第2章 テロ戦争「核の闇取引」の恐怖
実在するブラックマーケット テロ戦争での「核の闇取引」の恐怖
核の盗難紛失を防止する国際協力体制の実態と今後に残された課題
マイケル・ハーシュ時事評論 | ニューズウィークサイト独占掲載 | 『米流時評』ysbee 訳
前号「テロ戦争黙示録 第1章 スロバキア濃縮ウラン密輸事件」からの続き
しかし現在でもなお、テロリストが原爆を造るのに必要な総量になるように、あるいはもしかしたら小型の「Dirty Bomb=核汚染爆弾」を製造する意図で、微量の濃縮ウランを徐々にだが集めている可能性はある。今回の事件で表面化した大きな懸念のひとつは、今までに摘発された密輸犯人たちの多くが、ただ単に小金目当てに「核の密売人」になっている事実である。
The fact: Nuclear terrorism remains the No. 1 threat to U.S. national security
By Michael Hirch | NEWSWEEK — Web Exclusive | Translation by ysbee
Continued from the previous issue — Still, it is possible that terrorists are slowly trying to accumulate the necessary amount, or intend to use it to create a small "dirty bomb." One big remaining worry is that many of the culprits who are caught are would-be sellers just out to make a buck.
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DECEMBER 16, 2007 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽園通信』デイリー版
N E W S W E E K | W E B E X C L U S I V E
テロ戦争黙示録 第2章 テロ戦争での「核の闇取引」の恐怖
マイケル・ハーシュ国際時評 | ニューズウィーク・サイト独占掲載 | 『米流時評』ysbee 訳
One big remaining worry is that many of the culprits who are caught are would-be sellers just out to make a buck. "What worries us is we see very little of the buyer end of the market," says Hoskins. Even so, investigators believe that those who do get involved in this illicit business tend to be more ordinary criminals than terrorists. "There are very few incidents that involve terrorists," Hoskins says.
テロリスト以前に存在した密輸犯罪
「何が一番恐ろしいかと言って、我々の目にとまった核の闇取引きにおける購入者は、氷山のほんの一角にすぎないという事実です」ホスキンス氏はこう言って、潜在する真の恐怖を語る。
たしかに実際そうだろう。捜査官たちは、今回の禁じられた取引にかかわった関係者は、テロリストよりもむしろ通常の犯罪者である傾向が強いと見ている。「テロリストが介在している取引は、現在のところ非常に稀です。」
9. Hidden hints of how to deal with terrorism
Part of the good news here is that beneath the ongoing ideological disputes that dominate the headlines—about how to deal with terrorism—there is an extraordinary degree of international cooperation over stopping loose nukes. The Bush administration, after a slow start and an excessive focus on missile defense, is catching up with this wave as well, according to proliferation experts such as Harvard's Bunn.
テロ戦争の実践的方法論への鍵
今回の事件発覚で唯一の朗報と言えば、連日ニュースの見出しを独占している観のある、現在進行中の思想論争の陰に隠れた事実である。つまり「いかにしてテロリズムと闘うか」という方法論である。
「現実世界では、核の流出を防止するために国際間での著しく高度な協力がなされている」という現状認識は、注目に値する。
ブッシュ政権は、東欧のミサイル防衛に余りにも焦点を合わせすぎていたきらいはあるが、遅ればせながらこうした時流の波をつかまえつつあるようだ。これは先述のハーヴァード大のバン博士のような、核拡散防止問題の専門家たちの意見である。
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10. Tracking and detectors at the borders
"There's a lot more tracking going on," he says. "A lot more detectors are being put in place—there are now over 100 national border crossings" with radiation detectors. And all of the crossings in Russia—where the largest amount of unsecured nuclear material still lies—are supposed to be monitored by 2011. "The Russians are going to pay for half of them, which is a new thing as well," says Bunn.
追跡調査と国境での検問体制
バン氏は最近の核拡散防止に関する現状に対して、次のように解釈している。「以前に比べて随分沢山の放射能検知器が、要所要所に設置されるようになりました。現在では世界で100カ所以上の国境の検問所に、放射能探知機が装備されています。」
とりわけ、ロシアから他国へ抜ける国境の全ての検問所に設置されているそうである。なぜならロシアこそ、冷戦時代のソ連の核兵器の膨大な素材がそのまま残存しており、ソ連崩壊後のずさんな管理体制がもっとも心配される国だからである。これらの核の材料は、2011年までにIAEAの管理下におかれる予定である。「ロシア政府は、その計画にかかる経費の半分を負担する予定です。それもまた以前にはありえなかった新しい動きですよ」とバン氏は報告する。
11. U.S.-Russia cooperation on interdiction
Alexander Pikayev, an expert with the Carnegie Endowment's Moscow Center, says that despite the tension between Washington and Moscow over issues like Iran's nuclear program, the two countries are cooperating nicely on interdiction. Still, it's a little disturbing that there's so little discussion about continuing these interdiction efforts—especially by candidates for the 2008 presidential nomination.
核禁止をめぐる米露間の協調
米国カーネギー財団モスクワセンターのロシア・東欧研究のエキスパートであるアレクサンドル・ピカイェフ氏は、イランの核開発問題をめぐって米国とロシア両政府の間で交わされている緊張した論争にもかかわらず、禁じられた核の密輸防止に関しては両国ともきわめて協力的である、と述べている。しかしそれでもなお、こういった核の禁止事項を継続するについての論議はほとんどなされておらず、特に両国の2008年の大統領選候補者たちが、誰ひとりとしてこの問題について触れないのは、誠にお寒い限りである。
12. Presidential campaign on nuclear database
In the 2004 campaign Bush and his Democratic opponent, John Kerry, could seem to agree on only one thing: that nuclear terrorism was the No. 1 threat to U.S. national security. Yet nearly four years later, Hoskins notes, there still is no comprehensive database keeping track of the origin of weapons-grade nuclear material so that, in the event of a theft, it can be traced back.
大統領選と核のデータベース
先回の2004年の大統領選では、共和党候補のブッシュと民主党候補のジョン・ケリーは全てにおいて対立していたが、たった一点だけ同意できる論点があった。
それは「核のテロリズムこそが米国の安全保障を脅かす最大の脅威である」という事実である。しかし、ホスキンス氏は次の点を事実認識すべきだと強調する。
「それから4年経った現在でもなお、核兵器に使用できる純度の素材や関連資材の出自に関して、万一盗難事件が起きても、核物質の生産された場所やその後の経路をチェックできるような、総合的データベースがいまだに作成されていないのは重大な問題です。」
13. Nightmare scenario of 'Nuclear Apocalypse'
"There's a lot more to be done," Bunn agrees. "We're still treating this as an important but not urgent activity. It remains true that there is no one in the U.S. government who has overall charge of all the pieces of trying to keep nuclear bombs out of terrorist hands."
Nuclear apocalypse could still become a reality some day if we're not vigilant. But, thankfully, it's not nearly as imminent as some alarmists would have us think.
悪夢の筋書き「核のアポカリプス」
先述のバン氏も、この件に関しては同意見である。「核の総合的データベースに関しては、より多くのことがすでになされているべきだった。われわれはいまだにこの件について、事の重要性は判るけれども緊急の措置が必要な案件ではないかのように処理している。ひとつだけ確実に言えるのは、米国政府内の誰ひとりとして、テロリストが核爆弾を手中に収めないように努力するための、核関連のすべての部署を統合的に総括管理する人物がいない、という事実である。」
こうした実態を背景にして、万一我々が警戒深くなかったら「核のアポカリプス/黙示録」はいまだに、ある日現実となってこの世界に出現しかねない。幸いそれは陰謀小説家が発する警告ほどは今日明日のことではないが、それでもいつか近い将来には起こりうるシナリオである。[了]
【米国時間 2007年12月16日 『米流時評』ysbee 訳】
記事リンク http://beiryu2.exblog.jp/6753182
TBリンク http://beiryu2.exblog.jp/tb/6753182
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| 2007-12-16 09:45
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