APEC、ブッシュのボタンで起爆した安倍シンドローム

イスラエルとシリアの危機を調べていて、偶然ではあるが解けた謎がある。それは安倍首相の唐突辞任の理由である。各ブロガー諸氏も百家争鳴で自説を述べておられるが、私の場合は極めて単純明快。それは「イラン侵攻」である。安倍氏の辞任宣言のごとく唐突に響くかもしれないが、あくまで私の直感と、それを裏付けるような2・3の事象があるばかりなので、論証するべき証左はない。犯罪学的に言えば、状況証拠というしかない。ひとつには、まずそのタイミング。APECの直後だからである。ここで、イラン侵攻を誘う側の立場であるブッシュの動きを振り返ってみよう。国際社会の大きな舞台での動きだけでも、8月第4週に、メキシコとカナダ両国を股に賭けて「North American Summit=北米サミット」を実施している。ここでカナダとメキシコの協力を再確認した。
【North American Summit Convenes】
【APEC: Bush leaves APEC, braces for new Iraq battle】

一方このAPECでのサイドライン(本会議とは関係のない参加国同士の外交会談)で、安倍首相とブッシュとは直接一対一で会談したことが知られている。再来年の1月に次期大統領にホワイトハウスを空け渡すまでは、ブッシュは何としてもネオコンの「中東ニューワールド構想」の筋書き通りに、イランへ攻め込んで石油利権を手中に収めなくてはいけない。イラクとイラン両方の石油利権を手中にすれば、あとはサウジアラビアの王家が、世界の石油価格を操作し牛耳れる体制が整うばかりだ。そこで、ブッシュは安倍氏から確約を取ろうとしたに違いない。「今度の戦争でも、イラクのときと同じように派兵を頼む」と。そしてもちろん、インド洋上での給油支援体制も。

安倍氏はシドニーで「特措法延長」と「核戦争参加」という「Mission Impossible」をブッシュに約束してしまったのだろう。帰国したら小沢氏と談合し、連立内閣で国会の難局を切り抜けるつもりだったのかも知れない。しかし小沢氏からは、逢う機会までもいたらずに拒絶されてしまった。「なんとか切り抜けよう」という希望的観測が「どうにもならない」という壁に突き当たった時点で、ついに安倍氏は、自らの意志に背く形で辞めざるを得なかったのではないだろうか。
安倍氏が辞意を決意したのは、ブッシュから突きつけられた「核戦争への合意」に添えないと悟ったからであろう。日本の国民がそれを許すわけがない。かくしてブッシュの核融合ならず、首相は「安倍シンドローム」を引き起こし、福田氏が選ばれれば自民党が溶解へのめりこむ寸前の現在である。私が非常にひっかかったのは、1枚の写真(右下)を目にした時であった。このカードはメキシコのカルデロン大統領と、誰あろう自民党総裁選渦中のひと、麻生太郎氏である。

この直後、カルデロン大統領はカナダへ出向き、ブッシュ大統領、カナダのハーパー大統領と共に北米三国サミットに出席している。麻生氏のこのタイミングでの中東訪問に、非常にひっかかる。また、中東三国やメキシコの元首と何を話したかまでは、何びとも与り知らぬところなのは言うまでもない。安倍氏の謎は解けたが、麻生氏の外遊の真の目的「単なる親善外交か、中東紛争への軍事加担アピールか」は、依然謎に包まれたままである。
【米国時間 2007年9月17日 『米流時評』ysbee記】
TBリンク http://beiryu2.exblog.jp/tb/6176069
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■ 外務省参考資料:麻生外務大臣の日程
8月12日成田発/13日ヨルダン/14日イスラエル/15日パレスチナ・左岸のアッバース政権/17日メキシコ/19日〜22日ブラジル 第3回FEALAC外相会合出席/24日 成田着
中東訪問の目的:中東和平について意見交換/パレスチナとイスラエル「平和と繁栄の回廊」構想の推進を協議
メキシコ訪問の目的:気候変動問題等での連携、戦略的パートナーシップ、人的交流強化について協議
ブラジル訪問の目的:2008年日伯交流年成功への協力/戦略的経済パートナーシップ再活性化で意見交換/第3回東アジア・ラテンアメリカ協力フォーラム(FEALAC)外相会合に出席、貿易・投資を中心に議論
■ 緊急特集 『中東大戦争の危機:イスラエル・シリア・イラン』
【序章】 中東戦争前夜?急浮上するシリアとイスラエルの核紛争
【前編】 中東大戦争? 北朝鮮の核、シリアとイランへ?
1. イスラエル爆撃機のシリア領空侵犯 /2. アラブ世界の反応を見るイスラエル /3. イスラエルがとるイランへの厳しい措置 /4. イスラエル爆撃のターゲット /5. 北朝鮮の協力でシリアが核開発?
【後編】 中東大戦争勃発直前の危機と核戦争の可能性
6. 90年代から北のミサイルがイランとシリアへ /7. 国連のIAEA査察団シリアへ /8. オルメルト首相、ブッシュに支援依頼 /9. イラン核開発の進行状態 /10. 核戦争の可能性はブッシュ在任中
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行 く 夏 を 肩 越 し に 見 送 る 9 月 の 海

ご愛読たいへんありがとうございます。
「ブッシュの戦争」はイラク戦争だけでは終りません。
ネオコンの描いた中東ニューワールドの構想では
初めから、イランが最終のゴールにありました。
地図を見れば、アフガニスタンとイラクにはさまれ
石油利権をめぐるオセロゲームに出たのは一目瞭然。
ブッシュ家とサウディ王室との関係も大きな要因でしょう。
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by ysbee-2
| 2007-09-17 15:10
| 欧米の見る日本



