第3章 「新ジェリコの戦い」イランのミサイル報復作戦
イラン・テヘラン発 |19日水曜イランの准国営新聞FARSの報道によると、イラン空軍の副司令官は「万一イスラエルがイランを攻撃する場合には、イランがイスラエルを爆撃する計画は用意できている」と語った模様である。この声明は、一向に停止しない核兵器開発をめぐって、イランに対する新しい経済制裁を米国が国連へ提出しようとしているしている一方で、イランの盟邦国であるシリアの領空をイスラエル空軍の爆撃機が侵犯し、おそらく地上を爆撃したと伝えられる、中東地域が最悪の危機を迎えているさなかにもたらされた発表である。
上:昨年11月6日に実施されたイラン空軍のロケットミサイル発射演習/イラン政府のメディア公開写真より
Iran: We Have Plans to Bomb Israel If Attacked
Statement is first description of how Tehran would respond to Israeli strike
SEPTEMBER 19, 2007 EST | Associated Press/MSNBC.com | Translation by ysbee
TEHRAN, Iran — The deputy commander of Iran's air force said Wednesday that plans have been drawn up to bomb Israel if the Jewish state attacks Iran, according to the semiofficial Fars news agency. The announcement came amid rising tensions in the region, with the United States calling for a new round of U.N. sanctions against Iran over its disputed nuclear program and Israeli planes having recently overflown, and perhaps even attacked, Iranian ally Syria.
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SEPTEMBER 21, 2007 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽園通信』デイリー版
A S S O C I A T E D P R E S S
中東核戦争第3章・新ジェリコの闘い イランのミサイル報復作戦
米国時間 2007年9月19日 | イラン・テヘラン発/AP通信 | 訳『米流時評』ysbee
1. Kouchner warns possibility of war
On Sunday, French Foreign Minister Bernard Kouchner said the international community should prepare for the possibility of war in the event that Iran obtains atomic weapons, although he later appeared to soften that statement.
"We have drawn up a plan to strike back at Israel with our bombers if this regime (Israel) makes a silly mistake," Gen. Mohammad Alavi was quoted as telling Fars in an interview. Fars confirmed the quotes when contacted by The Associated Press, but would not provide a tape of the interview. The Iranian air force had no immediate comment.
フランス外相、核戦争の可能性を警告
16日日曜フランスのベルナール・クーシュネール外相は、「イランが核兵器を保有しているという事態にあっては、国際社会は戦争勃発の可能性に対処する用意をするべきだ」と声明を発表した。もっとも後段になって、外相はこの声明の内容をやや緩和した。
一方イラン空軍のモハンマド・アラヴィ司令官は、前述のFARS紙のインタビューに対して「万一あの国(イスラエル)が馬鹿げた間違いをしでかした場合には、わが国はイスラエルに対して空軍の爆撃で反撃する計画をすでに立ててある」と答えた。AP通信は、FARS紙の報道内容が事実である事を直接コンタクトをとって確認したが、インタビューで使用されたテープは提供してもらえなかった。また、イラン空軍へも同様の確認をとったが、即座の回答は得られなかった。
2. 'Various options open to respond'
Defense Minister Mostafa Mohammed Najjar told the official IRNA news agency Wednesday that "we keep various options open to respond to threats. ... We will make use of them if required." Iran's elite Revolutionary Guards released a statement that the nation was ready for a military confrontation. "Iran, having passed through crises ... has prepared its people for a possible confrontation against any aggression," IRNA quoted the statement as saying.
イラン防衛相「報復手段は色々」
イランの防衛相モスタファ・モハンメド・ナジャール氏は、15日水曜イランの国営新聞IRNAの取材に応えて次のように語った。「わが国には(イスラエルの攻撃という)脅威に対応するために、各種の(軍事報復)手段を用意してある。万一必要であれば、それらの手段を行使するだろう。」
一方イラン政府軍の中でもエリートの精鋭部隊であるイラン革命政府軍「Qods=コッズ」も、同日「国を挙げて軍事的対立に対応する構え(ready for a military confrontation)」という態勢を明らかにした。「わが国は、これまで数々の危機をくぐり抜けてきた(passed through crises)が、これ以上は(イスラエル側の)いかなる暴虐(aggression)に対しても、挙国一致で想定しうる抗争に対処する用意はできている」IRNAの報道で、イラン革命政府軍はこのように声明を発表した。
3. White House's reaction: 'Provocative'
White House press secretary Dana Perino called Alavi's comment "unhelpful." "It is not constructive and it almost seems provocative," she said. "Israel doesn't seek a war with its neighbors. And we all are seeking, under the U.N. Security Council resolutions, for Iran to comply with its obligations."
ホワイトハウス「挑発的発言」
イランでの声明を受けて、米国ではホワイトハウス広報官ダナ・ペリーノ女史が、今回のイラン空軍アラヴィ副司令官の談話を「役に立たない」と一蹴。「建設的でないばかりではなく、むしろ挑発的な発言に思えます」と、アラヴィ発言へのホワイトハウスの見解を表明した。
「イスラエルは、近隣諸国との戦争の種を探している訳ではありません。むしろ国連の安保理事会の施策の元に、われわれ(西側諸国)は全員、イランが(核兵器開発への)その規制をすすんで順守するような方向を期待しています」
4. Rice: 'U.S. committed to diplomacy'
Secretary of State Condoleezza Rice said the United States is committed to diplomacy. But she said "it can't be business as usual" with a country whose president has spoken of wiping Israel off the map. For diplomacy to work, Rice said during a visit to Jerusalem, "it has to have both a way for Iran to pursue a peaceful resolution of this issue and it has to have teeth, and the U.N. Security Council and other measures are providing teeth."
ライス国務長官「米国は外交に徹する」
また国務省(外務省)のコンドリーザ・ライス長官も、米国は外交に徹する(committed to diplomacy)という見解を出した。しかしながら、こうも言っている。
「イスラエルを地図から抹消すると公言するような大統領が支配する国には、通常の外交手段は通用しません。イランは今回の(イスラエルとシリアの対立する)事態に対して、平和的解決を求めるような道をとるべきであり、なおかつ実質的な方策で実行に移さなければいけません。さもなければ、国連の安保理事会と他の国際機関が、経済封鎖等の実質的手段を取るでしょう」ライス長官は訪問先のイスラエルの首都エルサレムで、取材陣に対し米国側の意見をこう表明した。
5. Israel, Iran's first retaliatory target
Israeli Foreign Ministry spokesman Mark Regev said, "Unfortunately we are all too accustomed to this kind of bellicose, extremist and hateful language coming from Iran." "We take the threat very seriously and so does the international community," he added. Iran has said in the past that Israel would be Iran's first retaliatory target if attacked by the United States, but Alavi's comments were the first word of specific contingency plans for striking back on Israel.
第一の報復ターゲット、イスラエル
一方当事者であるイスラエルのマーク・レゲヴ外務省公報官は、次のような談話を発表。「幸か不幸か、わが国はイランから発せられるこのような類いの、挑発的で極端な憎しみの言葉には慣れている。イスラエルはこの脅しをきわめて深刻に受けとめており、国際社会においても同様の対応がある」と述べた。イランは過去においても、万一イランが米国から攻撃を受けた場合には、イスラエルが同国の報復攻撃の最初のターゲットになるだろうと公言していた。しかし今回のアラヴィ発言は、イスラエルに対する報復攻撃の戦略として、特定された仮想プランがすでに存在する事を初めて公けにした見解である。
6. 'The whole territory within our missile range'
Many in the region fear Israel could launch airstrikes on Iranian nuclear facilities to prevent it from building a nuclear weapon. Alavi also warned that Israel was within Iran's medium-range missiles and its fighter bombers, while maintaining that Israel was not strong enough to launch an aerial attack against Iran. "The whole territory of this regime is within the range of our missiles. Moreover, we can attack their territory with our fighter bombers as a response to any attack," the general said.
イスラエル全土がイランのミサイル射程距離内
一方、中東諸国の多くは、イランが核兵器を開発することを防ぐために、イスラエルがイラン国内の核施設に対して空爆を実施する事態を怖れている。しかし、アラヴィ空軍副司令官はさらにこう威嚇的発言を続けた。
「イスラエルは、イランに対して空襲をしかけるほど強力な攻撃体制ではないのに反して、イスラエル全土はイランの中距離ミサイルの射程距離内に入っている。さらに言えば、イランは爆撃機による攻撃の体制を用意しており、いかなる攻撃に対しても直ちに戦闘爆撃機が(イスラエルの)領土を攻撃できる体制にある」副司令官はこう説明した。
7. Capability of carrying nuclear warheads
Alavi also warned that Israel was within Iran's medium-range missiles and its fighter bombers, while maintaining that Israel was not strong enough to launch an aerial attack against Iran. "The whole territory of this regime is within the range of our missiles. Moreover, we can attack their territory with our fighter bombers as a response to any attack," the general said.
新型ミサイルは核弾頭搭載の可能性
イランの最新型「シャハブ3」ミサイルは射程距離1250マイル(約2000キロ)で、イランから発射すれば容易にイスラエル領土まで到達し、しかも核弾頭搭載が可能である。アラヴィ副司令官は、イランのレーダー基地では、24時間態勢で(around the clock)他国との国境一帯の動きを観察しており、たとえ米軍の巡航ミサイルが打ち込まれても、これを迎撃する能力があることを強調した。
「敵側(enermies)が喧伝している軍事力のひとつに、巡航ミサイルが挙げられる。しかし今や、わが国にはそれに対抗して迎撃するのに必要とされるシステムは整っている」イラン空軍のアラヴィ副司令官は、記者のインタビューにこう応えたと報道されている。
【米国時間 2007年9月21日 訳『米流時評』ysbee】
記事リンク http://beiryu2.exblog.jp/6205326
TBリンク http://beiryu2.exblog.jp/tb/6205326
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次号 中東核戦争第4章「深まる中東核戦争の危機 国連とEUの新経済制裁」へ続く
8. 湾岸諸国に高まる緊張感 /9. イラン「イラク・アフガニスタンの駐留米軍も攻撃対象」/10. 国連、イランへ3度目の経済制裁 /11. ロシアは3度目の制裁に反対 /12. 来週NYで国連年次総会開催 /13. 仏外相「EUもUN以上の経済制裁を」
以下「中東核戦争」の記事を継続して掲載しますが、なにぶん事態が極めて流動的であり、また参考記事も時々刻々膨大に上がってきておりますので、予定が繰り上がったりタイトルが変更になることも予想されますので、どうぞご了承いただけますようお願い申し上げます。
||| 中東核戦争 特集記事 |||
序 章 中東核戦争前夜?急浮上するシリア対イスラエル核紛争
第1章 戦争挑発行為?イスラエル爆撃機のシリア領空侵犯
第2章 シリア対イスラエル 中東核戦争の危機は本物か
第3章 新・ジェリコの闘い イランのミサイル報復作戦
第4章 深まる中東核戦争の危機 国連とEUの新経済制裁
第5章 ラマダンとヨムキッパー 老将ナタニヤフの誓い
第6章 アフマディネジャドの大発見 米・イスラエル諜報交換
第7章 アフマディネジャドの大糾弾 イスラエルの核施設
第8章 アフマディネジャドの大遠征 NYに吠える中東の狼
||| 『米流時評』 特集記事 |||
中東のパワーラビリンス 特集 | イラク戦争 関連記事特集 | 安倍首相辞任と総裁選 特集
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秋 と は 名 ば か り の 常 夏 の 庁 舎
いつもご愛読いただき、大変ありがとうございます。
「ブッシュの戦争」はイラク戦争だけでは終りません。
ネオコンの描いた「中東ニューワールド」の構想では、
初めから、イランが最終のゴールとしてありました。
地図を見れば、アフガニスタンとイラクにはさまれ、
石油利権をめぐるオセロゲームに出たのは一目瞭然。
ブッシュ家とサウディ王室の関係も大きな要因でしょう。
ブログ村では国際政治部門でただいま2位です。感謝!
おかげさまでベスト10にはいりました。 ぽちっ!
政治部門にチャレンジです。一歩一歩ぽちっ! 20位から17位になりました。
おかげさまで ニュース部門で1位をキープ。ありがとうございます!
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