ミラクルメーカー バラク・オバマ




この黒人でもあり白人でもある「究極のマージナル・マン」バラク・オバマは、彼の持つたったひとつの資産「人間としての純粋なスピリット」だけをひっさげて、ハーバード大学を首席クラスで卒業したあと、シカゴの自治体のワーカーから上院議員へ、そして今や最有力の大統領候補へと、ワシントンの政界に彗星のように現れた人物である。彼の幼少時の苦難な歩みから今日の地位を築くまでには、まさしく「ミラクル」と呼べる飛翔が何段階もあったに違いない。

彼のスピーチを聞いて、対抗政党の共和党の政治家や右派の評論家までもが、素直に感動したと述懐する。支持者は感涙を浮かべる。テレビの画面に映る聴衆はみな、紅潮してバラ色に輝く頬に、幸せの微笑みを浮かべている………こんな場面はいまだかつてあっただろうか。私の記憶にある限りでは、ジョン・F・ケネディの就任式の演説以来である。当時まだ小学生だった私には、テレビの国際ニュースで見た画面が不思議に映ったものだった。ワシントンの寒空の下に集まった群衆ひとりひとりの、嬉しくてたまらないという喜びにみちた顔が、当時は理解できなかった。

9/11、テロ戦争、イラク戦争と、ブッシュが就任して以来、良い事のひとつもなかったアメリカ。自由社会の旗手としての国家の権威も、世界に冠たる大国としての経済力も、この7年間で地に堕ちた。アメリカ国内にいると毎日の空気や風にさらされるように、その実感がひしひしと伝わる。
ブッシュ政権の亡国政策に痛めつけられてきたアメリカの国民が、まだワシントン政界の垢にまみれていない新生の政治家に、その肌の色が黒であれ白であれ、「希望」という言葉の重みを裏付ける人間としての誠実さを見出して、これから先のアメリカの4年間を、いや多分8年間を託そうとしている。その必死さの度合いが、今回の大統領選への関心の高さへと直結し、民主党はどの州の予備選でも前回の倍という投票率の高さで、米国の選挙戦の記録を塗り替えている。特に、生まれて初めて政治活動を経験するという若い層の参加がめざましい。

特にキャロラインの支持推奨の言葉は特筆にあたいする。
「父が亡くなって以来初めて、人びとはオバマ氏の中に父と同じ資質を見いだすと言われてますが、私から見てもたしかにそう思えるので、生まれて初めて支持表明をすることにしました」
キャロラインと、テッド・ケネディと、億というアメリカ人が「この国の未来が今よりはきっと必ず良くなる」という希望を見出して、「He is the ONE」とうなずく人物。

そして今新しいアメリカのリーダーを選出する大統領選で、かつてのケネディ財団留学生の息子がケネディ家の家長と財団の役員であるJFKの娘から「アメリカの未来をよろしく」と、傷ついた星条旗を立て直す新しい世代の旗手として認められた、運命の輪の不思議な完結。
疲弊して行方を見失ったアメリカを、自由と民主主義のこの国の根本精神に立ち返らせる指導者を探していた約束の指輪は、いまここにその理想の人物の手に渡された。
ミラクルメーカー。 まったくそのとおりだ。 これが奇跡でなくて何だというのだろう。
【米国時間 2008年1月28日『米流時評』ysbee 記】


1/29 共和党フロリダ予備選(明日)
2/05 津波チューズデー(あと8日)
11/04 08年大統領選全国一斉投票(あと281日)
09/1/21 新しく選出された大統領就任式(あと355日)


TBリンク http://beiryu2.exblog.jp/tb/7108098
__________________________________________________________________
いつもご愛読いただきまして大変ありがとうございます。ランキングのクリックがブログの活力ですので、よろしく!

おかげさまで社会経済ニュースで6〜8位!



連載予告「ドリームボーイ」バラク・オバマ*
1/28 ケネディ家の太鼓判 オバマに最強の支持表明
1/27 ミラクルメーカー バラク・オバマ
1/26 SC州ヒラリー大敗の要因は出しゃばりビル
1/26 サウスカロライナ州でオバマ圧勝、クリントン大敗
1/19 第3報:接戦でマケインがハッカビーを下したSC州共和党予備選
1/19 第2報:ネバダ州民主党ヒラリーがオバマに辛勝
1/19 第1報:ネバダ州共和党はロムニーの圧勝
1/18 津波チューズデー 続・米国アナリストの予備選分析

1/18 継続する三択ゲーム ワシントン政治アナリストの予備選予測
1/17 SC州調査:マケイン vs ハッカビー接戦、オバマトップ
1/15 ミシガン州予備選でロムニー候補初勝利
1/12 米流時評「米大統領選の先読み・共和党編」
1/11 米流時評「米大統領選の先読み・民主党編」
1/10 「続・帝国の逆襲」ヒラリー7つの勝因
1/09 「クリントン帝国の逆襲」ヒラリーの勝因分析
1/08 ニューハンプシャー予備選結果マケインとクリントンの勝利
1/07 「アイオワカルテ」続ヒラリー・クリントン11の敗因
1/07 「アイオワショック」ヒラリー・クリントン11の敗因
1/06 米流時評「墓穴を掘ったヒラリー」意地悪婆から泣き婆へ
1/05 米流時評「バラク・オバマはケネディの再来か」*
1/04 米大統領選アイオワ州共和党指名はハッカビー
1/03 オバマ予備選で歴史的勝利!次点エドワーズ、クリントン3位
07/08/09 オバマの問題発言「パキスタン派兵」とイラク戦争批判*
07/04/28 堕ちた偶像アメリカの復権に賭ける民主党大統領選候補*
06/10/28 バラク・オバマ フィーバー/2008年大統領選のスーパースター*

2006年版の拙ブログ『楽園通信』で紹介したオバマの著書2冊 自伝の『Dreams from My Father』と、政治家としての信念と米国と世界が歩むべき道を説いたベストセラー『The Audacity of Hope』は今や若者のバイブル。
バラク・オバマに関してもっと知りたいと思われる方は、リストの「*印」のついた記事をご一読ください。
||| 『米流時評』 特集シリーズ |||
次世代冷戦時代 | グローバルウォー | イラク戦争 | テロとスパイ陰謀

アルカイダ2.0 核のテロ | パキスタン・戒厳令の季節 | アフガン・タリバンの復活
中東のパワーラビリンス | プーチンのロシア | ユーラシアの回廊 | ダイハード中国
2008年米大統領選 | ブッシュと米国政治 | サルコジのフランス | トンデモ北朝鮮
ビルマの赤い川革命 | 欧米の見る日本 | 世界不思議探検 | グローバルビジネス
by ysbee-2
| 2008-01-28 01:20
| 2008年米国大統領選