生残り犯人が自白、11万5千円で請負ったムンバイテロ

||| 第4章 インド公安当局の致命的失態 |||

犯人はカシミールのラシュカレタイバ戦士養成キャンプで、1年以上攻撃訓練
前号 「第3章 ムンバイテロ首謀者はラシュカレタイバの幹部2人」からの続き
インド・ムンバイ発 |ムンバイ警察よりも充全の武装態勢で奇襲し、公安組織よりも統制の取れた作戦行動でテロを完遂したのは、わずか10人の若いテロリストだった。この事実に対してインドの治安体制の致命的欠陥に世論の非難が一斉に集中したため、インド政府の関連閣僚が引責辞任する結果となった。一方、ムケルジ(ムカージー)外相は3日水曜の段階で、長年の宿敵パキスタンに対して、パキスタン国内に本拠地を置くテロ組織への対処の甘さを追求する、これまでになく厳しい弾劾の声明を発表した。
上:26日勃発した10人のテロリストによる3日間のムンバイテロ事件は、インドの9/11として現代史に刻まれた
下:9月26日パキスタンの首都イスラマバードのマリオットホテルを爆破し、200名以上の死傷者を出したテロ

India suspects militant group's leaders masterminded Mumbai terror
MUMBAI, India — The country's top law enforcement official has resigned amid criticism that the 10 gunmen appeared better coordinated and better armed than police in Mumbai. Mukherjee on Wednesday adopted a more strident tone against longtime rival Pakistan.
__________________________________________________________________
DECEMBER 5, 2008 | 『米 流 時 評』 | 時事評論ブログ雑誌・デイリー版 2008年12月5日号

A s s o c i a t e d P r e s s | B R E A K I N G
9時間もかかった治安出動、公安当局の致命的失態を認め自治相以下3名辞任
米国時間 2008年12月4日午前1時32分 | ワスビール・フサイン/AP通信 | 訳『米流時評』ysbee

1. 'No doubt for coming from Pakistan'
"There is no doubt the terrorist attacks in Mumbai were perpetrated by individuals who came from Pakistan and whose controllers are in Pakistan," Mukherjee said after a meeting with Rice. "The government of India is determined to act decisively to protect Indian territorial integrity and the right of our citizens to a peaceful life, with all the means at our disposal," he said, a turnaround from earlier statements that ruled out military action.
テロリストはパキスタン出身者と断定
「ムンバイの同時多発テロ攻撃では、襲撃を強行した犯人たちがパキスタンからやってきた点、またこの襲撃計画の首謀者はパキスタン国内にいるという点。この2点は、疑いようのない事実である」インド政府のムケルジ内相は、ライス長官との会談のあと記者会見でこう語った。
「インド政府は、インドの領土保全を守るため、またインドの一般市民が平穏に暮らす権利を守るために、わが国の所有するいかなる手段を用いても、断固とした措置をとるつもりである。」外相は、前日まで主張していた「軍事行動は度外視する」という発言をひるがえして、パキスタンに対する厳しい姿勢を示した。

2. Rice urged Pakistan an urgent act
Rice urged Pakistan to act "transparently, urgently and fully," saying Islamabad has a "special responsibility" to cooperate with the investigation. She noted that with six Americans killed in the attacks, the U.S. was cooperating closely with India.
ライス、パキスタン政府に火急な対処を要請
米国のライス国務長官もまた、パキスタン政府に対して「transparently, urgently and fully=隠し立てのない、迅速で、充全な措置」を即刻とるように要請した事実を明らかにし、イスラマバードのパキスタン政府は、今回のテロ事件の真相解明に捜査協力するにあたって「特別な責任を負っている」と述べた。

3. Adding pressure on Pakistan's corporation
Rice's visit was a part of U.S. effort to defuse tensions in the region and pressure Pakistan to share more intelligence and root out suspected terrorists believed hiding in the country.
テロ戦争への協力体制でプレッシャー
ライス長官のインドとパキスタンへの緊急訪問は、米国がこの地域の(特にカシミール地方をめぐる)印パ両国間の対立の危機を緩和しようと努める外交努力の一環でもあるが、さらにはパキスタンに対して今まで以上に諜報情報を公開し共有すること、パキスタン国内に隠れていると思われる容疑者のテロリスト摘発に全力投球するよう、この機会にプレッシャーをかける意図で行われたものと受け止められている。

4. in Mumbai, many called for war
Many Indians wanted more than just harsh words. At the candlelight gathering in Mumbai, many called for war.
追悼集会ではパキスタンとの開戦も
しかしインド人の多くは、単なる手厳しい言葉以上の行動を欲している。事件発生から1週間経った3日水曜、テロ惨劇の舞台となったムンバイでは沢山の市民が集まって、犠牲者追悼のキャンドルライトメモリアルの集会が行われたが、かなりの有志が「パキスタンとの戦争」を叫んでいた。

5. 'Enough is enough, go for war'
"India should attack Pakistan right away," said Sandeep Ambili, 27, who works for a shipping company. "Something has to be done. Pakistan has been attacking my country for a long time," said another protester, Rajat Sehgal. "If it means me going to war, I don't mind." Others chanted anti-Pakistan slogans and held banners reading: "Enough is enough, go for war." Similar rallies were held in cities across India.
「もう沢山だ、戦争だ」
「インドはパキスタンを即刻攻撃するべきだ」こう叫ぶのは、運輸業界に勤務する27才のサンディープ・アンビリさんである。開戦を叫ぶもうひとり、ラジャット・セーガルさんはこう主張する。「何か行動を起こすべきだ。パキスタンはずいぶん長いこと、わが国を攻撃し続けてきた。もし戦争のために私が徴兵されるのであっても、一向にかまわない。」他の参加者も反パキスタンのシュプレヒコールを上げ、「もう沢山だ。戦争だ。」と書かれたバナーを掲げた。ムンバイの抗議集会と同じようなパキスタンを非難するデモが、インド国内の各都市でも実行された。

6. 60-yr fight between nuke nation
After a 2001 militant attack on India's parliament, also blamed on elements in Pakistan, the two neighbors posted nearly 1 million soldiers along their border in a yearlong standoff. The two nations have fought three wars since independence from Britain in 1947, but neither government wants a fourth. Both now have nuclear weapons.
核保有国、印パ紛争60年の確執
2001年にインド国会の議院がテロ攻撃を受け(この場合も多くの証拠はパキスタンとの関連を示していたが)その直後には印パ両国とも隣接する国境に沿ってそれぞれ100万人近い出兵を行い、国境をはさんでの緊迫した睨み合いが1年以上続いた。
そもそも1947年に大英帝国の植民地だったインドが、ヒンドゥー系のインドとイスラム系のパキスタンに二分して独立して以来、両国は3度にわたって戦争を起こしてきた。しかし、現在では両国政府とも4度目の戦争を迎えたくはない。なぜなら、両国とも現在では核兵器保有国だからだ。

7. Require to turn over 20 terrorists
India has called on Pakistan to turn over 20 people who are "fugitives of Indian law" and wanted for questioning, but Pakistani President Asif Ali Zardari said the suspects would be tried in Pakistan if there is evidence of wrongdoing.
20名のテロ容疑者引渡し要求
インド政府は、テロ事件の容疑者としてインド国内で指名手配になっている20人のパキスタン人を「インドの法律に抵触する逃亡者」と定義して、パキスタン政府に対しインド側へ引き渡すよう要請した。しかしパキスタン政府のアシフ・アル・ザルダリ大統領は「万一悪事を働いた証拠があれば、容疑者はパキスタン国内で裁判にかける」と理由付けして、この公式要求を拒絶した。

8. Over 1 year training by Lashkari base
Much of the evidence that Pakistanis were behind the Mumbai attack comes from the interrogation of the surviving gunman, who told police that he and the other nine attackers had trained for months in camps in Pakistan operated by the banned militant group Lashkar-e-Taiba.
テロリスト養成キャンプで1年以上訓練
ムンバイテロの10人のテロリストの中で、唯一の生き残りである犯人に対して行われている尋問で彼が自白した内容から、今回の攻撃計画の陰にパキスタン人がいたという証拠が、数多く上がってきている。犯人は警察の取調官に対して、「自分とほかの9人の攻撃犯人は、違法とされている叛徒グループ、ラシュカレタイバが運営するパキスタン国内の兵士養成キャンプで、何か月も訓練を受けた」と自白している。
(注:その後の追求で、ラシュカレタイバの幹部ふたりが指令者であること、1年以上の訓練後、戦士としての成績が抜群だった者10人が選抜されたことも、犯行事実の一部として供述している)

9. Pay $1,250 for a martyr's family
Ajmal Amir Kasab, 21, told investigators his recruiters promised to pay his family from an impoverished village Pakistan's Punjab region $1,250 when he became a martyr.
1万ルピー(11万5千円)で請け負ったテロ
唯一の生き残り犯人、21才のアジマル・アミル・カサブは、係官の取り調べに対し次のような供述をした。パキスタン西南部パンジャブ州の貧しい村の出身である彼は、テロを完遂して「martyr=ジハド戦士として戦死した英雄/英霊」になった暁には、彼の家族に1250米ドル(現地通貨で100万ルピー=約115,000円)が支払われると、彼の指令者から約束された。

10. Hand-picked by Rashkar for terror mission
Kasab said he and the other gunmen were "hand-picked" for the mission and trained for more than a year by Lashkar-e-Taiba, based in Kashmir, according to two senior officials involved in the investigation. They spoke on condition of anonymity because they were not authorized to talk to media about the investigation.
ラシュカレタイバの特命テロリスト
さらにカサブと他のテロリストたちは、今回のテロ攻撃の特命を受けて選抜され、パキスタン領内のカシミール自治州に本拠地を構えるラシュカレタイバによって、1年以上の特殊訓練を受けたと言う。この供述内容は、取り調べを担当した捜査官らの上司2名から直接取材した情報である。彼らは、捜査に関する内部情報をメディアに公開する権限を持たないため (広報官ではないので)、匿名と言う条件の下で取材に応じたものである。…… 続く

【 米国時間 2008年12月5日 『米流時評』ysbee訳 】

»» 緊急号外「ウォール街復活?オバマの New ニューディール効果」へ
»» 次号「第5章 インドのダブルスパイが事件に関連、ますます錯綜するテロの真相」へ続く
«« 前号「第3章 ムンバイテロ首謀者はラシュカレタイバの幹部2人」へ


TBリンク http://beiryu2.exblog.jp/tb/9028207
__________________________________________________________________
いつもご愛読いただきまして大変ありがとうございます。ワンクリックがブログのエネルギーです!

5〜7位を行ったり来たり。クリックで応援をよろしく!


ニュース部門でトップです。みなさまのクリック、ありがとうございます!


12/05 生き残り犯人が自白、11万5千円で請け負ったムンバイテロ
インド政府、公安当局システム全体の致命的失態を認め、自治相以下3名辞任
12/04 ムンバイテロ首謀者はカシミールのテロ組織ラシュカレタイバ
犯人はカシミールのラシュカレタイバ戦士養成キャンプで、1年以上攻撃訓練
12/03 ムンバイテロの黒幕・パキスタン諜報 ISIとテロ組織ラシュカレタイバ
インドからの独立分離運動をパキスタンが支援して育てた、ジハド戦士軍団
12/02 スクープ!米国務省レポート・ムンバイコンフィデンシャル
ムンバイ・コンフィデンシャル 米国務省のテロ諜報ファイルをNBCが入手!
12/01 速報!インドでまた爆破テロ、アッサム州の列車爆破
インドでまた爆破テロ、アッサム州の列車爆破で3名死亡、29名負傷
11/30 ムンバイ テロの決算・タージホテル陥落
60時間の死闘の末、人質篭城のテロリスト最後の砦 タージマハルホテル陥落
11/26 速報!インド・ムンバイで同時多発テロ発生!犯人画像と現場写真
速報!インド・ムンバイで同時多発テロ発生!市内8か所爆破テロで80数名死亡
犯人はラグジュアリーホテル タージマハルとオベロイで人質を捕り篭城、炎上中!
11/25 タイ反政府デモ隊数千人がバンコック国際空港を占拠!
タクシンの傀儡政権打倒を要求して、タイ反政府デモ隊がバンコック空港を占拠!
11/24 ポストグルジア紛争・尾を引くグルジアとロシアの対立
サルコジ仲介の和平協定実効せず、グルジア紛争後も尾を引くコーカサスの対立
ロシア軍撤退後も南オセチア・アブハジアに4千名駐留継続、危機体制変わらず
11/23 狙撃!サーカシビリ危機一髪!グルジア、ロシアを非難
サーカシビリ危機一髪!グルジア難民キャンプ慰問の帰路、危うく狙撃さる
仏仲介の和平協定実効せず、南オセチア・アブハジアにロシア兵4千名駐屯
11/22 「日本の夜と霧」亡国への傾斜に警世の一閃!今からでも遅くない
警世の一閃: 西村幸祐氏「国籍法改正案に反撃を! It's not too late!」
うにまろ氏「国籍法、対馬、郵政株凍結、りそな、暗殺【国家反逆罪国会】」
11/20 ソマリア海賊の猛威!1週間でインド洋航行船舶8隻をハイジャック!
ソマリア海賊の猛威、インド洋上のシーレーンで1週間に船舶8隻を略奪!
香港籍のタンカー2隻釈放、サウジスーパータンカーに身代金24億円要求
11/18 オバマのチャイナフリーFDA改革・禁中国汚染食品!
オバマ新政権の FDA改革で輸入ストップになる 中国汚染食品
ブッシュの中国輸入品放任政策にメス、安全基準の引き上げに
11/16 速報!ソマリア海賊が日本の貨物船をハイジャック
ソマリア沖のインド洋海域で海賊が日本の貨物船をハイジャック
韓国外務省情報: 乗組員の安否不明、23名のうち5名が韓国人
11/15 オバマ紳士録・後編 クリントンが国務長官?
国防長官はコーリン・パウエルか? 国務長官はクリントンか、ケリーか?
党派を越えたベストメンバーの最強内閣と噂されるオバマ新政権の人事予測
11/14 オバマの初仕事・ホワイトハウスの組閣人事
オバマの初仕事:超党派推進のオバマ新政権ホワイトハウス 組閣人事予測
ヒラリー・クリントンが国務長官? NBCニュースのスクープは本当か?
11/09 核ミサイル基地のある中国青海省でまた強震
チベットの東隣、中国青海省で マグニチュード6.5の強震発生
震源地は、辺境自治区のダカイカン核ミサイル発射基地の近く
11/08 速報!極東海域でロシア原潜事故、20名死亡!
太平洋極東海域でロシア海軍原子力潜水艦に事故発生、20名死亡
事故発生場所未発表、メドベージェフ 事故原因の緊急調査を指令
11/07 オバマの第一声「アメリカの大いなる挑戦」
「米国経済の大いなる挑戦」オバマ次期大統領、初の公式記者会見
変革のスローガンCHANGEから 山積する問題にCHALLENGEへ
by ysbee-2
| 2008-12-05 14:24
| インド・ムンバイテロ