スワット谷のエクソダス タリバニスタンの民族大移動

||| スワット谷 少数民族の大移動 |||

和平協定を蹂躙したタリバンを猛攻する政府軍の空爆で、戦場と化したスワット谷
UN: Pakistan Fighting Displaces One Million
Jets hit Taliban positions as refugees plea for pause, Zardari asks for help
MAY 8, 2009 | Associated Press — BREAKING | Translation by ysbee
6. Mass exodus from fear
Continued from the previous issue |MINGORA, Pakistan — The U.N. refugee agency said Friday that half a million people have fled from the fighting in Swat Valley within the past few days, bringing the total displaced in recent months to 1 million. A spokesman for the U.N. High Commissioner for Refugees said the fighting has led to massive displacement in the area.

国連の国際難民局からの発表された現地情報によると、スワット谷で激化する戦火を避けるために脱出する住民は、この3日間で50万人を越えた。その結果、今年に入ってから過去2〜3ヶ月の間に総計100万人以上の住民が、パキスタンの国内難民(IDP=Internally Displaced Persons)として新たに発生したことになる。
恐怖政治と戦火から逃れる住民
国連難民局高等弁務官担当の広報官の説明では、今回の大量の難民移動は、スワット谷を制圧したタリバンに対して始まったパキスタン政府軍の攻撃がきっかけで、この地域で日増しに激しくなる戦闘の巻き添えになるのを避けるために、パキスタン国内のより安全な地を求めて住民が脱出するために起きたものである。


A s s o c i a t e d P r e s s | B R E A K I N G
タリバンの恐怖政治支配と政府軍攻撃を逃れて、難民百万人の大移動
米国時間 2009年5月8日 | AP通信・パキスタン最前線レポート | 訳『米流時評』ysbee

7. IDPs surpass one million
U.N. spokesman Ron Redmond said up to 200,000 people have arrived in safe areas in the past few days, and another 300,000 are on the move or are about to flee. He told reporters in Geneva on Friday that the numbers were in addition to 555,000 already counted by the United Nations since August.
100万人を越える難民発生
国連難民局のロン・レッドモンド広報官が発表した調査結果によると、パキスタン政府軍がスワット谷へ爆撃を始めて以来ここ3日間で、戦火の巻き添えになるのを怖れてスワット谷を脱出し安全な地へたどりついた住民は、到着時点の集計で20万人を越え、さらに30万人が避難の途についているものと見られている。
この難民状況の現地報告は、8日金曜にジュネーブの国連難民局本部で記者団に発表されたが、この集計によって、昨年8月以来タリバンの制圧によってこれまでにすでに発生していた難民の国連集計55万5千人にさらに50万人増えることになり、スワット谷からの難民は100万人を超す見込みとなった。

8. PM Gilani pleaded for assistance
Pakistan's prime minister appealed for international assistance late Thursday in a television address for the growing refugee crisis and vowed to defeat the militants in the latest operation. "I appeal to the people of Pakistan to support the government and army at this crucial time. We pledge to eliminate the elements who have destroyed the peace and calm of the nation and wanted to take Pakistan hostage at gunpoint."
ギラニ首相、内外に支援協力を呼びかけ
スワット谷からの大量の難民発生に際して、7日木曜午後ギラニ首相は「国際社会に対して難民救済と政府軍のタリバン討伐作戦への支援を要請する」と、テレビを通してパキスタン政府の方針を国民に伝えた。
「パキスタン国民は、今回の国家的試練に際して政府と軍隊を支援するようお願いする。パキスタン政府は、市民に銃をつきつけて捕虜にするような、国家の平和と安寧を破壊する危険分子を、わが国から断固として排除するつもりである。」

9. Seen the real face of Taliban
The military hailed signs of the public's mood shifting against the Taliban after the militants used the peace deal to regroup and advance.
タリバン支配の恐怖の実相を知った民衆
スワット谷地方では、一度はパキスタン政府と休戦協定を結んだものの、その後も南下侵攻して勢力拡大をはかったタリバンに対しては、あまりにも暴力的な支配が地元民衆の反感を買ってきていた背景がある。パキスタン政府軍はこの機を逃さず、米国とアフガニスタン両国のさらなる共闘態勢を確認した直後に、今やスワット谷を本拠地として跳梁するタリバン勢力の掃討に乗り出したと明らかにした。

10. Double sword of Taliban and public
"The public have seen their real face," Maj. Gen. Athar Abbas said. "They realize their agenda goes much beyond Shariah (Islamic) courts. They have a design to expand." Still, the pro-Western government will face a stiff task to keep a skeptical nation behind its security forces.
パキスタン政府の二重の敵
こうした新しい作戦展開に関して、パキスタン政府軍のアタール・アッバース陸軍司令官は、次のように語っている。「スワット谷で、タリバンは民衆に彼らの真の顔をさらした。住民たちは、タリバンの政策が実はシャリア法(イスラム法)の法廷規定よりもはるかに過激だ、ということを思い知ったようだ。また、タリバンが休戦協定を結んだ真の目的は、政府軍をかく乱して勢力拡大を図ることだった。」
しかしそうした状況変化にある現在でもなお、パキスタン国内では新欧米派のザルダリ政権は、政府軍が国家防衛の役割を果たせるものかどうか懐疑的な国民一般から、政策方針に対して支持をとりつけるという厳しい試練を控えているのが、パキスタンの実情である。

11. Many civilian deaths in Maradan
Much of the fighting has been in the Swat Valley's main city of Mingora, a militant hub that was home to around 360,000 people before the insurgency two years ago. Military operations are taking place in three districts that stretch over some 400 square miles. The military says that more than 150 militants and several soldiers have been killed since the offensive began last week.
マラダン攻撃で住民にも死者
スワット谷での戦闘のほとんどが、人口36万の同地方の主要都市であるミンゴラで展開されている。この数字はタリバン勢力がミンゴラを活動の本拠地とする2年前よりも前のデータであり、現在ではこの地から相当数の市民が脱出し過疎化している。
政府軍のタリバン掃討作戦はスワット谷の3つの郡にまたがり、行動範囲にして400平方マイル(約10平方キロメートル)の広域にわたっている。政府軍側の発表によると、先週始まった掃討作戦の戦闘による戦死者は、タリバン側が10名以上で政府軍にも数名出たと公表した。

12. Taliban hold residents as human shields
The military says that more than 150 militants and several soldiers have been killed since the offensive began last week. It has not given any figures for civilian deaths, but witness and local media say they have occurred. Some have said the Taliban are not allowing them to leave, perhaps because they want to use them as "human shields" and make the army unwilling to use force.
タリバンの「人間の盾」に使われる住民
しかし政府軍の発表には、目撃者もいてすでに地元メディアも巻き添えの死亡事件が起きたと報道している一般市民の犠牲者については、何の数字も挙げなかった。この地域からはミンゴラを中心として避難したが、いまだに数十万人が残っている。
当地から脱出した中でもある者は「タリバンは彼らが土地を離れることを許さないからだ」と説明し、その理由として「タリバンは多分彼ら残留組を、政府軍の攻撃意図を邪魔するような『人間の盾』として使いたいからだろう」と解釈している。

13. Reality of casualties of war
A hospital in Mardan just south of the battle zone on Thursday was treating 45 civilians with serious gunshot or shrapnel wounds. Among the youngest patients was Chaman Ara, a 12-year-old girl with shrapnel wedged in her left leg.
局地戦争の真の犠牲者
作戦開始翌日の7日木曜の時点で、戦闘地帯となった場所の真南にあるマルダンの町の病院では、銃弾や爆撃の破片で重傷を負った住民45名を治療中であるが、その中の年少の負傷者のひとり、12才の少女シャマン・アラさんは、左足に爆撃の破片が突き刺さり、治療のために入院中である。

14. Victims are always 'the weaks'
She said she was wounded last week when a mortar shell hit the truck taking her family and others out of Buner. She said seven people died, including one of her cousins, and pointed to a nearby bed where the boy's wounded mother lay prone. "We mustn't tell her yet. Please don't tell her," she whispered.
巻き添えになるのはいつも弱者
この少女は、先週タリバンの占拠したブネールの町を脱出しようと、彼女の家族とほかの住民たちが乗り込んだトラックに、砲撃が命中したときに怪我をしたのだと言う。彼女の話によると、この砲撃で彼女の従兄弟のひとりを含む7人が死亡した。少女のベッドの近くには、その亡くなった従兄弟の母親が同じく負傷して横たわっていたが、少女はこうささやいた。
「いとこのお母さんには、まだ知らせちゃダメよ。気を落とさせちゃいけないから、彼女には事実を教えないでね。」

15. 'Kill terrorists, but don't harm us'
"We want to leave the city, but we cannot go out because of the fighting," said one resident, Hidayat Ullah. "We will be killed, our children will be killed, our women will be killed and these Taliban will escape." "Kill terrorists, but don't harm us," he pleaded.
テロリストと住民の区別を
パキスタンにおけるタリバンの本拠地となっているミンゴラの現状について、住民のひとりヒダヤット・ウラーさんは、次のように語り懇願した。
「われわれは町を離れたかったんだが、戦闘が激しかったために外に出ることすらできなかった。戦争が起きると、殺されるのはわれわれだ。子供たちが殺され、女たちが殺される。そうして、あいつらタリバンは、のうのうと逃げ仰せるのさ。テロリストは殺しても良いけど、われわれを傷つけないでほしいね」 <了>
【 米国時間 2009年5月8日 『米流時評』ysbee訳 】

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by ysbee-2
| 2009-05-08 16:22
| タリバニスタン最前線