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スワット谷の夜明け・タリバン戦線の鍵を握るパシュトゥン族

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  ||| スワット谷パシュトゥンの夜明け |||

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 ブッシュの始めたタリバンとの戦争を、オバマは終わらせることができるか?
 テロ戦争9年目、終結の鍵を握るスワット谷・パシュトゥン民族の自衛組織


スワット谷の夜明け・タリバン戦線の鍵を握るパシュトゥン族_d0123476_16582178.jpg昨日末尾にちらっと書き足した補足の部分が
実はかなり重要なヒントを含んでいるように思えるので、
今日の冒頭で、記事リンクと一緒にあらためて書き直しました。
この8年のテロ戦争に対する、私の真情です。

【 スワット谷に夜明けは来るか 】

 今年5月、パキスタン政府軍がタリバン掃討戦に本腰を入れ、
 空爆まで含んだ全面戦争を宣言。
 タリバンが完全に掌握していた北ワジリスタン州の
 スワット谷一帯に、大々的な侵攻作戦を展開した。
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 おかげで、戦火を逃れる住民200万人以上が
 比較的安全な、首都ペシャワール郊外などへ大移動。
 
 つまり、わずか1週間足らずで、群馬県や栃木県とほぼ同じ面積の地域から
 県の総人口と同数の住民が、全員脱出したのと同じである。
 「エクソダス」のタイトルが大袈裟ではないことが察せられよう。
 
 実態調査に難民村を訪れた国連の調査団も、
 言語に絶する難民のスケールに、絶句するはずである。
 
 今年5月の当時の詳細は、米流でも「スワット谷のエクソダス」として連載。
 5/07 第1章「百万人の難民エクソダス・パキスタン最前線レポート」
 5/08 第2章「スワット谷のエクソダス・タリバニスタン民族大移動 」
 5/09 第3章「さらば中世! タリバン恐怖政治の終焉」
 5/10 第4章「21世紀狂気の蛮族・タリバン最期の日々」
 5/10 第5章「テロ戦争終章へ・アフパキ前線のエンドゲーム」

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 一方、ミンゴラなどの町中は空爆で見る影もなくなったが、
 かつてはのどかな果樹園の緑の谷間だったスワット谷に
 避難していた住民がちらほら帰郷。

 パキスタン政府軍の警備兵がパトロールしているものの
 一旦掃討したタリバンがリターンしないように、
 地主である地方豪族の長老以下、住民の有志は、
 政府から武器を供与してもらい、自警団を形成した。
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 これは、パキスタン政府にとっても、住民自身にとっても
 実に革命的なできごとである。
 
 なぜなら、この地域の住民は、
 昔日のアレキサンダー大王の東方遠征の時代から
 外部からの侵略者に対しては、徹底抗戦。

 何千年にもわたって伝承されてきた
 「外敵に屈しない」という民族の誇りを
 唯一の精神的資産として守り続ける彼らから見れば、
 中央政府でさえも、彼らの自治権を奪う「略奪者」なのだろう。
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 辺境と言われながらも、数千年の歴史が織り込まれたこの地に、
 数百代にわたって住み続ける、パシュトゥン民族。
 
 近代化を標榜する中央集権の国政をうとんじて
 国家的行政や事業にも なかなか参加しようとしない。
 社会慣習としての行事は、地域の長老が執りしきる。

 特に近年、米国のテロ戦争以降は
 ムシャラフ軍事政権は、イスラムの教理に背信する、
 アメリカの傀儡と嫌悪されてしまった。
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 こうした、歴史と因習に封じ込められた経緯があるので、
 一歩間違えばタリバンに寝返るかも知れない
 中央政府の宿敵だったパシュトゥン族に、
 政府側から武器を供与というのは、驚愕の方針転換である。
 
 しかしイラクでは、スンニ派の蜂起が絶えなかった
 やはり反政府的体質の アンバープロバンスで、
 この大胆な政策を実施し、平定に成功した。
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 この地元民の反抗するパワーを、逆手にとって
 テロの恐怖政治でこの地域の社会活動を麻痺させていた
 イラクアルカイダを地域から掃討する軍事力に転換する政策。

 これが「アンバーの夜明け」とか「スンニの目ざめ」と呼ばれる、
 地元住民を味方の戦力にとりこむ施策である。

 当時のイラク大使で「バグダッドのロレンス」と異名をとる
 国務省の英才、ライアン・クロッカーが発案。
 当時イラク米軍の総指揮官だった ペトレイアス司令官が実施した。
 この施策以降、スンニ派のテロ活動は激減した。
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 多分、イラク平定の成功策を、パキスタンにも応用する意図で
 ペトラエウス司令官の地域戦略を、過去の成功戦略として分析。
 
 これを戦略アドバイザーのジェームズ・ジョーンズ大統領補佐官が
 タリバニスタンと呼ばれる国境地帯の、地域特性に沿うよう策定し直し、
 アフガン・パキスタン地域専任のリチャード・ホルブルック外交特使が、
 現行政府のザルダリ政権へ箴言した結果だろう。
 
 ブッシュ時代には、アフガンとパキスタンを分離して対応し
 米軍の戦力の大半を イラク侵攻に向けたために、
 そのあとのタリバン戦略は、パキスタンの地元警察や国境警備隊による
 神出鬼没の叛徒を後追いする、モグラ叩きにひたすら終始して
 結果的にタリバンは、テロ戦争以前の領土を挽回してしまった。
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 ブッシュは本当に、戦争が下手である。
 長期にわたっての、為政者としての政治的理念というものがない。
 そもそも、終戦を見越した地域平定という観念が欠落していた。
 
 あったのは、ネオコンのニューワールド構想が
 ご破算で願いましては……と勝手に中東全域の国境線を引き直した
 「悪魔の地図」と(アラブ世界ではそう呼ぶらしい)、
 軍産共同体の、兵器と戦闘機と爆弾の、莫大な消費計画。

 レジデュアル・インカムならぬ、レジデュアル・コンサンプション。
 ネオコンというハツカネズミが、永遠に回し続ける
 軍事消費の永久輪廻だった。
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 ブッシュ政権下のペンタゴンでは
 米軍は実に、米国のためではなく、
 他国の軍事と経済の、覇権の指令の元に闘わされた。
 
 イスラエルロビー団体AIPACの思惑をそのまま投影して
 ブッシュとチェニーが進めた中東の解体と再編成。
 その目的は、
 イスラエルの軍需産業への長期大規模発注と
 サウジ王家のライバル国家打倒による中東覇権と
 英国石油ブリティッシュ・ペトロリウムの石油業界寡占。
 
 米軍は、それらを都合よく実現するために引かれた
 イラクとイランを攻略する青写真にそって、
 ドルで雇われた中東の傭兵役を果たしたにすぎない。
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 戦争とは、そのゴールに平和を見越して、初めて
 国際社会から、開戦事由の意義が認められる。

 平和を最終目標におかない闘いは、
 おおよそにして侵略行為であり、
 単なる「連続する戦闘行為」に過ぎない。

 その一点で、「戦闘の永続」を目的とする軍需産業、
 特に、米国の軍産共同体が、国家の軍事政策を左右するのは、
 根本的に、アメリカ合衆国の憲法違反であり、国家反逆罪である。
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 ブッシュ政権の、特にチェニーの犯した大罪をならべたてるのは
 他の機会に回す。
 
 さもないと、1週間あっても終わらずに、
 最後は、ハーグの国際裁判所まで
 その足跡を追っていかねばならないはずだから。
 
 【 米国時間 2009年8月9日『米流時評』ysbee 】
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 ▶【イラク戦争特集】2007年『米流通信』イラク戦争記事一部リスト
 07/2/06 「アメリカはなぜ勝てない?イラク戦争諦観」
 07/8/23 「イラクの4年半・長く熱い終わらない戦争」
 07/9/10 「ペトレイアス将軍のイラクレポート」


スワット谷の夜明け・タリバン戦線の鍵を握るパシュトゥン族_d0123476_11564496.jpg◀ 次号「タリバンのエンドゲーム・テロ戦争の潮目」
▶ 前号「特報!米ミサイルでタリバン首領メスード爆死」

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スワット谷の夜明け・タリバン戦線の鍵を握るパシュトゥン族_d0123476_19283012.jpg記事リンク http://beiryu2.exblog.jp/10088349
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by ysbee-2 | 2009-08-09 19:40 | タリバニスタン最前線
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