「大草原の小さな家」初刊から75周年
全米児童文学の古典として今なお愛される作者の生前の家を訪問
2007年5月27日 ミズーリ州・マンスフィールド発 |ミズーリの片田舎オザルクの農家の片隅にある、小さなライティングデスク。この何の変哲も無い素朴な木の机は、これまでにここを訪れた者の何人もの涙をそそってきた。西部開拓者として過ごした自分の子供時代を回想して書いた、ローラ・インガルス・ワイルダーの小説『大草原の小さな家』は、愛読者にとってはそれだけ懐かしい思い出に彩られているようである。現在でもミズーリにあるローラの生前の家に足を踏み入れ、彼女がその本を書き綴った実在のデスクを目の当たりにする時、そのあまりのつましさにファンの中には思わず落涙してしまう者もいるようである。
'Little House' Still Resonates after 75 Years
Laura Ingalls Wilder's tales of prairie childhood remain popular
MANSFIELD, Missouri — Associated Press |MAY 27, 2007 — A narrow wooden desk in a corner of an Ozarks farmhouse has been known to move visitors to tears. Some readers have such fond memories of the "Little House" novels about Laura Ingalls Wilder's frontier childhood that they cry when they walk into her Missouri home and see the desk where she wrote many of the books.
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MAY 27, 2007 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽 園 通 信』デイリー版
Associated Press | MSNBC.com
|||「大草原の小さな家」初刊から75周年 |||
1. 75th anniversary since the first publication
April marks the 75th anniversary of the first publication in 1932 of "Little House in the Big Woods." The story of Laura's early life in a cabin in 1860s Wisconsin launched a nine-book series that made Wilder a household name, helped by the hit award-winning TV series "Little House on the Prairie" that ran on NBC from 1974-1983. Embraced from the start by America's teachers, the books have been read by or to generations of elementary school kids, which has helped to keep the books in continuous print. The series has sold more than 41 million copies in the United States and been translated into more than 40 languages, from German and French to Arabic and Japanese.
▲74年から10年間アメリカだけでなく放送された各国で大人気を博したホームドラマ 米国では現在も再放送中
「大草原の小さな家」初刊から75周年
1932年に『大きな森の小さな家』が初めて刊行されて以来、今年の4月で75周年を迎えた。1860年代にウィスコンシン州の小さな丸太小屋で過ごしたローラの少女時代の物語は、全部で9冊を数えるシリーズとなった。
またこの原作を脚色した1974年から1983年まで10年間も続いた全米ネットNBCのテレビドラマ『大草原の小さな家』が、数々の賞を受賞するヒットシリーズとなったことも手伝って、作者ローラ・インガルス・ワイルダーの名は、誰もが知る女流作家としてアメリカ中に轟いた。
初版出版後まもなく全米の教師によって絶賛されたように、この本は主に代々小学生への推薦書として愛読されてきており、それが絶え間なく再販を繰り返すことに繋がったと思われる。ローラの書いたシリーズは、現在まで米国内で売れただけでも4100万冊にのぼり、ドイツ語、フランス語、アラビア語、日本語ほか40種類以上の言語に翻訳され、現在では世界中で愛読される児童文学の古典となった。
▶インガルス家の三姉妹 左から末っ子のキャリー、長女のメアリー、次女で作家になったローラ 1870年代の写真
2. Sweet home for Laura and Almanzo
The white clapboard farmhouse where Laura and her husband Almanzo spent most of their adult lives stands on a hillside among rolling pastures and woods in the Ozarks of southern Missouri. The couple moved here to raise apples and horses after losing their first farm in South Dakota and briefly living in Florida. Wilder was already famous in her lifetime and the home was quickly preserved as a museum after her death in 1957 at age 90.
ローラとアルマンゾ夫妻の峠の我が家
ローラと彼女の夫アルマンゾが結婚後ほとんどそこで過ごした白い木造の田舎家は、ミズーリ州南部オザークスの木立に囲まれたなだかな丘の上に、今でもひっそりと立っている。ワイルダー夫妻は、サウスダコタ州の彼らの最初の農家を手放してからしばらくフロリダ州で過ごした後この土地に移り、リンゴを栽培し馬を育てながら生計を立てた彼らにとっての「我が家」である。ローラ・インガルス・ワイルダーは、『大草原の小さな家』の出版とともにすぐに人気を博し、生前にはすでに著名作家の地位を確立していた。彼女が1957年に90歳で亡くなると同時に、この家はそのまま彼女を忍ぶ記念館に変身した歴史を持つ。
▼サウスダコタからフロリダと転々としたワイルダー夫妻もミシシッピー州オザークスのロッキーリッジを終の住処に
"We've had people who've actually come to tears over it," tour guide Rebecca Dierksen said about the writing desk at the Laura Ingalls Wilder Historic Home and Museum, which gets about 40,000 visitors a year. "They're just in awe. So many of them have wanted to come here for years and then they actually walk in the house."
The 40-acre farm the Wilders bought in 1894 for $400 now includes a museum with artifacts from Laura's collection, including a fiddle her father played in Laura's stories, a quilt made by her sister Mary and handwritten manuscripts of the books.
記念館訪問者は見るもの全てに感動
「ここに来られた方は、これを見ると感極まって実際涙を流しますよ。」毎年4万人以上の訪問者を迎える『ローラ・インガルス・ワイルダー生家記念館』ガイド役のレベッカ・ダークセンさんは、こう説明する。「みなさん、ひたすら感動するようです。訪問する方のほとんどが、この場所を訪れたいと何年もの長い間憧れていて、それがついに念願かなってローラの生前の家に実際に足を踏み入れるのですから、無理もありません。」
ワイルダー夫妻が1894年にわずか400ドルで購入した40エーカー(約5万坪弱)の農場は、今やローラのコレクションである民芸品などを納めた博物館の所在地である。その中では、物語にも出てくるローラの父親が弾いたバイオリンや、彼女の姉メアリーが作ったキルト、そしてローラ自筆の本の原稿なども展示されている。
▶写真はローラが最初の原稿を書いたライティングデスク 記念館の片隅で実際に使われていた状態で展示されている
4. First draft in her early 60s
Laura Ingalls Wilder spent more than 30 years painstakingly developing the rocky farm with her husband before sitting down to write about her childhood on the vanished frontier. She was in her early 60s when she attempted her first draft in 1930, a first-person memoir called "Pioneer Girl." That roughly 200-page manuscript was submitted to publishers and magazines by Laura's only surviving child, Rose Wilder Lane, a successful writer, journalist and novelist. The manuscript was turned down but prompted a publisher's suggestion that Laura rework her stories as a fictional account for children.
60代に入ってからの著作生活
ローラ・インガルス・ワイルダーは夫とともに岩だらけの痩せ地の農場を開墾し、その後30年間もリンゴの栽培や馬の飼育などに明け暮れたあと、初めて腰を下ろし、すでに消え去った過去となった開拓時代の子供の頃を懐かしく思い出しながらペンを執ったのである。1930年代に『パイオニアガール』と名付けられた回顧録になるはずだった最初の原稿を書き始めたのは、彼女がすでに60代に入ってからのことだった。およそ200ページあまりの手書きの原稿は、当時作家・小説家兼ジャーナリストとして成功を収めていたローラの一人娘であるローズ・ワイルダー・レーンによって、出版社と雑誌社に出版の意向を伺うべく送付された。出版社は一旦その手書きの原稿を差し戻したとはいうものの、ローラに対して子供向けの小説として書き直してみたら、という提案も忘れなかった。
▶写真は1885年のローラと夫のアルマンゾ・ワイルダー この翌年に一人娘のローズがロッキーリッジで誕生
5. 'The Ghost in the Little House'
To this day, Wilder enthusiasts and scholars debate how much Rose was responsible for the content of the Little House series. An experienced editor and author, Rose revised her mother's handwritten manuscripts and typed them. Historian William V. Holtz argued in his 1995 book, "The Ghost in the Little House," that Rose's revisions were so extensive that she was actually her mother's ghost writer. But that judgment goes too far, say many other Wilder scholars.
ローラの娘ローズは母親のゴーストライター?
今日に至るまでワイルダーの熱烈なファンや研究者は、この「小さな家」シリーズの著述のどこまでが娘のローズの手になるものかという議論を繰り返している、経験豊かな編集者であり作家であったローズは、彼女の母ローラの手書きの原稿をすべてタイプで打ち直した。歴史研究家のウィリアム・V・ホルツ氏は、1995年出版の彼の研究書『The Ghost in the Little House』の中で、こう論議のポイントを指摘する。「ローズは原稿をあまりにも手直ししすぎたので、その結果彼女自身母親のゴーストライターになってしまった。」しかし、ワイルダー研究の他の学者たちは、その説もまた行き過ぎであると判定を下している。
▼左から、すでにベストセラー作家として名声を馳せた晩年のローラ・インガルス・ワイルダー/作品を書き始める60才まで農場の切り盛りに精を出したロッキーリッジの我が家 現在は「ローラル・インガルス・ワイルダー記念館」として一般公開/ローラとアルマンゾの一人娘、作家でジャーナリストのローズ・ワイルダー・レーン
"I felt that it was a good collaboration," said William Anderson, author of several Wilder biographies and related histories and a board member of the Wilder Home Association that operates the Mansfield site. "Laura wrote all those books. We have the manuscripts and drafts. Rose was living there on the farm at the time. It was natural that she as an established professional and editor collaborated" with her mother, Anderson said.
作家の母と編集者の娘の協力の賜物
「私は、この本が二人の間のいい協力関係の賜物だと思いますよ。」こう言うのは、マンスフィールドの記念館を運営するワイルダーホーム協会の役員であり、すでに何冊かのワイルダーの伝記や関連する歴史書を著している作家、ウィリアム・アンダーソン氏である。「これらの本すべてはローラが書いたものです。その下書きも原稿も存在します。原稿を書いた当時、ローズはまだあの農場に住んでいました。すでに地位を確立したプロの編集者として、彼女が母親に協力したのはきわめて自然な成り行きです。」アンダーソン氏はこう解釈している。
7. 'They really are a phenomenon'
John E. Miller argues in his 1998 biography, "Becoming Laura Ingalls Wilder," that Laura was a talented writer who provided the story lines and most of the language for her books. Rose, he argued, deserves "major credit for helping shape the material into publishable form and for making revisions that usually — but not always — improved the final product." Whatever the creative process was, the result was a series that has remained on reading lists for generations of children, teachers and parents. "They're a phenomenon, they really are," Anderson said.
アメリカ児童文学の傑作
またもうひとりの著者ジョン・E・ミラー氏は、1998年出版のローラの伝記『Becoming Laura Ingalls Wilder』の中で「ローラは才能ある作家であり、彼女の本の物語の筋書きとほとんどの記述を自ら手がけた」と書いている。しかし次のような記述で論点を明らかにもしている。「元々の素材原稿が出版にそぐう形態となるように、また最終作品として練られたものとなるため文章の体裁を整えるために、常に毎回ではないが通常ローズは大きな役割を果たしたという評価にあたいするだろう。」
たとえ創作過程がどうであれ、このシリーズが代々今日にいたるまで、児童・教師・両親の推薦する本のリストに常に挙げられてきたことがその結論であるようだ。また前述のアンダーソン氏も「このシリーズは傑作です。実際その通りですよ」と絶賛を惜しまない。
8. Popular among teachers and librarians
One reason is that the books fit a specific educational niche, Anderson and others said, covering the period of U.S. westward expansion at a grade school reading level. And the books are popular among today's growing ranks of home-schoolers, according to publisher HarperCollins.
An enthusiastic response from America's teachers helped get the first books over the hurdle of being published during the Depression. "Wilder herself knew that she had a strong debt to teachers and librarians because they embraced the books first and really made them known," Anderson said.
教育者と図書館司書の推薦で初版本刊行
アンダーソン氏を始めとする多くの研究者の説では「米国が西へ西へと発展して行った時代を小学生でも読めるレベルで描写していることが、この本が特に従来欠けていた部分の教育の穴を埋めるテキストとして優れている理由のひとつだ」と説明する。出版元のハーパーコリンズ社の分析によると、今日急激に増加している家庭教育者の中で特にその人気が著しい傾向があるそうである。
1930年代の大恐慌時代に、全米の小学校教師たちからの熱狂的な反応を背景に、この本は初刊の出版にこぎつけた。アンダーソン氏は、その件に関しても充分承知している。「ワイルダー自身が、現場の教育者や図書館司書たちに借りがあるということをよくわかっていました。なぜなら、彼らが一番最初に愛読し絶賛してくれたおかげで、この本が世の中に広まったのですから。」
【米国時間 2007年5月27日 米流時評 ysbee訳】
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