アメリカの半球・失われた友情を求めて

||| アメリカン エミスフェール 第1章 |||

カナダからチリまで、南北アメリカ大陸の外交と経済の絆による再結束を目指して

社会主義の鉄の戒律を社会の隅々にまで徹底させたが、わずか100キロしか離れていない隣国のアメリカとは完璧な没交渉で、キューバは60年代からそのまま時が止まってしまったかのようだ。経済的な面だけをとりあげれば、時代の流れから忘れられた島として、波に取り残され固く閉じた貝のように、閉鎖的で頑迷な国として老いて行くかに見えた。

ラウル大統領との今後の歩み寄りを話し合う、米国政府からの使節団。彼らは、オバマがいつもどの国でも繰り返す基本的外交姿勢、「先ず相手の話を真摯に聴く」ことから始めたにちがいない。そうして踏み出したアメリカの第一歩。それは、経済封鎖を段階的に解くことから。それまで厳しい検閲を要していた「キューバへの旅行と送金の自由」を、先週13日月曜に許可すると発表した。
「キューバ自由化の第一歩へ/U.S. to allow travel, money transfers to Cuba」
Obama fulfilling campaign pledge to give relatives greater access

この政策の大転換ひとつをとっても、オバマは単純な理想主義者でも、夢想的リベラルでもない。ましてやネオコンの中傷するような社会主義指向とは、噴飯ものの解釈である。現実問題の摘出とその最短距離での解決方法を探し出す、実に堅実な実践主義者であることが見てとれる。この政策は、オバマが選挙運動中にキューバ出身者の米国市民から訴えられた要求に対する、最初の具体的解答である。約束は守る男なのだ。律儀なほどに。
これは他の立場の主張をもつ市民との公約を忘れずに、就任後ひとつひとつ、しかしすさまじいスピードで政策や法律として実現していっている、パワフルなオバマ行政の一環である。先々週の段階で、1月21日からオバマ政権が法制化に署名した法律や条例は、なんと2千を越えた。

米国民からすれば、ブッシュ政権によってこれまで8年間放置され続けてきた切実な要望を、一挙に成文化してくれた素晴らしい「最初の100日」となるだろう。
経済危機のどん底にいるはずのアメリカ人が、悲嘆に暮れることもなくやけに明るく生き生きしているのは、このオバマ行政の敷いた新しい世紀の「アメリカの礎石」に、根本的な安心と信頼を見出しているからに他ならない。 >> 次号の冒頭へ続く
【米国時間2009年4月19日『米流時評』ysbee】


A s s o c i a t e d P r e s s | B R E A K I N G
アメリカン・エミスフェール 前編 南北アメリカ大陸の外交と経済の絆を再結束
米国時間 2009年4月19日午後10時30分 | AP通信・OASサミットレポート | 訳『米流時評』ysbee

At Summit, Obama Gets Friendly with Neighbors
He reaches out to fiery leftist leader Chavez, offers new agenda for region
APRIL 19, 2009 | Associated Press — OAS Summit Report | Translation by ysbee
1. Make America's hemisphere friendly
PORT-OF-SPAIN, Trinidad — President Barack Obama offered a spirit of cooperation to America's hemispheric neighbors at a summit Saturday, listening to complaints about past U.S. meddling and even reaching out to Venezuela's leftist leader.
アメリカ半球が微笑んだサミット
前号「オバマミラクルの握手/お友だちになりたいチャベス」からの続き
トリニダッドトバゴ・ポートオブスペイン |第5回OASアメリカサミットは、トリニダッドトバゴの首都ポートオブスペインで18日土曜開幕した。米国のバラク・オバマ大統領は開会式の基調演説で、南北アメリカ大陸の半球から参集したサミット加盟各国へ相互協調精神をアピールし、中南米各国に対して米国が政治介入した過去の歴史に対する批判に耳を傾け、さらには左派のベネズエラ元首チャベス大統領に歩み寄る姿勢さえ見せた。

2. Working to ease friction within hemisphere
While he worked to ease friction between the U.S. and their countries, Obama cautioned leaders at the Summit of the Americas to resist a temptation to blame all their problems on their behemoth neighbor to the north.
アメリカ半球の緊張を解く努力
オバマ大統領は、過去の紛争でわだかまりを築いたまま経過してきた、米国と他の中南米諸国との間の軋轢(あつれき)を緩和するよう努める姿勢を見せたが、その一方では、アメリカ機構サミットに出席した各国元首および外交団に向かって「自国の抱える問題の原因をすべて北の隣国である米国のせいにする安易な逃げの論理」に逃げ込まないようにと、注意を促した。

3. 'Have to learn how we can work together'
"I have a lot to learn and I very much look forward to listening and figuring out how we can work together more effectively," Obama said. Obama said he was ready to accept Cuban President Raul Castro's proposal of talks on issues once off-limits for Cuba.
「どうやって協調できるか」学ぶ姿勢で
「私はこれからも学ぶべきことが山ほどあります。どうやったらわれわれが一緒に実りある方法で協調していけるのか、お互いの主張に耳を傾け解決策を見出せるよう前向きの姿勢で取り組みたいと思っています。」オバマ大統領は、中南米における新しいアメリカの立場をこう表明した。
またアメリカとキューバとの新しい関係については、これまで半世紀もの間敷かれてきたキューバに対する経済制裁に関して、ラウル・カストロ大統領から申し入れのあった直接会談を受け入れる用意がある、とも明らかにした。

4. Ready to accept Cuban proposal
The talk between two countries include the human wright issue — the political prisoners held by the communist government. While praising America's initial effort to thaw relations with Havana, the leaders pushed the U.S. to go further and lift the 47-year-old U.S. trade embargo against Cuba.
キューバとの国交回復も視野に
6月に予定されている米国とキューバ両国間の会談では、キューバの共産主義政府が収監したままの政治犯の人権問題に関しても話し合う予定であると伝えられた。サミット本会議に出席した各国代表は、キューバ政府との国交回復を図ろうと努める米国政府の基本的転換を賞賛し、さらに一歩進んで47年の長きにわたる米国のキューバに対する経済封鎖を解くよう、米国に促した。

5. Promise on 'Hemispheric Growth Fund'
To Latin American nations reeling from a sudden plunge in exports, Obama promised a new hemispheric growth fund, an initiative to increase Caribbean security and a partnership to develop alternative energy sources and fight global warming.
「アメリカ半球 振興基金」の創設を約束
オバマはまた、ラテンアメリカ諸国に対して、今回の経済危機で各国の米国向けの輸出が急落している苦境から脱出する施策として「hemispheric growth fund=米半球振興基金」を新たに創設するほか、カリビア海周辺の治安警備強化、(太陽エネルギーや風力発電、エタノールなどの)代替エネルギーの資源と施設開発、地球温暖化問題への取り組みなどを推進することを約束した。

6. Chavez's handshakes and back-pats
As the first full day of meetings began on the two-island nation of Trinidad and Tobago Saturday, Obama exchanged handshakes and pats on the back with Venezuela's Hugo Chavez, who once likened Obama's predecessor, President George W. Bush, to the devil.
オバマとチャベスの握手の歴史的重み
トリニダード島とトバゴ島というふたつの島からなる中米の小国で開催された第5回アメリカ機構サミットは、18日土曜は丸一日本会議が開かれたが、開会式前の会場入口で、オバマはベネズエラのチャベス大統領と握手を交わし、チャベスの肩を叩くという一幕もあった。
中米の社会主義国家ベネズエラのウーゴ・チャベス大統領は、かつてイラク侵攻を強行したブッシュ大統領を国連本会議場で「悪魔」呼ばわりした経緯があり、強硬な反米派として知られていた。

7. Chavez gave a gift of book for Obama
In front of photographers, Chavez gave Obama a copy of "The Open Veins of Latin America: Five Centuries of the Pillage of a Continent," a book by Eduardo Galeano that chronicles U.S. and European economic and political interference in the region.
オバマにラテンアメリカの本をプレゼント
オバマとチャベスの初対面での握手の翌日にも、分科会での会議の席上でチャベスがオバマの席へ歩み寄り、一冊の本をプレゼントするというハプニングもあった。この本はガテマラのエデュアルド・ガレアーノが著した社会科学書『The Open Veins of Latin America: Five Centuries of the Pillage of a Continent』で、欧米諸国が中南米でいかに政治経済の覇権をおこなってきたかを解説したクロニクルである。

8. 'Going to give him one of mine'
When a reporter asked Obama what he thought of the book, the president replied: "I thought it was one of Chavez's books. I was going to give him one of mine." White House advisers said they didn't know if Obama would read it or not.
「お返しに私の本をさし上げよう」
この会議を終えた後、取材記者のひとりがオバマに本についての感想をたずねると、大統領はこう答えた。「最初もらった時には、てっきりチャベスの書いた本だと思ったよ。お返しに私の本を一冊さしあげるつもりだ」
また大統領顧問たちは、オバマがこの(欧米の覇権主義糾弾の)本を読むつもりがあるかどうかはわからない、とも答えた。

9. Shake hands for three times
White House spokesman Robert Gibbs made a joke about it, noting the president doesn't speak or read Spanish. "I think it's in Spanish, so that might be a tad on the difficult side." Later, during a group photo, Obama reached behind several leaders at the summit to shake Chavez's hand for the third time. Obama summoned a translator and the two smiled and spoke briefly.
通算3度握手したチャベスとオバマ
ロバート・ギブス大統領広報官は、本のプレゼントに関していつものようにジョークを効かせた。「ご存知のように、大統領はスペイン語の読み書きができませんのでね。あの本は多分スペイン語で書かれていると思うんですが、それだったら不幸中の幸いで、たぶん耳の痛い批判の部分は大統領にはチンプンカンプンでしょう。」
しかし、当日の後段、閉会を前にした参加各国元首の記念写真の撮影の最中、後列にいたチャベスから握手を求められたオバマは、ほかの数人の元首の肩越しに3度目の握手を交わした。そのあともオバマは通訳を介して、チャベスと微笑みながら短い会話を交わすひとときを持った。

10. 'Intelligent man, compared to the previous'
Those two exchanges followed a brief grip-and-grin for cameras on Friday night when Obama greeted Chavez in Spanish. "I think it was a good moment," Chavez said about their initial encounter. "I think President Obama is an intelligent man, compared to the previous U.S. president."
感想「先代と比べて知的な大統領」
チャベスとオバマとの間で交わされたやりとりは、開会式直前にオバマがチャベスへスペイン語で挨拶した際に、取材陣のカメラの前でお互いに相好をくずして握手を交わした、前日金曜の夜にひき続く友好のハプニングとなった。最初の邂逅について、チャベスは取材陣に次のように感想をもらしている。
「とてもいいひとときだったよ。私が思うに、前の大統領(ブッシュ)と比べれば、オバマ大統領は知的なひとだね。」 >> 次号へ続く
【 米国時間 2009年4月19日 『米流時評』ysbee訳 】



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