スキャンダルクィーン、サラ・ペイリン
||| スキャンダルクィーン サラ・ペイリン |||
2008年9月1日 | エリザベス・バミラー/NYタイムス | 訳『米流時評』ysbee
ミネソタ州セントポール発 |共和党のジョン・マケイン上院議員が副大統領候補に選んだアラスカ州のサラ・ペイリン知事に関してだが、発表からわずか48時間しか経っていないというのに彼女が関わる一連のスキャンダルが表面化し「果たしてマケイン候補は共和党の大統領選チケットの片割れとして彼女を抜擢する前に、身辺調査などの資格審査を十全に行ったのだろうか?」という疑惑が持ち上がってきた。
1日月曜の朝、ペイリン知事と夫のトッド氏は「夫妻の17歳になる未婚の長女ブリストルは妊娠5か月であるが、その子供の父親と結婚する意向である」という異例の発表をした。[注:この書面での緊急プレスリリースは、生後4か月でダウン症のペイリン知事の幼い息子が、実は彼女の長女ブリストルの子供ではないか?という疑惑が、ブログ界で数時間の間に全米に広まったのを打ち消すためと解釈される。詳細はこの前の記事のコメント欄で]
トップの写真:左からサラの夫トッド、三女パイパー、次女ウィロー、長女ブリストルと次男トリグ、マケインの妻シンディと長女ミーガン/下の写真:副大統領候補指名発表のステージで夫トッドとサインに応じるペイリン知事
'Premature to say that it was a valid threat,' source says of man's arrest
SEPTEMBER 1, 2008 | Elizabeth Bumiller — New York Times | Translation by ysbee
ST. PAUL, Minnesota — A series of disclosures about Gov. Sarah Palin, Senator John McCain’s choice as running mate, called into question on Monday how thoroughly Mr. McCain had examined her background before putting her on the Republican presidential ticket. On Monday morning, Ms. Palin and her husband, Todd, issued a statement saying that their 17-year-old unmarried daughter, Bristol, was five months pregnant and that she intended to marry the father.
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SEPTEMBER 2, 2008 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽園通信』デイリー版
N E W Y O R K T I M E S | P O L I T I C S
副大統領候補抜擢後に続々浮上するサラ・ペイリンのスキャンダル旋風
米国時間 2008年9月1日 | エリザベス・バミラー/ニューヨークタイムス | 訳『米流時評』ysbee
文字数制限のため英文省略
州知事がアラスカ分離主義者?
上記の「ベビーゲート」のほかにもやや注目度の低い彼女をめぐるニュースとして主なものだけでも、指名発表後わずか48時間で次のようなスキャンダラスな話題が浮上してきた。
▶「トルーパーゲート」 サラ・ペイリンの妹は警官の夫と脅迫まじりの醜悪な離婚争いの最中だったが、ペイリン知事は彼の上司でありかつまた自分の部下であるアラスカ州の公安局長に、その義弟を首にするよう命令した。しかし公安局長は「知事の職権乱用だ」として彼女を訴える法廷闘争に出たため、現在ペイリン知事は個人的に弁護士を雇って係争中。
▶「AIP ゲート」 サラの夫であるトッド・ペイリンは原住民イヌイット族の血を継承しており、アラスカを米国から分離独立させようという『AIP/アラスカ・インディペンデンスパーティー(アラスカ独立党)』の正式党員であったが、サラ・ペイリン自身も90年代に2年間正式に登録した党員だったことがわかった。
▶「DUI ゲート」 夫のトッド・ペイリンは、22年前にDUI (Driving Under the Influence of Alcohol=飲酒運転) で逮捕歴のある事がわかった。(飲酒運転に関しては、もし彼女が民主党だったら「人間としてよくあること」で済まされたかもしれないが、彼女の基盤である共和党右派はカルトに近いほど聖書の戒律に厳しく、酒・タバコは罪悪視される非常に保守的な信条を継承しているので、当然風当たりは強くなる。)
2. Surprise! Surprise! Shocking revelation
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驚愕の事実に詳細調査を開始したマケイン
マケイン氏の選挙参謀は、ペイリン女史の背景をさらに完全に見直すために、現在アラスカの現地である州庁所在地のジュノー市と自宅のあるワシラ町へ、調査チームを派遣したところだと取材に答えた。しかし、マケイン陣営のキャンペーンの実態に詳しい共和党消息筋の話では、マケイン氏の副大統領候補指名として政界を驚愕させたペイリン知事の名前が発表された金曜の前日の段階では、この調査班は副大統領候補としてまだ現地入りしていなかったと証言している。
3. Timeline about Bristol Palin's pregnancy
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サラの長女の妊娠を知らなかったマケイン
キャンペーン本部が共和党員に電話をかけ、ペイリン女史の意外な抜擢に対処して身辺調査をするようアラスカ行きを命じたのは金曜の発表の後であり、遅かったとすれば日曜の夜ぎりぎりになってからだったという。さらには「ベビーゲート」と呼ばれるペイリン知事の長女ブリストルの妊娠問題である。マケインのキャンペーン側では、ブリストル・ペイリンが未婚の母として妊娠している事実は、マケインがペイリンに副大統領候補の申し込みをする以前から知っていたが、そのことが候補失格の条件になるとは捉えなかった、と説明している。
(このスキャンダルは、当初ブログ界でペイリン夫妻の一番下の子供、まだ生後わずか4か月のトリグに関して、実際は夫妻の息子ではなく長女ブリストルが生んだのではないかという疑惑から生じた波紋である。もしこれが事実であれば、未婚の娘の出産と言う俗世間での醜聞よりも、出産届を偽った「公文書偽造罪」でれっきとした犯罪になるからである。しかもその犯罪を犯したのは、その州の州知事)
4. Questions swirling around Ms. Palin
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ペイリン知事の安直な資格審査への疑問
数時間で全米の噂の的となった事態の発展に驚いたペイリン夫妻は、翌朝1日月曜になって「ブリストルは現在妊娠中であり、その相手とは将来結婚する予定」と公式発表した。これを聴いたメディアの取材陣が、今度はマケインのキャンペーン本部に対して、指名の前から事実を知っていたのか?と質問した。これに対して選挙参謀は「マケイン候補は、サラ・ペイリン知事に副大統領候補として参加するよう申し込む前から知事の娘の妊娠の事実は知っていたが、それが副大統領として失格になる要素ではないと判断した」と答えたが、記者団がそれ以上の質問「マケイン氏はいつ、誰から、どのような手段(電話・メールなどの)で知ったのか?」という問いに対してはお茶を濁した(top aides were vague on...)。
5. Uncertainty swirling around RNC
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暗雲渦巻く全米共和党大会
今週水曜3日に控えた副大統領候補への正式の党指名が窮地に陥ったという兆候はまだ現れていないが、RNC全米共和党大会の初日の段階で、すでにペイリン女史の周辺には次々と浮上する疑惑が渦巻いている。今年はミネソタ州の州都ミネアポリス市のツインシティ(ミシシッピ川をはさんで二分されている)セントポールのセンターで、1日月曜から4日間の大会がスタートしたが、開幕前からすでに暗雲が立ちこめた。
ひとつはカテゴリー3のハリケーン・グスタフがニューオーリンズ来襲というニュースで、3年前のカトリナの際の悪夢の記憶が甦ったこと。(グスタフ接近を理由にブッシュとチェニーは前代未聞の大会欠席を宣言。これはマケインが不人気な現体制から距離をおくポーズとしての「ブッシュ離れ」を強調するためと解釈されている。)
6. McCain's questionable qualification
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大統領としての判断力が問われるマケイン
もうひとつは、全国的にはまったく無名でワシントンでの国政経歴皆無のペイリン知事を、副大統領候補に突如指名したマケイン候補の審議過程 (センセーショナルな抜擢とその後に続くスキャンダル旋風で「ハリケーン・ペイリン」と俗称される)への疑問。オハイオ州デイトンで遊説中のマケイン候補が、アラスカ州のサラ・ペイリン知事を副大統領候補として紹介したのは29日金曜で、党大会開催のわずか3日前というインスタントな決断だった。
かくして今回のマケインの意外な選択で、重要な問題に直面して決定的裁断を下す国家の責任者としての能力(ability to make crucial decisions)が、急遽各方面から疑問視されるようになってしまった。大会を目前に控えて、短絡的で不安定な状況を迎えたことに対する危惧が募ったためである。
7. Decisional term, only 2–3 days
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わずか2・3日前まで未定だった候補
ペイリンの名を公表した時点からさらに48〜72時間さかのぼった先週の半ばまでは、マケイン氏の頭の中では、いまだに彼の親友であるコネチカット州選出の民主党中道派、ジョゼフ・I・リーバーマン上院議員が、最後まで大統領選の相棒として残っていたと、マケイン陣営の消息に明るい共和党議員は漏らしている。
マケイン候補の検討の対象としては、彼のもう一人の親友、元ペンシルバニア州知事で前国家安全局長官のトム・リッジ氏も考慮にいれていた事実も明らかにされている。しかし、副大統領候補としてマケインが最後まで考慮していたジョー・リーバーマンとトム・リッジ両氏は、共和党が勝つための基盤となる票田であるキリスト教右派の信条とは根本的に反対の立場をとってきた。
8. Predicted rejection of Ridge/Lieberman
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トム・リッジとリーバーマンに固執したマケイン
そのため、マケイン候補がこの二人を真剣に検討しているという噂が外部に漏れた時点で、影響力の大きい共和党幹部たちは、大会会場での混乱を予測し怖れた。共和党の主要献金者で大票田であるキリスト教右派が基盤の保守強硬派の大会代議員たちが、リッジとリーバーマンのいずれにしろ拒絶して、大会が大混乱に陥るのは目に見えていると、マケインの選挙運動本部に「何を考えているのか」という憤慨叱責の爆撃が始まったからである。(bombarded by outrage from influential conservatives)
[注:妊娠中絶の是非=プロチョイス/プロライフ、科学的ダーウィン説をとるか聖書のアダムとイブ説に固執するか…etc.といった、馬鹿げた時代錯誤で凝り固まった、キリスト教原理主義者も含むキリスト教右派が、いまだに共和党の中核を占める。ブッシュが2度も当選した救いがたい選択も、彼らの盲信的な投票によるものである。それと選挙開票時点でのマシン操作などの謀略。]
9. Something to shake up the race?
Perhaps more important, several Republicans said, Mr. McCain was getting advice that if he did not do something to shake up the race, his campaign would be stuck on a potentially losing trajectory. With time running out — and as Mr. McCain discarded two safer choices, Gov. Tim Pawlenty of Minnesota and former Gov. Mitt Romney of Massachusetts, as too predictable.....
ペイリンは凡庸なマケインへのショック療法?
共和党関係者の多くも漏らしているように、今回の選択が決定する際にもっと重要視された一点は、多分マケイン氏が共和党のトップから受けた次のようなアドバイスであろう。
「もしもマケインが沈滞している共和党側の選挙戦を根本から活気づけることができなければ、彼のキャンペーンは「負けのベクトル」へ一気に下降していくだろう……」
時間的締め切りは刻々と迫る。彼の片腕としてマケインが最後まで検討していた両人、ジョー・リーバーマンとトム・リッジは、共和党トップから拒絶された (ふたりとも共和党の進歩派なので、上述のキリスト教右派の票を説得できないため)。巷で最有力候補と噂されているミネソタ州のトム・ポレンティ知事と、元マサチューセッツ州知事で予備選中盤で大統領候補を断念したミット・ロムニー氏のふたりは、余りにも予測通りで意外性がない……
10. Impulsive choice by legendary reveler
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マケインの脊髄反射的選択の結果
そこでマケインは、世間を驚かせる意外性という一点を重視してペイリン女史を抜擢したのだ (もちろん、キリスト教右派に歓迎される「Conservative Extremist/エクストリーム・コンサバティブ=保守過激派」) 。彼がペイリン女史と一対一で顔をあわせたのは指名発表前日の木曜であり、わずか20分余りの対談のあとで「副大統領候補はどうか」と申し込んだ安直な経緯が内部関係者から伝えられ、この事実は民主共和双方から衝撃をもって迎えられた。 »» 次号へ続く
【米国時間2008年9月2日『米流時評』ysbee 訳】
»» 次号「後編・共和党大会の台風の目、ハリケーン・サラ」へ続く
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by ysbee-2
| 2008-09-02 14:54
| 2008年米国大統領選