「略奪されたイランの大統領選」タイム記者現地レポート
||| 略奪されたイランの大統領選 |||
投票前の世論調査「アフマディ対ムサビ3:7」を完全に裏返した不正捏造開票
投票日以来、米国では怒濤のようなイラン関連報道ですが、日本ではまったく問題にされていないようです。その上、日本での大手マスコミの報道はでたらめ……というよりも、むしろ完全にアフマディネジャド現行大統領の提灯記事ばかり。
世界の世論が、アフマディの不正・隠蔽・弾圧を抗議する態勢に出ているのに、日本はまるで胡錦濤のチベット弾圧を容認するような、完全に体制追従の記事がほとんど。唖然としました。
なので今回は、一応オーソドックスと言われるTIME誌の、テヘラン支局イラン人記者の現地直送レポートを。皆さん、騙されないで!現地の学生や一般市民が、弾圧で逮捕されるのを覚悟で、必死にブログやSNSのページに上げている写真を見てください。判断はそのあとです。
Photo talks a million of words.「時として、写真は100万の言葉よりも真実を語る」
You-Tube ビデオ | 2009年イラン大統領選とグリーン革命運動
テキサスからイランシラズ大学に留学しているイラン系米人学生が編集したビデオ
イランで抗議運動に参加しているハンナさんが編集したフォトアルバムビデオを、従姉でイラン系米国市民のLuvManteeさんがYou-Tubeにアップロード。ハンナさんは今回のグリーンレボルーションに参加しているんですが、イランでは現在政府の妨害でネットが閉鎖されてアップできないので、アメリカへメールに添付して送ってきたらしい。かなりの写真が私の手元にあるのとダブってます。
注:ボリューム高めなので音量をしぼってからスタートしてください。
今回のイランの選挙戦の劇的な展開と、社会に潜在する不穏な空気の実感は
歴史上の重要な出来事同様、ここ米国でのオバマの選挙戦がそうだったように
ずっとあとになってから、あなたの子供たちに
「そのときは いったい どんなだったの?」と訊ねられるであろう
長い年月を経たあとになってから、いかに重要だったかを
思い知らされるような 歴史的事象であるにちがいない。
「世界はひたすら時を前進して回っている」〜〜トニー・クッシュナー
【米国時間 2009年6月14日『米流時評』ysbee 】
*読者の皆さんへ、先週から連載しているイランの大統領選とその後の弾圧の報道ですが、日本へは詳しく伝えられていない事実を知ってもらうため、コピー推奨です。写真の転載も「米流時評から」とキャプションかリンクをつけてくだされば結構です。
T I M E | E X C L U S I V E
'It's Not Possible!' Protests Greet Ahmadinejad Win in Iran
SAT. JUNE 13, 2009 | By Nahid Siamdoust — TIME/Tehran | Translation by ysbee
タイム誌現地記者レポート 略奪されたイラン大統領選と反対派への弾圧
米国時間 2009年6月13日 | By ナヒド・シャムドゥスト/TIME | 訳『米流時評』ysbee
1. Totally reversed results on vote
TEHRAN, Iran — Iran's Interior Minister announced Saturday that incumbent president Mahmoud Ahmadinejad had won 63.29% of the vote in the nation's closely watched presidential poll. The announcement, greeted with widespread skepticism by Iranian opposition supporters and by foreign analysts, has brought thousands of people onto the streets where they have encountered a strong police presence and the threat of violence.
完全に覆された選挙結果
イラン・テヘラン発 |13日土曜イラン政府の内相は、イラン全国民が強い関心をもって見守っている先週実施された大統領選の開票の結果、現行のアフマディネジャド大統領が総得票数の63.29%を獲得して勝利したと発表した。
しかしこの開票結果は、選挙の対立候補や支持者、諸外国のイラン専門の識者など、広範な層にわたって疑惑の目で見られている。イラン国内では勝利の報道があった直後から、対立候補の支持者たちが街頭へ飛び出し、群衆を警備する警官や機動隊とあちこちで衝突する事態を招いた。
左端に現役のアフマディネジャド大統領、右端が今回グリーン革命でブームを起こした改革派のムサビ候補
2. Rumors of 'vote rigging' flying across
Rumors of vote rigging had been flying for hours before the official announcement. At about 11 p.m. Friday, less than an hour after polls closed, reformist challenger Mir-Hossein Mousavi held a press conference and declared that he knew — based on the observations of his campaign officials at polling booths — that he had won a majority of the vote.
一瞬で広まった「略奪選挙」の噂
「開票がごまかされた」という噂は、内務省選挙対策局からの公式発表よりも数時間も前から飛び交っていた。投票日当日の12日金曜午後11時、投票所をクローズしてからわずか1時間しか経たないうちに、ミアホセイン・ムサビ候補は記者会見を開き、全国各地の投票所で出口調査を実施した彼の陣営の選挙運動員からの報告を元に判断した結果、大量の得票差で彼が勝ったと発表した。
3. Too early to conclude finalist
But rigging was already underway, said Mousavi, who warned that he and the people would stage mass protests if their votes were not respected. Early results, which indicated a likely win for the incumbent, were released by the Interior Ministry shortly after midnight and broadcast on state television.
「愚者の王」アフマディ
しかし、その時点ではもう不正開票がすでにすすめられていた、とムサビ氏は主張する。真夜中を過ぎて間もなく国営テレビ放送を介して内務省選挙管理委員会から発表された早期開票結果では、現役の大統領が当選確実と発表された。この結果報告は事実を反映していないと主張するムサビ氏は、有権者の投票が意図的に無視されたのならば、彼は市民と一緒に大規模な抗議運動を展開すると警告した。
【訳者注】ムサビ候補が不正開票と主張する根拠:彼の支持者が大多数を占める地域でのアフマディネジャドのありえない大量得票 /8割以上の得票を予想されていたカルビ候補の出身地方で、実態と逆にアフマディが9割以上得票と発表された /いくつかの箇所では得票率110%以上というあり得ない数値を発表 /ムサビ候補有力地域の投票所では有権者に行き渡らない投票用紙の意図的不足 /投票箱が捨てられたり、燃やされたという報告も各地で発生 /しかし最大の疑惑の要因は、全投票数4600万票をわずか2時間で、しかも機械読み取りでなく手書き投票用紙を選挙管理員が読み取る旧式の方法でである。本来ならば最低1〜2日かかる作業。
4. Drastically switching the moods
Small groups of Ahmadinejad supporters gathered in various spots around the capital to hold spontaneous celebrations. They were waving his image and chanting, "Ahmadinejad is love." But there was little love at Mousavi's campaign offices.
明暗対照的なアフマディとムサビ両陣営
一方アフマディネジャド支持者の少人数のグループは、首都テヘランのあちこちに集まって祝宴の気合いを上げ始めた。彼らは大統領のイメージのチラシやポスターを掲げて「Ahmadinejad is love/アフマディネジャドは愛」と、彼の選挙スローガンを繰り返したが、それにひきかえ敗北を押し付けられたムサビ陣営には、アフマディの愛のかけらももたらされなかったようである。
5. Chanting 'It's not possible!'
At one office, the police broke up a large crowd of supporters with batons and closed down the building. At another, a group of basijis (pro-regime paramilitaries) took about 100 people hostage before being overpowered by Mousavi supporters. By Saturday morning, the most often repeated exclamation in Tehran was: "It's not possible!"
「そんなことはありえない!」
テヘラン市内にあるムサビ候補の選挙事務所の一カ所の周囲には、支持者の群衆が集まっていたが警官隊が警棒を振るって群衆を追い散らし、その建物ごと閉鎖させるという事態も起きた。また別の事務所へは、体制擁護派のバシジ軍団の一派が乱入し、集まっていた支持者の群衆から100人余りを捕虜にする騒ぎが起きたが、間もなくムサビ支持者が奪回してことなきをえた。
こうした騒ぎの中で、投票から一夜明けた13日土曜の朝には、テヘラン市内で交わされる会話でもっとも頻繁に繰り返されたのは「It's not possible!/そんなことありえない!」という悲憤慷慨の言葉だった。
6. Protesters headed to streets and squares
Groups of protestors headed to the city's squares and main streets, where they faced regular beatings by police using batons and pepper spray. Eyewitnesses say the police beat a young man to death north of Vanak Square. At about 5 p.m., two crowds of several hundred people — both Mousavi and Ahmadinejad supporters — gathered in front of the Ministry of the Interior, just off Jahad Square in central Tehran.
テヘラン市中に繰り出した不正抗議デモ
こうして、不正開票と体制擁護派の暴力に憤ったムサビ支持者の抗議の人波が自然発生して、テヘラン市内の広場や大通りに繰り出したため、ここでもまたバイク部隊となって出動した武装警察から、警棒や催涙スプレーを見舞わされる目にあった。
目撃者のひとりが(タイム誌の記者に)語るところによると、ヴァナク広場の北側では若い男性が数人の武装警官につかまり、警棒で撲り殺されたという。
このような暴力による弾圧の事実がさらに群衆に広まって、土曜の午後5時頃にはムサビ支持者とアフマディ支持者両派がそれぞれ数百人、テヘラン市中央のジャハド広場のはずれに位置する内務省の建物の周囲に集まった。
7. Invasion by motorcade of riot police
They were separated by police lines, but chanting back and forth as they had all week. Suddenly, the police charged the Mousavi supporters. There were two ranks of police on motorcycles, two policemen per bike, dressed in body armor that made them look like starship troopers. They charged into the crowd, brandishing billy clubs, followed by police on foot, with clubs and shields.
バイクに乗った機動隊が群衆に突入
両候補支持者の群衆は、投票前の1週間を通してそうしていたように、両派が衝突しないよう警備の警官隊によって隔てられていた。しかし、ある時点で突然、武装警察の一隊がムサビ支持者の群衆を取り押さえ始めた。彼らはまるで『スターウォーズ』のスターシップトルーパーそっくりに作られた武装スーツに身を包み、2名が1台のバイクに乗り込む体制で2列縦隊になって現場へ乗りつけた。彼らはムサビ派の群衆の真ん中に乱入し、警棒を振るって一般市民に殴りかかり、その後を警棒と盾で武装した警官が続いた。
8. Police knocked down the protesters
The police were firm but not brutal. They pushed the crowd, rather than swinging at it. Still, people were knocked down; one woman in a chador was down in the street, screaming in pain as she was dragged toward the sidewalk by her husband. The Mousavi supporters were pushed down the street several blocks, and into side streets.
警棒で市民に襲いかかる警官
私の見た現場の警官は強硬だったが、凶暴ではなかった。彼らは群衆を追い払う、というよりも押し戻した。しかしそれでもなお、群衆はスシ詰め状態で路上に集まっていたので、次々に倒された。黒いチャドルを身につけたひとりの女性は、夫とおぼしき男性に舗道へ引きずられながら、転倒した時の痛みで泣き叫んだ。こうして、大通りを埋め尽くして数ブロック連なって集まっていたムサビ支持者たちは、警官に追い立てられて舗道へ押し戻された。
9. 'Iran looks like Palestine'
When the police retreated, they re-gathered, chanting "Death to the Dictator" and "Mousavi, We'll Protect You" and "Iran looks like Palestine" (the last, an apparent reference to the constant scenes of similarly dressed Israeli police dispersing Palestinian rock-throwers).
「パレスチナに化したイラン」
機動隊がいったん退却すると、群衆はまた隊列を組み直し「Death to the Dictator/独裁者は死ね!」「Mousavi, We'll Protect You/ムサビ、われわれがあなたを守る」「Iran looks like Palestine/イランはパレスチナか!」とシュプレヒコールを繰り返した。
特に最後の「パレスチナ化したイラン」のロジックは、「イランの武装警察とまったく同じ黒い武装スーツのイスラエルの機動隊が、投石する(しか抵抗する手段がない)ガザのパレスチナ人を蹴(け)散らすおなじみの弾圧シーンとそっくりだ」という比喩(ひゆ)で、普段からイスラエルのパレスチナ人弾圧を厳しく非難しているイラン人にとっては「自分たちが政府によって同じように弾圧される状況におとしめられた」という耐えられない惨めさを、一言で表す表現である。
10. Beginning of uprising
No rocks were thrown, only a few plastic water bottles. Several dumpsters were overturned and set on fire.
蜂起のはじまりの兆候
しかしテヘランでは、この時点では一片の石も投げられず、ほんの数人がミネラルウォーターの空ボトルを投げつけただけだった。(だが後段になって犠牲者が出たという噂が広がると)いくつかのゴミ回収ボックスがひっくり返され、火がつけられた。
>次号「グリーン革命の怒れる若者たち」へ続く
【 米国時間 2009年6月14日 『米流時評』ysbee訳 】
選挙翌日の13日、不正開票に怒った抗議デモの市民に機動隊が警棒で襲いかかる
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