時代はハイブリッドカーへ/BIG3ゾンビ部門摘出再生案

||| 2009年 NEWカーの NEWコンセプト |||

ビッグ3生き残りを賭けた会社再生案、ゾンビ部門とサバイバル部門の切り離し

政府からの財政支援を受けるためのこの措置が、論争の的になったのは言うまでもない。しかし、しかしである。「オバマ政権は強硬過ぎる」という批判の声が巻き起こるか?と思われたその翌日急遽実施された世論調査のデータでは、むしろ反対の結果が。その大手術を「よくやった」という庶民の喝采が聞こえるような数字が出た。なんと国民の7割以上が、この大裁断をポジティブな施策として評価したのだ。

たしかにAIG役員の巨額ボーナス問題で、常識では思いもつかない資本家という人種の「自分さえ儲ければよし」とする強欲さに懲りたのか、デトロイトの米国自動車メーカーのビッグ3に対しては、オバマ政権は誠に厳しく「高圧的」とも言える姿勢で対処している。
しかし今回ばかりは、民主党の支持層の基盤でもある「オート・ユニオン」自動車業界の労働組合 UAW (Union of Automobile Workers) が強すぎるのが裏目に出て、逆に早期の大裁断をはばんでしまった結果にも。こうなれば、やはり会社破産法で申請して、競合の海外メーカーと比べて格段に優遇されてきた社員厚生のある部分(退職金・年金など)をカットしなければ、生き残れないことも明らかになったらしい。
たしかに金融バブルという米国経済の癌に対しては、思い切った摘出手術を施さなければ、本体の合衆国そのものが破綻におちいってしまうので、この際瀕死の病人に決死の覚悟で大手術を施しているような案配。

ビッグ3のもうひとつ、クライスラー社では、イタリーのフィアット社との合併交渉が進められている最中で、今回のモーターショーでもクライスラーの代表取締役ジム・プレスは、フィアットの新車に乗って登場。たちまち会場の取材陣に取り囲まれ質問攻めに逢っていた。まあ、ここまで堂々と派手な演出をするのだから、合併話は八分通りまとまったのだろう。
ところで、いつもタイムリーな話題を、きびきびした文体とコンパクトにまとまった記事で休みなくエントリーしてらっしゃる、masaさんのブログ『本質』。もう足掛け3年のおつきあいになるが、国内政治はもちろん、海外の時事もいち早くピックアップされていて、ほとんど万遍なくといっていいほど守備範囲が広い。
海外ニュースの速報でも、私がある素材を翻訳して上げてからTBを取りに伺うと、すでに同じテーマが掲載になっていることもしばしばで、つかみ所がよく機敏である。昨年秋からの経済危機に関しても一般的なわかりやすい取り上げ方で、「経済はどうも」と敬遠なさる方でも端的で読みやすいブログだと思う。


•『本質』4/08号 「GMが破産法申請か? 3月のアメリカ自動車販売台数」
そこで破産間近を噂されるGMについて触れ、その結論としてこう結んでいた。
負債額が巨大なので、現在のままだとたしかに可能性はあるかも、の空気である。
「結局、最終的にはアメリカビッグ3の統合になりそうな気がします。
3社が統合して、『USA Motors』へ。」
【米国時間 2009年4月9日『米流時評』ysbee 】


M S N B C | E C O N O M Y
ニューヨーク国際モーターショー<2> 時代はハイブリッドのグリーンカーへ
米国時間 2009年4月8日午前10時46分 | ローランド・ジョーンズ/MSNBC | 訳『米流時評』ysbee

Automakers Put on A Brave Face in N.Y.
Car event comes as domestic industry remains in a shambles
APRIL 8, 2009, 10:46 a.m. | By Roland Jones — MSNBC.com | Translation by ysbee
1. Detroit automaker's last lust
NEW YORK, N.Y. — Press coverage isn’t something Detroit’s big automakers have lacked over the last few months, as every twist and turn in their efforts to salvage their failing businesses has grabbed the attention of the world’s media.
デトロイト自動車産業最後の望みを賭けて
前号『NYモーターショープレス速報第1報』からの続き
スポットライトを浴びての華々しい記者発表......この数ヶ月というもの、デトロイトの自動車メーカーに欠けていた何かとは、こうしたクルマ業界特有のポジティブな演出だった。つい昨日まで、米国の自動車産業が世界のメディアの耳目を集める話題と言えば、企業の財政危機から再生しようと力を尽くしても八方ふさがりの状況、という業界危機だったからだ。

2. Final countdown for GM and Chrysler
In the latest news event, the Obama administration said at the end of March that the turnaround plans GM and Chrysler had presented to Congress earlier this year hadn’t gone far enough. He imposed a tough timeline for them to turn their operations around.
破産か再生か、秒読みのGMとクライスラー
ごく最近ニュースになった話題だが、オバマ政権は3月の末に「GMとクライスラーは、今年前半には(6月末までに)議会の委員会へ再建案を提出するように」という課題を自動車業界へ要請した。しかし、これでもまだ充分ではなかったようで、単に計画書だけでなく営業実績データも報告するよう、期限付きで指示した。

3. Not so optimistic future for Big 3
GM has the term until June 1 to restructure or face the threat of bankruptcy, while Chrysler was given a 30-day deadline to forge a partnership with Italy’s Fiat or go out of business. IHS Global Insight’s Bragman isn’t optimistic either deadline can be met without the automakers going into some form of bankruptcy.
ビッグ3にとって悲観的な観測
万一GMが6月1日までに会社再建の目処が立たなければ、破産の危機に直面することになる。一方クライスラー社には30日の期限が告げられたが、その間にイタリーのフィアット社との合併が成立しなければ、こちらもまたビジネス終了である。(前号でも登場のコンサルタント法人)IHS グローバル・インサイト社のアナリスト、ブラグマン氏は、両社とも破産の危機に陥らずにその締切までこぎ着けられるかどうかさえあやしいと、悲観的観測をとっている。

4. Hammering out pacts with constituents
The two companies must hammer out pacts with their various constituents. Those include creditors, the United Auto Workers union and a national network of dealerships protected by a byzantine system of state franchise laws.
既存のしがらみへの大断行
ビッグ3からフォードをのぞいたGMとクライスラーの両社とも(重役会や組合・退職者組織など)社内のさまざまな内部組織との契約や約定を、一から見直して改訂しなければならない。
こうした対象の中には、債権者(creditors)をはじめ、UAW/全自労(United Auto Workers/全米自動車業労働者組合)やさまざまな内部組織との契約が含まれるが、特に全米のディーラーネットワークに関しては、各州で千々に異なるフランチャイズ契約の州法にしばられるため、まるでビザンチン風モザイクのような複雑怪奇な法規制の問題が発生するのは目に見えている。

5. Possibility of 'limited bankruptcy filing'
“For GM to work out those sorts of agreements outside of court and within 60 days is just not doable,” Bragman said. “So many things have to happen for them to become viable companies, and I think this can only happen quickly through a limited bankruptcy filing.”
「限定部門破産申請」の可能性
「GMが訴訟などの法廷騒動まで持ち込まれずに、これらすべての組織とわずか60日間のあいだに相互了解の結論に達するなどという芸当は、ともかく出来る訳がありません。会社として生き延びるようになるためには、余りにも沢山の問題を解決しなければならないからです。私の見るところでは、もしそれが可能だとしても、それは限定的な会社更生法の適用を受けた場合だけ初めて可能になると思います。」ブラグマン氏は、GMとクライスラーのサバイバルの可能性について、こうした悲観的分析で結論づけた。

6. 'Dead old' and 'survival new' sections
A plan to split the automaker into a new company made up of its most successful units, and an “old company” of its less-profitable parts, is gaining momentum and is seen as the company’s best configuration for the future, according to reports.
「ゾンビ部門」と「サバイバル部門」の切り離し
現行の巨大産業の自動車メーカーを、将来有望な「サクセスフル・ユニット」とプラス計上の見込めない「オールド・カンパニー」とに分割して、ゾンビ部門からサバイバル部門を切り離そうとする「法人分割」プランが再生案の主導権を握っており、企業の将来を切り拓くための最良の方程式と考えられる、と委員会に提出した報告書には書かれていた。

7. 'Bad GM' may go to Section 363
Using a specific part of U.S. bankruptcy laws known as Section 363, the company’s creditors and the union can take a stake in a new, leaner “Good GM.” The rest of the company would be bundled into a “Bad GM,” which would include failing brands such as Hummer and Pontiac and would remain in bankruptcy.
「病めるGM」部門は破産申請か
「セクション363/第363条例」と呼ばれる米国の破産申請法の特例を適用すれば、申請した法人と利害関係のあった債権者と組合は、分割して再建される新しい法人の「まともなGM」部門へ、継続して契約が引き継がれることになる。(注:仕入れ先と労働力の確保、という実質的営業機能の存続)
しかしそれ以外の諸々の契約や約定は、すべて「病めるGM」部門と一緒に、破産の棺桶で埋葬される憂き目を見る。GMにおけるそうした「ゾンビ部門」とは、ハマーやポンティアックといった落ち目のブランドであり、これらの部門は破産申請の道をたどると見られている。

8. Chrysler's survival with split-company deal
This bad company would also take on GM’s billions of dollars of debt, the proceeds of which would be used to pay back the creditors of the old company. A similar split-company deal would be worked out for Chrysler.
クライスラーも「患部摘出」で生き残り案
企業の病める部門は、現時点で数百億ドルにのぼっているGMの負債も道連れに破産処分の対象となるが、旧法人が既存の債権者に対して返済していた支払は、そのまま存続して再生した新しい会社へと引き継がれる。これと似たような「企業分割のサバイバル手術」は、クライスラー社に対しても応用できるだろう。

9. Probable bankruptcy procedure for GM
GM is now in “intense” and “earnest” preparations for a possible bankruptcy filing, a source familiar with the company’s plans told Reuters Tuesday. GM’s Chief Executive Fritz Henderson said recently that the company prefers to restructure out of court, but could go through a bankruptcy procedure if that is required.
破産は避けられない運命のGM
ロイターがGMの内情に通じた消息筋から聴きだした話として、GMはサバイバルの可能性のある破産申告の準備として、今や短期集中方式で真剣に申請書類を作成している最中と伝えられている。この件に関して、GMのフリッツ・ヘンダーソン代表取締役は、最近次のような談話を表明した。
「当社では、訴訟などの裁判沙汰なしに再建を進めたいので、その条件として要求される破産申告の手続きを、やむを得ずとらざるをえないだろう。」

10. How about the fate of dealers?
“GM will likely say to its various constituents, such as the auto dealers, ‘You can come on board with us as we go through bankruptcy and see if you get something out of it, or you can take your chances in court,’” said Bragman.
巻き添えを食うディーラーの運命は?
先述の自動車業界アナリスト、ブラグマン氏が懸念する今後の展開はこうだ。
「GMはあまりにも多くのしがらみに縛られ過ぎて、財政危機の泥沼にはまったまま、にっちもさっちもいかないと言っても過言ではありません。ですから万一破産申請で足切りをしようとしても、ディーラーなどから次のような反撃を受ける事態が予測できるでしょう。『長年もり立ててきたわしらが破産の憂き目に遭ってる時に、お前さんひとりだけ良い子になってやりすごせると思ったら大きな間違いだぜ。裁判所でお目にかかろうじゃないか』」 <了>
【 米国時間 2009年4月9日 『米流時評』ysbee訳 】



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