で苦々しい反目があったような印象を与える本音を吐いていた。
この雑誌記事が公開されたことで政権から当然圧力がかかり、結果的にそれに屈して辞任に追い込まれたのではないかと推測される。軍人の良心を駆使して、イラン侵攻へのブレーキとなっていたファロン司令官。彼の辞任自体の事実認証の記事は、日本のメディアにも当然掲載されると思うが、軍部の重鎮として彼の存在を失う事によって、肝心のイラン侵攻計画の「生き死に」がどうなるのかが一番気がかりである。(もちろん、侵略の計画は一刻も早く死に絶えてほしいのだが。)
私は米国在住者なので、米国政治を軸として見た国際時事の記事を毎日お届けしているが、軍事はまったくの素人である。通常のニュース記事では触れていない「イラン攻撃の可能性への影響」など一歩も二歩もつっこんだ情報をご紹介するために、今回は蛇の道は蛇でニュース記事ではなく、NBCニュースペンタゴン担当ベテランデスク、ジム・ミクラスズースキーのニュースブログ『フィールド・ファイル』からご紹介する。実際のペンタゴンの記者発表よりも5時間も早かった。
しつこいようですが繰り返します。この辞任は、ブッシュ政権の暴走する中東覇権戦略の、最後のブレーキの軸が折れたことを意味しており、今後のペンタゴンと国務省の動きに注目です。
【米国時間 2008年3月11日 『米流時評』ysbee 記】
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MARCH 11, 2008 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽園通信 』デイリー版
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米中央軍ファロン総指令官、突然の辞任で噂されるイラン攻撃
米国時間 2008年3月11日午前11時25分 | NBC ニュース・ペンタゴン発 | 訳『米流時評』ysbee
Adm. Fallon had run Central Command, called ‘difficult to replace’
MARCH 11, 2008 | Jim Miklaszewski — NBC News/Pentagon Chief | Translation by ysbee
WASHINGTON — UPDATE: Defense Secretary Robert 'Bob' Gates announced Tuesday that Fallon is stepping down as head of U.S. Central Command. He said Fallon took the decision because he felt the statements attributed to him created a misperception about his goals and those of President Bush.
ジム・ミクロスズースキー/ペンタゴン支局長
11日火曜、国防総省のロバート(ボブ)・ゲイツ長官は、ウィリアム・ファロン提督がCENTCOM=米中央軍指令本部の総指揮官の職を辞任する予定であると記者発表した。辞任の理由は、総司令官とブッシュ大統領との間で米国の軍事戦略的目標に確執があるような言動で、外部に対して誤解を招く状況をつくり出した責任をとるため、と表明された。
2. Great bait for the Pentagon sharks
The Pentagon sharks are circling CENTCOM Commander Adm. William "Fox" Fallon for a magazine interview in which he appears to openly criticize President Bush on the administration's Iran policy. The very public comments raised speculation Fallon would either volunteer or be forced to resign.
ペンタゴンのサメの餌食
常にトップ高官の足をひっぱろうと虎視眈々とねらうペンタゴンのサメたちは、CENTCOMの総司令官ウィリアム・フォックス・ファロン提督の周囲にもおり、先月提督が雑誌のインタビューに答えて、ブッシュ政権のイラク政策に関してブッシュ大統領を公然と批判したように受けとれる意見を公にした件を攻撃していた。一般雑誌上での正面きっての意見表明が公開されたため「ファロンはいずれ辞任するか止めさせられるか、どちらかの立場を取る覚悟だろう」という憶測が、関係者の間で飛び交っていた。
3. Fallon's opposition against Bush’s iran strategy
The current issue of Esquire Magazine portrays Fallon as the one person in the military or Pentagon standing between the White House and war with Iran. The article credits Fallon with "brazenly challenging his commander in chief" over a possible war with Iran, which Fallon called an "ill-advised action," and implies Fallon would resign rather than go to war against Iran.
ブッシュ政権のイラン戦略に反対の姿勢
雑誌『エスクワイア・マガジン』の最新号では、米軍もしくはペンタゴンの内部では、ファロンは「ホワイトハウスがイランとの戦争に踏み込むのを阻止するために立ちはだかる存在」として描かれていた。その記事では、イランとの戦争の可能性に関して「総司令官(ブッシュに)果敢に挑戦」という見出しがファロンにつけられていた。また、ブッシュ政権のイラン攻撃案を「間違った行動」と断定するほど反対しているので、もし米国がイランに対して攻撃に踏み込むくらいなら、ファロンはむしろいさぎよく辞職するだろう、とも書かれていた。
4. 'Serves at the pleasure of the president'
Asked on Monday whether Defense Secretary Robert Gates still has full confidence in Fallon, Pentagon Press Secretary Geoff Morrell would only say that Fallon "still enjoys a working— a good working relationship with the Secretary of Defense." Although reporters did not specifically ask about a possible Fallon resignation, Morrell freely offered, "Admiral Fallon serves at the pleasure of the president."
「大統領のお気に召すまま」
昨日月曜の段階でペンタゴン付きの記者がファロン司令官の進退に関して質問した際、ロバート・ゲイツ国防長官はファロンの現状維持に対して完全に信頼をおいているように見えた。さらには、ペンタゴンのジェフ・モレル広報官も「ファロン司令官はいまだ健在ですよ。国防長官との間もうまくいってますし」と補足していた。もっとも、記者団は「ファロン司令官の辞任の可能性」に的をしぼって質問した訳ではなかったので、モレル広報官も漠然と「ファロン提督は大統領の機嫌を損なうことなく従事しております」となりゆきで答えたにすぎなかった。
5. No more get away
文字数制限のため英文省略
体制の思惑に政治的に屈服
そういった回答はファロン司令官の退却をずばりと指摘するものではなかったが、彼が政治的に降参するまでそう長くはかからなかった。大胆な直言で鳴らしたCENTCOMの司令官には、官僚主義のサメがいまだにつきまとっていたからだ。「いったい何回こんな災厄を切り抜けられると思ってるのかね?」ファロンがペンタゴンを止むなく去る直前に、国防総省の長老高官のひとりがこう訊ねたそうである。辞任の理由は、イランに対する反論であったかも知れない。その意見は、実はゲイツ長官も他の数多くの国防総省の高官も、図らずもファロンと意見を同じくする立場ではあったのだが。
6. Most military leaders against 'strike on Iran'
文字数制限のため英文省略
ペンタゴントップの高官は「イラン攻撃」に反対
ゲイツ長官は「彼自身もイランとの戦争に対しては反対である」という最近の心境を、公私両面で明言してきた。米国三軍連合軍幕僚長のマイク・ミューレン海軍提督もまた、イラン戦争の考えには反対である。実際には、ペンタゴンデスクの私(ミクラスズースキー)自身が直接話した国防総省長老高官のそれぞれが、「イランに対して軍事攻撃をかける案」については、反対した。なぜなら、ある高官が思わずもらしたように、ひとえに次の一点が問題になるからである。「爆撃したとして、そのあとはどうするんだね?」
7. It's the "aftermath, stupid"
While the U.S. military does have the usual contingency plans for robust airstrikes against Iranian nuclear and military targets, it's the "aftermath, stupid." It’s the potential military response from Iran in the region and repercussions in global oil markets that are incalculable. In addition, military officials dispute the premise of the story that the White House is pressuring the military to go to war with Iran. "Not true," said a senior military official, despite the anti-Iran drumbeat from Vice President Dick Cheney.
最大の問題はイラン核施設爆撃後の戦後処理
米軍はイランの核施設や軍事ターゲットに対して激しい空爆を実施するのが目的の、通常の実戦想定プランはもちろん用意しているが、その際の一番の問題が「戦後処理」であるのは馬鹿でも承知である。イランから繰り出される(核ミサイル・化学兵器を含む)最悪の軍事的反撃が、中東全域に及ぼす影響も想定しなければならない。また、イランは中東最大の石油産出国であるため、グローバルな石油市場での想像を絶する暴騰も当然考えられる。
そもそもの話が「ホワイトハウスは軍部に対してイランとの戦争に出陣するようけしかけている」という風説に対して、軍部高官は一様に反論する立場をとる。ディック・チェニー副大統領がなにかにつけてイラン攻撃を鼓舞するという実態があるにもかかわらず、ペンタゴン長老の一高官は(ホワイトハウスからペンタゴンへの圧力について)こう断言する。「それは真実ではない。」
8. Gates convincing Gulf state Arab allies
In fact, during a conference in Bahrain last December, Gates had to convince Gulf state Arab allies that the United States was not going soft on Iran, because from their vantage point it appeared the Bush administration was backing away from its tough stand against Iran. But even then, Gates was pushing for a new Gulf state military alliance, along with the U.S. to establish a coordinated regional strategic defense against Iran, not attack it. As always, the U.S. would never take the "military option" off the table in case conditions should change and Iran posed a threat to the U.S. or its allies in the region.
バーレーン湾岸会議でアラブ友好国を説得
実際のところ、昨年12月開催されたバーレーンサミットで、ゲイツ国防長官は親米派の湾岸アラブ諸国に対して「米国はイランに対して決して手をゆるめたわけではない」ことを強調した。なぜならアラブ諸国の勝手な観点からすると、ブッシュ政権はイランに対する(経済封鎖などの)強硬な立場から一歩引いたように受け止められたためである。しかしその時点でさえ、ゲイツ長官は新規の湾岸諸国の友軍的な結束を推進した。しかもその目的は、あくまで米国の対イラン戦略上での中東全域の統制を確立するためであって、イラン攻撃が目的ではないと強調した。
しかしいついかなる時も、米国は常に変化する状況に備えて「軍事攻撃の選択肢」を決して手元から離さないのも事実である。特に中東においては、イランが親米派の湾岸諸国と駐留米軍に対して威嚇をかけてくる場合には、なおさらである。
9. U.S. never take off the 'military option'
Sources in the Pentagon said Fallon was worried the White House would perceive the magazine piece as a challenge to the president's authority, and insisted that couldn't be further from the truth. At the same time the sources said Fallon "doesn't sound like someone considering resignation."
常に軍事攻撃態勢を選択肢に
ペンタゴンの消息筋から聞いたところによると、ファロン司令官は「ホワイトハウスが雑誌に載ってしまった記事内容を、大統領の権威に対する(ファロンもしくは軍部からの)挑戦と受けとらないか」と心配していたそうである。同時にその高官は、その実は「そのような解釈は事実とははるかに隔たっている訳でもない」と認め、「彼は何があっても、自分から辞任を考えるような男ではない」とも漏らした。
10. Public debate between two commanders
In his own defense, Fallon told the Washington Post that the Esquire article was "poison pen stuff...disrespectful and ugly." While any policy differences, real or perceived, between top U.S. military commanders and the civilian leadership are not necessarily unusual, it's rare when those commanders take the debate so public.
前代未聞の大統領と軍事司令官の論争
ファロン自身は自らの釈明として、ワシントンポスト紙の取材に次のように答えている。「エスクワイア誌の記事は、毒を含んだペンで書かれた代物だ……尊厳のかけらもなく、実に醜悪だ」
たとえいかなる政策上の意見の違いがあったにしろ(そのこと自体真実なのか捏造なのかは別として)米国の軍事上の最高司令官と国政の指導者(大統領)との間に戦略的方針の食い違いが、今回のように極端に表面化して、公の場での論争になるまでエスカレートしたことは、米国政治史上前例がないのも事実である。 [了]
【米国時間 2008年3月11日 『米流時評』ysbee 訳】
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「アメリカの子供が夢中になる'08大統領選」へ続く
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