米流時評

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アルバニアとクロアチアのNATO加盟作戦

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   ||| アルバニアとクロアチアのNATO加盟問題 |||

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 米国が後押しするアルバニアとクロアチアのNATOメンバー国加盟問題
 旧ソ連邦の脱共産圏国家をめぐるロシアと米NATO連合軍の熾烈な確執


d0123476_18552829.gif 今週は昨日まで3日間、グルジア紛争後の
米国・ロシア関係の意外な進展に関して書いてきた。
ライス長官やチェニー副大統領は、
親米派で知られるグルジアのサアカシビリ政権の立場を支持してきた。

 しかし、国務省の動きとは裏腹に
 ペンタゴンはロシアとの直接交渉で、
 バルカンと並ぶヨーロッパの火薬庫である
 コーカサス地域の鎮静に乗り出したようである。
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トップ:コーカサスの冬は長い 旧ソ連邦領土だった元共産圏国家の離脱を抑えようと必死のロシア軍の防衛体制
上:NATO加盟の意向を訴えるグルジアのサアカシビリ大統領だが南オセチア侵攻の勇み足がグルジア紛争の契機に


 この地域のカスピ海沿岸国家、
 アゼルバイジャンのバクー油田をめぐる資源戦争の背景は、
 昨年夏のエントリー「ユーラシアの回廊・帝政ロシアの首飾り」と
 「ユーラシア大連邦と第三次世界大戦の兆候」でも詳説した。

 帝政ロシア時代からの恩執をひきずる コーカサスの小国家群に関しては、
 限りない民族抗争とロシアとの確執が、
 歴史のタピストリーの中に 重層に織り込まれていて、
 ニュース記事のタイトルからだけでは決して理解できない、
 複雑なパワーバランスの迷図が横たわっている。

 この地域の地政学に興味をお持ちの方には、
 ぜひご一読いただきたい自薦の記事である。
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カスピ海と黒海にはさまれたコーカサス地域は、古代から異文化の交流する要の地点として、文明と戦争の興亡の歴史を歩んできた。特に20世紀初頭に発掘されたバクー油田を擁するアゼルバイジャン、アルメニア、グルジアは、民族闘争と資源戦争の難問を抱えたまま世紀を超えてきた国々であり、バクー=トビリシ=ジーハンと伸びるBTCパイプラインの確保は、ロシアとそれにに対抗する国家群の紛争の焦点となっている。

 米軍の総司令官ミューレンと ロシアの総帥マカロフが、
 電話で直接連絡をとりあって、ついに実現したヘルシンキ会談。

 その結果の公式発表は 未だないとは言うものの、
 関係者が漏らした証言では「新冷戦解消」の方向へ、
 両国関係の風向きが転換したようである。

 その態勢が進展すれば、やがて外交のトップ同士の
 正式会談がもたれるだろうことは 想像に難くない。
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グルジア紛争勃発と同時に、国境地帯に終結していたロシア地上軍の数千台の戦車大隊は一気に南オセチアへ侵攻した

 しかし、また新しい難問が浮上した。

 グルジアの南隣の小国アルバニアと、バルカンのコソボの隣国クロアチア……
 その両国をNATOに加盟させようとする、ブッシュ政権の動きである。

 両国とも、冷戦時代にはソ連の翼賛下の共産主義国家であったが、
 モスクワが冷遇した異民族辺境国家の例に漏れず、
 法外な課税と収奪で泣かされてきた、
 いわばクレムリンの隷属領地であった。

 したがって、81年のソ連邦崩壊後に、両国が民主主義国家として独立し、
 モスクワに自由の反旗を翻したことは言うまでもない。
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旧共産圏国家でソ連の圧政を耐え抜いた国々では、いまだに反露感情は険悪だ プーチン=ヒットラーの抗議

 しかしながら、国内の民主化だけにとどまらず
 NATOに加盟するとなると、事はやぶさかではない。

 両国ともロシアに対抗する最前線となる位置にあるからには、
 プーチン・メドベージェフ政権のマトリューシュカ体制が
 この動きを看過するわけがない。

 グルジア紛争で孤立化したロシアを、
 ビジネス重視路線で EU/NATOとの友好体制に復帰させようと努力する、
 メドベージェフの冷や汗が見えるようである。
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シベリアの広大なタイガ地帯にあるロシア空軍のミサイル基地をグルジア紛争後に訪れたメドベージェフ大統領

 おりしも、米大統領選の決戦日 11月4日が目前に迫っており、
 オバマとマケインの近況に関する『米流時評』の記事を
 翻訳してエントリーする宿題も山積しているのだが、
 短いけれども、非常に気になった
 「アルバニアとクロアチアのNATO加盟」への動きに関する記事を、
 その前に緊急でお届けしたい。

[米国時間 2008年10月24日『米流時評』ysbee]

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OCTOBER 24, 2008 | 『米 流 時 評』 |  時事評論ブログ雑誌・デイリー版 2008年10/24号
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  A S S O C I A T E D P R E S S | B R E A K I N G
米国が後押しする アルバニアとクロアチアのNATO加盟問題
米国時間 2008年10月24日午前7時16分 | AP通信・ニュース速報 | 訳『米流時評』ysbee

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風光明媚なアドリア海に面したクロアチアは、古代から地中海交易の要衝として栄えた 現在はEU観光が売り物

U.S. Works to Get Albania, Croatia into NATO
Bush to meet with alliance chief, but some members oppose expansion
WASHINGTON — The United States is taking another step toward getting Albania and Croatia — both isolated behind the Iron Curtain during the Cold War — folded into the NATO alliance. President Bush was to meet Friday with NATO Secretary-General Jaap de Hoop Scheffer and then sign so-called accession protocols paving the way for the two former communist nations' final membership in the military alliance.

ブッシュ外交のデザートコース
ワシントン発 |コーカサス地方のアルバニアとバルカン半島のクロアチア。冷戦時代には両国はともに、ソ連の鉄のカーテンの内側に隔離された共産圏国家であったが、今やNATOの友軍国家として西側の翼の下へ納まるために、米国はメンバーとして承認させるための外交手段をふたたび打ち出した。
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昨年6月にコーカサスの小国アルバニアを訪れたブッシュ 現役の米国大統領初の訪問とあって国を挙げて歓迎された

2. 160 diplomats for signing ceremony

The White House invited to the signing ceremony about 160 lawmakers, members of the diplomatic corps, the U.S. ambassadors to Albania and Croatia, and members of Albanian-American and Croatian-American groups. NATO leaders agreed at a summit earlier this year in Romania to invite Albania and Croatia into the alliance.

アルバニア・クロアチア加盟への道程
ブッシュ政権はアルバニアとクロアチア両国の外交関係者や両院議員、現地駐在の大使、米国と両国の友好協会代表の総勢160名をホワイトハウスへ招待し、NATO加盟国としてのメンバー申請書に両国代表の署名に立ち会わせると言う祝賀的会合を催した。NATO首脳部は、今年前半にルーマニアで拓かれた防衛サミットへ、アルバニアとクロアチアを友軍国家としてオブザーバーで招待していた。
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左:アルバニア、クロアチア、マセドニアの元首と友好国の合意/右:アルバニア首脳と政府軍精鋭部隊と記念写真

3. Uninvited Ukraine and Georgia

However, the alliance rebuffed U.S. attempts to begin the process of inviting Ukraine and Georgia, both former Soviet republics, to join. Despite strong U.S. backing to bring them in, Germany, France and some other alliance members opposed the move, fearing it would provoke Russia. The idea of NATO enlargement on its doorstep has irked the Russians.

ウクライナとグルジアの出席は拒否
しかしながらNATOメンバー諸国は、米国が旧ソ連邦国家だったウクライナとグルジアに対しては、メンバー参加の第一歩のプロセスであるオブザーバー招待からスタートする試みを却下した。ウクライナ、グルジアの両国に関しては、米国が強力に推進しているが、ドイツ、フランスとその他の数カ国は、両国加盟への動きはロシアを挑発するからという理由で反対している。NATO拡大のこうしたステップは、とりもなおさず旧ソ連邦国家の西側への転身を促す事に他ならず、覇権の境界線の後退を余儀なくされるロシア側の、神経を逆撫でする結果を招いている。
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ソ連時代の圧政に泣いたアルバニアは現在でもロシアに対する敵意が強い。その反動として親米意識も浸透している。

4. Russia unhappy with NATO expansion

Ties between Russia and NATO members have been further strained by the Georgia-Russia conflict. The war erupted in August when Georgia launched an attack to regain control over South Ossetia, which broke from Georgian control in the early 1990s. Russian forces swiftly repelled the attack and drove deep into Georgia.

ロシアが嫌う旧共産圏へのNATO拡大
元々親密ではなかったロシアとNATO諸国の友好関係は、今夏のグルジア・ロシア紛争でさらに溝が深まってしまった。8月6日に勃発した戦闘は、90年代の冒頭にグルジアの統治から離脱した南オセチア自治州において、本来の統治権を奪回しようと図ったグルジアが、オセチア独立運動ゲリラに最初に攻撃をかけたことに端を発する。
これをきっかけにして、今度はロシア政府軍が「オセチア駐留のロシア警備兵が攻撃を受けた」という理由で、あっという間に国境を越え南下して侵略。陸海空三軍による大規模な爆撃の総攻撃で、オセチアだけでなく、地中海側のアブハジア自治州とグルジア中央部全域を制圧。一時はグルジアの首都トビリシを包囲する最悪の危機を招くにいたった。
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米国では支持率が2割を切る落ち目の三度笠カウボーイだが、旧共産圏で民主化したいわゆる「ユーラシアの回廊」国家では圧倒的人気があるブッシュ。悪の枢軸論のような前時代的シンプルな浪花節外交が、受ける由縁だろうか?

5. For complete accession to join NATO

Albania and Croatia will be eligible to join NATO when all 26 allies have ratified the accession protocols. Slovakia and Hungary have ratified them to date. NATO officials hope Albania and Croatia will be able to participate as full members at next year's summit.

NATO加盟に必要な26カ国合意
アルバニアとクロアチアは、現在NATO加盟の26カ国代表全員が、加盟承認の議定書を批准した場合のみ、参加が可能となる。旧ソ連邦国家としては、すでにスロバキアとハンガリーが批准されている。NATO首脳部の思惑としては、アルバニアとクロアチア両国も、来年のサミットが開催される際には、正規の加盟国として参加出席できるものと見ているのが実情である。 [了]
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【 米国時間 2008年10月24日 『米流時評』ysbee 訳 】 
バルカンやコーカサスの「帝政ロシアの首飾り」と呼ばれる諸国には、20世紀初頭のロシアンバロックの素晴らしい建築が無限に点在する。特にギリシャ正教会や美術館・劇場・駅・市庁舎などの公共建築で現存している。[写真をクリックすれば拡大して見られます]

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d0123476_10383762.jpg||| 特集・新冷戦終焉の夜明け |||
10/21 特報!ヘルシンキ会談・グルジア紛争で米・ロが軍事的解決
10/22 米流時評:新冷戦から平和へ!米・ロ関係も新時代へ転換か
10/23 新冷戦は終わった!ヘルシンキ会談に見る米ロ関係のシフト
10/24 米国が推進する アルバニアとクロアチアのNATO加盟問題

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||| 『米流時評』グローバル恐慌レポート |||
第1章 ウォール街金融危機

9/14 号外!メリルリンチを500億ドルでBOAが買収
9/15 ウォールストリート大暴落、9/11以来のメルトダウン
9/16 号外!AIGに8.9兆円連邦救済ローン、恐慌脱出か?
9/17 経済危機と大統領選・ペイリンは共和党の自爆装置?

第2章 米国金融危機
10/01 号外!80兆円金融経済救済案、上院を通過!
10/02 下院でも通過!73.8兆円の経済救済案ついに成立!
10/06 ウォール街暴落1万ドルの大台を割る 大恐慌2.0?
10/07 2日目も暴落のウォール街・前日比 ▼508ドル

第3章 グローバル金融危機
10/08 アイスランド国家破産の危機・前編
10/09 アイスランド国家破産の危機・後編(翻訳中)
10/10 号外!GMがクライスラーを吸収合併交渉!
10/12 ダウ記録的サージで危機脱出? IMF・EUの緊急サミット効果
10/13 底が見えた!グローバル・メルトダウンからの Uターン
10/14 ウォール街実録・暗黒の7日間(翻訳中)

第4章 ポスト恐慌のニューパラダイム(予定)
10/15 堕ちた偶像アメリカの救済・オバマ対マケインの政治学(予定)
10/16 堕ちた偶像アメリカの救済・オバマノミクスと米国経済再建案(予定)

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by ysbee-2 | 2008-10-24 10:48 | ユーラシアの回廊
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