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「事実は小説よりも奇なり」作家フォーサイスが遭遇したクーデタ

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 ||| 戦争の犬、フレデリック・フォーサイス |||

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 スパイ小説の大御所、フレデリック・フォーサイスが遭遇した本物のクーデタ
 アフリカ西岸のギニアビサウ共和国で、反乱軍のヴィエイラ大統領暗殺を目撃


d0123476_18552829.gif事実は小説よりも奇なりと言うが、今回のエントリーは、希代のスパイ小説の大家が執筆取材中の旅先で起きたクーデターを図らずも目撃した、という話。その作家とは『ジャッカルの日』でデビューして以来、押しも押されぬスパイ小説の権威となったフレデリック・フォーサイスである。

フォーサイスと言えば、諜報機関やスパイが暗躍し暗殺やクーデターが巧妙に描かれた、推理小説の作家としておなじみの名前である。作品はすべてベストセラー、映画化されたものも数多い。元々はRAF (Royal Air Force) 英国空軍のパイロット上がりで、ロイター通信の記者やBBC特派員として海外で活躍した生粋のジャーナリストである。
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 左:デビュー作『ジャッカルの日』初版本 /取材や講演で世界を股に駈けるサー・フレデリック・フォーサイス
 トップの写真はビサウ共和国の大統領官邸 今回とは別に以前起きたクーデタで壊れた屋根のまま


この経歴は、ジェームズ・ボンド/007シリーズの原作者、イアン・フレミングとよく似ている。彼もやはり英国海軍の軍人上がりで、長年ロイター通信の特派記者として中東やバルカンを股に駈けたジャーナリストだった。ちなみに、軍人あがりでロイターやBBCの海外特派員と言えば、英国の諜報機関MI6のエージェント、つまりスパイとして外国へ送り込まれている場合が多いというのが通説だ。

私が中学生の頃に(昭和のアンモナイト期)ちょうどボンドシリーズの第一作『007は殺しの番号/ドクター・ノオ』が封切りになった。ジョン・バリーのテーマミュージックとともに、まだ無名の新人だったショーン・コネリーが女王陛下の007号となって活躍するシリーズは一世を風靡し、毎年の正月映画として寅さんと並んで、なくてはならない看板映画になった。
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 フォーサイスの近作『The Afghan』はアルカイダやテロ戦争を素材に扱った野心作

兄と弟にはさまれて育った私も、ご多分にもれずスパイ小説や探偵小説をむさぼり読んだ口である。当時は早川書房から発売されていたハヤカワ・ミステリーというジャンルに、こういった欧米の翻訳小説が網羅されていて、黒い裏表紙にカラーの背表紙という、これまたバタくさい翻訳物ならではの装丁も、書店の本棚で目を引く存在だった。

もちろん、映画を見た後でイアン・フレミングの原作を読むのが習慣になっていた。ボンドシリーズがとば口となって、その後高校に入る頃には、ダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウ物や、ミッキー・スピレイン、エド・マクベインの87分署シリーズなどを手当たり次第読破していった。ハードボイルドの神髄と言われるこうした作家たちの作品。歯切れがよく勢いのある小気味よい文章にぞっこんだったので、現在米国に住んでそういう英文の醍醐味を生で読めるのは、ハヤカワミステリーや植草甚一氏からの何かの因縁かもしれない。
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  フォーサイスのバイオグラフィーのページ 出版社のサイトだが、近作・近況まで網羅している

さて、話がえらくワープしてしまった。元に戻して、フレデリック・フォーサイスである。彼がデビューしたのは、すでに社会人になった後だったので、原作は『ジャッカルの日』しか読んでいない。しかし、映画化された作品で『戦争の犬たち』『オデッサ・ファイル』は見ている。

作品からも充分伺えるように、外交官や諜報員、将軍たちの内部情報に精通したその彼が、アフリカ西部でもいわくつきの動乱の国ギニアビサウ(英・仏読み: ギネア・ビソー)を訪問中に、実際のクーデタに出逢ったと言うのである。ちょうどそういうプロットの小説を執筆のために取材中だったというのだから、まさしく事実は小説よりも奇なり。戦争の犬も歩けば、硝煙を嗅ぎつけるよりもすばやく暗殺にぶちあたった、というエピソードを。

【米国時間2009年3月5日『米流時評』ysbee】

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MARCH 5, 2009 | 『米 流 時 評』 |  時事評論ブログ雑誌・デイリー版  2009年3月5日号
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  Associated Press | B R E A K I N G
「事実は小説家よりも奇なり」フレデリック・フォーサイスが遭遇したクーデター
米国時間 2009年3月5日午前3時24分 | AP通信・ニュース速報 | 訳『米流時評』ysbee

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  今年70歳になった英国のベストセラー作家フレデリック・フォーサイス 国際的スパイ陰謀小説の大家

Thriller King Forsyth Ends up in Africa Mayhem
Assassination of Guinea-Bissau's president and rival seems like a book plot

MATCH 5, 2009, 3:24 a.m | Associated Press — BREAKING | Translation by ysbee
BISSAU, Guinea-Bissau — It could have been a scene right out of one of his own thrillers. And when his next novel is published, it may very well be. British author Frederick ("The Day of the Jackal") Forsyth jetted into coup-prone, cocaine-plagued Guinea-Bissau this week to research his latest novel, and found real life trumping fiction.

事実は小説よりも奇なり
ギニアビサウ・ビサウ発 |それはまるで、彼の推理小説からそっくり抜け出してきたようなシーンだった。その上現在彼が執筆中の次の作品が今秋出版されれば、多分そのままの光景が小説の中で展開するだろう。
ベストセラー『ジャッカルの日』でデビューした英国の作家フレデリック・フォーサイスは、名物と言えばクーデタ陰謀とコカイン麻薬密輸ぐらいのアフリカの小国ギニアビサウに今週ジェットから降り立った。旅の目的は執筆にとりかかった最新の小説の素材を現地でリサーチすることだったが、フィクションのトランプは見事にくつがえり、図らずも現実の事件を目撃する羽目となった。
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処女作の『ジャッカルの日』以来、常にベストセラーを世界に送り続けてきたフォーサイスも今年ですでに70才に

2. Encounter with real-life assassination

Hours before he touched down in the West African nation, a bomb hidden under a staircase blew apart the armed forces chief. Hours later the president was gunned down, and according to Forsyth, hacked to pieces. The double assassination of President Joao Bernardo "Nino" Vieira and his military rival, Gen. Batiste Tagme na Waie, shocked Guinea-Bissau.
現実の暗殺クーデタに遭遇
このアフリカ西海岸の小国にフォーサイスが降り立ってからほんの数時間後に、政府軍本部の階段の下に仕掛けられた爆発物が炸裂し、政府軍の総司令官は木っ端微塵に吹き飛ばされた。その爆破事件からさらに数時間後、今度は大統領が凶弾に倒された。フォーサイスの消息筋の情報では、そのあと暴漢の手で、マチェットという現地の手斧でめった切りにされたのだという。
これがホアン・ベルナルド"ニノ"ヴィエイラ大統領と、対抗する政府軍のトップ、バチステ・タグメ・ナワイ将軍のダブル暗殺で、動乱には慣れっこのギニアビサウでさえショックな事件だった。
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ギニアビサウで反乱軍に殺されたバチステ・ナワイ政府軍司令官(左)と元首のベルナルド・ヴィエイラ大統領(右)

3. As thrilling as Forsyth's own fiction

The incident clouded this sweaty equatorial capital in the kind of mystery and intrigue often detailed in Forsyth's own fiction about assassins, spies and coups. Forsyth's presence here inevitably raised the association with his hit novel, "The Dogs of War," about mercenaries trying to stage a coup in a mineral-rich, African backwater.
自身の小説とそっくりな展開
暗殺とクーデタの陰謀が渦巻きスパイが暗躍する、フォーサイス自身の小説の中で克明に描かれたミステリーの筋書きそのままに、この赤道直下の汗ばむように蒸し暑い首都ビサウを、政府転覆の暗黒の事件がおおった。フォーサイスが今ここにいると、アフリカの地下資源の豊かな架空の国家を舞台にクーデタを起こそうとした外人部隊を描いた彼のベストセラー小説のひとつ『The Dogs of War/戦争の犬たち』の題材と作者との深い関係を思い起こさずにはいられない。

[注:一説には、70年代に動乱下の赤道ギニアで、フォーサイスが資金投下して反乱軍にクーデタを起こさせたというのが定説になっている。MI6スパイ説の根拠でもある。]
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貧困度ではアフリカでも最下層のビサウの街 政府が弱体であればすぐにアルカイダなどテロ組織の温床となる

4. Eventually 'just ran into coup d'etat'

"I didn't come for a coup d'etat or regime change, but that's what I ran into," Forsyth said over coffee at his hotel, where The Associated Press found him. He said he couldn't sleep and was in his hotel bed reading when he heard a boom before dawn Monday and thought, "that wasn't a car door slamming."
着いた当日に偶然起きた政権交代劇
「私がここにきたのは、クーデタや政権交代を起こすためじゃなかったんだが、結果的にはぶち当たってしまったようだよ」AP通信の記者が探し当てた滞在先のホテルのバーで、フォーサイスはコーヒーをすすりながら、事件当夜の出来事を語った。
彼は着いたその夜はなかなか寝つかれず、ベッドの中で本を読んでいたが、夜更けを過ぎ月曜の未明をまわったあたりで、突然爆発音がしたのを聞いたと言う。その時彼はこう思ったそうだ。
「あれは車のドアをバタンと締めた音なんかじゃないぞ」
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反乱軍の襲撃と爆破で破壊された、ギニアビサウ政府軍本部の建物 階段下に仕掛けられた爆発物で軍司令官が爆死

5. Interview with autopsied pathologist

The explosion was blocks away at Vieira's modest downtown villa — the beginning of the president's end. Forsyth went out that day and saw army troops patrolling the streets. They left him alone. That night, he had dinner with the Dutch pathologist who autopsied Vieira and had spent the morning "trying to put the president back together again."
暗殺死体を検死した医師に取材
爆発は、ビサウの町の中心にあるヴィエイラ大統領官邸から、わずか数ブロック離れたところで起きた..... そして、その爆発が大統領の最期の終幕の始まりだった。
フォーサイスは夜が明けてから現場へ出かけたが、通りには陸軍の軍隊が警備のパトロールにあたっていた。しかし彼らは、フォーサイスの行動にはかまわなかったようだ。おかげで彼は自由に行動できた。
その晩フォーサイスは、オランダ人医師をホテルに招いて一緒に食事をしたが、彼はヴィエイラ大統領の死体を検死した当事者の病理学者だった。医師の話によると、バラバラになった大統領の死体を縫ってつなぎあわせるのに、その日の午前中いっぱいかかったという。
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反乱軍の仕掛けた爆発で粉々になった政府軍本部の内部 事件から3日後の3月4日水曜もそのままの現場

6. Horrendous ending of old dictator

According to Forsyth's sources, the 71-year-old ruler survived an initial rocket attack, got up, was shot four times, then was "slung into the back of a pickup truck ... and cut to pieces with machetes" by soldiers bent on avenging their own chief's death. Forsyth said he came here for "the flavor, the odor, of a pretty washed up, impoverished, failed West African mangrove swamp."
老いたる独裁者の悲惨な最期
別の情報源の話では、71才の独裁者はまず最初にロケット弾の攻撃を受けたが立ち上がった。すると今度は銃弾が4発撃ち込まれた。さらにトラックの荷台に放り込まれ、そこで最後にマチェット(手斧)でバラバラに切り刻まれたのだという。彼に手を下したのは、大統領の指令で司令官が暗殺されたのに逆上し復讐に及んだ、政府軍兵士たちだったそうである。
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30年以上暗殺やクーデタの政情不安定が続いたため、産業と言っても貧しい農業と漁業の一次産業しかない

7. 'Most disastrous part of West Africa'

"I thought, what is the most disastrous part of West Africa, and by a mile, it's Guinea-Bissau," he said. If you drive around you'll see why.
「アフリカ西海岸でも最悪の国」
フォーサイスは、アフリカ西海岸のマングローブの生い茂るすえた沼地のように、赤貧のこの国が放つ危険な香り、動乱の空気が匂ったのでやってきたと語る。
「西アフリカで救いようのないほど、もっとも国家崩壊の相を呈している国。それがギニアビサウだよ。そのへんをクルマでちょっと走っただけでそのわけが解るはずだ。」
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国土のほとんどが、サハラ砂漠外縁の乾燥したサバンナ地帯で不毛に近い

8. 'Everything is purchasable'

"One wrecked building after another, one mountain of garbage after another. A navy with no ships, an air force with no airplanes. No infrastructure, no electricity. Everything is purchasable."
政府まで金で買える国
「ぽつぽつと見える建物はみな破壊された廃墟のようだし、道端には集める者がいないので、行けども行けどもゴミがうず高く山になっている。海軍と言っても船はないし、空軍があっても飛行機のひとつも持ってない。上下水道もなければ電気さえ走っていない。こんな国では、すべてが(政府さえ)買えてしまう。」
>> 次号後編へ続く
【 米国時間 2009年3月5日 『米流時評』ysbee訳 】
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d0123476_15185449.jpg 3/06 作家フォーサイス次の小説はギニアビサウのクーデタ
 3/05 「事実は小説よりも奇なり」フォーサイスが遭遇したクーデタ
 3/04 新自由主義経済の終焉と景気の氷河期
 3/03 ウォール街の真冬はいつまで続くのか?
 3/02 ウォール街にブリザード!ダウ6千ドル台へ急落
 3/01 予告:対訳「ウォーレン・バフェット2009年の託宣」

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緊急特集 ||| ウォール街の真冬 ||| 経済危機
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第1章「ウォール街にブリザード!」 ダウ平均6千ドル台の底値を記録
1. Dow ended at another misery milestone 売りの猛吹雪で悲惨な底値を記録
2. Dow ended at another misery milestone 97年来初めて7千ドルの大台を割る
3. Long term recovery for the great loss 大巾な損失回復には長期を覚悟
4. Zombie bank AIG still draw loans ゾンビーバンクAIGに追加注入金300億ドル
5. HSBC earning dropped 70% in 2008 欧州最大の金融機関HSBCの利益7割減
6. Game-changer: housing market 好転の鍵はハウジング市場に


第2章「ウォール街の真冬はいつまで続くのか?」 米国アナリストの分析予測
7. Financial sector worsens against injection 注入金に反して悪化する金融市場
8. Recession is exacerbating problems 社会問題の元凶となる深刻な不況
9. Analysts read mostly grim by slide 市場アナリストは一様に暗黒時代を予測
10. Predictable severe financial reports 第2四半期の財務報告:ビジネス厳冬期
11. Next bubble: Credit card sector? 次にはじけるのはクレジットカード業界?


第3章「新自由主義経済の終焉と景気の氷河期」 オバマのマンモス再生予算
12. Mixed signals in different industries 業界によって異なる現況
13. U.S. Dollar, Treasury Bond prices surged 国債と米ドルは急騰
14. Psychology of 'Dow-Down syndrome' 「ダウ・ダウン症候群」の心理克服を
15. Has it reached to the bottom yet? どこまで続く?不況の猛吹雪
16. Anatomy of the past recovery 過去の不況の症状診断と回復療法

by ysbee-2 | 2009-03-05 22:48 | テロとスパイ陰謀
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世界の動きがよくわかる!激動する国際情勢を、欧米メディアでディープに読む…世界の「今」と真実探求に関心ある知的冒険者へ送るグローバル情報満載ブログ


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