オバマの初仕事・ホワイトハウスの組閣人事

||| オバマ新政権の組閣人事予測 |||

ヒラリー・クリントンが国務長官? NBCニュースのスクープは本当か?

意外と思う理由は、長い予備選の過程で繰り返されたオバマ対クリントンの公開討論会で、もっとも熾烈を極めた議案が、外交問題だったからだ。上院議員に選出される以前から、イラク戦争を徹底批判してきたオバマ。対するに、ヒラリーはイラク侵攻に賛成票を投じた本人である。戦争に対する姿勢は、開戦当初でまったく反対方向を向いていた。

また核兵器開発が進行中のイランに対しては、オバマは「対立闘争へ突き進む前に、まず当事者同士の直接の話し合いを」と主張し、イラン侵攻を標榜するマケイン候補とは、この外交方針で真っ向から対立した。8年間の戦争に倦み疲れたアメリカ国民は「イラク早期撤退、アフガン戦力増強で早期終結」を訴える撤退論を支持し、オバマは2倍の州票を獲得してマケインに圧勝した。
大多数の国民に選ばれし大統領、オバマが率いる政権は、恐慌一歩手前の経済問題もさりながら、世界のあらゆる地域で渦巻く戦乱の禍々しい奔流を、ひとつずつ押しとどめ、和平への地平線を切り開いていかねばならない、大変な大役を担ってもいる。
そうした期待に応えて最初に動く要職が、日本で言えば外務大臣に相当する国務長官である。国民の意思の総意である大統領のメッセンジャーとして、ジェット機を駆って文字通り東奔西走しなければならない。特に、敵国と見なされる国家に対しても、ブッシュ政権のように喧嘩を売るようなカウボーイ外交ではなくて、まず外交のテーブルにつかせるような説得のできる、辣腕のディプロマットが必要とされる。

巷の床屋談義では、オバマにそもそもの外交術を指南した、上院外交委員会の長老リチャード・クーガー上院議員とか、オバマの中東・欧州旅行に同行し露払い役を務めた、チャック・ヘーゲル上院議員の名が挙がっていた。どちらも共和党議員で、オバマが推進しようとしている超党派の政権づくりにも一役買う顔ぶれだ。
私自身が、当初この人しかないと一押ししていたのは、ジョー・バイデン上院議員である。しかし、彼は副大統領にシードされてしまったので、国連外交のエキスパートであるリチャード・ホルブルック氏か、外交型の国防長官だったウィリアム・コーエン氏になれば、クリントン時代のコソボ戦争当時の体勢で、戦時外交を巧く和平の方向へ転換できるだろう、と期待していた。

しかしねぇ……ヒラリー・クリントン自身が国務長官になるというのは、ちょっと意外だった。まだ本人からの確認をとっていないそうなので、どこでどう転ぶかわからないが、結果から逆探知すると多分各州での選挙戦の追い込み時点で、クリントン陣営からの応援に負う局面もだいぶあったのだろうな、という憶測は免れない。特に土壇場でオバマへぐぐっと票の集まった、クリントンの愛弟子ジーン・シャヒーン元知事(今回の選挙で上院議員に当選)の優勢な、東部のニューハンプシャー州を筆頭とするニューイングランド地方での雪崩現象は、見事な勝利を収めた。
またネバダ州、ニューメキシコ州のメキシカンのマイノリティ票を結束できたのも、ラティーノに強い同地域のビル・リチャードソン知事と、彼を史上初のヒスパニック閣僚として国連大使に抜擢した、ビル・クリントンの応援に負う部分もあるだろう。「フライオーバー・ステーツ」つまり東部と西部の海岸部以外は、農村部に強い真っ赤な共和党地域で、選挙戦の際には民主党候補はフライオーバー=飛び越して無視する内陸部だったのが、この2州が民主党に傾いたために、突如米国地図の中央がブルーに転換した意義は大きい。

ニュースメディア各社は、オバマの勝利以前から組閣メンバーの推測を展開してきたが、すでに確定したラーム・エマニュエルを筆頭に、比較的当たるんじゃないかなと思われる候補者をリストアップしていた、オピニオンブログ『Huffington Post』の予測記事を紹介したい。
当初のコンテンツが余りにも長くなってしまったので、前後編に分けて掲出します。また記事がネットに掲載になったのは10日以上も前なので、内容にタイムラグがあることをご了承ください。
【米国時間 2008年11月13日『米流時評』ysbee】



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NOVEMBER 13, 2008 | 『米 流 時 評』 | 時事評論ブログ雑誌・デイリー版 2008年11月13日号

H U F F I N G T O N P O S T . c o m
オバマ革命第1章 Who's Who? オバマ政権の閣僚メンバー予測
米国時間 2008年11月3日 | ハフィントンポスト | 訳『米流時評』ysbee

First appearance before reporters since election focuses on dire economy
NOVEMBER 6, 2008 | Pat Wingert — Huffington Post | Translation by ysbee
Washington — Even before Barack Obama's historic victory, Washington was abuzz over what a Democratic White House might resemble. In recent days, an outline of an Obama administration has begun to emerge — both in the rumor mill and in press reports. The campaign itself has specifically and repeatedly denied any efforts as such. But advisers to the Senator are well on their way to sketching out the staffing of key cabinet positions.
[注:以下の候補者の名前の表記:茶色は確定 / ブルーは選外 / オレンジは未定です。
また短い段落や説明不足の箇所には、私なりの解説を追記してあります。〜〜 ysbee]
米国時間 2008年11月3日 | ハフィントンポスト | 訳『米流時評』ysbee
ワシントン発 |バラク・オバマが歴史的勝利を収めるはるか以前からでさえ、ワシントンでは次期民主党政権の顔ぶれがどんなふうになるのかという、予測をめぐる噂で持ち切りだった。さらに投票日の迫ったここ数日になると、オバマ政権の外郭がおぼろげながら浮かび上がってきた。(ブログをベースとする)巷の噂と取材記者のレポート双方においてである。しかし、オバマの選挙キャンペーン本部自体は、そのような組閣人事の噂には特に気をつけて、繰り返しかたくなに否定してきた。とはいうものの、オバマ上院議員への顧問たちは、組閣人事の要職に就くキーパーソンの洗い出しを、すでに進めている状況である。

And the picture presented is one of experience, talent and bipartisanship. The key figure here is Rahm Emanuel, who has already been offered the job, according to several Democrats. While it was not clear he had accepted (his office denied an MSNBC report that he had), a rejection would amount to an unlikely public snub of the new president-elect within days of his electoral college landslide. Meanwhile people in the know are saying the likelihood is Rahm will take the job, possibly as soon as Thursday morning.
副大統領 決定: ジョー・バイデン
オバマのブレーンである外交や経済の顧問たちが、今回構成しようとしている組閣メンバーのリストアップは、経験豊富な英才を終結した超党派の顔ぶれである。その中でもまず最初に挙げられるキーパーソンが、ラーム・エマニュエル。民主党幹部の話によれば、彼はすでにオバマ陣営から要職に就くように申し込みを受けたと言う。彼がこの申し込みを受諾したかどうかは、まだ定かではないが、彼のオフィスではMSNBCがレポートしたこの噂を否定している。(しかし大衆がこの否定説を無視した通り、その後オバマが地滑り的に勝利を納めた翌々日の6日に、本人によって就任説が公認された。)

He has experience in the White House, connections and respect on Capitol Hill, and the combative, competitive demeanor that might be an asset for the post. If for some unforeseen reason Emanuel doesn't work out (sources say he's that much of a lock), the other name being bantered about is Tom Daschle, who has served as a key Obama adviser throughout the campaign and formerly served as Senate Majority Leader.
大統領首席補佐官 決定: ラーム・エマニュエル下院議員
一方、彼の人となりを良く知る政界人は、ラームが要職に就くことはほぼ間違いないと語っていた (多分早ければ6日木曜の朝)。民主党下院議員のまとめ役である彼は (クリントン政権時代に) ホワイトハウス補佐官の経験があり、ワシントンの上下両院に広い人脈をもち、(議案の議会通過の根回しなど) 政治の実戦の場面でやり手として敬意を払われている。また闘争心が強く負けず嫌いの気性は、交渉役を受け持つ事の多いこの役職に要求される資質を備えているとも言える。

If for some unforeseen reason Emanuel doesn't work out (sources say he's that much of a lock), the other name being bantered about is Tom Daschle, who has served as a key Obama adviser throughout the campaign and formerly served as Senate Majority Leader.
大統領首席補佐官 選外: 前民主党上院議員代表 トム・ダッシル
消息筋はその心配がないほど彼には適職と見ているが、万一某かの理由でエマニュエルが大役を果たせない場合には、他の名前も挙がっている。前民主党上院議員代表のトム・ダッシル氏である。彼は今期の大統領選では、早くからオバマの顧問の中でもキーとなる相談役として動いていた。
(しかし保守的風土の南ダコタ州で、議院代表を務めながら自らの議席を失った痛手は現在でも深く、06年の民主党大躍進の陰の采配を振るったラーム・エマニュエルに落ち着く公算が強かった。エマニュエルはオバマと同じシカゴ出身で個人的にも付き合いが深く、ホワイトハウスの番頭役としての首席補佐官には彼が最適だというのが、当初から大方の推測だった。)

A consensus is emerging that, at least for the time being, Obama will keep current header Robert Gates in the cabinet. The job extension would provide the Illinois Democrat some bipartisan political cover as he begins to shift course dramatically in Iraq and Afghanistan.
国防総省長官 現職:ロバート・ゲイツ長官(ある時期まで継続在位)
数ある噂の中でも、二つの戦争の最中と言う米国の現状を考慮すると頷けるのが、ペンタゴンの長官職についてで、オバマは現職のゲイツ国防長官を据え置きにするだろうという説である。共和党のゲイツ長官の在職期間延長は、イリノイ選出の民主党上院議員だったオバマ次期大統領の政権にとっては、ある程度の超党派的要素をもたらすものである。それはとりもなおさず、今後イラクとアフガニスタンの戦線で劇的な転換を図る際に、(新しい軍事政策に対して野党側の共和党の同意を獲得する上で) 議案の進行を容易にする上でも得策と捉えている政治的判断からだろう。

These include Republicans such as Sens. Chuck Hagel and Gen. Colin Powell. Here too, however, there are a host of different names from which Obama can choose his own appointee.
国防長官 候補: 元国務長官 コーリン・パウエル
しかしながらここでもまた、オバマが彼独自の選択をした場合には、複数の国防長官の名前が挙がってくる。その中には選挙戦の終盤にMSNBCの看板番組『Meet the Press』で正面切ってオバマを推薦し、対抗候補のマケイン上院議員の資質と判断力に疑問を投げかけた共和党で先代の国務長官のコーリン・パウエルがいる。叩き上げの生粋の軍人として、現役の米軍兵士から見れば生きた英雄であるパウエルが、指導者としてのオバマの資質を賞賛した効果は絶大なものがあった。その結果ミリタリーステーツと呼ばれるバージニア州でも、オバマは大量得票を上げる事ができた。

Rumors abound that Republican Sen. Chuck Hagel is also in the running, though if Robert Gates is kept on as Defense Secretary, it seems unlikely that Obama would place two Republicans in such key positions overseeing global affairs.
国防長官 候補: チャック・ヘーゲル上院議員
今回の大統領選では、冒頭からオバマの希有の資質を評価して支持を表明する共和党員が確実に存在した。彼らは『Newsweek』のリチャード・ウルフ記者のネーミングで「Obama+Republican=オバマカン」と呼ばれた。もちろん有権者の間ばかりでなく、上下両院の議員の中にもオバマカンが続出。特に、リチャード (ディック)・ルーガーやチャック・ヘーゲルのように、ブッシュ政権の無茶苦茶な政策にかなり以前から反旗を翻してきた長老議員が、オバマへの支持表明を明らかにした効果は大きい。
ヘーゲルの場合は、7月にオバマが挙行した中東・欧州訪問旅行に同行するほど、支持する姿勢の強さを見せた。海軍出身の発言力の大きい実力派のベテラン議員であるヘーゲルは、パウエルと並んでオバマの軍事外交両面での実践型の顧問役である。

As well as Democrats like Richard Danzig, former Secretary of the Navy and another key Obama endorser/adviser. The list above excludes a bevy of names that have been rumored to be in the running for respective positions.
国防長官 候補: 元海軍長官リチャード・ダンツィグ
パウエルやヘーゲルなどの軍人出身の共和党政治家と同様、元防衛長官の海軍補佐官だったリチャード・ダンツィグに代表されるような、民主党側の軍人出身政治家もリストに上がっている。彼らはすでにオバマ陣営の軍事顧問の参謀として、選挙キャンペーンに参画していた。 »» 続く


【 米国時間 2008年11月13日 『米流時評』ysbee 訳 】
»» 予告「オバマ革命・第3章 オバマのフリーチャイナ!FDA制度改革」
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by ysbee-2
| 2008-11-13 21:45
| オバマの時代