米流時評

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メドベージェフとオバマ/ユーラシア防衛とキルギスタン

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    ||| メドベージェフのプロポーザル |||

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メドベージェフ大統領、オバマ新政権に中央アジア防衛上の全面的協力を声明
キルギスタン米軍基地撤退など、旧ソ連盟邦国へのロシア防衛力浸透を意図か


d0123476_18552829.gif前号のまえがき「オバマの戦争と平和・テロ戦争とロシアのUターン」からの続き
地政学上ロシアと中東・南アジアの間に横たわる中央アジアは、ユーラシアの回廊として常に覇権攻略の対象となってきた。

カザクスタンの地政学上の重要性と埋蔵地下資源を認識してクリントン元大統領が強力なコネクションを結んだのは記憶に新しい。カザクの南方のウズベクスタン・トルクメニスタン・キルギスタン・タジキスタン。この中央アジアの高原の国々は、アフガニスタンとパキスタンにおける米国のテロ戦争のロジスティックベース(戦略上の拠点となる輸送基地)として、2001年以降重要な役割を果たしてきた。
▲トップ:クレムリンにメドベージェフ大統領を訪問し20億ドルの借款を取り決めたキルギスタンのバキエフ大統領
▼ 左図のブルーの部分がキルギスタン /右は左の拡大マップ
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しかしロシアから見れば、どの国も帝政ロシア時代から旧ソビエト連邦時代までは、盟邦国として配下にあった。軍事上は「中央アジアにおけるロシアの包囲網」と受け止められるのも、当然のポジショニングではある。年が明けて、8年間のブッシュの覇権体制から新しいオバマ政権へと、米国政権は移行した。しかし、ブッシュ政権の無謀な放漫財政の結果、国庫財政は破綻しつつある。

その危機を見越したかのように、米空軍基地を提供していたキルギスタンが、契約更新を断る態勢である。その態度変更の裏には、ロシアからの20億ドルの借款があった。以下の記事は、そうした関連各国の一連の動きが、カドリールのように相手を代えて覇権抗争の中で生き残ろうとする小国のステップとともに、歴史の1ページへ刻まれる瞬間の記録である。
【米国時間2009年2月4日『米流時評』ysbee】

参照 ▶ユーラシアの回廊・帝政ロシアの首飾り『米流時評』2007年6月10日号 再掲出
d0123476_14302471.jpg第1章 ロシアと米国の新冷戦 /第2章 ロシア・グルジア・アゼルバイジャンの三すくみ /第3章 ロシアの首飾りからユーラシアの回廊へ /第4章 資源外交と侵略戦争 /第5章 ユーラシアの長い暑い夏

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FEBRUARY 4, 2009 | 『米 流 時 評』 |  時事評論ブログ雑誌・デイリー版 2009年2月4日号
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    Associated Press | B R E A K I N G
ロシア、オバマ新政権に中央アジア防衛上の全面的協力を申し出
米国時間 2009年2月4日午後0時38分 | AP通信・ニュース速報 | 訳『米流時評』ysbee

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どう見ても米軍か国連軍だが、これがANAアフガニスタン政府軍兵士。戦後の日本が急激にアメリカナイズされていったように、アフガンの一般民衆もサングラスから脱イスラム化するのか? トラックは地球上どこでもTOYOTA

Russia: We'll Help U.S. Stabilize Afghanistan
Comments follow move by Kyrgyzstan to evict U.S. forces from key air base
FEBRUARY 4, 2009 | Associated Press — BREAKING | Translation by ysbee
MOSCOW — President Dmitry Medvedev said Wednesday that Russia and its ex-Soviet allies want to help the United States stabilize Afghanistan, saying Moscow wanted "full-fledged" cooperation with Washington. He spoke a day after the ex-Soviet republic of Kyrgyzstan announced it would evict the U.S. from an air base key to the Afghan war.

ユーラシア防衛で米国に全面的協力
モスクワ発 |ロシアのドミトリ・メドベージェフ大統領は「ロシアと旧ソ連盟邦国は、アフガニスタン平定を目指す米国を援助するために、米国政府に対して『全面的に協力』する意向である」という声明を4日水曜発表した。この声明は、アフガン戦争における物資輸送の重要な拠点であるメナス米空軍基地の存続をめぐって、契約更新をしない方針をとろうとしているキルギスタン共和国(旧ソ連邦盟邦国)のバキエフ大統領と、メドベージェフ大統領がモスクワで会見した翌日に公表されたが、オバマ新政権に対するロシアの外交姿勢の急変を物語るものである。
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中央アジア空路の米軍補給ルートの要衝、キルギスタンの首都ビシュケクから郊外へ30キロにある米空軍マナス基地

2. Russia promised $2 billion to Kyrgystan

Kyrgyzstan made the move after getting a promise for $2 billion in loans from Russia — which resents the American presence in a region Moscow regards as part of its traditional sphere of influence.
キルギスタン、ロシアから20億ドルの借款
問題の国キルギスタンは、ロシアから20億ドルの借款契約をとりつけたあとで、この動きに出たものである。カザクスタンやタジキスタン、キルギスタンなど、ロシアを囲繞する中央アジアの一連の国家は、コーカサスの小国家群とともに、長い歴史の中でも伝統的にロシア的世界に包括される地域「帝政ロシアの首飾り/ユーラシアの回廊」として認識されてきた。
そうした身内のような地域に、テロ戦争以来米国の出先機関が顕在化する現象は、ロシアにとってはたしかに目障りであったにちがいない。
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キルギスタンの米空軍マナス基地は、アフガニスタンの駐留米軍へ物資・兵器・燃料を輸送するロジスティック基地

3. Base closure affects Afghan surge

The possibility of the base closure poses a serious challenge to the new U.S. administration and President Barack Obama's plan to send up to 30,000 more American forces into Afghanistan this year.
3万名のアフガン増兵計画にも支障
しかし、首都ビシュケクの郊外30キロにある米空軍駐屯マナス基地に対して、万一キルギスタンが借地契約の更新を打ち切って米軍が使えなくなれば、オバマ新政権が今年予定しているアフガン戦線への3万名派兵計画にも支障をきたすことになる。
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米軍の戦車や車輌に補給するガソリンや重油などの燃料を運ぶS-371輸送機と防火服を着た作業員

4. 'Ready for full-fledged cooperation w/U.S.'

"Russia and other (alliance members) are ready for full-fledged comprehensive cooperation with the United States and other coalition members in fighting terrorism in the region. This fight must be comprehensive and include both military and political components. Only in the case will this have a chance to succeed," Medvedev said.
米軍のテロ戦争アフガン戦線を代行
「われわれロシアと盟邦国は、この地域(アフガニスタンとパキスタンの国境地帯)でテロリズムとの戦いを続けている米国とその友軍国家に対して、全面的な協力体制で臨む用意はできている。この地域での戦闘においては、軍事的および政治的な戦略を統合したときに初めて完遂できるという特殊事情があることを、肝に命じなければならない。」アフガン侵攻時の苦い軍事的経験に裏打ちされたロシア軍の教訓を込めて、メドベージェフ大統領はアフガン戦争での戦略をこう語った。
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アフガニスタンの政府軍ANA/Afghanistan National Army の実戦演習場 米軍が軍事指導を担当

5. What is the exchange of 'full-fledged' cooperation?

It was not clear if Medvedev's reference to "full-fledged" cooperation was an attempt to reassure Washington or an indication that Moscow would seek concessions in exchange for helping keep the Manas air base open.
全面的協力の見返りは何?
メドベージェフ大統領が公言した「全面的協力」が具体的には何を指すのかについては明確ではない。果たしてモスクワのロシア政府が、オバマ新政権との友好的外交関係を模索して発した社交辞令なのか、あるいはマナス米空軍基地を継続して使えるようキルギス政府と交渉する代わりに、その代償として何らかの見返りを期待するという含みなのかは、現在のところ定かではない。
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アフガニスタンの首都カブールでの軍事パレードを終え、基地へ戻る陸軍のコンボイ=トラック輸送部隊

6. Alternative logistics to Pakistani supply lines

Russia has appeared open to aiding the U.S. and NATO in Afghanistan by facilitating attempts to find northern alternatives to Pakistani supply lines increasingly threatened by militant attacks.
パキスタン補給ルート代行のロジスティックス
今回の申し出の表向きでは、アフガン国境に近いパキスタン側にある米軍の補給ルートに対して、昨今タリバンシンパゲリラの攻撃が頻発していることから、アフガン北方地域へ通じる代行の輸送経路を探し出して、アフガンで闘う米軍とNATO軍を表立って援助しよう、という外交姿勢の方針変更に見える。
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戦場にかける橋:アフガンの米軍基地へ物資を補給する山岳部隘路カイバー峠の橋はタリバンによって3日爆破された

7. Vehement opposition against U.S. MDS plan

But Moscow also wants to protect what it says as its strategic backyard by blocking the possibility of NATO membership for Ukraine and Georgia. Russia has also vehemently opposed U.S. plans to put a missile defense system in the Czech Republic and Poland.
米国の東欧ミサイル防衛計画に鉄槌
しかしながらロシア政府はまた、自国の守備範囲の防衛体制を崩したくないので、お膝元のウクライナとグルジア両国がNATOに加盟する可能性は何としても阻止したい、と以前から公言してきたのも事実である。また、ブッシュ政権時に米国がチェコとポーランドに計画した東欧ミサイル防衛網/MDSの建設に関しては、プーチン大統領の時代から猛烈に反対し、一時は米国との間に「新冷戦開幕か」と危機感が表面化した時期もあった。
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ブッシュ政権1期目の国防長官ラムズフェルド。ネオコンのニューワールド計画の軍事上の推進者だった。

8. 'Democracy cannot be forced'

Medvedev appeared to criticize U.S. efforts on stabilizing Afghanistan, saying it would be impossible to defeat terrorism there only using military means."It is necessary to form a full-fledged political system, keeping in mind, cultural and historic traditions. Democracy cannot be forced upon (a country). It must grow from within," he said.
「民主主義に強制はない」
メドベージェフはまた、米国がアフガニスタンを平定しようとする努力に対して、批判的な意見も明らかにした。その理由として、彼の地(アフガンとパキスタンの国境地帯にあるパシュトン民族の自治州)では、軍事的手段だけではテロリズムに勝つことは不可能だと主張し、次のように発言した。
「あの地域のパシュトン族を治めるには、彼らの心情や伝統ある文化と歴史をそっくりそのまま包含するような、政治形態そのものから全面的に統合する必要があるのです。民主主義とは、決して国家が押し付けるものではないはずです。それは、国家の内なる人民の間から、自然に芽生えてくるものでなければなりません。」
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キルギスタンの主要産業は中央アジア小国の例にもれず放牧農業。冬場に閑をもてあます首都ビシュケク郊外の農民。

9. Mixed signals for Obama administration

"It's not the number of bases that matters. It would be good if that would help reduce the number of terrorists, but the fight against terrorism is not limited to building up military forces." Russia, which waged its own bloody and unsuccessful attempt to control Afghanistan, has sent mixed signals about working with the Obama administration, after years of political clashes with the administration of George W. Bush.
オバマ新政権への変化球
「平定へのこだわりは、基地がいくつあるかではないでしょう。もちろん、テロリストの数が減ればそれに超したことはありません。しかしテロリズムとの闘いは、なにも軍事力増強だけで解決のつく問題ではないはずです。」
ロシア自身、ソ連時代の末期にアフガン侵攻で辛酸をなめ、数千の戦死者を出し国庫が疲弊した苦い経験を持っている。またジョージ・W・ブッシュの前政権とは、外交政策と軍事戦略で正面から衝突した数年間を過ごした後だけに、オバマ新政権に対しては玉虫色の外交姿勢を見せ、様子を伺っている段階だと受け取られる。
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ビシュケクの国立歴史博物館 高く建立された銅像と国旗掲揚塔がソ連邦時代のモスクワ様式

10. Enforcement on ex-Soviet alliance

On Wednesday, Medvedev hosted presidents from seven-member Collective Security Treaty Organization — a loose, Moscow-dominated alliance made up of several ex-Soviet states. After Kremlin talks, the group announced the creation of a joint rapid reaction force that would boost the military dimension to the alliance, which until now has served mostly as a forum for security consultations.
CSTOで旧ソ連盟邦国との結束強化
4日水曜メドベージェフ大統領は、Collective Security Treaty Organization(CSTO=総合安保条約機構)に加盟する7カ国の元首をモスクワに迎えた。この組織は旧ソ連邦盟邦国の数カ国からなる、明文化してはいないがロシアが主導権を握る安全保障の共同機構である。クレムリン宮殿での本会議の後、出席したメンバーは共同声明を発表したが、その内容は次のようなものであった。

「共同安全保障の加盟国間では、その中の一国でも有事に際した場合には(=紛争発生時)、他の加盟国はただちに共同戦線を結成して、友軍としての軍事力を行使する。ただし現時点では、平時にあっては安全保障のコンサルテーションを専らの機能として、関連課題のフォーラムを開催する機構として発効するものである。」 <了>

【 米国時間 2009年2月4日 『米流時評』ysbee訳 】
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キルギスタンの首都ビシュケクにある合衆国設立の中央アジア大学 University of U.S. Central Asia

◀前号「テロ戦争とオバマ/アフガン戦線と東欧 MDS 計画」
▶次号「アフガニスタンとオバマ/カイバー峠の戦場にかける橋」
▶予告「エルドアンの直言/ガザ侵攻のイスラエルを堂々糾弾」
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米流時評 特集 ||| オバマの時代 |||
第1章 オバマ時代開幕 Road to White Housed0123476_19284774.jpg
▶11/01(1)世界が待ち望む オバマ時代の夜明け
▶11/02(2)世界危機に挑戦する 21世紀のニューリーダー
▶11/04(3)アメリカの再生を賭けた明日へのカウントダウン
▶11/07(4)オバマの第一声「アメリカの大いなる挑戦」
▶11/13(5)オバマの初仕事・ホワイトハウスの組閣人事
▶11/14(6)オバマ紳士録・後編 クリントンが国務長官?
▶11/16(7)オバマのチャイナフリーFDA改革・禁中国汚染食品!
▶12/08(8)ウォール街復活? オバマのNewニューディール効果


第2章 オバマの百日革命 Revolutionary Road
▶1/19(1)勝者なき闘い・ガザの終りとオバマの始まり
▶1/23(2)ブッシュとオバマ/スーパーマンの仕事始め
▶1/24(3)カストロとオバマ/キューバとアメリカの新しい海峡
▶1/25(4)旧体制とオバマ/レボルーショナリーロード
▶1/27(5)中東とオバマ/カウボーイ外交からピース外交へ
▶1/28(6)アラブとオバマ/アルアラビアTVインタビュー対訳d0123476_1936736.jpg
▶2/01(7)金正日とオバマ/狼少年の歓迎のテポドン
▶2/03(8)テロ戦争とオバマ/アフガン戦線と東欧MD計画
▶2/04(9)メドベージェフとオバマ/ユーラシア防衛とキルギスタン
▶2/05(10)アフガンとオバマ/カイバー峠の戦場にかける橋
▶2/06(11)パキスタンとオバマ/タリバン戦線の共闘戦略
▶2/07(12)アルカイダとオバマ/パキスタン ISIのCHANGE
▶2/08(13)ビンラディンとブッシュ/テロ戦争内幕の危険な関係
▶2/09(14)イスラエルとオバマ/タカ派三つ巴のイスラエル総選挙
▶2/10(15)ネタニヤフとリブニ/イスラエルの2月体制
▶2/11(16)タリバンとオバマ/首都カブール同時多発テロ攻撃
▶2/12(17)アフマディネジャドとオバマ/テヘランの春
▶2/13(18)IAEAとオバマ/イラン核外交のCHANGE
▶2/14(19)パレスチナとオバマ/絶望と希望のはざまで


||| 『米流時評』 特集シリーズ |||
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by ysbee-2 | 2009-02-04 12:24 | ユーラシアの回廊
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