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百万人の難民エクソダス パキスタン最前線レポート

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    ||| 百万人の難民エクソダス |||

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 タリバン勢力が牛耳るパキスタン北西部のスワット谷へ、政府軍の猛攻開始
 戦火を逃れる「タリバニスタン」辺境自治区の、100万人を超す民族大移動

百万人の難民エクソダス パキスタン最前線レポート_d0123476_3532373.jpgただ今ラビットホール降下中。前号の前書きに長々と書いた通り、来週からちょっとしたシリーズ物をやっていかなくてはいけない。ブッシュ政権下での世界の災厄の構造の、その方程式が解けそうな予感がしている。Revelation is the Best Revenge である。

先月下旬以来、豚インフルのパンデミックの展開と
その発生起源を掘り起こす、情報発掘作業にかまけている間にも、
世界の歴史はどんどん「進化」していっている。
進化の触媒「エボルーショナリー・エージェント」は、
ホワイトハウスで発光している。
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一昨日のオバマは、宿敵であるアフガンとパキスタンの溶媒となった。
アフガニスタンからはカルザイ大統領が、
パキスタンからは(故ブットの寡夫)ザルダリ大統領が、
双頭のワシントンの番犬よろしく(サーベラス=ケルベラスではない、念のため)
オバマをはさんで「タリバン掃討」目的の
三国共同戦線の確立を宣言した。

三位一体論で言うならば、タリバンの生みの親であるアフガニスタンが父。
アフガン戦争で敗走したタリバンが再生復活した土地の、パキスタンが子。
(以前にも増して強い勢力の鬼っ子)
そして、タリバンのそもそもの起源となる種子を撒いた、
CIA=米国が スピリット=精霊………という、
タリバンとの確執に明け暮れる三役そろい踏みである。
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共同戦線協定、あるいは友軍協定(Treaty of Alliance)という
成文化調印まではいかなかったが、
この共同記者発表宣言で、今後の状況展開によっては
米軍がアフガニスタンだけでなく、
パキスタンでも合法的にタリバン掃討作戦を展開できる、という
戦場での免罪符を入手したような感は否めない。

このトライアングルが、あまりにも均衡のとれた正三角形なので、
私はこの三国首脳会談を「トリニティーサミット」と呼ぼうと思う。

たしかに、サミットの翌日には早速、パキスタン政府軍が
スワットバレーへ猛攻撃を開始した。
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パキスタン空軍の爆撃機使用、というのは初めてではないか?
そもそも、陸軍は有名だが、空軍があったとは……

しかし、戦場で最初に犠牲となり、最後まで泣かされるのは
どこの国でも地元の住民。
今回も例外なく、タリバンが跋扈(ばっこ)するスワット谷の住民が
戦火を避けて一斉に避難を開始した。

すでにペシャワール周辺の難民キャンプへ逃れている者と
今回の新しい難民を総計すると
なんと百万人を超えると言う、国連発表である。
気が重い。またもや、辺境からのエクソダス。
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地球のどこかで戦火が燃え上がるたびに
住み慣れた土地から追い立てられ、
裸足で地べたの上で生き延びることを余儀なくされるのは
いつも辺境の少数民族だ。
難民収容テント村という、体のいい強制収容所に押し込まれて……

「ショック・ドクトリン」の特集の前に
どうしても触れないわけにはいかない、タリバニスタンの
少数民族の大移動が始まった。

   【米国時間2009年5月7日『米流時評』ysbee】
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MAY 7, 2009 | 『米 流 時 評』 |  時事評論ブログ雑誌・デイリー版  2009年5月7日号
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  A s s o c i a t e d P r e s s | B R E A K I N G
パキスタン政府軍とタリバンの戦火を逃れる、スワット谷の難民エクソダス
米国時間 2009年5月7日午後11時40分 | AP通信・パキスタン最前線レポート | 訳『米流時評』ysbee

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タリバンに制圧されたブネールを逃れ、イスラマバード近郊の国連難民収容テント村へ避難したスワット谷の子供たち


UN: Pakistan Fighting Displaces One Million
Jets hit Taliban positions as refugees plea for pause, Zardari asks for help
MAY 7, 2009, 11:40 p.m. | Associated Press — BREAKING | Translation by ysbee

1. Military assaults on Taliban began
MINGORA, Pakistan — Pakistani jets screamed over a Taliban-controlled town Friday and bombed suspected militant positions as desperate residents appealed for a pause in the fighting so they could escape.
パキスタン政府軍のスワット谷侵攻作戦開始
スワットバレー最前線レポート第1報 | パキスタン・ミンゴラ発
現地時間で8日金曜、アフガニスタンとの国境に近いパキスタンの北西部、北ワジリスタン地方。タリバンが制圧するスワットバレーの町ブネールの上空を、パキスタン政府軍の戦闘爆撃ジェットが轟音とともに飛来しては、タリバン戦士の陣地とめぼしい箇所を次々と爆撃していく。
戦火の巻き添えになるのを怖れ、近郊のペシャワールや首都イスラマバードへ避難するために、空襲を一時停止してくれと懇願するスワット谷住民の懇願を、政府軍は聞き入れたようである。
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アフガンとの国境に近いパキスタン北西部スワット地方ミンゴラの広場に、戦火から脱出するバスが並ぶ

2. Million exodus from Swat Valley

One million people have been displaced in recent months over the operation in the northwestern Swat Valley and surrounding districts.
スワット谷の難民 百万人のエクソダス
戦火が鎮まったほんのひとときの間に、この地域の村人は老いも若きも一家こぞって、着の身着のままでバスからトラック、トラクターまで、走れるクルマに飛び乗って、一目散に戦場と化した故郷から脱出しようとしている。
パキスタン北西部のタリバンが制圧したスワット谷からは、叛徒制圧目的の政府軍の攻撃を怖れ、住み慣れた故郷を後にして安全な土地へと脱出する住民が、ここ数ヶ月でついに百万人に達した。
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タリバン勢力が制圧した北部の町ブメールから、戦火を逃れるため一族郎党避難の準備をするハサナブダイの家族

3. Broken peace deal with Taliban

The mass-scaled exodus followed strong U.S. pressure on Pakistan to fight back against militants advancing toward the capital as a now-defunct peace deal crumbled.
反古になったタリバンとの和平協定
昨年後半から、パキスタン北西部北ワジリスタン州のアフガンとの国境に近い辺境の砦から南下して、スワットバレーの集落を制圧したタリバン勢力。イスラム原理主義の時代錯誤の掟を強要して、住民を厳しい戒律で威圧するタリバンと、そのシンパである地元長老に迎合して、タリバンの活動を許す和平協定を結んだザルダリ政権のパキスタン政府。
しかしその協定も、今や反古となってしまった。和平協定を破ってスワット谷を南下し、首都イスラマバードまでわずか96キロのブメールを制圧したタリバン。スワット谷挽回を目指すパキスタン政府軍の逆襲作戦は、拡大するタリバン勢力を討伐するために、米国政府からパキスタン政府に対して政治的圧力がかけられた翌日に始まった。今回のマススケールのエクソダスは、その戦火を逃れるために、作戦と同時に始まったものである。
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パキスタン北部ミンゴラの町から首都ペシャワールへ、戦火を逃れて脱出行のバスを待つスワット谷住民の一家

4. Escalation of Taliban's safe-heaven

Nuclear-armed Pakistan has launched at least a dozen operations in the border region in recent years, but most ended inconclusively and after massive destruction and significant civilian deaths. It remains a haven for al-Qaida and Taliban militants, foreign governments say.
拡大するタリバンの別天地
インド・中国に次いでアジアで3番目の核兵器所有国家、パキスタン。ブッシュ政権の傀儡だったムシャラフ大統領の後継者として選出されたザルダリ大統領は、戦略的には前政権が数年来行なってきたタリバン掃討路線を受け継ぎ、アフガンとの国境地帯へ数十回の攻撃作戦を展開してきた。
しかし毎回大規模な集落破壊と戦火の巻き添えとなった住民の大きな犠牲者を出しては、これといった成果もなく退却していたのが実情である。かくしてパキスタン北西部の国境地帯からスワット谷にかけての辺境地域は、海外の政府からは「タリバニスタン」の蔑称で呼ばれる、アルカイダとタリバン勢力の跋扈するイスラム原理主義者ジハディストの別天地と化してしまった。
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アフガンとの国境を自由に往来するタリバンが近年勢力拡大した辺境地帯には「タリバニスタン」の俗称ができた

5. Swat Taliban fighters moved into Buner

To end one of those protracted offensives, the government signed a peace accord in Swat that provided for Islamic law in the region. But that deal began unraveling last month when Swat Taliban fighters moved into Buner, a neighboring district just 60 miles from Islamabad.
首都イスラマバードへ100キロのブネール制覇
その結果、反政府勢力の反抗を抑えきれなかったパキスタン政府は、だらだらとしかも断続的に続いた一連の効果のない攻撃作戦にいい加減にけじめをつけて終わらせるという口実で、北西部の州にイスラム教の厳格なシャリア法の導入を認可するという思い切った施策に出た。この地域に限ってタリバン勢力との和平協定を結ぶこの妥協案が、それまでタリバン勢力と8年近く闘ってきた米国を始めNATO加盟の欧州各国から猛烈な批判を浴びたことは、もちろん言うまでもない。
しかしながらこの和平協定も、スワット谷全域の制圧を目指すタリバン勢力が協定を破り、イスラマバードまでわずか60マイル(約96キロ)に位置するこの地区の要衝であるブネールの町を包囲陥落した時点から、パキスタン政府の和解妥協政策は根本から揺るがされる事態となっていた。 >次号へ続く

【 米国時間 2009年5月7日 『米流時評』ysbee訳 】
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ペシャワールの郊外で急増する国連の難民収容テント村 北部スワット地方だけですでに百万人の戦災難民が発生

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* 3 月 兎 の 走 り 書 き *
CIAとタリバン誕生の経緯を描いたのが、鬼才マイク・ニコルズ監督、トム・ハンクス主演の『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー/Charlie Wilson's War』。現在は引退した実在の上院議員、チャーリー・ウィルソンの手記を映画化したストーリーだが、タリバンとの攻防に明け暮れるパキスタン・アフガニスタンそして米国の、相克の種子がここにあったのかと納得のいく内容が、マイク・ニコルズ特有のシニカルな風俗評論のようなタッチで綴られる。

CIAのブレーンとなるチェスの天才や、活躍の割にはうだつのあがらないCIAエージェント、議員とロビイストのなれ合い、テキサス州独特の政界の裏幕、イスラエルの武器商人……などが実にわかりやすく描かれ、政治に興味のない方でも楽しめるプロットである。この映画ともうひとつ、『The Good SHepherd』は、CIAの内情を克明に描いた映画として秀逸。
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◀ 次号「スワット谷のエクソダス タリバニスタン少数民族の大移動」
▶ 前号「死人に口なし、戦慄のパンデミック・ドクトリン」
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by ysbee-2 | 2009-05-07 09:45 | タリバニスタン最前線
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