地の果てへの旅・序章「戦場のジャーナリスト」

アフガン戦争の大地トラボラ再訪の手記『地の果てへの旅』
ロッド・ノードランド。この名が『米流時評』に上るのはこれが初めてではない。昨年の『楽園通信』5月26日号が最初だった。彼は、米国を代表する時事週刊誌『ニューズウィーク』の、当時は中東支局長だった。紹介の記事は「アルマリキ政権初のイラク再建案スクープ」という内容で、国家再建への約束を国民と世界に向けて発表した、イラク民主化の一里塚を刻む画期的なニュースであるはずだった。はずだったというのは、その後シーア派のマフディ軍団とイラクアルカイダと組むスンニ派の攻防が激化して、季節をひとつ越した頃にはすでにご存知の通り、血みどろの市民戦争と化してしまったからだった。03年のバグダッド陥落からマリキ政権成立までの動乱の時期を、バグダッド支局で日夜見届けてきたノードランドは、その後ローマへ赴任し、現在はヨーロッパから中東までを管轄する国際支局のデスクを務めている。
彼の原文を読めば英文学好きの方には一目瞭然なのだが、米国ジャーナリズム特有のハードボイルドで潔ぎよい文体が、ヘミングウェイの随筆を彷彿とさせると感じるのは、文学が専門畑ではない私の思い過ごしだろうか。しかし、簡潔で歯切れのよい文章でありながら、繊細な言の葉の感性がしっかりと脈打っているので、頭の中で朗読してみると流麗な音楽のように心地よく、筆者が幾万と言う書物をかいくぐって、こうした詩情を自然に織り込める文才を磨いてきた事が伺える。

爾来ノードランドは米国の向かう戦場へ数万の兵士とともに趣き、毎回秀逸な記事をものにしては本国へ送ってきた。今回はそうした21世紀の戦場ジャーナリストの代表とも言える彼が、最近復活してきたタリバンの、トラボラの古巣を再訪する手記である。原題は『Return to Bin Laden's Lair』。本来「Lion's Lair」というのは、険しい山地の「獅子の住処」を指すが、ノードランドは Lion を Laden に差し替えている。トラボラの高峻な絶壁に立つ隠れ家を住処としていた孤高のテロリスト、オサマ・ビンラディンの姿が彷彿とするタイトルである。

【米国時間 2007年9月2日 『米流時評』ysbee】
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米流時評 特集 【 次世代アルカイダのグローバルウォー 】
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赤のモスク反乱制圧への復讐テロ、パキスタン各地で勃発、死者150名

7/23 アルカイダ2.0 後編 核目的のパキスタン戦略
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8/28 時評:韓国人人質解放とタリバンの復権
韓国軍撤退が及ぼす日本のテロ戦争協力体制・特措法延長への影響は?
8/30 最後の人質解放で終結 韓国のテロ対応に非難の声
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8/31 タリバン、パキスタン兵300名を誘拐拉致
パキスタン陸軍のトラック部隊をタリバンが襲撃、300人を誘拐拉致
9/01 連合軍、誘拐犯のタリバン70人を殲滅
米軍主導の NATO-アフガン連合軍による合同掃討作戦が奏功
9/02〜 米流時評特集「地の果てへの旅・トラボラ再訪」
序章「戦場のジャーナリスト ロッド・ノードランド」
9/03〜第1章「ジハディスタン」(予告)
アフガンニスタンとパキスタンの国境地帯に復活したタリバン勢力
なぜビンラディンは捕まらないのか/NATOのタリバン掃討作戦/アフガン政府内部レポート/元CIA諜報部員の激白
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by ysbee-2
| 2007-09-03 09:25
| タリバニスタン最前線



