米外交のUターン・金正日宛てのブッシュの手紙の謎


イラン評価急旋回に続いて北に対してもブッシュ外交方針の大転換
イランに続いて東アジアもブッシュのカウボーイ外交の汚名返上か

北との平和外交を唱えたビル・クリントン前大統領ですら、国務省高官や外交特使を通じてのコンタクトで、直接直筆の手紙は書かなかったのではないかと記憶している。しかし、今回はよりによって金正日を「悪の枢軸」のひとりに名指しした、ジョージ・W・ブッシュ大統領直々の親書らしい。(英語のままか、朝鮮語訳なのかも知りたいところである)

まあ、そんな下世話な話はコーヒーと共に飲み下していただくとして、ブッシュ政権始まって以来の諜報世界から放り込まれたこの窮地にあって、いったいホワイトハウスの御大が今度は東アジアで何を企んでいるのか?
対中国の外堀外交が始まったのか?
シリア・イランとの切り離し工作なのか?
まずはニュース記事から掘り起こしてみたい。
【米国時間 2007年12月8日 『米流時評』ysbee 記】
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DECEMBER 8, 2007 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽園通信』デイリー版


A S S O C I A T E D P R E S S | B R E A K I N G
東アジア外交の転換か 金正日へ宛てたブッシュの手紙の謎
米国時間 2007年12月6日午後7月02分 | AP通信/ニュース速報 | 『米流時評』ysbee 訳

Bush calls on country to reveal all nuclear programs, administration says
DECEMBER 6, 2007 | Associated Press — BREAKING | Translation by ysbee
WASHINGTON — President Bush’s personal letter to North Korean leader Kim Jong Il, raising the possibility of normalized relations if he fully discloses his nuclear programs by year’s end, is a turnabout for a president who has labeled the communist regime part of an “axis of evil.”
悪の枢軸から国交正常化へ?ブッシュ外交政策のドラスティックな転換
韓国・ソウル/米国ワシントンDC 両支局発 | ブッシュ大統領は、これまでにない初めての珍しい動きだが、北朝鮮の金正日主席に宛てて個人的な手紙を送付した。この一件で、ワシントン政界では「もしも年末までに北朝鮮が核開発計画を完全に廃止するならば、米国と北朝鮮の国交正常化の可能性もあるのでは」という見方も浮上してきている。もしそういった方向へ動くようになれば、共産主義国家北朝鮮の金政権をイラク、イランと並んで「Axis of Evil=悪の枢軸」と格付けした当事者のブッシュ大統領自身が、自らの意見を急激にしかも完全に覆したことになる。

2. President’s first letter to the N. Korean leader
“I want to emphasize that the declaration must be complete and accurate if we are to continue our progress,” Bush wrote, according to an excerpt of the Dec. 1 letter obtained by The Associated Press.
The Bush administration sought to play down the diplomatic significance of the letter — the president’s first to the reclusive North Korean leader. Yet, it reflected how U.S. policy toward the nation has shifted from the days when Bush shunned the dictator.
米国大統領から北朝鮮主席に宛てた史上初の手紙
AP通信が入手した抜粋内容によると、12月1日付けの金主席宛の手紙にブッシュはこう書いている。「今後我々の間の進展を継続したいならば(核兵器開発計画の)終結宣言を、完璧に正確になされるように強調するものです。」
ブッシュ政権は今回の手紙の外交的重要性を、報道陣の網を避けさりげなくやりすごそうとしているようだ。何と言っても、米国大統領として孤立した北朝鮮の主席に宛てた、史上初めての手紙なのだから。しかもその上、ブッシュがこの独裁者を弾劾した時と比べれば「北朝鮮という共産主義国家に対する米国の外交方針がいかにシフトしたか」という事実をまざまざと反映している。

3. Aimed to Kim’s craving for international recognition
The letter might sate Kim’s craving to be recognized by the U.S. as a player on the world stage. However, White House press secretary Dana Perino said Bush meant it as a “reminder” to North Korea that it has pledged to provide — by the end of the month — a complete and accurate disclosure of its nuclear programs.
金主席の国際社会での認知欲に迎合か
今回のブッシュからの親書は、国際社会の檜舞台で認められた立場を米国によって承認されたいと切望していた、金主席の長年の望みを満足させるかもしれない。しかしながら、ホワイトハウスのダナ・ペリーノ報道官の記者発表によると、ブッシュ大統領がこの手紙を北朝鮮に出したのは、あくまで次の条件を要望する主旨だと回答している。すなわち、北朝鮮は核開発計画の廃絶を「今月末までに」なんとしても協定で約束した内容通りに完了するという声明書を出せと、期限付きで要請する内容に過ぎないと説明した。

4. Denuclearization toward normalization of Peninsula
A senior administration official, speaking on condition of anonymity, said Bush indicated to Kim that if North Korea does what it has agreed to do, and the Korean peninsula is denuclearized, then that will ultimately lead to normalization. The United States is looking for a complete declaration of North Korea’s nuclear facilities, materials and programs and also insists that it address any role that the North Koreans have played in spreading nuclear technology or know-how to others.
半島平和の前提としての核放棄宣言要求か
しかし実際はかなりニュアンスが異なるようである。親書の内容は極秘事項のためにあくまで匿名での発言だが、ブッシュ政権内の一高官は今回の手紙の主旨についてこう語っている。ブッシュは金主席に対して「もしも北朝鮮が協定で決められた条件を守るならば、朝鮮半島の非核武装が実現し、そうなれば究極的には国交正常化につながるかも知れない」と示唆したそうである。
これまでの米国は、北朝鮮が核施設とその素材・計画にいたるまでの完璧な核廃絶を実現する事を長い間待ち望んできた。またその一方では、北朝鮮が核兵器製造のテクノロジーと製法を、他国 (やアルカイダなどのテロリストグループ)へ拡散する役割を果たす怖れがあると、名指しで非難し続けてきたのも事実である。

5. Similar letters to the six-party nations
Bush sent similar letters on Dec. 1 to the leaders of Russia, China, Japan and South Korea — the other nations involved in the six-party nuclear talks — to reiterate his desire to resolve the nuclear standoff. He also spoke about the issue on the phone Thursday with Chinese President Hu Jintao. Under the watchful eye of U.S. experts, North Korea started disabling its plutonium-producing reactor at Yongbyon, which was shut down in July, and two other facilities last month.
六カ国会議加盟国元首にも同様の手紙
ブッシュは北朝鮮の核廃絶問題をめぐる対立を解決したいという主旨で、同じような内容の親書をロシア、中国、日本、韓国と、六カ国核問題協議の他の参加国へも、12月1日付けで送っている。また、6日木曜には電話を介してだが、中国の胡錦濤主席ともこの懸案について話し合っている。
米国の核査察専門家一行の厳しい監督の下に、北朝鮮は「まず核兵器材料のプルトニウムを製造する能力のあるヨンビョンの核燃料炉の閉鎖から、核廃絶のプロセスをスタートした」と報告されている。ヨンビョンの閉鎖は7月に行なわれ、続く2カ所の核施設も先月閉鎖された。

6. Contents of letter kept secret
Christopher Hill, the U.S. nuclear envoy who delivered Bush’s letter to North Korea’s foreign minister during a visit to Pyongyang earlier this week, says efforts to disarm the reactor by year’s end are going as scheduled, but differences remain over the nuclear programs that the regime would declare. Neither the White House nor the State Department would release the letters or disclose their content.
手紙の内容は極秘の機密書類
北朝鮮の核問題における米国の交渉役を仰せつかっているクリストファー・ヒルは、今週早々に平壌を訪問した際に、金主席宛てのブッシュの親書を北の外相に直接手渡したと伝えられている。その際にヒル特使は、協定での同意書で予定されているように、今年の年末までに核燃料炉を閉鎖して核廃絶に努力するように、口頭でも念を押したそうである。しかし、北朝鮮側の画定した(核エネルギーの平和利用などの)核開発計画の解釈をめぐって、まだ両者の間には意見の相違が残されているのも事実である。
ちなみにブッシュが金主席に宛てた親書は、ホワイトハウスも国務省(外務省)も、その内容を公開する意図はまったくないようである。

【米国時間 2007年12月8日『米流時評』ysbee 訳】
»» 緊急特集「NIE衝撃の諜報レポート」

Part-1 「嘘から出た真実 さらば、イラン戦争」
Part-2 「暴かれたブッシュ政権の戦争体質」
Part-3 「大統領選にまで波及するNIEシンドローム」
Part-4 「米外交のUターン・金宛ブッシュ親書の謎」
Part-5 「半島平和?ブッシュ最終章外交の突然変異」

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by ysbee-2
| 2007-12-08 00:12
| ブッシュと米国政治