米流時評

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2008年 08月 30日 ( 1 )

マケインの無謀な賭け、インスタント候補セーラ・ペイリン

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    ||| ペイリン指名はマケインの無謀な賭け |||

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安全パイの経験者よりも女性票確保を狙ったマケインの賭け
共和党系のメディア・評論家・ブログ……無謀な選択に唖然


d0123476_18552829.gifマケインの副大統領候補の発表が今朝方(東部時間で午後一)にありましたが、メディアも一般の有権者もどっとずっこける「超」大穴。予測した評論家は皆無。もったいつけないで言いますと、現職アラスカ州知事のセーラ・ペイリン。ハイ、女性です。しかも、今日72才の誕生日を迎えたマケインより28才も若い44才。ワシントン政権での経験ゼロ。血迷ったかマケイン?

ネームバリューのない彼女をピックアップした理由として想定されるのは:
(1)第一に女性票目当て(頑固にオバマを拒絶する白人婆サマ連のヒラリー支持票集め)
(2)アラスカの豊富な天然ガス資源開発をポスト石油時代のエネルギー政策にする。
(3)最有力候補だったミット・ロムニーとのチケットが流れたのは、ごく最近のマケインの失言の結果。
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[ABCのインタビューで、レポーターが何気で "How many houses do you have?"と訊ねたのに対して、マケインはマジで見当がつかず「側近に聴いてくれ」と答えた。現在米国では住宅ローン危機が甚だしく、数十万世帯の国民が破産から家屋差押え処分に陥る恐慌の一歩手前の経済状況というのに、自分の所有する土地家屋が数えられない(ほどあちこちに所有、7カ所とも11カ所とも)というのは、米国の一般市民感覚からは遥かにかけ離れた『フォーブス500』クラスのプライマリー資産家特有の発言。]

ただでさえ経済に弱いと定評のマケインは、これで一気に政治評論家から「上院のマリー・アントワネット」と揶揄される窮地に陥りました。さらには「ちなみに、経済問題になっている『ミドルクラスの低落』と言われるところの中流階級とは、いったいどのくらいの収入層を指すのか?」という質問には「5ミリオン以下(年収5.5億円から下)」と答えて、全米の失笑を買ったり……

米国では、通常は年収いわゆる"six figure"(6桁、10万ドル/1千万円)以上が、一応裕福な階級と見なされ、1億円以上なら文字通りミリオネア。5ミリオンと言ったのは、オバマの昨年の年収(ほとんどがベストセラーになった『Audacity of Hope』と 自伝の印税であるが)を皮肉ったのだと、後日言訳しましたが、レポーターが真面目に「経済恐慌」について質問しているのに、こう言ったバージョークで返すところが「大統領候補にすら失格のダメ親爺」と、正統保守派に嘆かれる由縁です。
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マケインの副大統領候補として最後まで噂されていたミット・ロムニー(左)とミネソタ州知事ティム・ポレンティ。彼らの支持者は、今回のマケインの選択に「ど素人を選んだ」と憤慨。共和党大会が揉めそうな雲行きになってきた。

こうした批判的世論による共和党内の状況急変で、それまで有力と目されていたユタ州のビリオネア、ミット・ロムニーとの正副コンビは「ビリオネア・チケット」とか「7ハウス・クラブ」と嘲笑されるようになったため、庶民派の候補へと方向転換したものと見えます。(ペイリン知事の夫はアラスカの小さな港町のフィッシャーマン)。

しかし、テレビのレポーターが報告する限りでは、マケインがこれまで彼女に逢ったのは、たった1度だけ。それも、ある評論家のすすめで急遽逢ってみようと言う事になり、アリゾナ州セドナの自宅へ呼び寄せたのがほんの昨日。(別の噂では全米知事大会でちらっと会話を交わした程度とか)つまり、それまでマケインの胸にはこれ!と決めた副大統領候補がいなかったことになります。しかも共和党全米大会は来週冒頭から始まるという正念場なのに……。この点に関して政界関係者全員があっけにとられている次第。この人選に関しては、共和党関係者の方が「無責任にもほどがある。Haw dare you!」と怒り心頭。
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アラスカ州知事に選出されてからわずか20か月の経験しかない。それ以前は人口7千の小さな港町の町長。

いいですか、選ぶのは使い走りの秘書ではなく、いやしくも米国の副大統領ですよ。高齢ですでに4回も皮膚癌の手術を済ませているマケインの身に、今後4年の間に何かあったら(ある確率の方が高い)この女性が米国だけでなく、世界の采配を振るわなければならない訳です。見方は色々でしょうが、キャリアを見る限り、またスピーチを聴く限りでは、この女性にそれだけの裁量があるとはとても思えません。せいぜいがPTA会長の印象。

すでに、米国の各メディアや有力オピニオンブログでも、「大失策」「マケイン脳死か」「Absolutely insane」「マケインのハリエット・マイヤーズ」と、とんでもなく盛り上がっています。(上のMSNBC.comのアンケート集計では、ニュース発表から1時間も経たないうちに2万5千名近くが回答。そのうち6割近くが「誰か他の人物を選ぶべきだった」という結果に)マケインは女性に弱い事では若い頃から定評がありますから。
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[注: ハリエット・マイヤーズはブッシュのテキサス州知事時代からの秘書。2006年に自分の子飼いの司法長官アルベルト・ゴンザレス(同じくテキサスの司法長官上がり)が、あまりの「無能」ぶりで議会の吊るし上げを喰い更迭になった際に、適当な後釜が見つからず身近にいたマイヤーズを大統領推薦の司法長官候補として指名した醜聞。この一件で、ブッシュは身内の共和党議員からまで一斉に攻撃を浴びるきっかけになった。それ以降ブッシュを形容する言葉として「incompetent/無能な」が定着した。これは表向きのメディアが使うましな批判の方で、ブログ界ではもっぱら「retarded」という枕詞がつく。]

それでは国内政治の、特に地方政治の詳細情報に強いMSNBCの政治アナリスト、トム・カリーが早速上げたセーラ・ペイリン評『マケインの大胆な賭け』を、前後2編に分けてお届けします。その他にも米国メディア界では、このペイリン指名に関しては「アホか!」というエラー警報つきで、政治記者や評論家らが一斉に書かずにはいられない、というショックウェーブが走っておりますので、秀逸評論ものちほどに。

[日本のメディア記事では「サラ・ペイリン」となってましたね。(ある新聞サイトでは「パリン」とも!)なんで勝手な発音に仕立て直しちゃうんでしょうか。『小公女』のセーラと同じですよ。メドヴェディエフの時も「メドベージェフ」になったし……まあ、彼の場合は下唇を2度も咬まなければならないので大目に見ますが、「dirty bomb」を「汚い爆弾」と迷訳するのと同じで、実にテキトー過ぎる。言葉は、口にしたときに通じなければ用を果たさないと思うんですが?]
【米国時間 2008年8月29日『米流時評』ysbee】

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AUGUST 29, 2008 | 米 流 時 評 | ブログ雑誌『 楽園通信』デイリー版f0127501_6213945.jpg
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   M S N B C | P O L I T I C A L A N A L Y S I S
安全パイの経験者よりも女性票確保を狙ったマケインの危険な賭け
米国時間 2008年8月29日午後3時02分 | AP 通信・ニュース速報 | 訳『米流時評』ysbee

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Sarah Palin is McCain's Boldest Gamble

Will potential appeal to women voters outweigh the risks?
JULY 29, 2008 | By Tom Curry — MSNBC Analysis | Translation by ysbee
DENVER — Alaska Gov. Sarah Palin is as dramatic a contrast as one can envision with Republican presidential candidate Sen. John McCain. She represents the most audacious gamble in McCain’s career and a gamble with the fortunes of the Republican Party.

マケイン流の短絡で無謀な選択?
共和党の大統領候補ジョン・マケイン上院議員が、長い予備選の末に彼の片腕となる副大統領候補として紹介したアラスカ州のセーラ・ペイリン知事は、現時点で考えうる限りもっとも劇的なコントラスト(暗にマケイン自身とオバマの相方バイデン両者とのコントラストという意味)を示す大抜擢である。この賭けには今後の共和党の命運が掛かっているだけに、マケインが彼女を選んだ事自体が、ワシントンの政治家としての彼の長いキャリアの中でも最も大胆な賭けに出たことを示すものと言えよう。
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地元アラスカの町で開催のスノーモービルのレースに参加するペイリン夫妻 どうもネーチャンぽい印象がつきまとう

1. Stark contrast with McCain

The differences between the presidential candidate and his running mate are so stark that it’s hard to assess which one is boldest: age (she’s nearly 30 years younger than McCain); sex (she’s the first woman ever to be on a Republican ticket); political experience (she’s been a governor for less than two years; he’s served in Congress for 25 years); or geographical remoteness (no Alaskan has ever appeared on a national ticket).
年代、キャリア、すべてがマケインと対象的
大統領候補であるマケインと、その片腕となる副大統領候補のペイリンとの間の違いは歴然としており、どの特質が一番目立っているかを決めるのも難しいほどだ。
年 齢:彼女はマケインよりも30才近く若い。
性 別:彼女は大統領選での共和党候補者としては初の女性候補である。
経 験:彼女はアラスカ州知事に選出されてからまだ2年にも満たない。
    一方マケインは米国上院議員として25年の経歴がある。
出身地:アラスカ州からは大統領選で党指名の候補者となった者はいまだかつていない。
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セーラの若い頃の写真を示す父親。高校時代の同級生と結婚し現在は5児の母。一番下はまだ生後4か月でダウン症。

2. 'A bold and historic move'

She's untested on the national stage and unknown to political insiders in Washington and in the national news media. Democratic consultant Chris Kofinis called the Palin pick "a bold and historic move for the Republican Party that clearly targets women and conservative voters, but does little to change the fact that McCain's Bush-like policies would be disastrous for all Americans — especially women."
「大胆な米国政治史に残る選択」
ペイリン女史は上・下院議員としての経験はなく、ワシントンの政界内部や全国的メディアには未知の存在である。民主党の相談役であるクリス・コフィニス氏は、マケインのペイリン指名を次のように解説する。「共和党が女性票と純正の保守系有権者をターゲットにした、大胆で歴史的な転換であるが、マケイン議員のブッシュそのままの政策が、すべてのアメリカ国民、特にアメリカ女性にとっては破滅的だと言う点では、何の変わりもない。」
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議員生活も人生も黄昏を迎えたマケイン。万が一当選したとしても、果たして大統領職の激務に耐えうるのか?

3. Questions mounting over qualification

"This would be a pretty shrewd pick, but one not without risk,” said Republican consultant Jason Roe, a few hours before McCain revealed his choice. And Obama campaign spokesman Bill Burton warned that McCain had "put the former mayor of a town of 7,000 with zero foreign policy experience a heartbeat away from the presidency."
「外交経験ゼロの人物を要職に据える無謀」
「リスクのない選択などないとはいえ、今回は特にかなりきわどい選択になるだろう。」マケインが副大統領の指名候補を発表するわずか数時間前に、共和党の顧問であるジェイソン・ロー氏はこう予測していた。一方、オバマ候補のキャンペーン対策本部スポークスマンであるビル・バートン氏は、次のような警告を発した。「マケイン候補は、前職が7千人の田舎町の町長で外交政策経験皆無の人物を、米国政権の要職に就けようとしている。」
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民主党大会でバイデン副大統領候補の出身地デラウェア州の代議員たち「McSame/ブッシュと同じ」のアピール

4. Huge differences between Biden

As well as many asked a question sure to be repeated in the coming days: "How will she perform in the debate with Sen. Biden on foreign policy? He has a command of foreign policy details that few people in Washington have. She will have to cram like it's her college finals." The image of the gray-haired, 40-year Washington insider, Biden, battling against the 44-year old governor of Alaska as they spar over Iran's nuclear weapons or Islamic radicalism in Pakistan is an intriguing one.
比較にならないバイデンとの落差
また同様に政界関係者の多くは、今後数日にわたって繰り返されるだろうことが予想に難くない質問を、こう問いかけずにはいられない。
「(上院議員歴40年の米国議会の重鎮で外交委員会の議長を務める)ジョー・バイデン議員と正面切って対峙する公開討論会が、CNNやNBCの全国放送で11月の投票日まで今後数回予定されているが、彼女はいったいどうやって外交問題を議論できるだろうか? なにしろバイデン氏は、外交政策の一部始終を把握して采配を振るえる、ワシントンでも滅多にいない傑物だというのに……大学の卒論のように完璧であり余る知識でも披露できるんだろうか?」
ワシントン政界の立役者として40年もの輝かしい経歴を誇る白髪のバイデン議員と、若干44才のアラスカの女性州知事が、イランの核兵器問題やパキスタンのイスラム過激派戦略といった急眉の国際問題について、丁々発止でわたり合うシーンを想定してみれば、結論は言わずもがなである。 »» 次号へ続く

【米国時間2008年8月29日『米流時評』ysbee 訳】
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細君シンディ・マケインと「カジュアルな庶民っぽさ」をアピールするジョン・マケイン。しかし、5年間ベトナム戦争の捕虜として「ハノイ・ヒルトン」で虐待生活を送り米国に生還したあと、事故で肢体不自由になった旧妻を捨ててアリゾナのビール財閥ヘンスリー家の一人娘と密通。それがシンディで、旧妻と正式に離婚してから1か月後に18才年下の彼女と再婚。マケインは若い頃は海軍パイロットだったが、当時から女癖の悪さでは定評があり、この結婚は上院議員に立候補する選挙運動資金目当てだという噂が常につきまとった。(参考文献『American Odyssey』)現在二人の間には、選挙キャンペーンの一員でもある長女のミーガンをはじめ、4人の子供がいる。

»» 次号「サラ・ペイリンはマケインのパーフェクトストーム」へ続く
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by ysbee-2 | 2008-08-30 11:36 | 2008年米国大統領選
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