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テロ戦争最前線レポート・タリバンの要塞陥落!

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   ||| タリバニスタン最前線レポート |||

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タリバニスタン最前線現地レポート:タリバン最強の要塞都市ロイサム陥落!
政府軍バジュール掃討作戦の死者:タリバン1500名、政府軍73名、住民95名


d0123476_18552829.gif8月に入ってからほとんど毎日と言っていいほど、パキスタンとアフガニスタンの国境地帯、俗に「タリバニスタン」と呼ばれる辺境自治州で展開された叛徒討伐の掃討作戦のニュースが、米国のニュースサイトに登場していた。ある日は叛徒数十名死亡、またある日は誤爆で市民数名が犠牲になったとも……

特に9月20日に、パキスタンの首都イスラマバードで起きたマリオットホテルの爆破テロ事件は、長い選挙戦を経て就任早々だったザルダリ大統領の新政権を、根本から震撼とさせるには充分な、大規模なテロ事件だった。その直後から業を煮やした米軍のミサイルが、アフガニスタン側からパキスタンの北西辺境のワジリスタン州へと打ち込まれ、もちろん叛徒の本拠地目がけてではあったものの、周辺の一般村民もかなりの数が犠牲になったと伝えられていた。

▶関連記事:9/20 速報!イスラマバード・マリオット爆破テロ詳報
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先月20日に自爆トラックが突っ込み爆破炎上したホテル・マリオット・イスラマバード。一説にはCIAの工作とも、パキスタンの諜報 ISI の仕業とも言われている。確かに1階のロビーが全焼していないのに、一瞬で上階全域が火の海になったのは不審である。CIAならば、タリバンの仕業と見せてザルダリ政権のテロ撲滅体制を強化する根拠作りだろうし、ISI ならば、新政権の失態を印象づけて一般市民と米国の両サイドから不信を喚起するのが目的だったろう。いずれにしても、当日はラマダンの断食明けでホテルでディナーをとるはずだったザルダリ大統領が、その直前に急遽予定をキャンセルして爆破の犠牲になるのを免れた事実に、謎を解く鍵がありそうだ。密告したのはCIAか? ISI か?

2001年に9/11の首謀者ビンラディンのアルカイダと彼らに活動の本拠地を提供していたアフガニスタンのタリバン政権に対して、ブッシュ政権が『テロ戦争』の名目の元に宣戦布告。アフガン侵攻でカンダハール陥落までは楽勝の感があったが、その後トラボラ山中に立てこもったビンラディンら首謀者を捕獲できないまま、ブッシュは矛先をイラクへ転換し03年3月にイラク侵攻を開始。
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昨年暮れに暗殺されたブット元首相の夫ザルダリ大統領が所属するパキスタン人民党の勢力が強い南部の州都カラチ

3週間でケリがついたはずの戦争は、サダム政権の崩壊とともにできた権力の真空地帯で、スンニ派とシーア派が血で血を洗う内戦に発展。かくして現在までの足掛け8年間、米国は第二次大戦よりも長い闘いを延々と継続し、来年までの予算も含めて総額 "ワン・トリリオン"=100兆円近い戦費を費やしてきた。ローマ帝国の末期症状よろしく、国庫も疲弊し経済も失墜するわけである。

アフガニスタンに駐留する米軍とNATO軍の戦死者数がイラク駐留の死者を上回ったこの夏、国境地帯でのタリバン勢力の復活に業を煮やした米国は、故ブット首相の夫でパキスタン人民党から立候補して大統領に選出されたばかりのザルダリ新政権に対して、叛徒討伐を徹底せよという命を下した。属国でもないパキスタンに対してこういう命令を下すと言うのは、親米の傀儡政権ムシャラフ政権時代に100億ドル(約1兆円)もの膨大な軍事援助予算を注入して、テロ戦争の一翼を担わせたブッシュ政権の傲慢な覇権体制の現れである。
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一度ならず汚職で弾劾され、ムシャラフ政権時代にはドバイに亡命していたブット元首相の夫ザルダリだが、昨年暮れに8年ぶりの帰国直後にブットが暗殺された。ブットの遺言通り大学生の息子ビラワルがパキスタン人民党の党首に就任。その後、未成年ビラワルの父親で法的後見人のザルダリが政治活動を継承し、今夏の大統領選で当選を果たし、パキスタンの元首として政治の第一線に復活した。

パキスタンからアフガニスタンへと、国境を西へと越えて遠征し無差別の波状攻撃を続けるタリバンやアルカイダシンパのテロ活動に業を煮やした米軍は、9月以来アフガニスタン駐留基地からパキスタン領土内のタリバン基地へ、ミサイル攻撃を開始した。しかし、スパイ機による探査偵察で認識した巣窟が一般市民の民家だったり、叛徒の行進と見られた隊列が墓地への葬儀の列だったり……という失策が重なり、誤爆もあとを断たなかった。

こうして、パキスタン北部の短い夏が過ぎ行く間に、米軍のミサイル攻撃による辺境住民の犠牲を顧みない米国に対する反感が強まり、北ワジリスタン州のイスラム過激派ばかりでなく、南部の一般市民にまで「主権を侵害する米国排撃」というスローガンの元に、印パ戦争以来のパキスタンの根強いナショナリズムを覚醒させてしまった。米国からはテロ戦争作戦強化を、国民からは主権回復を迫られ、総選挙後の開幕早々、政治的窮地の頂点に立つザルダリ政権。
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20日 辺境自治区への米軍空爆を非難し自国防衛を訴える反米デモを繰り広げる 南部ジャイプール州カラチの学生

こうした内外の事情を背景にして、パキスタン政府軍が8月以来展開してきた辺境自治州の叛徒掃討作戦では、今月20日から猛攻撃に出て、バジュール地区でタリバン最強の拠点だったロイサムの町を攻略。壮絶な爆撃と肉弾戦の末、24日金曜ついに陥落に成功したようである。パキスタン政府軍に続いて、陥落直後のタリバンの要塞都市ロイサムに潜入したAP通信記者の、テロ戦争最前線レポートをお届けする。

[米国時間 2008年10月25日『米流時評』ysbee]

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OCTOBER 25, 2008 | 『米 流 時 評』 |  時事評論ブログ雑誌・デイリー版 2008年10/25号
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  ASSOCIATED PRESS | B R E A K I N G
タリバンの要塞ロイサム陥落! バジュール掃討作戦レポート
米国時間 2008年10月25日午後3時15分 | AP通信・パキスタン従軍記者速報 | 訳『米流時評』ysbee

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政府軍とのバジュールの戦闘で捕虜となったタリバンシンパ容疑者は、ほとんどが辺境民族のパシュトゥン人

Pakistani Troops Capture Militant Stronghold
Area described as 'mega-sanctuary' for Taliban, al-Qaida fighters
OCTOBER 25, 2008, 3:15 P.M. | Associated Press — BREAKING | Translation by ysbee

d0123476_1527659.jpgLOI SAM, Pakistan — A two-month offensive by Pakistani forces has driven militants from a stronghold through which Taliban and al-Qaida fighters had poured into neighboring Afghanistan to attack U.S. troops, the army said Saturday.

国境地帯のタリバン掃討作戦
パキスタン・バジュール地区ロイサム発 |テロ戦争でアフガニスタンに駐留している米軍兵士への襲撃は、今年に入ってから従来にも増してさらに頻発していた。米軍NATO共同戦線のテロ戦争にパキスタン側から協力する体制で、パキスタン政府軍はアパ国境地帯バジュール地方において2か月に渡って掃討作戦を展開してきた。
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パキスタンの辺境自治区北ワジリスタン州アリザイクライの部落。狂信的なイスラム過激派原理主義者の温床で、治安・行政・裁判すべてが部落の長老会議で決定される。女性の人権は認めず、教育も不要という数世紀も昔のアナクロな社会倫理を強制。従わない者は極刑に処される。

2. Military captured Loi Sam in Bajur

The military said its forces captured Loi Sam in the Bajur tribal region Friday after a long and bloody struggle. The town sits on a vital intersection linking the border to three neighboring Pakistan regions.
バジュール地方のロイサム陥落
パキスタンの辺境自治州バジュールは、タリバンとアルカイダの叛徒がパキスタンからアフガニスタンへと、国境を越えてテロ襲撃を繰り返していた活動の本拠地だったが、延々と続いた血みどろの闘争の果てに、24日金曜の段階でタリバンの巣窟であるロイサムの町を政府軍が占拠し、同地区のタリバン叛徒掃討に一応の成果を見た。
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アフガンの東・パキスタンの西。両国が国境を接する辺境自治州地域は、地勢的には山岳地帯で主幹産業が存在せず生活水準は極端に低い。このためジハド=イスラム教の聖戦遂行と食い扶持を得る目的で、タリバンやタリバンシンパの軍閥に加わる者があとを断たない。

3. Intersection of three regions

"Now we have complete control in this area from where miscreants used to go to Afghanistan, Mohmand, Dir and Swat," army spokesman Maj. Gen. Athar Abbas told reporters flown in to Bajur by military helicopter. "Miscreants have been expelled or killed."
北部3自治州の要衝バジュール
ロイサムの町は、パキスタン北部の3つの辺境自治州が境界線を接し、クモの巣状の道路網の中心に位置するバジュール地方の要衝だった。パキスタン政府軍広報官のアタール・アッバース陸軍少将は、ロイサム陥落の報を受けて軍用ヘリで最前線に飛来した従軍記者団に対して、現地の記者会見で次のように語った。「この地域は、これまではアフガニスタンやモホマンド、ディール、スワット地方を襲撃する無法者の巣窟だったが、今やわれわれパキスタン政府軍が完全に制圧した。ならず者は追放されたか、死んだかのどちらかだ」
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22日以来大規模なバジュール掃討作戦でタリバンの要塞ロイサムを包囲し、迫撃砲による砲撃を続行した政府軍

4. Taliban's 'mega-sanctuary'

Bajur is part of Pakistan's tribal belt that has become the stronghold of Taliban and al-Qaida fighters waging an intensifying insurgency on both sides of the border.
タリバンのメガ・サンクチュアリ
バジュールは、パキスタン北西部一帯の辺境民族自治州が連なる、通称「トライバル・ベルト」の一地方だが、(アフガン侵攻で一度は壊滅して離散したかに思われた)タリバンやアルカイダのジハディストが、アフガニスタンとの国境の両サイドで勢力を復活し本拠地としていた地域である。特に昨年来、誘拐や収奪、みせしめの公開斬首刑などで住民を恐怖に陥れ、遠征先のアフガニスタンのカンダハールやカブール周辺でも、各国大使館の爆破テロや刑務所襲撃など、ほしいままに野蛮なテロ行為を行ってきた。

▶関連記事:9/21 反米感情高まるパキスタンで、政府軍が米軍ヘリを砲撃
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6月末ダマドラで実行されたタリバンの公開処刑。政府軍に協力したかどで村民2人を誘拐し、このあと首をはねた。またその一部始終収録のビデオをネットで公開して恐怖政治の実態を見せつけ、政府軍へ協力する者を恐怖に陥れた。

5. Two-month offensive in Bajur

The army offensive in Bajur was launched in early August, after government officials declared it a "mega-sanctuary" for militants who had set up a virtual mini-state, complete with Taliban-style courts.
2か月の掃討作戦の成果
こうした背景のもと、タリバンスタイルのイスラム過激派の法廷まで備え、実質的にパキスタンの中央集権政府に反逆する独立地帯の様相を呈したバジュール地区に対して、6月の選挙で選出されたザルダリ大統領の新政権は「タリバンのメガ・サンクチュアリ討伐」と銘打って、今年8月初めからバジュール地域に対するパキスタン政府軍の攻撃を開始した。
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国境地帯の辺境自治区バジュール州カールの町に前線基地を構えるパキスタン政府軍。写真は10月22日 タリバンの要塞都市ロイサム攻略作戦に出陣する陸軍部隊。山岳地帯なので戦車が使えずトラックで派兵という厳しい戦闘条件。

6. Pentagon officials praise operation

U.S. officials worried about record fatalities among their forces in Afghanistan have praised the operation and said it was helping reduce violence on the Afghan side.
作戦の成果をペンタゴンも賞賛
今年に入ってからイラク戦線よりも多く米軍兵士の戦死者を出すようになったアフガン戦線で、インド大使館爆破事件やカンダハール包囲など、タリバンの勢力復活による大規模な攻撃に脅かされたペンタゴンの高官は、今回のパキスタン政府軍によるバジュール攻略作戦の成功を賞賛し、タリバンの本拠地陥落でアフガニスタンへ越境しての攻撃もやや治まるのではないかと期待している。
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住民9名が犠牲になった23日の米軍ミサイル攻撃で爆破された家から遺留品を拾いだすミランシャーの住民一家

7. U.S. missile strikes continue

But the Americans have not halted missile strikes on suspected militants hide-outs in other parts of Pakistan's wild border region, despite Islamabad's protests that the attacks violate its sovereignty.
米軍のミサイル攻撃続行
しかし、バジュール以外の広汎なパキスタン辺境地域ではタリバンの隠れ家が随所にあり、こうした敵陣をターゲットとして打ち込まれる米軍のミサイル攻撃は、パキスタンの国家主権侵害だと首都イスラマバードを始めとして抗議デモが繰り広げられているにも拘らず、依然として継続されているのが実情である。 »» 続く
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米軍のパキスタン領土内へのミサイル攻撃は主権侵害だと抗議する、北部の都市ペシャワールの大学生
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【 米国時間 2008年10月25日 『米流時評』ysbee 訳 】
»» 次号「テロ戦争最前線レポート後編・タリバン殲滅まであと半年」へ
«« 前号「米国が推進する アルバニアとクロアチアのNATO加盟問題」へ


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||| 『米流時評』グローバル恐慌レポート |||
第1章 ウォール街金融危機

9/14 号外!メリルリンチを500億ドルでBOAが買収
9/15 ウォールストリート大暴落、9/11以来のメルトダウン
9/16 号外!AIGに8.9兆円連邦救済ローン、恐慌脱出か?
9/17 経済危機と大統領選・ペイリンは共和党の自爆装置?

第2章 米国金融危機
10/01 号外!80兆円金融経済救済案、上院を通過!
10/02 下院でも通過!73.8兆円の経済救済案ついに成立!
10/06 ウォール街暴落1万ドルの大台を割る 大恐慌2.0?
10/07 2日目も暴落のウォール街・前日比 ▼508ドル

第3章 グローバル金融危機
10/08 アイスランド国家破産の危機・前編
10/09 アイスランド国家破産の危機・後編(翻訳中)
10/10 号外!GMがクライスラーを吸収合併交渉!
10/12 ダウ記録的サージで危機脱出? IMF・EUの緊急サミット効果
10/13 底が見えた!グローバル・メルトダウンからの Uターン
10/14 ウォール街実録・暗黒の7日間(翻訳中)

第4章 ポスト恐慌のニューパラダイム(予定)
10/15 堕ちた偶像アメリカの救済・オバマ対マケインの政治学(予定)
10/16 堕ちた偶像アメリカの救済・オバマノミクスと米国経済再建案(予定)

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by ysbee-2 | 2008-10-25 07:36 | パキスタン戒厳令の季節
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世界の動きがよくわかる!激動する国際情勢を、欧米メディアでディープに読む…世界の「今」と真実探求に関心ある知的冒険者へ送るグローバル情報満載ブログ


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