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米流時評

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ネタニヤフとリブニ/イスラエルの2月体制

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   ||| ゴラン高原とイスラエル総選挙 |||

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ガザ侵攻イスラエル軍の最高司令官でもあったオルメルト首相のポスターを貼った嘆きの壁ならぬ「靴辱の壁」

極右タカ派と中道派リブニ、左右の追い上げに苦戦するリクード党ネタニヤフ

d0123476_18552829.gif今回の総選挙では、ブッシュ政権の忠実な下僕であったエフド・オルメルト首相はブッシュと時期を同じくして引退し、彼の率いたカディマ党は、党首のバトンを現行の外相ズィッピ・リブニへと継承する。彼女の出自を知るには、一言で理解できる肩書きがある。泣く子も黙るイスラエルの諜報機関モサド出身なのである。

そのリブニ外相が、ガザ侵攻においては国際間の協力を求めて奔走したため、彼女の努力がイスラエル国民の目には愛国的と映ったらしい。しかし、彼女には今期の総選挙で首位必至と予測されたタカ派のリクード党党首ネタニヤフを下す、という絶対使命があり、侵攻においても空爆の強行・拡大を押し進めて右派の切り崩しを図ったのは明らかである。現役の外相の立場を利用して戦局を自己の選挙戦略に利用するという、非情な政治的家としての野望は、インタビューでの応答の端々に隠しようもなく出てきていた。
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あえて私見を述べさせていただくなら、ユダヤ人特有の選民主義と、エゴイスティックな政治的野心、そしてモサド上がりの闘争心で凝り固まった「冷酷なるアイスクィーン」と評価する。
リブニのこうした「為政者=Political leader」というよりも「覇権者=Power monger」としての特徴は、ロシアのプーチンと相通じるものがある。プーチンもまたロシア民族のナショナリズムの復権を標榜し、帝政ロシア時代の栄光とソ連時代の旧連邦体制の復活を目論む野心を暖めてきた、KGBエージェント出身の冷徹なる官僚だった。

d0123476_14302471.jpg時事ブログでいつも情報の早いYAN-Cさんはリブニ外相とオルメルト首相のカディマ党内の相克を詳説。▶ブログRE: SUKI 2/03 イスラエル 新首相はTzipi Livni?
エントリの冒頭より「ツィピ・リヴニ筆頭副首相兼外相は2007年5月にオルメルト首相への辞任を求めていました。2006年からわずか1年で、オルメルト政権は辞任を迫られたのです。余程信用がないのか、それとも同じ党内の話なので、微妙な駆け引きでもあるのでしょうか?......<後略>」


10日の国民投票で、彼女が所属するカディマ党が万が一にでも議席の過半数を獲得すれば、リブニはイスラエル史上2番目の女性首相となる。1948年に建国したイスラエルで最初に女性首相となったのは、スティーブン・スピルバーグ監督 (ユダヤ系アメリカ人) の政治的な問題作となった、映画『Munich/ミュンヘン』の冒頭に登場し、モサドのエージェントに暗殺使命を下した女傑、ゴルダ・マイヤーである (なんとユダヤ人的響きの名前か!)。彼女はまた、女性としては世界初めての首相でもあった。
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記事中で、リブニのキャンペーンに「The Man of Situation」というキャッチコピーが使われたというくだりがあるが、この場合の「Situation」は、軍事用語として使われた場合の「戦況/戦線報告」と解釈するのが妥当だろう。いわば「Situation Room=戦略会議室」にふさわしい人物、という意味である。

たしかに容赦ないガザへの爆撃で、1300名以上という膨大なガザ市民の犠牲者を「戦果」と誇って恥じない人物ではあった。他の候補者もみな、好戦的なタカ派ばかりである。紛争や戦争を日常茶飯事とする中東の台風の目・イスラエルでは、ネタニヤフ、リブニのどちらが首相になっても、ガザのパレスチナ人に対する弾圧の手綱はゆるみそうもない。

【米国時間2009年2月10日『米流時評』ysbee】

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FEBRUARY 10, 2009 | 『米 流 時 評』 |  時事評論ブログ雑誌・デイリー版  2009年2月10日号
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  Associated Press | B R E A K I N G
イスラエル総選挙投票予測:リクード・カディマ・愛国党・労働党の混戦
米国時間 2009年2月8日午後2時31分 | AP 通信・イスラエル支局発 | 訳『米流時評』ysbee

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Netanyahu: No Return of Golan Heights to Syria
8. Weighing into strategic Golan Heights
While Livni has not ruled out returning the strategic Golan Heights, captured in the 1967 war, in exchange for full peace, and the third candidate for premier, Defense Minister Ehud Barak of Labor, offered the Syrians just that deal when he was premier in 2000, Netanyahu insisted he would say no. "The Golan will never be divided again, the Golan will never fall again, the Golan will remain in our hands," he declared during his campaign stop there.
ゴラン高原の戦略的重要性を再確認
「ゴラン高原は2度と(シリアへ)分譲されるべきではない。イスラエルはゴランから決して退却するべきではない。ゴランはいつまでもわれわれの掌中にある。」
ネタニヤフは、わざわざゴラン高原へ出向いての現地キャンペーンで、こう演説した。ネタニヤフと彼の取巻き連中は、イスラエル北部を睥睨するゴラン高原の戦略的拠点としての価値を重視しており、あたかもパレスチナ、および周辺イスラム諸国との友好平和の協定を締結するよりも、緩衝地帯であるこの地域、ゴラン高原を死守する方が大事だと思い込んでいるようだ。

(注:ネタニヤフの言葉は、現行のオルメルト首相が昨年米国アナポリスで開催された「アナポリス平和会議」で、中東諸国との和平のためにゴラン高原からのイスラエル軍の撤退も検討、ほかイスラム諸国との妥協和解案を欧米と進めていることへの反論で、カディマ党首相候補のリブニ外相の友好的対外政策とは正面から対立するネタニヤフが、ゴラン高原を「軍事防衛優先主義」のシンボルとして使い間接的な表現で攻撃したもの)
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イスラエルとシリア、パレスチナ西岸の間に介在するゴラン高原にもユダヤ人入植者のキブツが点在しIDFが警護する

9. Careful foresight on Lieberman

Netanyahu and his backers consider the strategic value of the territory, which overlooks northern Israel, as more important than a peace treaty. Netanyahu has carefully not criticized Yisrael Beitenu or its leader, Avigdor Lieberman, who was Netanyahu's chief aide when he was premier from 1996-1999, hoping for a partnership after the election.
リーバーマン入閣を見越すネタニヤフ
選挙戦での遊説中、リクード党の首相候補ネタニヤフは、対戦相手である Yisrael Beitenu Party/イスラエル愛国党、あるいはその党首であるアビグドール・リーバーマンを敵に回さぬよう気を使って、直接批判の対象にするのは避けてきた。
その理由は、ネタニヤフ自身が首相を務めた96〜99年のリクード党政権時代にリーバーマンは側近の長だったという過去の緊密関係も手伝っているが、ネタニヤフの本心はむしろ「リクード党が過半数の議席を確保して与党としての地位を確立するためには、極右のリーバーマンの党と連立してタカ派政権を樹立する」という覇権のための政局把握戦略にある。
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投票2日前の日曜、6日間戦争以来イスラエルの望楼の役割を果した戦略的拠点ゴランハイツへ遊説するネタニヤフ

10. Growing sympathy of Israeli Arabs

Lieberman has been playing on the fears of many Israelis about the growing sympathy of Israeli Arabs for the Palestinian cause. Arabs make up about 20 percent of Israel's population. Lieberman's main campaign plank is to force Arabs to swear loyalty to the Jewish state or relinquish their citizenship.
ガザ戦争で高まるアラブ系への同情を懸念
イスラエル国内では、12月末から3週間続いたガザ侵攻への反撥として、イスラエルの市民権をもつアラブ人の間で、ガザのパレスチナ人の受難に対する同情が高まっている。(イスラエルの市民権をもつアラブ住民は、イスラエルの人口全体の20%にも及ぶ)
こうした兆候を懸念する大半のユダヤ人国民の恐れをうまく取り込んで、イスラエル祖国党(or 郷土党、愛国党)のリーバーマン党首は、アラブ・パレスチナに対する強硬姿勢を売り物に有権者の支持を伸ばしてきた。リーバーマンのキャンペーンにおける最大のセールスポイントは、アラブ人市民に対して「ユダヤ人国家への忠誠を誓うか、さもなくば市民権剥奪」という強引なシオニストの公約である。
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ネットで有名になった爆撃でちぎれた女の子の頭部の写真はイスラエルのガザ侵攻に抗議するポスター・バナーにも

11. Lieberman's party emerged to be at third

Some polls show Lieberman's party approaching 20 seats in the 120-seat parliament, trailing Likud and Kadima, polling less than 30 seats each, but well ahead of Labor, with about 15.
リクード党とカディマ党の覇権を左右するキングメーカー
世論調査専門の数社の統計によると、リーバーマンの率いるイスラエル愛国党 (祖国党) が、国会議員全120議席のうち20議席を獲得しそうな勢いである。その結果、極右の支持者を食われたリクード党とカディマ党はそれぞれ30議席以下に落ち込み、当初3位を予想されたエフド・バラク防衛相の労働党は15議席に落ち込み、4位に転落した。
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左:中道派の労働党候補エフド・バラク現防衛相/中:首相へ最有力候補のリクード党党首ビンヤミン・ネタニヤフ
右:「ガザは大戦中の日本」説で脚光を浴びた極右のイスラエル祖国党/愛国党、アビグドール・リーバーマン党首


12. Kingmaker between Likud and Kadima

While it is unlikely that Lieberman could carry out his loyalty pledge, the scope of his support could catapult him into a key role in the new government, giving him a large voice in peace moves and domestic policy as well.
リクード党とカディマ党の覇権を左右するキングメーカー
選挙終了後は、リーバーマンは多分過去の上司ネタニヤフへの忠誠を守り、さらには分党の獲得議席をリクード党体制下に組み込む見返りとして、閣僚の重要な地位を獲得できる思惑があると予測されている。リーバーマンの第三党が過半数をとれなかったネタニヤフの第一党に翼賛する状況では、リーバーマンがキングメーカーとなり、その後の中東和平問題やイスラエルの国政の上にも、影響の大きい声となりそうである。
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ベンヤミン・ネタニヤフの愛称「ビビ」とピノキオを合成した、自惚れを揶揄する「Binocchio=ビノキオ」マスク

12. Prediction of upset in whole equation

However, polls are notoriously inaccurate in Israel. This time the pollsters' task is even more difficult, because the gaps among the parties are relatively small, turnout is expected to be the lowest in Israel's history and a plethora of small parties could upset the whole equation.
僅少差で崩れる互角のバランス
しかしながら、イスラエルの総選挙の投票予測はいつも当たらないことで悪名が高い。おまけに今回はいつもに輪をかけて、票読みのプロ泣かせの難航した展開となっている。その理由は、各政党間の予想得票数のギャップが比較的小さく、投票率がイスラエル史上最低になるのではないかと予測されているせいである。さらには、イスラエルの政情を特徴づける極小政党が群雄割拠する「plethora/政党の飽和状態」で、僅少差で番狂わせの勝敗決定をもたらすのがお決まりの展開である。
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イスラエル国内にもアラブ系市民は存在する(スクリーンの向う側) 手前でバスを待つのはオーソドックッス・ジュー

13. Running for 120 seats by 31 parties

Israelis vote for parties, not candidates, and the 120 seats are divided up according to the numbers of votes the parties get. This time 31 parties are running, the highest number ever. While only a dozen or so are likely to make it into the new parliament, accurately predicting the results in advance is nearly impossible.
120議席をめぐって争う31党の候補
イスラエルの国会=クセネットの議員選出方法は、立候補者に投票するのではなく、各政党別の得票率で議席数を割り出す「政党比例議席制」をとっている。今回の総選挙には31党が立候補し選挙戦を繰り広げているが、イスラエル史上最多の参加政党数を記録した。その中で新しい議席を獲得できるのは12党前後と見込まれているが、実際には事前に結果を予測するのはほとんど不可能に近い状況である。 <了>

【 米国時間 2009年2月10日 『米流時評』ysbee訳 】
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10日の投票日の1週間前にすでに投票所へ運び込まれた、イスラエル国旗と同色のバロット・ボックス=投票箱

◀前号「イスラエルとオバマ/3タカ大将のイスラエル総選挙」
▶次号「速報!タリバンがカブール政府を同時多発テロ攻撃、28名死亡!」へ
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米流時評 特集 ||| オバマの時代 |||
第1章 オバマ時代開幕 Road to White Housed0123476_19284774.jpg
▶11/01(1)世界が待ち望む オバマ時代の夜明け
▶11/02(2)世界危機に挑戦する 21世紀のニューリーダー
▶11/04(3)アメリカの再生を賭けた明日へのカウントダウン
▶11/07(4)オバマの第一声「アメリカの大いなる挑戦」
▶11/13(5)オバマの初仕事・ホワイトハウスの組閣人事
▶11/14(6)オバマ紳士録・後編 クリントンが国務長官?
▶11/16(7)オバマのチャイナフリーFDA改革・禁中国汚染食品!
▶12/08(8)ウォール街復活? オバマのNewニューディール効果


第2章 オバマの百日革命 Revolutionary Road
▶1/19(1)勝者なき闘い・ガザの終りとオバマの始まり
▶1/23(2)ブッシュとオバマ/スーパーマンの仕事始め
▶1/24(3)カストロとオバマ/キューバとアメリカの新しい海峡
▶1/25(4)旧体制とオバマ/レボルーショナリーロード
▶1/27(5)中東とオバマ/カウボーイ外交からピース外交へ
▶1/28(6)アラブとオバマ/アルアラビアTVインタビュー対訳d0123476_1936736.jpg
▶2/01(7)金正日とオバマ/狼少年の歓迎のテポドン
▶2/03(8)テロ戦争とオバマ/アフガン戦線と東欧MD計画
▶2/04(9)メドベージェフとオバマ/ユーラシア防衛とキルギスタン
▶2/05(10)アフガンとオバマ/カイバー峠の戦場にかける橋
▶2/06(11)パキスタンとオバマ/タリバン戦線の共闘戦略
▶2/07(12)アルカイダとオバマ/パキスタン ISIのCHANGE
▶2/08(13)ビンラディンとブッシュ/テロ戦争内幕の危険な関係
▶2/09(14)イスラエルとオバマ/タカ派三つ巴のイスラエル総選挙
▶2/10(15)ネタニヤフとリブニ/イスラエルの2月体制
▶2/11(16)タリバンとオバマ/首都カブール同時多発テロ攻撃
▶2/12(17)カルザイとオバマ/アフガン増兵とアフ・パキ戦線
▶2/13(18)クリントンと日本/拉致被害者家族と東京で会談
▶2/14(19)クリントンと北朝鮮/核と平和のアメとムチ
▶2/15(20)パレスチナとオバマ/絶望と希望のはざまで
▶2/17(21)アフマディネジャドとオバマ/テヘランの春
▶2/18(22)IAEAとオバマ/イラン核外交のCHANGE


||| 『米流時評』 特集シリーズ |||
次世代冷戦時代  |  グローバルウォー  |  イラク戦争  | テロとスパイ陰謀d0123476_1746245.jpg
アルカイダ2.0 核のテロ | パキスタン戒厳令の季節  |  アフガン・タリバンの復活
中東のパワーラビリンス | プーチンのロシア | ユーラシアの回廊 | ダイハード中国
2008年米大統領選 | ブッシュと米国政治 | サルコジのフランス | トンデモ北朝鮮
ビルマの赤い川革命 |  欧米の見る日本  | 世界不思議探検 | グローバルビジネス


by ysbee-2 | 2009-02-10 18:54 | 中東のパワーラビリンス
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世界の動きがよくわかる!激動する国際情勢を、欧米メディアでディープに読む…世界の「今」と真実探求に関心ある知的冒険者へ送るグローバル情報満載ブログ


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