人質解放!ビル・クリントンのYES, YOU CAN外交
||| 金に言わせた YES, WE CAN |||
人質解放の交渉役として、米人の誰もが想定していた
アル・ゴア元副大統領や、北朝鮮との交渉実績のある
ビル・リチャードソン元国連大使をさしおいて、
なんとなんと、現国務長官の夫君が、救出の特命外交に。
それが、わずか24時間前の臨時ニュースで、
一夜明けた今日は、早くも「人質解放!」で沸き立っている。
何なんだ、この即決の氷解ぶりは?
今まで何か月も国務省が呻吟してきた難問が、
ビルの一声で解決を見た。
(もっとも人質解放だけで、核問題は依然むずかしいだろう)
「猊下、許してくだされ」と懇願したのか?
それとも、「あなた方にも平和外交はできる」というビルの甘言にのって
金の方から「YES, WE CAN」と答えたのか?
捕虜取引には応じないという米国政府の大前提からいって
今回の交渉は、あくまで人質の個人レベルでの人道的救出
そういう建前を、交渉の最後まで通さなければならない。
しかし、ヒラリーがぴしゃりと貼った「わがまま坊や」のラベルを
地球を半周して、平壌にふんぞりかえる金正日の額からはがすのに、
ビル・クリントンは、いったいどういう剥離剤を使ったのだろう?
マジカルな潤滑油でもふりかけてきたのか?
実際に金とビルの間で、どういう言葉が交わされ、
いったい何が交換条件として申し出されたのかは、
多分オバマから次の政権へ代わる時点まで
公けに明らかにされることはないだろう。
それが国家外交の機密だ。
現役は沈黙するのみ。
いや、元大統領であれば退役将校の最たる者だが、
ビルの場合、現役の外交官が束になっても叶わない
ネームバリューと外交の馬力を確保している。
世界を縦横無尽に飛び回れるようになったように見える。
彼のそういった二次的な、
いわば「亜閣僚」としての存在価値は、
オバマが大統領に選出されて以来、
ワシントン雀の口に 何度上がったことだろう。
私自身、当初オバマが 民主党の予備選でヒラリーを破った時点で、
「ヒラリーを重用して国連大使にすればいいのに」と思っていたら、
組閣でなんと、国務長官に大抜擢した。
ひょっとすると、副大統領よりも厳しい激務を、連日連夜
世界の各都市へ飛んでこなさなくてはいけない要職である。
そして現在まで、彼女はその重責をむしろエンジョイして
各国代表との外交交渉を次々とこなしているように見える。
しかし、北朝鮮との間は、ブッシュ時代よりも悪化したかに見えた。
さらには プーケットで開催されたASEANで、
北の外交代表と丁々発止の舌戦を展開してしまった。
自分の本心には嘘のつけない人間なのかもしれない。
もし彼女のあの強硬な姿勢が、今回の夫君の快挙を引き出すための
弓をひきしぼるような、伏線としての後方助走だったとしたら、
これは素晴らしい、コンビネーション外交のテクニックである。
米国らしく、レディファースト。婦唱夫随である。
これは、オバマ外交の一大特徴かもしれない。
当初は逆方向へ引いておいて、
反対派からまで なんで走らないのかと揶揄される状況を創り
弓を引き絞った状態にしておいてから、いきなり走り出す。
ロケットのごとく発射! というほうが当たっている。
つまり、国民の苛立ちや、評論家の風当たりといった
反撥力までも、起動力・瞬発力に同化応用してしまう、
ちょっと今までにないポリティカル・ダイナミクスだ。
そんな観念が、すでに存在しているのかわからないが、
「政治力学」という言葉が実にぴったりな動きである。
もはや地政学のような、20世紀型の二次元的戦略外交の論理は
瞬発で潮目の変わる、時代の速度についていけないでいる。
Twitterを介して テヘランの市民と
瞬時にコミュニケートできてしまう時代。
ラビア・カーディル女史の悲しみを
東京の人間の方が、ワシントンの政治家よりも
即座に理解できてしまう時代。
そういうふるいをかけない生の情報で、思いを共有し
国境も人種も越えた、ひとりの生身の人間同士として
素直に一体化できる時代に、私たちは生きている。
私たち自身の声が、時代を創り変えていく時代に。
何か久々に、クリントンの鮮やかな外交の成果に対して
お見事!という快哉が、アメリカ全体から聞こえたので
いつもながらの、どうでもいい 野次馬的駄文を連ねてしまいました。
本来の記事はこの次のエントリで、真面目にお届けしたいと思います。
もうひとつ。夢をあきらめない、思いを捨てないことの大事さ。
機会ある毎に、TVのモーニングショーや報道番組に出てきては
無事に帰還を訴え続けてきた、二人のジャーナリストの家族たち。
もしかしたら、新しい道が拓かれたのかも知れない。
たとえ絶望的でも、決してあきらめてはいけない。
北朝鮮に拉致連行された、日本人の人質の方々も、
家族のもとへ無事に帰る日が、近いうちに必ず実現することを願って。
【米国時間 2009年8月4日『米流時評』ysbee 】
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by ysbee-2
| 2009-08-04 14:15
| トンデモ北朝鮮