ブットの遺言「19才の息子ビラワルを党首後継者に」


ブットの遺言:大学生の息子ビラワルをパキスタン人民党の党首に指名
ブットの父ズフィカール、ベナジル・ブットから三代目のPPP党首世襲
07年12月29日 | マイケル・ハーシュ/ニューズウィーク | 『米流時評』ysbee 訳
前号「第1章 パキスタンの悲劇 ・ブット暗殺の衝撃」からの続き
木曜ラワルピンジで遊説中に暗殺されたパキスタンの元首相ベナジル・ブットは、彼女のあとを継ぐPPPパキスタン人民党の党首後継者として、遺言で19才の息子ビラワルを指名していたことが明らかになった。また遺言状では、ビラワルが法的に後継者として認可される時期まで、彼女の夫アシフ・アリ・ザルダリ氏が一種の後見人として法的権限を果たすことを期待する旨が書かれていた模様である。この事実は、米国時間で29日土曜の段階で、ブット女史本人の遺言状を読んだ家族と親しい友人から、ニューズウィークへ伝えられたものである。

後方に見えるタジマハールを平たくしたようなモスクは「ブット家の」霊廟 地方豪族であった家系の権威が伺える
A Family Affair?
By Michael Hirch | NEWSWEEK — Web Exclusive | Translation by ysbee
DECEMBER 29, 2007 — Benazir Bhutto, the slain former Pakistani prime minister, names her 19-year-old son Bilawal as her successor and the new leader of the Pakistan Peoples Party in her will, and her husband Asif Ali Zardari is expected to act as a kind of regent to him until he comes of age, a close family friend who has read the will told NEWSWEEK on Saturday.
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DECEMBER 29, 2007 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽園通信』デイリー版


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ブットの遺言・19才の息子ビラワルを PPP党首後継者に指名
米国時間 2007年12月29日 | マイケル・ハーシュ/ニューズウィーク | 『米流時評』ysbee 訳

Neither Bilawal nor Zardari, however, is expected to be named as the prime ministerial candidate of the PPP, the friend said, speaking on condition of anonymity because of the sensitivity of the matter. That honor will go to a senior official, although it is not believed to be Amin Fahim, the vice chairman of the party who served as interim leader during Bhutto's eight-year exile.
遺言で19才大学生の息子を後継者指名
しかしながら、ベナジル・ブットの息子ビラワルも夫のザルダリも、PPPパキスタン人民党から首相候補として指名されることは期待されていないと、その家族の友人は、微妙な問題なだけに匿名という条件で語った。首相候補の栄誉を授かるのは党の最高幹部となる模様である。もっともその人物は、8年間のブットの亡命期間中に代行党首の役割を務めた、アミン・ファヒム党副会長ではない模様である。

2. PPP's rank filed by family affairs
Bilawal, who enrolled as a student at Oxford University only this year, is scheduled to read the will himself at a party gathering on Sunday. There is little doubt that he will be accepted by the party rank and file; the PPP has been an all-family affair in Pakistan's dynastic politics since Benazir Bhutto's father, Zulfikar Ali Bhutto, founded it 40 years ago.
党創設以来、世襲で継承の党首
今年オックスフォード大学に入学したばかりのビラワルは、30日日曜に開かれる党大会で、彼自身がブット元首相の遺言を読み上げる予定である。彼が党の役員として承認され登記されるだろうことには疑いの余地もない。なぜなら、パキスタン人民党は、ベナジル・ブット女史の父親であるズルフィカール・アリ・ブット氏が40年前に創設して以来、パキスタンにおける世襲政治(dynastic politics)の舞台で、家系のように代々継承されてきた政党だからである。

3. Bhutto titled as 'chairperson for life'
Bhutto had given herself the title of "chairperson for life" and her only previous public signal as to who she wanted her political heir to be occurred when she sent Bilawal to register to vote for the first time earlier this year.
ブットの役職名は「終身党首」
ブットは自分自身を「chairman for life=終身党首」と呼んできた。したがって存命中に道をゆずる気はなかったと思えるが、今年早々になって初めて息子のベナジルを、投票権登録のためにわざわざ英国からパキスタンへ行かせた時点で察せられた程度で、それが「万一政治的継承者として望むのであれば息子だろう」という唯一公けにされたヒントだった。

4. Zardari, a tangle of corruption
Even so, given Bilawal's youth, the role of her husband will no doubt be controversial within the party and in the politics of the country. Zardari is a former playboy and polo star who was labeled "Mr. 10 Percent" in the Pakistani press because of the commissions and kickbacks he allegedly demanded from contractors doing business with the Pakistani government. He is widely blamed for the tangle of corruption that strangled and cut short Bhutto's two terms in office.
政治腐敗の元凶、夫ザルダリ氏が後見
しかし彼女がたとえそう意図したとしても、当年19才というビラワルの若さをもってしては、いかんせん彼女の夫でありビラワルの父親である人物が後見人を務めることは、パキスタンの危機とも言える政局にあって、党内部で論争がおきるのは疑うべくもない。夫のザルダリ氏はかつてはプレイボーイとして鳴らしたポロ競技のスター選手であった。彼はパキスタンのマスコミでは「ミスター10パーセント」で通っている。その理由は、ベナジルが首相だった時代に政府発注事業の受注業者に対して、受注金額の一律10%をコミッションや賄賂として要求していたからである。彼はブットの2期にわたる首相在任期間中は政治腐敗の元凶として糾弾され、ブット元首相の政治的寿命を2度とも縮めた人物としてパキスタン国民には広く知られている。

5. Will prepared for predicted assassination
It is not known when Bhutto made the will, but the 54-year-old PPP leader had long made preparations for her possible assassination before returning to Pakistan last October. She even wrote the current president, Pervez Musharraf, a letter asking him to investigate certain individuals in his government if she were killed. Bhutto narrowly escaped one assassination attempt on the night of her Oct. 18 return, but she was killed Thursday in a second attempt.
予期された暗殺に備えた遺言
今回発表されたブット女史の遺言がいつ書かれたのかはさだかでないが、享年54才だったパキスタン人民党の党首は、今秋10月に8年ぶりにパキスタンへ帰国するよりもずっと以前に、暗殺の予測される事態に備えてずいぶん前から用意していたにちがいないと思われる。彼女は、現政権のペルヴェズ・ムシャラフ大統領に宛ててさえ手紙を書いていた。その手紙は「もし自分が殺された場合には、閣僚内のある特定の人物を捜査対象にしてほしい」と依頼する内容だったと言う。

6. Complication factors for the election
The anointment of Bhutto's son will complicate the issue of whether scheduled Jan. 8 elections can go forward. Her chief secular rival, former Prime Minister Nawaz Sharif, announced shortly after Bhutto was killed that he would boycott the vote, and it is not known whether the PPP's new prime ministerial candidate will be able to win anything like the votes that Bhutto was expected to garner.
波乱含みの選挙情勢
遺言によるブットの息子の党首指名は、1月8日に予定されている選挙が実行可能だろうかという問題を、さらに面倒なものにする課題である。選挙戦での彼女の対抗馬であるナワズ・シャリフ元首相は、ブット暗殺の報を受けてから間もなく、彼の党では投票をボイコットすると発表した。さらにパキスタン人民党の新しい首相候補者が、ブット女史が獲得したであろうような投票数で勝利を勝ち取ることができるかどうかは、皆目わからないというのが現状である。 [了]
【米国時間 2007年12月29日 『米流時評』ysbee 訳】

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12/28 第2章「ブットの葬列・慟哭と暴動の奔流」
12/29 第3章「ブットの遺言・息子ビラワルが党首後継」
12/30 第4章「パキスタン・陰謀と暗殺の迷宮」
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