米流時評

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アフガンとオバマ/カイバー峠の戦場にかける橋

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    ||| カイバー峠の戦場にかける橋 |||

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 米軍3万名増兵で中央アジアの平定を図る、オバマ新政権テロ戦争の戦略転換
 タリバン掃討戦の焦点はア・パ国境の前線へ、鍵を握るロシア参戦の可能性は?


d0123476_18552829.gif前号「メドベージェフとオバマ/ユーラシア防衛とキルギスタン」のあとがき:
古代マケドニアのアレキサンダー大王が、ローマ帝国時代には皇帝カエサルのローマの歩兵が、東方大遠征の際にいずれも通った歴史的要衝、カイバー峠。西方からオリエントへとエキゾチックなスパイスや宝石を求めて、インドへの危険な旅路を目指した冒険家たちも、東洋と西洋をつなぐ天下の嶮カイバー峠を越えなければ、エキゾチックな王侯たちの都へは辿り着けなかった。
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この東洋と西洋の世界の狭間に立ちはだかるドアの鍵穴のようなカイバー峠は、米軍が展開するテロ戦争の戦略ステージでも、歴史の故事に倣ったかのように、陸路の重要な関門となっている。歴史のターニングポイントとなった2001年の9/11同時多発テロと、それに続くテロ戦争の第1幕であるアフガン侵攻。この時以来、トラボラをはじめとするタリバンの拠点を攻撃するため、米軍はさらに中央アジアの要所に補給用の空軍基地を設置して、ドイツやイタリーの米軍駐屯基地から、物資や兵力を輸送する中継基地として利用してきた。
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その中に、中央アジアの小国タジキスタンの首都ビシュケク郊外の、マナス空軍基地がある。しかしつい最近、これまで7年間ストップポイントとして利用してきた米国に対して、タジキスタン政府からは契約更新を拒否する動きが出ている。イエスかノーかは、タジキスタンの国会で決定されるが、昨日の決議は案件が重要すぎるのか、延期となった。

【追記】その後6日金曜のニュースでは、タジキスタンの国会決議でマナス空港の米軍へのリースは継続中止に決定。すなわち将来的に立ち退きを迫られる事態が予測される。近々にアフガン戦線へ3万名の増兵を予定しているペンタゴンの将校たちは、今頃は総立ちで蒼白のはずだ。
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その陰には元々、ロマノフ王朝の帝政時代から中央アジアの高原一帯を配下に治めてきた、歴史的執着を捨てきれないロシアの思惑が働いている。ソ連邦時代のアフガン侵攻で、国費を使い果たして国庫破綻しソ連の国家崩壊につながった史実は、前号でも述べた通りである。また、ロシアの国境に沿って首飾りのようにユーラシア大陸に連なる、コーカサスと中央アジアの国々「ユーラシアの回廊の資源戦争と戦略外交」については、米国の東欧MD計画が暴露され、ブッシュとプーチンの間が急速冷却して「新冷戦開幕か」と囁かれた、2007年の夏のエントリーで解説した。

▶ユーラシアの回廊・帝政ロシアの首飾り 『米流時評』2007年6月10日号 再掲出
d0123476_14302471.jpg第1章 ロシアと米国の新冷戦 /第2章 ロシア・グルジア・アゼルバイジャンの三すくみ /第3章 ロシアの首飾りからユーラシアの回廊へ /第4章 資源外交と侵略戦争 /第5章 ユーラシアの長い暑い夏

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ソ連撤退からユーラシアの弧包囲網を構築しようとした米軍とNATOだが、アフガンとパキスタンでの叛徒グループの反撃がしぶとく、いまだに平定すらできていない。そこへもってきて、戦線撤退を最終目的に掲げるオバマ政権が樹立した。ロシア側から見れば、まさに10年に1度のチャンスである。ソ連時代の雪辱を果たす、というよりも、この地域に眠る貴重な地下資源に対する固執が優先しているように伺える。
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ロシアのメドベージェフ大統領は、オバマ新政権に対して「(アフガン・パキスタンを含めた)中央アジアの安全保障は、歴史と経験豊富なわが国に任せなさい」と申し出たのである。
ポーランドとチェコに設置予定だった米軍ミサイル防衛計画(東欧MDSプラン)のレーダー施設やミサイル打上げ施設をめぐって、プーチンとブッシュが「新冷戦」開幕と危惧される衝突を起こしたのは07年来で、米ロ間の外交関係の急激な冷却と、関係諸国間の外交の緊張につながった。
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そこで、メドベージェフからの申し出の交換条件として出されたのは、案の定「東欧MDS」の撤廃である。当然、チェコやポーランドの計画に直接関連する国からは、猛烈な反対がくるだろう。
しかしそもそもは、東欧ミサイル防衛網計画を立案し推進したのは、イスラエルと密着したネオコンタカ派とその傀儡のブッシュ政権であって、オバマ新政権ではない。オバマは、そうした世界へ覇権の軍備を拡大するタカ派のプロジェクトは、国家としてのアメリカを崩壊へ招くものと解釈するハト派の国民の支持を集めて、ホワイトハウスへの道を拓いた。
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世紀に一度の大不況のさなかに生まれたオバマ新政権は、否が応でも内政と経済を最優先させる運命にある。政治のベクトルが国政充実に内向すれば、軍事費は大巾に削減せざるをえない。戦線は縮小、あるいは首尾よく行けば撤退がゴールである。
一方ロシアは、米国の覇権への野心が足をすくわれたこの機を、中央アジアへの影響力を奪還する最大のチャンスと見たのだろう。ロシアからのサイは投げられた。中央アジアという賭博場のテーブルについているのはメドベージェフだが、背後から指示を囁いているのがプーチンであるのは、誰の目にも明らかである。
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この、のるかそるかの大転換の流れを、紛争と衝突の繰り返しに戻すのか、
あるいは、奇跡的な平和をもたらす交渉の場に変えることができるのか?
人種の壁を越えた新しい時代の指導者は、東西の宗教の峡谷への架け橋となりえるだろうか?

決断のときが、オバマを待っている。
米国の未来だけでなく、西欧諸国とイスラム世界との融和を賭けて。

【米国時間2009年2月5日『米流時評』ysbee】
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◀前号「メドベージェフ vs オバマ/ロシアのアフガン回帰」
▶次号「パキスタンとオバマ/タリバン戦線の共闘戦略」
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d0123476_11564496.jpg記事リンク http://beiryu2.exblog.jp/9306903
TBリンク http://beiryu2.exblog.jp/tb/9306903

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米流時評 特集 ||| オバマの時代 |||
第1章 オバマ時代開幕 Road to White House
▶11/01(1)世界が待ち望む オバマ時代の夜明けd0123476_19284774.jpg
▶11/02(2)世界危機に挑戦する 21世紀のニューリーダー
▶11/04(3)アメリカの再生を賭けた明日へのカウントダウン
▶11/07(4)オバマの第一声「アメリカの大いなる挑戦」
▶11/13(5)オバマの初仕事・ホワイトハウスの組閣人事
▶11/14(6)オバマ紳士録・後編 クリントンが国務長官?
▶11/16(7)オバマのチャイナフリーFDA改革・禁中国汚染食品!
▶12/08(8)ウォール街復活? オバマのNewニューディール効果


第2章 オバマの百日革命 Revolutionary Road
▶1/19(1)勝者なき闘い・ガザの終りとオバマの始まり
▶1/23(2)ブッシュとオバマ/スーパーマンの仕事始め
▶1/24(3)カストロとオバマ/キューバとアメリカの新しい海峡
▶1/25(4)旧体制とオバマ/レボルーショナリーロード
▶1/27(5)中東とオバマ/カウボーイ外交からピース外交へ
▶1/28(6)アラブとオバマ/アルアラビアTVインタビュー対訳
▶2/01(7)金正日とオバマ/狼少年の歓迎のテポドンd0123476_1936736.jpg
▶2/03(8)テロ戦争とオバマ/アフガン戦線と東欧MD計画
▶2/04(9)メドベージェフとオバマ/ユーラシア防衛とキルギスタン
▶2/05(10)アフガンとオバマ/カイバー峠の戦場にかける橋
▶2/06(11)パキスタンとオバマ/タリバン戦線の共闘戦略
▶2/07(12)アルカイダとオバマ/パキスタン ISIのCHANGE
▶2/08(13)ビンラディンとブッシュ/テロ戦争内幕の危険な関係
▶2/09(14)イスラエルとオバマ/タカ派三つ巴のイスラエル総選挙
▶2/10(15)ネタニヤフとリブニ/イスラエルの2月体制
▶2/11(16)タリバンとオバマ/首都カブール同時多発テロ攻撃
▶2/12(17)カルザイとオバマ/アフガン増兵とアフ・パキ戦線
▶2/13(18)クリントンと日本/拉致被害者家族と東京で会談
▶2/14(19)クリントンと北朝鮮/核と平和のアメとムチ
▶2/15(20)パレスチナとオバマ/絶望と希望のはざまで
▶2/17(21)アフマディネジャドとオバマ/テヘランの春
▶2/18(22)IAEAとオバマ/イラン核外交のCHANGE


||| 『米流時評』 特集シリーズ |||
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by ysbee-2 | 2009-02-05 12:35 | ユーラシアの回廊
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