勝者なき闘い・ガザの終りとオバマの始まり
||| 勝者なき闘い・ガザ戦争 |||

明日に迫ったオバマ新大統領就任式と、ガザ戦争終結との因果関係
アメリカは国を挙げて、オバマ新大統領誕生の瞬間を待っている。2年間の長い長い大統領選の末にたどり着いたキャピトルヒル(上下両院のあるワシントンDCの丘)。オバマが11月の勝利演説でいみじくも宣言したように「We are the people who get there.」われわれがそこに到達した人間だ。自由・平等・博愛を掲げ、アンシャンレジームを打ち倒した、フランス革命の精神。
そのスピリットを引き継いで英国から独立を果たした、アメリカ独立戦争の建国精神。
その実現を目指したリンカーンの、奴隷解放・万人平等の精神。
そうしたアメリカンスピリットを復活させた、ケネディのニューフロンティア精神。
マーチン・ルーサー・キング牧師の「I have a Dream」の不屈の精神・・・・
「We are the people who get there.」 この言葉の中には、
こうした米国の歴史の中の偉大なる先人のスピリットが、脈々と息づき燃えている。

明日20日火曜の正午過ぎに、「夢と希望」という死語に命を吹き込んで復活させ、
アメリカが、いや世界中が期待をかけた、新しい大統領が誕生する。
フィラデルフィアからワシントンまでの、リンカーンが大統領就任の際に辿ったルート。
米国はすでに土曜の朝から、これと同じコースをアムトラックの御用列車で走り出した。
新しい米国の指導者となる オバマとジョー・バイデンが、沿道の群衆の歓声に応えながら
きわめて歴史的な、むしろノスタルジックな大統領就任の旅路をスタートした。
このルートは、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺の2年後に、
次の大統領に立候補した弟のロバート(ボビー)・ケネディもまた、
ロサンジェルスの民主党大会で凶弾に倒れ、その棺が辿ったのと同じ運命のルートでもある。

立候補直後から、ホワイトスプリーマシスト=白人優越主義者による暗殺の噂の絶えないオバマ。
しかし彼は、そうした噂や因縁の禍々しい陰りを吹き飛ばすように、
リンカーンや ふたりのケネディがたどった同じコースを、
特別列車「オバマ・エキスプレス」に乗り込んで走った。
そして、キング牧師が実現した人種差別撤廃の公民権運動の偉業、
「Million Men March」百万人の行進の最終地点として目指した、
リンカーンメモリアルまでの由緒ある旅路を、
ワシントンへ上る勝利の道程として、あえて選んだ。
身を挺しての CHALLENGE の旅路である。
自分は負けない、自分は死なない、という生きた証しを打ち立てるために、
まるで 凶弾に倒れた偉人たちの魂を、蘇生しようとしているかのようだ。
American Resurrection・・・アメリカン・リザレクション。 米国の甦り。
失墜した米国の威信を救済し復活する、再生の旅路の始まりである。

ワシントンには、アメリカ中から、いや世界中から、
ありとあらゆる肌の色のグラデーションを展開するかのごとく
すでに200万以上のひとびとが集まって、ユニバーサルな祝賀気分が渦巻いている。
昨夜の記念イベントの祝賀コンサート「We are One」も素晴らしかった。
私が米国へ住んで以来20年間見聞きした中でも、もっとも「Patriotic=愛国的」で、
アメリカンスピリットが横溢したイベントだった。

オバマはたしかに、出自はリベラルかも知れないが、
彼の目指すところは、きわめて保守的で健全な、アメリカンスピリットの再生である。
そこが、保守・革新の枠を軽々と超えて、万人に理解され受け入れられる理由だろう。
就任前から、すでに82%という驚異的な支持率を示している。
これだけの期待と、大恐慌以来の経済危機が、両肩にのしかかっている。
今回のイスラエルのガザ侵攻についても、「大統領は一度にひとりだけ」という鉄則を貫き
ブッシュ政権のイスラエル支持に、反対意見を述べなかったオバマ。
04年の民主党大会以来ずっと応援してきたが、この一件で、私は初めてオバマに失点をつけた。

彼が「即時停戦」を叫べば、ツルの一声で、もっと早くに停戦が実現し、
少なくとも数百の パレスチナ人の命が助かっていたはずだ。
就任直後には、先ず第一に、この件に対する明白な彼独自の意見が聞きたい。
そして、アメリカとイスラエルとの間に、確実な一線を引いてもらいたい。
軍事大国の横暴と虐殺は、イラク戦争だけで沢山だ。
怒りが沸騰している間にも、ことは進展した。
18日の時点で、イスラエルが議会通過を元に一方的に停戦宣言を出し、
続いてハマス側も、独自の停戦を宣言し、双方とも勝利したとのたまっている。

特に、イスラエル側の停戦・撤退の理由は、オバマの大統領就任の直前までに、
ガザ地区内に侵攻している地上軍の全部隊を引き上げる、というものだった。
イスラエルの後ろ盾である米国の、新しい政権の発足を
戦場の凶報で汚したくないからだと報道されている。
イスラエルはそれほど、米国の中東外交の転換を気にしていたのか?
ならば、オバマが「STOP!」と号令をかければ、
地上侵攻も、そもそもの空爆も、抑止できたのではないか?

イスラエルが陸海空三軍で侵略し、
破壊と殺戮の限りを繰り返した挙げ句、勝手に引き上げたのに対して、
決死のレジスタンスで全面降伏を回避した、イスラム軍団ハマス。
これでは当初予期した通り、2006年のレバノン戦争の終結と一緒ではないか。
死者の屍と、遺族の悲しみと、両者の敵意を膨大にふくらませただけで
一片の解決にもならなかった。
逆にイスラエルはハマスに対して、今後予測される逆襲やテロ攻撃に対して
「虐殺者への復讐」という大義名分を与えたようなものだ。

イスラエルは、06年にレバノン南部を焦土と化したのとまったく同じ手段で
圧倒的な軍事力で、狭く細長いガザ地区と、この上なく貧しいパレスチナ人を
くまなく爆撃し、戦車で蹂躙し、瓦礫と死体の山を築いた。
人間性の極限を踏み越えた、虐殺の戦略に長けた国。
それがこれからの、世界が彼らを見る目になる。
戦闘では勝ったが、国際世論では多くの国と民衆を敵に回してしまった。
歴史のサイは投げられた。もう時間を逆行して記憶を消すことはできない。
ナチスが、アウシュビッツが、ホロコーストが、未来永劫ひとびとの記憶から消えないように
ガザで、パレスチナ人に対してイスラエルが行った、人間としての軌道を逸した蛮行は、
われわれの脳裏から 一生拭い去ることはできないだろう。

彼らが今後できる唯一の償いは、パレスチナの一般市民に対する謝罪だけではない。
国土を焦土と化した罪ほろぼしに、再建復興を援助するだけでも足りない。
過ちは二度と繰り返しませんという「闘争意志の放棄」を双方が誓うこと。
そしてイスラエルには、ガザのパレスチナ人の存在理由を尊重し、
虐殺者としての断罪を受け止める以外に、許されるべき道はない。
【 米国時間 2009年1月19日 『米流時評』ysbee 】

▼この下にも、現地のニュースビデオの紹介と、ガザ戦争の特集記事リンクがあります。

TBリンク http://beiryu2.exblog.jp/tb/9227907
__________________________________________________________________
いつもご愛読いただきまして大変ありがとうございます。ワンクリックがブログのエネルギーです!
おかげさまで4位になりました!応援をありがとうございます!
ニュース部門で2位です。みなさまのクリック、ありがとうございます!
テクノラティはお気に入りブログの更新内容が一覧できて大変便利 
NBC ナイトリーニュース | 戦場のジャーナリスト/ガザへの危険な旅路 1/17/2009
Richard Engel Gaza Report | NBC News International Dept. Chief Richard Engel finally could enter into Gaza from Rafah crossing.17日土曜、それまで外人記者団に対し一切立入禁止だったガザ地区へ、8時間だけの入国が許された。
戦場のジャーナリストとしてアフガニスタン、イラクと従軍してきたNBCニュース国際部長のリチャード・エンゲルが、その第一陣のジャーナリストとして国境を越え、空爆に怯えるガザ市民の生活を現地からビデオレポート。
緊急特集 ||| ガザ戦記 |||
▶12/26 ガザ戦争 序章「イスラエルの最終戦争」
▶12/29(1)「ガザ空爆エスカレート」 凄惨!死者364名 負傷者1400名以上
▶12/30(2)「ガザの最終戦争宣言」ついに全面戦争へ突入するイスラエル(未掲載)
▶12/31(3)「ガザ空爆はジェノサイド!」反イスラエル抗議運動世界へ拡大(未掲載)
▶ 1/1 『米流時評』年頭のメッセージ「2009年のワルキューレ」ブログの砦の同志たちへ
▶ 1/2 (4)中東戦局分析「イスラエルのエンドゲーム」ガザ侵攻の最終目標は中東大戦争?
▶ 1/2 (5)中東戦局分析「イスラエルのエンドゲーム」後編(未掲載)
▶ 1/3 (6)号外!「ついに地上侵攻開始」イスラエル恐怖のガザ市街戦へ突入!
▶ 1/4 (7)緊急レポート・ガザの死闘で長期戦を覚悟するイスラエル
▶ 1/5 (8)イスラエルの大罪・ガザジェノサイド【白リン弾使用】
▶ 1/6 (9)イスラエルの巨大な棺ガザ
▶ 1/7 (10)中東平和への墓標ガザ(未掲載)
▶ 1/8 (11)虐殺の砲弾・地上軍のガザ国連学校砲撃で死者40名(未掲載)
▶ 1/9 (12)ガザのホロコースト/イスラエル軍の戦争犯罪を赤十字が暴露!
▶1/10(13)ザイトゥンの虐殺/イスラエルの戦争犯罪目撃者の証言
▶1/13(16)ガザは大戦末期の日本なのか?イスラエル・タカ派の見る共通性
▶1/14(17)戦争終結の最終兵器・イスラエル極右タカ派と核使用の危険性
▶1/15(18)「オバマのアウフヘーベン/米国のスマートパワー外交」(予告)
▶1/16(19)「オバマはユナイター/米国のスマートポリティクス」(予告)
▶1/17(20)イスラエル軍ガザの国連本部を爆撃!支援物資全焼
▶1/18(21)ガザ戦争ついに休戦へ!開戦から3週後イスラエル国会で可決(未掲載)
▶1/19(22)勝者なき闘い・ガザ戦争/ガザの終りとオバマの始まり
▶1/21(23)戦士の休息/ガザ終戦とイスラエルの戦争犯罪
▶1/22(24)イスラエルの戦争犯罪・国連学校へ白リン弾投下

■ 必読 ■ 中東の歴史と現状を理解するために
米流時評 総論「ガザの悲劇」4千年の中東民族抗争
■ 参考 ■ アメリカの中東外交の原点を知るヒント
2/17/07「米国と中東・ふり向いた異邦人」
2/18/07「ユダヤとアラブ・千年王国の確執」
■ 特集 ■ ガザ・エクソダス <2008年1月>
1/23/08 第1部 ガザの壁崩壊で パレスチナ人35万人エジプトへ越境
1/24/08 第2部 ポスト・ジェリコ ガザの壁崩壊が中東に及ぼす波紋
1/25/08 第3部 ガザ・ゲットー ガザの壁崩壊による窮乏からの脱出
■ 特集 ■ アナポリス中東平和会議 <2007年11月>
11/27/07 第1章 アナポリスの奇跡?中東平和会議陰謀論
11/28/07 第2章 アナポリスの謀略・中東特使に元NATO総帥抜擢
11/29/07 第3章 アナポリスの神託・中東和平会議の出した結論
11/30/07 第4章 アナポリスの予兆・どうなる?中東和平会議の行方
■ 特集 ■ 中東核戦争 <2007年6月>
「イランが危ない!」中東大戦争の可能性
「中東大戦争前夜?」急浮上するシリアとイスラエルの核紛争
1 戦争挑発行為?イスラエル爆撃機のシリア領空侵犯
2 中東核戦争の危機は本物か
3 「新ジェリコの戦い」イランのミサイル報復作戦
4 核のターゲットはイラク・アフガン駐留米軍
5 消された記事『中東代理戦争:シリア対イスラエル』
6-1 ホワイトハウスのウォーゲーム
6-2 「2008年核戦争の冬」チェニーのウォープラン
6-3 復讐の世紀「核のアルマゲドン」中東戦争
6-4 暴かれた大謀略・ネオコンとイスラエルの中東「核の戦略」
■ 特集 ■ 中東・イラン問題 <2008年>
急接近する北朝鮮とイラン、二国同盟に初調印
ブレアの再出発・中東平和外交代表
イラン警告:1分間で1万1千発ミサイル発射可能
衛星写真が証明 シリア核施設空爆後の証拠隠滅
||| 『米流時評』 特集シリーズ |||
次世代冷戦時代 | グローバルウォー | イラク戦争 | テロとスパイ陰謀

アルカイダ2.0 核のテロ | パキスタン戒厳令の季節 | アフガン・タリバンの復活
中東のパワーラビリンス | プーチンのロシア | ユーラシアの回廊 | ダイハード中国
2008年米大統領選 | ブッシュと米国政治 | サルコジのフランス | トンデモ北朝鮮
ビルマの赤い川革命 | 欧米の見る日本 | 世界不思議探検 | グローバルビジネス



