米流時評

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2007年 11月 26日 ( 1 )

乗り越えられるか・ハリリ暗殺以来の国家危機

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 ||| レバノン政府軍の大役・国家危機克服 |||
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大統領おき逃げ戒厳令の国家非常事態を中立保持の政府軍が治安制圧

米国時間 2007年11月26日 | ベイルート発/AP通信 | 『米流時評』ysbee 訳
前号「レバノン戒厳令2・権力の空白地帯」からの続き:
ラフード大統領は2期9年にわたる在任期間中、一貫して強硬なシリア派の立場を通したが、23日で任期を完了し退陣した。彼の政権の座からの退出は、国会の多数議席を占める反シリア派にとっては、首相職と同時に大統領職も反シリア派で固めたいという、長年の政局のゴールに一歩近づいた段階を迎えたわけである。反シリア親欧米派を率いるシニオラ首相の政権は、この空白の大統領の座も与党選出候補で埋め、最終的に「シリアのレバノン支配」に対してピリオドを打とうと画策している。
Lebanon PM Tries to Calm Presidentless Nation
Army leaders say they will stay out of politics, keep streets secure
NOVEMBER 25, 2007 EST | Associated Press — LEBANON | Translation by ysbee
Continued from the previous issue — The departure of Lahoud, a staunch ally of Syria during his nine years in office, was a long-sought goal of the government installed by parliament’s anti-Syria majority. The government has been trying to put one of its own in the post and seal the end of Syrian dominance of Lebanon.

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NOVEMBER 26, 2007 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽園通信』デイリー版f0127501_6213945.jpg
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 A s s o c i a t e d P r e s s | L E B A N O N

05年ハリリ暗殺以来の国家危機に一大局面 反シリアが覇権か
米国時間 2007年11月25日 午後7時37分 | ベイルート発・AP通信 | 『米流時評』ysbee 訳


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6. Both sides are locked in
Opposition Christian politician Michel Aoun warned against the cabinet taking over the role of the presidency. The fight has put Lebanon into dangerous and unknown territory. Both sides are locked in bitter recriminations, accusing the other of breaking the constitution, and they are nowhere near a compromise candidate.
こう着状態の親米派・シリア派の対立
野党側のキリスト教政党代表ミシェル・アウン氏は、シニオラ内閣が(国民や議会の認証も得ずに)大統領職を兼任するのは違憲行為であると非難する声明を発表した。こうした与野党の激しい対立抗争によって、レバノンの政局はきわめて危険な未知の領域に突入したように見える。両サイドから相手側のとった措置(ラフードの戒厳令、シニオラの大統領職兼任)を違法行為であると糾弾する、険悪なこう着状態が続いている。この状態では、大統領候補者に関して意見の一致をみることは一朝一夕にはなさそうである。
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野党サイドのキリスト教政党代表ミシェル・アウン氏 シニオラ内閣が大統領職を兼任するのは憲法違反だと非難

7. National crisis after Hariri assassination
International pressure and mass protests after the assassination of former Prime Minister Rafik Hariri forced Syria to withdraw its troops from Lebanon in 2005 after 29 years. Many in Lebanon blamed Syria for Hariri’s killing but Syria denied it.
05年ハリリ元首相暗殺以来危機の続くレバノン
2005年に国民的英雄と敬愛されたラフィク・ハリリ元首相暗殺された直後、事件の背後で動いたと見られるシリアに対して国際的非難が集中し、数十万人規模の国民的抗議デモが首都ベイルートで繰り広げられた結果、シリアは最終的にそれまでの29年間の政治的軍事的介入に終止符を打って、レバノン領土内から軍隊を撤退した。レバノン人の多くはいまだに、シリアがハリリ暗殺の黒幕だと非難するが、シリア側はこの見方を真っ向から否定している。
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昨年11月に車を運転中にスナイパーの狙撃で暗殺された若手の工業相ピエール・ゲマイエル氏。右の写真中央はその父親。一番右あごひげの男性は一昨年車輛爆破テロで暗殺されたハリリ元首相の息子で将来を期待されるハリリJr.
レバノンではここ2年間で十数人もの閣僚や有力政治家がテロに倒れている「Assassins' Kingdom=暗殺の王国」でもある。犯人はシリアの諜報から送られたと推測されているが、不明のままお蔵入りになるケースが多い。


8. Army has kept nation together
On Saturday, army chief of staff Maj. Gen. Shawki al-Masri visited the Presidential Guards at Baabda Palace near Beirut and said the army command will strengthen security measures when needed as it “did in the past years.” The army will face a tough challenge maintaining the peace in the coming days and weeks amid the sectarian-charged atmosphere and persistent reports of proliferation of small arms among individuals and political parties.
戒厳令の軍隊出動で治安は一応安定
戒厳令施行翌日の24日土曜の段階では、レバノン政府軍の総司令官であるシャウキ・アルマスリ将軍自ら、ベイルート近郊のバアブダ地区にある大統領官邸を訪れ「軍隊の命令下で過去数年間実施してきたように、必要とあれば警戒態勢をさらに強化して時局に対応するつもりだ」と戒厳令下での軍部の態勢を明確にした。体制・反体制(親米対親シリア)の対立抗争で、この先数日か数週間か先の読めない時局にあって、国家の治安を維持するという難題に軍隊が直面することが予測されるため、警備にあたる軍隊は、個人や政党の如何を問わず小ぜり合いや銃の所持などを徹底的に取り締まる方針を継続すると伝えている。
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与野党の拮抗対立で大統領が決まらず、権力の空白状態が出現 こういう局面に軍部指導者は中立を保って治安を確保

9. United army surviving a series of crisis
So far, the 56,000-member military has successfully kept this tiny, fractious country together, surviving one crisis after another since the February 2005 assassination of Hariri. In the past two years, the army has emerged as a neutral force, protecting and separating pro- and anti-Syrian groups and maintaining order during angry protests and funerals.
国家危機の克服に5万6千の軍隊が一役
一応現在までのところ、5万6千名のレバノン軍を総動員して戒厳令の厳戒態勢にあたっているため、2005年2月のハリリ暗殺事件以来、この紛争の絶えない中東の小国に次々と継起した国家的危機も何とか乗り越え、市民戦争の分裂も見ずにサバイバルしてきた経過がある。
過去2年間のレバノンの「国土全域での治安維持」という難局で、シリアシンパと反シリア派との正面衝突を避け、暗殺に対して怒りを爆発させた数十万の抗議デモや、葬儀に参列した数万の群衆を「威圧ではなく保護する立場」で暴動を起こさせずに鎮圧する実績を重ねてきた結果、レバノン政府軍は中立公正な立場を貫く実質的勢力として一目おかれるようになってきた。
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昨年夏イスラエルの空爆により突発したレバノン戦争で、レバノン南部は大打撃をこうむった。写真はベイルートのダウンタウンで、ヒズボラの本部周辺も空襲による爆撃を徹底的に受け潰滅状態。しかしそのすぐ翌日には爆撃跡地に「Made in USA」のバナーを張るしたたかさもうかがえる。女性たちは被災者の救援に向かうヒズボラの女性党員。

10. Army general, 'Listen to the call of duty'
In January, the army imposed a curfew to quell Shiite-Sunni clashes that killed 11 people. Army commander Gen. Michel Suleiman has ordered his soldiers to ignore politics and “listen to the call of duty.” But the open-ended political crisis raises the question of how long the under-armed and over-stretched army can continue to hold.
軍総司令官「国防の任務に徹する」
今年1月には、シーア派とスンニ派の衝突で11人が死亡した事件があったが、軍隊は戒厳令の厳戒態勢の元に、両派の間にそれ以上の抗争が暴発するのを防いだ。今回の戒厳令に際しては、政府軍総司令官のミシェル・シュリーマン将軍が指揮下の兵士全員に「政治の動きは無視して動揺せず、兵士としての義務に忠実に対応せよ」と至上命令を下した。しかし、終局の見えない政治的危機にあっては、こうした軍隊による制圧と表面上の安寧がいつまで継続できるのか、疑問視する意見もあるのも事実である。
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ダウンタウンにはシリア派ヒズボラの本部もありテロ・暗殺と紛争が絶えないベイルート市内をパトロールする警備兵

11. Army united against sectarian violence
Experts say the army will be united unless Lebanon endures major sectarian violence — especially fighting between Sunni and Shiite Muslims — over an extended period. “Then it will start to fracture,” said retired Lebanese army general Elias Hanna.
軍の統一で国家危機は乗り越えられるか?
今回の国家的危機に対して、レバノン情勢の専門家は次のような見方をしている。「レバノンが市民戦争のような大規模な分裂抗争を防げれば、特にスンニ派対シーア派のイスラム教徒の宗派争いを長い期間避ることに成功すれば、レバノン政府軍も(パレスチナ軍とは違って)統一を保って存続できるだろう」という意見である。しかし、政府軍の退役将校であるエリアス・ハンナ氏は別の見方をとる。「スンニとシーアの争いを生き延びたとしても、そのあとでまた別の抗争が控えているだろう」と言うのである。
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昨年12月12日ベイルート市中央のアルアミン・モスク(左上ブルーのドーム)とその広場を埋めた反シリア派のデモ隊

12. Intrication of multi-layered sectarian confricts
He said the conditions today are different from those at the onset of the 1975-90 civil war, which pitted Christians against Muslims and saw the military splinter along sectarian lines. Unlike then, Lebanon political tensions are now fractionalized more along Sunni-Shiite lines, with Christians divided.
二重三重の対立抗争が控える政治危機の難局
彼はその推論を次のように説明する。「今日のレバノン情勢は、1975年から90年まで15年間続いたレバノン市民戦争とは状況が異なる。あの頃は単純に、レバノン国内のキリスト教徒とイスラム教徒の間の分裂抗争で、軍隊はその間隙が明らかだったので作戦が立てやすかった。しかし当時とはちがって、今日のレバノン国内の政局危機には、スンニ対シーアのイスラムの宗派抗争の上に、さらにキリスト教政党の分裂抗争が重なった、複雑で難しい問題が控えているので、混迷した政局危機の解決は一筋縄では行かないだろう。」[了]

【米国時間 2007年11月26日 訳『米流時評』ysbee】
»» 次号 「アナポリスの奇跡1・中東平和会議開幕」へ続く

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by ysbee-2 | 2007-11-26 11:21 | 中東のパワーラビリンス
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