プーチンの過ぎゆくままに・米国とロシアの「戦争と平和」


米流戯評『ビートルズ世代の限りなく幻想に近い近未来予測』
"As Putin Goes By.... プーチンの過ぎゆくままに"


しかも12月に入ってわずか10日間の間に、プーチンは「総選挙圧勝・次期大統領候補指名・次期首相に逆指名」とロシアの今後10年間に向かっての基本路線となる、3つの重大なレールを敷くのに成功した。これが帝王でなくてなんであろう。一時はヒットラー呼ばわりされたチェッチェンの武力制圧。しかし彼らもここ数年の経済成長の恩恵を受けたためか、プーチン政権支持に転向したようである。一部のチェッチェン地区では投票率100%、しかもその票がすべてプーチン率いる統一ロシア党に投じられたと言うのだから恐れ入る。

「中東ニューワールド政策」などという、民主化政策の仮面をかぶったネオコンとイスラエルの描いた錦の御旗に振り回されたブッシュ政権と、愛国心をくびきに彼らに引きずり回された、哀れなアメリカの国民。4千年かかっても解決のつかない、聖書よりもはるかに旧い「ユダヤ対アラブ」の民族抗争の砂地獄に自ら首をつっこんで、財政的にも呼吸困難に陥いり、国内はおろかあまねく世界から四面楚歌の、ブッシュ政権がつくり出した潰滅的な7年間とは、まさに対照的である。

ブッシュもプーチンも時同じくして執権の座に就き、来年また同様に大統領職を去る。その間経済的にも外交面でもパワーを加速し急上昇し続けたロシアにくらべ、米国は生産力・輸出力を中国に吸い取られ、軍事力はムスリム過激派とのテロ戦争に費やされて消耗し、国内政治はビジョン皆無のまま空転し、かつて星条旗とともに世界に翻った国威は、地に堕ちた。戦争と平和を天秤にかけた、両大統領のあまりにも際立つ差異が、7年間の短い世界史の中でくっきりと明暗を分けたようである。アメリカの国民は "Hey Jude, Don't let me down...." とつぶやくしかない。

"Sun/Son Also Rises" しかし、それでも陽はまた昇る。昨日プーチンの後継者に、危惧されていた好戦的タカ派のイワノフではなく、中道穏健派のメドベージェフが指名されたので、世の東西を問わず外交関係者は安堵の吐息をついたに違いない。願わくば米国の大統領選でも、これまでの自滅型の野蛮外交を一掃する清冽な方針を掲げる人物が、ポストブッシュのクリーニング作業に邁進することを望む。幸い民主党・共和党どちらも、そうした「米国の威信再建」を、軍事力ではなくソフトパワーで実現しようという候補者が主流となっており、有権者の期待を獲得しつつある。

一方ロシアでは、誰が跡を継いでもプーチニズム=プーチン体制を踏襲するのは明白であり、たとえその役職・呼称が変わっても、プーチンは実権を手放さないだろうと予測される。
「帝政ロシアの首飾り」と呼ばれるコーカサス・中央アジア一帯の、ロシアを取り巻く周辺ユーラシア諸国を、経済と軍事のロシア同盟国として従えて「連帯宣言」を表明する萌芽が見える。
来年のある夏の日に、こういったロシア傘下の同盟国がクレムリン宮殿で一堂に会し、ソビエト連邦ならぬ「統一ロシア連邦」の旗揚げをするのが私には見える。(超短期のノストラダムスか?) "Back in USSR"が「USR=United States of Russia」に変わる状況である。プーチンの野望は、その実現の日を目指しているようだ。あくまで予感にすぎないが、私にはそう感じられる。

冬来たりなば春遠からじ。明けない夜はない。来年はきっと「新冷戦」と呼ばれたプーチン対ブッシュの睨み合いの舞台に幕がおり、米露両国の新しい大統領が、世界に向けてもっとポジティブな提案をしていく展開になるようにと、心から願う。その舞台が「イスラエルとパレスチナの恒久平和条約」なのか「南北朝鮮の永久平和協定」なのか見当もつかないが、ベルリンの壁が崩れ落ちた時のように、国際的パワー抗争の次元が一挙に遥かに昇華するようなドラスティックな転換が、未来への曲がり角に待っているような気がする。ゴドーではない何かを待っている今の私の耳には、ジョージ・ハリソンがこう歌っているのが聞こえる。"Here Comes the Sun....."

»» 次号 第2章「明日のプーチン・子飼いのメドベージェフから逆指名」へ続く

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第1章 「メドベージェフ登場」プーチン次期後継者を指名
第2章 「明日のプーチン」メドべージェフ、プーチンを首相に逆指名
第3章 「ユーラシア連邦の野望」ポストプーチン時代の予測
第4章 「クレムリンの暗闘」プーチン王朝内部のパワー闘争
第5章 「プーチニズムの踏襲」次世代ロシア時代の到来
»» イラン問題緊急特集「NIE衝撃の諜報レポート」

時 評 「NIEレポートで暴かれたブッシュの大嘘」
Part-1 「嘘から出た真実 さらば、イラン戦争」
Part-2 「暴かれたブッシュ政権の戦争体質」
Part-3 「大統領選にまで波及するNIEシンドローム」
Part-4 「米外交のUターン・金宛ブッシュ親書の謎」
Part-5 「半島平和?ブッシュ最終章外交の突然変異」
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by ysbee-2
| 2007-12-11 09:48
| プーチンのロシア