米流時評

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テロ戦争最終章へ?アフパキ戦線のエンドゲーム

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    ||| タリバニスタンの最終戦争 |||

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 近代化民主化運動とイスラム原理主義復権のエンドゲームの戦場、スワット渓谷
 アフガニスタンから本拠地を転換したタリバン勢力と、政府軍の最終戦争の墓場

d0123476_3532373.jpgずいぶん以前になるが、
今回のスワットバレーの名を初めて聞いた時に、
どこなのだろう、とネットで調べたことがあった。

きっかけになった記事は、ニューヨーク・タイムズの
一連の「タリバン復活の辺境」シリーズだったか、
あるいは、いつも世界の最前線の裏側から敵陣潜入ルポを伝えて来る
ニューズウィーク特派の、命知らずの戦場のジャーナリスト、
ロッド・ノードランドの「タリバニスタン」特集だったか、
どちらかだったと思う。
もう、かれこれ2年以上前のことになる。
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2007年 9/25号 「地の果てへの旅・序章」
戦場のジャーナリスト ロッド・ノードランド

「アメリカ人の中にも、現場に生きる知性と 人生のロマンを綴れる感受性を、
 痛々しいほどの迫力で仕事に開花させている男がいる、という実証でもあり……
 また、淡々とした旅行記の体裁をとってはいるものの、戦争をある程度達観し、
 悲痛な告発を込めた目で見ている点も見逃せません………」


いやはや、今読み返してみると、かなり惚れ込んでいるのがわかる。
今回の一連のエントリでもお伝えしたWaPo紙の
パメラ・コンステーブル記者と並んで、あの時期に彼らは口をそろえて、
アフガンとパキスタンの国境では、タリバン勢力が復権して
「タリバニスタン」の様相を呈している……
と指摘した、叫びに近い危機感に満ちた警鐘のレポートだった。

当時2006年の段階では、彼らの報告と同じ目線での危機感をもち、
「テロ戦争の正念場はパキスタンだ」と発言していたのは、
ワシントンでは、当時まだ当選してキャピトル入りしたばかりの
バラク・オバマ上院議員ぐらいのものだった。
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それから3年、世界覇権を目指したニューワールドオーダー構想で
ブッシュ=チェニーが指揮棒をふるったネオコンは凋落し、
新米議員だったオバマが、現在ではホワイトハウスに納まり
米国と世界との関係を変えようと、毎日ネジの巻き戻しに余念がない。
かつて、そのオバマを「ナイーブ」と嘲笑したクリントンは
オバマ体制下の国務長官のパスポートをふりかざして、
モスクワや、テヘランや、平壌と わたり合っている。

ときどき笑い出したくなるくらい、世界は変わった。

この「時代の大地震」で起きた亀裂や段差で、でこぼこになった道程を
なにがしかの方向性と、過去と未来を照らし出す かすかな光を頼りに
世界がこれまで動いてきた、あるいは これから動いていこうとする
実相の地図を描き上げようとする行為が、歴史家の作業なのだろう。

が、しかし、これでは、道標(みちしるべ)というよりも、
澪標(みおつくし)が要るようなほどの、深い霧の冥界だ。

なにか昨年後半から、経済だけではなく すべての社会状況が、
メルトダウンとは言わないが、液状化しているように感じるのは、
私だけだろうか?
世界の Liquidation……ご破算で願いましては……

しかし、新自由主義経済の妄想が崩壊しただけでも
最悪の事態から一歩抜け出したことは 確かだろう。
歩一歩、明日のページへ。

【米国時間2009年5月11日『米流時評』ysbee】
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『米流時評』緊急特集 パキスタン最前線レポート
 〜「スワット谷 百万人のエクソダス」〜
第1章 百万人の難民エクソダス パキスタン最前線レポート /AP通信パキスタン支局
第2章 スワット谷のエクソダス タリバニスタン民族大移動 /AP通信パキスタン支局
第3章 さらば中世!  タリバン恐怖政治の終焉 /ワシントンポスト・パキスタン支局
第4章 21世紀狂気の蛮族 タリバン最期の日々 /ワシントンポスト・パキスタン支局
第5章 テロ戦争終章へ アフパキ前線のエンドゲーム /ワシントンポスト・パキスタン支局
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MAY 10, 2009 | 『米 流 時 評』 |  時事評論ブログ雑誌・デイリー版  2009年5月10日号
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   W A S H I G T O N P O S T | A N A L Y S I S
アフガン・パキスタンをひとつの戦局と見る、米軍対タリバンの最終戦争
米国時間 2009年5月10日 | パメラ・コンステーブル/ワシントンポスト | 訳『米流時評』ysbee

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スワット谷周辺の農村地帯ではクルマの便宜がなく、ペシャワールまでの100キロ以上の道をひたすら歩いて脱出


Swat Valley Chronicle-3: Frontline of End Game
Uprooting the insurgents will mean unpopular consequences
MAY 10, 2009 | By Pamela Constable — WASHINGTON POST | Translation by ysbee

19. Islamization under ul-Haq in 1977-88
Yet Pakistan has had bitter experiences with the overzealous application of sharia, especially when it has been combined with force. During the military dictatorship of Mohammed Zia ul-Haq from 1977 to 1988, a system of "Islamization" was imposed that mandated extreme sharia punishments.
ウルハク軍事独裁政権のイスラミゼーション
シャリア法復活の気運がパキスタン全土に高まってきた経緯は、前号で書いた通りだが、パキスタンは過去に、その導入の行き過ぎで苦い経験を味わってきている。特にイスラム法の厳しい規制が軍事力と結びついたとき、その暴力的抑圧の両輪が社会全体を蹂躙した、思い出すのもつらい手痛い過去だ。
それは1977年から88年まで続いた、モハメド・ジア・ウルハク首相が国家の全権を掌握した軍事独裁体制の時代である。「イスラミゼーション」と呼ばれるその社会システムは、シャリア法の極端な厳罰制度を導入し、近代化を目指す社会を弾圧する「恐怖の枷」として利用した。
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マルダンの国連難民テント村に数十万人単位で収容され、配給のチャイ(茶)のポットを運ぶスワット谷の少女

20. Stoning, flogging, beheading

They included stoning and flogging, for committing adultery and drinking alcohol. These laws, which were known as the Hudood Ordinance and were finally amended and reformed in 2006, inflicted particular suffering on women.
鞭打ち・石打ち・首斬りの公開処刑
軍事独裁政権のもとで導入されたシャリア法の刑罰では、不貞罪や飲酒罪にも鞭打ち・石打ちといった厳しい公開刑が執行された。こうした刑罰法は「フドゥード法/Hudood Ordinance」として知られているが、2006年の法改正で改善されるまでパキスタン全土で実施され、特に女性に対して厳しい措置がとられたため長らくパキスタン女性を苦しめてきた悪法であった。
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親米派や政府軍への密告者と見られた者は、一族郎党テロの対象となり、家が爆破されたり公開の斬首刑に処される

21. Faded criticism of draconian practices

For one thing, if a woman tried to accuse a man of rape, she often ended up being found guilty of adultery and punished severely, while the man went free for lack of evidence. Criticism of such draconian practices, faded all at once after Zia's death in 1988.
女性蔑視・迫害の暗黒法
女性にとって厳しい刑罰の一例を挙げよう。ある女性がひとりの男性にレイプされたと訴え出たとする。しかし大概の場合、被害者の女性の方が不貞罪でとがめられ、石打ちの刑などの見るに忍びないほどの厳罰の公開刑に処される。しかも犯人の男性の方は、証拠不充分で無罪放免となるのがおちである。
しかし、こうしたドラコニアン流の極端な厳罰主義をとる論陣も、88年の独裁者ジア・ウルハクの死とともに、突如影がうすくなった。
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イスラム過激派の強制する理不尽な風俗では、女性は頭部・肌を見せてはならず、男性はひげを剃ってはいけない

22. Taliban justice brought in Swat Valley

But again, those horror stories of Taliban-style justice suddenly revived and have filtered out of the Swat Valley. Newspapers are filled with letters from readers expressing outrage at the perversion of Islam being perpetrated there and warning that the Taliban is trying to force a modern country back to medieval times.
スワット谷でタリバン恐怖政治の再現
ところがウルハク独裁政権の崩壊後、しばらくは民主的社会を復活できたのも束の間、タリバン流の法と秩序の恐怖の体験談が、スワット谷にふたたび急激に復活し、今年に入ってからは、その暗黒の勢力を他の土地へも伸ばし始めていた時期だった。新聞の投稿欄にはひんぱんに、読者からの次のような警世の意見が載るようになってきていた。
「スワット地方でのイスラム法の過激な解釈による暴力的支配は目に余るものがある。タリバンはその勢力を拡大して、近代化したわれわれの社会を中世の暗黒時代に引き戻そうとしている。」
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戦闘の爆撃で妻と4人の娘のうち2人とベッドに横たわる娘の足を失った父親 それでも生きていかなくてはならない

23. Subtler, more insidious social trend

And yet some observers have noticed a subtler, more insidious trend. It is not only the fire-breathing sermons by radical mullahs calling for a "sharia nation" or the rantings of Taliban leaders who accuse the entire Muslim government of being "infidel."
社会全体の微妙なイスラム化への傾斜
それでもなおかつ、世論を分析する専門家である批評家の中には、表立ってはいないけれども、パキスタン社会にかすかに芽生えている危険な兆し、過激派を支持する風潮へと「時代を逆行する反動の傾斜」を感じ取っている者もいる。
その兆候は、イスラム原理主義の訓戒師のように「シャリア国家を!」と火を吐くような演説を展開するのでもなければ、イスラム教の現行政府全体を「不浄な輩」と決めつけるタリバン指導者の絶叫ともちがって、きわめて微妙な傾向に過ぎない。
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タリバンが支配する土地では、中央政府への密告者や親米派とみなされる一族は、家族全員がテロの対象となった

24. 'Talibanization of the mind'

These observers describe a creeping social and intellectual chill that several have called "the Talibanization of the mind." It is a growing tendency for women to cover their faces, for hosts to cancel musical events.
タリバニゼーションの精神構造
こうした観察者は、社会の奥深くしのびよる知的啓蒙を冷遇する傾向を看破し、一連の負の方向への社会全体の心理的傾斜を、「精神のタリバニゼーション=タリバン化する社会思潮」と呼ぶ。
特にこの傾向は女性層に著しく見られ、イスラム教特有のベールで顔をおおったり、音楽イベントを主催してきたホストがキャンセルしたり、といった変化がしばしば見られるようになった。
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生活の隅々まで規制するイスラム原理主義は、テロリズムを観念ではなく骨身にしみる恐怖政治として植え付けた

25. Silencing the free opinions

For journalists, they had to use phrases that would not offend powerful Islamist groups, for strangers to demand that shopkeepers turn off their radios. "With each passing month a deeper silence prevails," columnist Kamila Hyat recently wrote in a widely circulated article.
思想・言論の自由を抹殺する風潮
パキスタンのジャーナリストは長年の習慣で、イスラム過激派グループに対して攻撃的な言葉の使用を避ける術に長けているので、今のところ衝突は起きていないが、外国人はこうした習慣に不慣れなため、原理主義の支持者が外国人所有のショップに入っては(音楽を流す)ラジオを消すよう注意したりする場面も見られる。(注:イスラム過激派は音楽・芸術も堕落の風潮とみなすため)
「これまでの数ヶ月、街中での沈黙の度合いはますますひどくなってきている。」
パキスタンの政治コラムニストのカミヤ・ハイヤット氏は、国内で広汎に読まれているメディアのコラム欄で、ごく最近こう感想をもらしたばかりだ。
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この少年のような西欧風の服装は、真っ先にイスラム過激派の攻撃の対象になる。撮影は5/2だがその後先週、少年の学校のあったハリプールの町はタリバンの手に落ちた。はたしてこの少年は、無事に過ごせているだろうか?

26. 'Must struggle to regain the liberties'

字数制限のため英文省略
「失われた自由の復権を目指す闘い」
「パキスタンの一般民衆は、不確かな将来を見通せない不安にかられ、宗教に逃げ込もうとしている。その理由は、この国の指導者が国家の問題と取り組むことに失敗したことに尽きるだろう。」
(注:スワット地方でのタリバンの萌芽を摘出せず、逆に迎合してタリバンに自治権を与えてしまった失敗策を指す)

そうしてハイアット氏は、彼のコラムをこう結んでいる。
「われわれがタリバンに奪われた祖国の地を回復するためには、彼らと闘わねばならないのと同じように、われわれが失いつつある(精神の)自由を回復するためにもまた、抑圧するものと正面から闘って、自由を勝ち取らねばならない。」  <了>

【 米国時間 2009年5月11日 『米流時評』ysbee訳 】
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昨年までは「Go U.S.」だったが、現在は「Go Taliban」に180度転換した首都イスラマバード市民の抗議運動

   ◀ 次号「タリバン+封建主義+コールドプレイ=Remix」
   ▶ 前号「21世紀狂気の蛮族 タリバン最期の日々」
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by ysbee-2 | 2009-05-11 13:56 | タリバニスタン最前線
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