鳩山文化大革命・デザート政策の致命的欠陥
||| 政治はデザートハウスではない |||
日本の官公庁の「人的・知的資産の喪失」を招く
米国時間 2009年9月4日 『米流時評』ysbee
次期鳩山政権の打ち出そうとしている施策が次々に明らかになるにつれ
そのあまりの無謀さ加減に、不安を通り越して、めまいさえ覚える。
それはまるで、女・子供に受けのいいデザートを連発して
日本人の主食である米作は、儲からないからやめてしまえ、
というような、目先の人気取り政策の羅列に見えてしまう。
ひとつひとつの政策に関しては、編集人のみなさんが
各自のブログのエントリーで論証してらっしゃるので、
外地在住で詳細に関してうろんな私は、言及を控えるが、
ひとこと言わせてもらえれば、政治はデザートハウスではない。
いかに愚民でも、愚痴をこぼさずにはいられないほどの愚策。
例えば、その端的で極端な一例が、公務員削減である。
しかし、数字のマジックにだまされてはいけない。
「国家公務員 30万人の人員削減」とうたっているが、
それはとりも直さず、30万人の失業者を出すこととなる。
解雇される者の家族を勘定に入れれば、全国で30万世帯
およそ120万人の家族が、一挙に路頭に迷う事態を生む。
彼らに対する退職金や、失業保険金の支給額も膨大なはずだ。
さらに、ひとりひとりの家庭の事情を考えれば、
住宅のローンやらクルマの割賦やら、
さらには、子供さんの教育費・進学費用など………
100万人のそれぞれの人生が、
挫折と屈辱への路線変更を余儀なくされ、運命が一瞬で暗転する、
取り返しのつかない悲劇を生むだろう。
その社会的罪の重さは、計り知れない。
もちろん、無駄な経費は削減すべきだが、
この30万人の公務員は、果たして「ムダ」な人材なのだろうか?
30万という数字をはじき出した根拠は、どこにあるのか?
各省庁の管理職と充分話し合った上での決定なのだろうか?
どうも、それ以外の杜撰な改革案からも察せられるように、
波及効果の大きさや、現場で発生するであろう機能障害など
人的な相乗作用を緻密に検討した上での数字ではなさそうだ。
最大の痛手は、各省庁で汗を流す現場職員の意欲喪失である。
上からのツルの一声で首が飛ぶ、恐怖政治のような職場環境。
事務次官と言う「立法と行政のもっとも有効なパイプ役」を、
小面倒くさい邪魔者、と短絡の判断で一蹴し処分してしまう。
その結果「お上」の指令を、批判もなく唯々諾々と飲み込む
腐った卵だけが残る結果になりはしまいか。
一連の公約を眺めても、何か政策というよりも、むしろ
まるでキャッチコピー程度の浅薄さなのが、見え見えで
その財源を、いったいどこから持ってくるのか?
(元来経験の無い者に、それを判断する能力を持ち得るはずがない)
こうした未熟な連中に国全体をあずけるのか、と思うと
いかに外地住まいと言えど、ぞっとする。
一連のいわゆる「革命的」と自賛しているらしい
改革案とやらが繰り出されるにつけ、
脳裏を横切るイメージを払拭できない。
それは、あの文化大革命のマニフェストを連呼して、
経験も責任もない若者たちが、赤い毛沢東手帳をふりかざして、
旧来の体制すべてを、善し悪しの判断区別すらせずに
一挙に破壊し廃棄していった、紅衛兵たちの行進のイメージだ。
海外からも、その実績で高い評価を受けている日本の官僚制度。
米国のオバマ政権でさえ、勤勉で優秀な「官僚」の見直しをしている。
亡くなったテッド・ケネディも「パブリックサービス」の重要性を
ことあるごとに、身をもって強調してきたではないか。
政府の政策が行政の現場で、実質的に有効に機能するかどうかは、
ひとえに優秀な官僚たちの、地道な努力と献身に
無言のうちに支えられてきたからではないのか。
また、各省の次官たちが、指導体制と現場の実情とを擦り合わせ、
試行錯誤に費やす時間と予算の無駄を省く、着地可能な実施案で、
リスクを最小限に抑える法案実施の実績を、
戦後60年余り、日夜 積み重ねてきたからではないのか。
そうした「熟練」の価値をみくびるのは、日本の損失である。
たまさか浮上する腐敗官吏の汚職を、
それ以外の大部分の、勤勉で良心的な公務員に当てはめるのは、
あまりにもマスコミのいいなりで、酷である。
残業に押し潰されるような毎日を、家族のためというよりも
仕事のため、日本のためと覚悟して、むち打って働いているお役人を
私は何人も、何十人も身近に見てきたし、
都市開発のプロジェクトを通して、一緒に仕事をしてきた。
「そんなに根をつめて仕事すると、死んじゃうよ」
と言ったり言われたりしながら、
プロジェクトの納期に間に合わせるために、幾晩も徹夜を続け
本当に過労で死んでしまった仲間も、長い人生で3人ほどいる。
その事業がうまくいくかどうかは、担当する者の「熟練」の度合いと
いやになるくらい比例するものだ。
それは、その業界で修練を積んで、10年以上経って初めて痛感する、
職場の方程式であり、仕事の法則だ。
人心・風紀刷新はいいが、良き老練職員の経験まで切り捨てるのは、
その職場の資質を、いちじるしく喪失する。
鳩山氏に、企業を運営した経験がおありなら、
そうした「職場の知恵」は、いやおうに身にしみていたはずである。
それは、官公庁と民間法人との区別なく、
金には換算することのできない、
あらゆるビジネスの現場での、恩恵であり、資産である。
ものごとを前へとおし進めるパワーの根源であり、
最終の目的地まで飛行し続ける、ビジネスの本能、
内なるスピリット、そのものである。
温故知新。
経験は尊ばれこそすれ、うとまれるべきものではない。
それは、成功を目指す社会の、地図でありコンパスである。
それは、コンピュータの数値にはけっして現れない
既得の、貴重な人的・知的資産である。
もしも職場に「伝統」というべきものが存在するなら、
その会社なり省庁は、断絶することはない。
日本の社会そのものが、格好のモデルでもあるが
伝統と言う、目に見えない存在そのものが、
これまでの日本を牽引する精神の軌道であったはずだ。
それはまた、仕事と人生という表裏一体の運命を
明日の社会へと動かし続ける根源のエネルギー、
人間の「血」であり「魂」であるだろうから。
【米国時間2009年9月4日『米流時評』ysbee】
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