「ヒラリーはモンスター」発言でオバマの参謀辞任


サマンサ・パワーの直言「彼女はモンスター」で抗議受け引責辞任



まずは今日も「オバマ・クリントンのバトルロイヤル」から発生した恐怖の跳び蹴り『ヒラリーはモンスター』騒動を……。
【米国時間 2008年3月7日 『米流時評』ysbee記】
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MARCH 7, 2008 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽園通信』デイリー版


N E W S W E E K | P O L I T I C A L B L O G
「ヒラリーはモンスター」発言でオバマの外交担当選挙参謀辞任
By アンドリュー・ロマーノ | ニューズウィーク・大統領選ブログ | 訳『米流時評』ysbee

Barack Obama's advisers have a problem in keeping their gobs shut
By Andrew Romano | NEWSWEEK — Political Blog "STUMPER" | Translation by ysbee
MARCH 7, 2008 — Three strikes, you're out. Seems like Barack Obama's advisers have a problem keeping their gobs shut. First came Austan Goolsbee, the Dickensian-monikered University of Chicago professor and Obama economic guru who may or may not have told Canadian consular staffers that,

政界の二枚舌を会得していないオバマ陣営
スリー・ストライク、アウト!バラク・オバマの参謀たちは、口を閉じる術を会得するのに問題があるようだ。最初の失言はディケンズ流のシカゴ大学の教授で、オバマの経済政策の戦略家、オースタン・グールスビーの口から発せられた。風評では、彼がカナダの領事にあることを言ったとか言わないとかそうした噂だ。領事館職員のひとりいわく、彼のボス(在米カナダ領事)がオバマのNAFTAに関する発言に対して憤慨し、こう発言したそうである。「オバマのNAFTAに関する発言は、経済政策の計画の細部を追求するというよりも自己の政治的位置づけを狙った動機で発せられたものと受けとられるべきだろう」
2. 'She is a monster'
Then there's foreign-policy aide Susan Rice, who earlier this week admitted, live on MSNBC, that "they" — meaning Obama and Hillary Clinton — "are both not ready to have that 3:00 a.m. phone call.” Last, but hardly least, is Samantha Power. In an unguarded interview published last night in the Scotsman newspaper, the Harvard professor unleashed a questionable personal attack on Clinton. "She is a monster," Power said. "She is stooping to anything." Did we say questionable? We meant brutal.
問題発言「彼女はモンスター」

そして最後が、けっして見過ごせるような迂闊な失言とはいえない、サマンサ・パワーの大胆発言。昨晩発行されたスコットランドの地元紙『Scotsman』の気のおけないインタビュー記事で、このハーヴァード大の教授は少々手綱がゆるんだとみえて、クリントンに対する個人攻撃と受けとれかねない言を発してしまった。
「彼女はモンスターよ。何にでも見さかいなく襲いかかってくるわ。」パワー女史はこう言ってのけた。(あ、受けとれかねないって言いました? もとい、みそくそです。) 長い人生色んな人間の色んな顔を見てきましたが、この方ほど一夜明けると180°〜360°、ムードもご面相も声まで変わる人物は初めてです。ヒッチコックが生きていたら真っ先に主役に指名していたことででしょう。(注:上の写真は一切加工しておりません)
3. Publicly released via Scottish paper
Power quickly tried to retract the remark, but with the British press, there's no going back. After spreading last night through the blogosphere and landing atop this morning's "Today" show, the "monster" comment prompted predictable calls from the Clinton camp for Power's head — and Power dutifully succumbed.
スコットランドの新聞取材に答えた発言
パワー教授は、発言のあとすぐにこの発言を撤回しようとしたが、相手はスキャンダル報道にかけては名にしおう英国の新聞である。こんなおいしい話題を取り下げるわけがない。かくして「ヒラリーはモンスター」発言は一晩のうちにブログ界を駆け巡り、今朝になってNBC『TODAYショー』のトップの話題となって、全米のお茶の間に着地した。この「モンスター」発言に対しては、当然予想されたようにクリントン陣営からメディアやオバマ側へ「パワーをクビにしろ」という要求が殺到し、その結果パワー女史は噂の渦中に飲み込まれ、責任を取って辞任した。

4. Apology of remarks more gathered attentions
"I made inexcusable remarks that are at marked variance from my oft-stated admiration for Senator Clinton and from the spirit, tenor, and purpose of the Obama campaign," she said in a statement sent to reporters at 11:44 a.m. "I extend my deepest apologies to Senator Clinton, Senator Obama, and the remarkable team I have worked with over these long 14 months."
辞任でますます注目を集めた発言
渦中の人、サマンサ・パワー女史は、今朝(7日)午前11時44分に各メディアの取材記者に次のような声明を送ってきた。「今回私は、従来しばしばコメントしてきたようなクリントン上院議員に対する賛辞や、オバマ上院議員の選挙本部の基本精神・方向・目的とはまったく性格を異にすることを印象づける、弁解の余地のない発言をしてしまいました。このことに対しクリントン上院議員とオバマ上院議員、そして過去14カ月の長きにわたってともに活動してきた素晴らしいチームに対して、心からお詫び申し上げます」

5. Is honesty bad for politics?
As many observers have noted, gaffes like these are a natural result — and risk — of running a "movement campaign." Obama has surrounded himself with bright, energetic political neophytes — many of whom clearly haven’t mastered the art of shutting up. In some ways, the "honesty" of Obama's surrogates is refreshing. But it's also bad politics, and after two slips, he simply couldn't afford to give Power a pass. Nor should he have.
馬鹿正直は政界に通用せず?
野次馬のほとんどが、「movement campaign/ムーブメント・キャンペーン」(社会現象的ブームにまで発展したオバマの選挙運動)を展開する上で、この程度の失言は自然の成りゆき、あるいは当然ついてまわるリスクと解釈しているようだ。たしかにオバマの周囲には、頭脳明晰でエネルギッシュだが政治の世界には疎い新参者が多い。彼らの多くは明らかに、「沈黙」という政治芸をまだマスターしていないようである。オバマの取り巻き特有の「正直さ」は、政界の汚濁を見慣れた感性をリフレッシュする効果がある。しかしそれはまた、政治的には「下手」だとも言え、すでにスタッフの失言が2度続いた後でもあり、オバマはこれ以上パワー女史の失言を見過ごすことは許されなかった。また看過するべきでもなかった。

6. growing rancor between both supporters
While Goolsbee and Rice made fundamentally accurate — if politically inconvenient — remarks about policy, Power simply called Clinton a nasty name. The incident is less interesting to me as a scandal — I mean, really — than as a symptom of the growing rancor between Obama and Clinton supporters. Some reader comments on Stumper and other blogs are insightful.
両候補支持者間の憎み合いに拡大
冒頭の二人の参謀、グールスビー教授とスーザン・ライスの場合は、政治的には「不都合な」発言だったかも知れないが、基本的には外交政策の的をついた意見だった。しかしパワー女史の場合は、単純にヒラリーに対する罵詈雑言にすぎない。私(アンドリュー・ロマーノ)から見ると、スキャンダルとしてはさして面白くもなんともない代物だ(言っときますが、マジで)。それよりか、オバマ派とクリントン派の支持者の間で日増しに激しくなってきている憎悪に満ちた敵対関係の方が、ずっと興味を惹く現象である。このブログ『Stumper』や、よそのブログに書き込まれたコメントの中には、そういった危険な傾向を洞察できるものもある。

7. Escalation of malicious 'Flame Wars'
But most of them have little to do with the post in question. Instead, the exchanges quickly descend into what Internet lexicographers call "flame wars" — malicious, escalating, ad hominem attacks on the rival candidate and anyone dumb, deluded or debased enough even consider voting for him or her.
ネット界特有の近親憎悪的「フレーム・ウォーズ」
それにしても、彼らのコメントのほとんどがブログのエントリーに対する問いかけではない。それよりもむしろ、読者が書き込んだコメントへの速攻での反論であることが多く、これはインターネットのボキャブラリーで言うところの所謂「Flame Wars=フレーム・ウォーズ」、即ち悪意に満ちたやりとりでエスカレートする近親憎悪的感情の激突である。この感情の度が過ぎると、同じ党に属しながらライバル同士の候補者に対する憎悪が増幅して、最終的には決して彼あるいは彼女には投票しまいとまで考えるほど、党の勝敗という本来の目的を見失ってしまう状況である。

8. The process of 'infrahumanization'
Sociologists, in fact, have a name for this process: "infrahumanization," or, as "GlennWSmith" writes at Open Left, "the tendency for in-group members to strip out-groups of full human emotions and capabilities." In other words, infrahumanization occurs when "we" stop seeing "them" as real, live people. And it's not "limited to the close-minded and the bigoted," as Smith notes. Instead, it "seems to be rather universal."
「インフラヒューマナイゼーション」のプロセス
実際、社会学者はこのプロセスを「インフラヒューマナイゼーション」と命名している。あるいはレフティのブログ「Open Left」のブロガーGlenn W. Smith氏の投稿にもあるように「グループ内メンバーが部外者に対して行なう、感情むき出しでありったけの術を弄して村八分にする傾向」と言えるだろう。言い換えればインフラヒューマナイゼーションとは、「我々」が「彼ら」を現実世界の生身の人間として見ることを止めた時に起る感情である。そうなった場合、そのマイナスの感情のエネルギーは「偏狭な閉鎖された世界」に止まらないとスミス氏は説く。
それよりもむしろ、インフラヒューマナイゼーションは「ユニバーサル=普遍的」なネガティブなパワーとなって、ブログ界にはびこるようになってきているそうである。 »» 次号へ続く
【米国時間 2008年3月7日 『米流時評』ysbee 訳】
»» 次号「ヒラリーモンスター続編/オバマカルトの出現/You-Tube時代の選挙戦」へ続く



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